異形型"マリー"
突如異形型"マリー"が二人を襲いディーナとスイレンは討伐することになった。
一丁の銃を構えて、両剣を構えて二人は戦闘態勢に入った。
「いや~にしても中々の見た目ね。大人の私でも気持ち悪いって思うから子供とか見たら大泣きしそうね」
ディーナは"マリー"の見た目に苦笑いを浮かべていた。
「この"マリー"がエニーを襲っていた可能性も高いです。異形型の場合は群れは作らずとも一つの国を堕とす事も充分に可能ですので」
この"マリー"は五つの体節で構成されておりその体格はディーナ達よりも遥かに大きい。頭部のほとんどが口になって鋭い牙が無数に生えている。虫のような短い足が何本か生えており見る人によってはトラウマになるレベルである。
「だね、あのでっかい木をへし折るぐらいだから相当な力を持ってる。あの口に噛まれちゃったら私達でもそれなりに痛いかもしれないね。ましてや普通の人が噛まれたら・・・あんまり想像したくないかも」
「想像に難しいことはありません。それが現実にならないようにもここで討伐しなければ」
"マリー"は呻き声を上げならずっと二人の様子を伺うように見ていたが、何もしてこない二人に痺れを切らしたのかまたしても二人を噛み付こうと勢いよく突進してきた。
二人はそれぞれ左右に避けて噛み付きに対応した。
「意外と速いね、ちょっとでも遅れたらあの牙の餌食ね。スイレン大丈夫?」
「この手のスピードには慣れています。"マリー"は多種多様、この程度を避けないと生きては行けません」
避けた先に二人は背中を合わせて「心強いね、それじゃ先陣は任せてもいい?援護はしっかりするよ」
「分かりました。ここは私にお任せを」
スイレンは突進した"マリー"に近づき飛び込んだ。五つの体節の一番端の体節を両剣で刺した。体節一つ一つが人間程のサイズのため刺した後に体節の上に乗ったスイレン。
「貫けないのですね。甲殻のような硬さで刺すのが限界ですか、ならばこの体節を繋げている繋ぎ目を斬るのが最善の策になりますね」
瞬時に"マリー"の構造や作戦を考えて次に動く行動を考えたスイレンだが、"マリー"突然動き出し暴れ始めた。
"マリー"は長い体を宙に浮かせてスイレンを振り落とすように大きく左右に動かした。
両剣をしっかりと掴んで離さないように体を固定させるスイレン。「ここで離れたら近づくチャンスが無くなってしまうかもしれません。ディーナさんの援護まではここで耐えないと」
振り落とすことが不可能と分かったのか"マリー"は森中を動き回り始めた。木々をなぎ払い森を荒らす"マリー"。
スイレンも同時に森の木の枝や鋭い葉等でどんどんと傷を付けられていく。少し苦痛の表情を店見せるがそれでも離れようとしない。
すると「スイレン!こっちに誘導出来る?」ディーナの声が聞こえた。耐えながら声のするディーナを見るとかなり大きな木の隣にいた。
何かの策があると思ったスイレンはディーナに届く声で「分かりました!少し待っててください!!」声を出した瞬間、ゆっくりと深呼吸をした。
呼吸を整えた後に片手で両剣を持ちながらもう一つの手には水の球のような物が浮かんでいた。
その珠を"マリー"が向かっている方向に投げると球を"マリー"追い越して地面に急降下した。すると地面から水の壁が"マリー"目の前に現れた。
"マリー"は突撃をすることを恐れ急カーブをして水の壁との衝突を免れた。スイレンはまたしても水の球を"マリー"の進行方向に投げて水の壁を作り上げていた。"マリー"は衝突せずにカーブをしていく。
何度か繰り返していくといつの間にか水の壁が"マリー"を取り囲んでおり唯一抜け出せる方向にはディーナの姿がある。誘導の目的を果たしたスイレンは「ディーナさん!」と大声で呼んだ。
「ありがと!」と一言発した後に隣の大きな木の根元に銃で一発放った。すると木の根元が勢いよく発火していき今にも折れそうになっていた。
完全に燃えてる木をディーナは少し勢い付けで木の根元に回し蹴りを放った。
木は完全に折れてそのまま倒れていく。その倒れ先は"マリー"が進んでいる方向だった。燃え盛る木が倒れていく時にディーナは「スイレン、危ないよー」と注意を促した。
木が倒れきる瞬間にちょうど"マリー"の頭が木の頭上に来ておりそのまま"マリー"は燃え盛る木が頭部に直撃して宙に浮いていた体節が一つ一つ落ちていく。
スイレンが刺している体節も落ちていく中で両剣を抜いて落ちていく中でスイレンは空に飛び上がり、体節を繋ぐ繋ぎ目を両剣で斬った。
一つの体節は体と分離して別々で落ちていった。
スイレンはディーナの隣に着地して、血払いのように両剣を振った。
「お見事ですディーナさん。あの巨大な木を一瞬にして着火させて折るなんて、火属性を操る"リンドウ"でもこのような芸当は中々出来ることではありません」
「スイレンだってすごいよ。水の壁をあんなに、しかも一つずつがしっかりと壁になって激突しても本当の壁のような衝撃が"マリー"に来ると思うから、変幻自在の水属性だからこそ出来ることね」
「いえいえ、ディーナさんだからこそ私の水の壁が活用出来ただけです」
「私はスイレンだからこそ出来ると思っただけだよ」
二人が褒め合う中で、突然二人は黙り「まぁでも、討伐までは行ってないね」「はい、まだ終わってはいません」
二人は木に押し潰された"マリー"を見るとピクリピクリと動き始めており、頭部が木をゆっくりではあるが持ち上げようとしていた。そして、木を完全に持ち上げ巨大な木を投げ飛ばし再び体を宙に浮かし先程と同様に森の中を暴れ始めた。
「流石に討伐は出来ないか、それにしてもあの木を頭だけで持ち上げるなんて結構なパワーね」この出来事を予想していたのかあまり驚かずに"マリー"の力に感心していた。
燃えている木が森に移ることを危惧したのかスイレンは木に適量の水をかけて火を消火した。スイレンは森を駆け回る"マリー"をじっと見てふとあることに気がついた。
「ディーナさん、"マリー"の動きを見てください。先程よりも動きが鈍くなっています。恐らくですが私が先程一つ斬った体節が無くなったことにより"マリー"が弱体化したと考えられます」
「と言うと?」「体節を貫いた後に極わずかですが動きが緩やかになりました。体節は"マリー"にとって宙に浮かす作用とスピードの効果があると思います。一つの体節が無くなると今まで維持してきたスピードが無くなると思います。繋ぎ目は体節とは違いかなり脆かったです」
「なるほどね、だから体節を斬ったのね。その分析は多分当たってる。照準が合わせやすくなっただけでもありがたいわね」
ディーナは銃を構えて"マリー"に向けて照準を合わせ始めた。その姿を見たスイレンは「私がもっと照準を合わせやすくさせます」「えっ?」
スイレンはまたしても深呼吸をした。今度は大きく深呼吸をしてから膝を曲げて地面に手を置いた。すると、地面がどんどんと水に覆われ始めた。その範囲は広く"マリー"が行動している範囲全てが水が現れ、遂にはスイレンの目の前には地面が水溜まりになっていた。
地面と水の深さはだいたい足首が浸かる程であり、大雨が降った後の出来事のようだった。
「すごっ」さすがの出来事に驚いたディーナ。それを尻目にスイレンは水場に飛び込んだ。そしてそのまま驚くべきスピードで泳いでいたのだ。
水溜まりが出来たとは言え深さはたかが知れおり本来なら泳ぐことなど出来るはずがない。しかしスイレンは両剣を持ち全てが見えているかのように森中を泳ぎそのスピードは暴れている"マリー"をも凌ぐ程だった。
森を駆け回る"マリー"の懐に潜り込んだスイレンは並走するように宙に浮かびながら動く"マリー"の下で泳いでいた。まるで獲物を見かけて見定めるように同じ速度で動いているようなだった。
するとスイレンはほんの少しだけスピードを落として、頭部から直接繋がっている体節の繋ぎ目の頭上まで来た。
そして泳いでいたスピードのまま勢い良く飛び出し繋ぎ目を斬った。その斬った姿は優雅の一言でとても美しかった。
一連の流れを見たディーナはスイレンの行動や能力を見て「水の演舞を見た最後であの一閃をしたみたいね。なるほど、あの二つ名を納得出来るものね」
繋ぎ目を斬られた"マリー"は全ての体節が崩れ落ちていき、言葉で表せられない程の悲鳴をあげていた。頭部だけになった"マリー"はよろよろと宙に浮かびさっきまでのスピードが嘘のようにゆっくりになった。
空中で一回転したスイレンはそのまま地上に降り立ち再び水に手を当てると水が引いていき完全な森の状態になった。泳いでいたはずのスイレンだったが全く濡れていなかった。
"マリー"は宙に浮かびながら停止しておりスイレンも完全に戦意喪失をしたと思い"マリー"に近づいていくと、"マリー"は動き始めて先程のスピードのまま大きな口を広げてディーナの元に。
最後の抵抗なのか"マリー"はディーナを噛み殺そうとしているのだ。完全に油断をしたスイレンは「ディーナさん!避けてください!!」そう言ったがすでに遅し、もう"マリー"はディーナの目の前まで来ていた。
そして、ディーナに襲いかかった"マリー"は牙だらけの口で噛み付こうと縦にかぶりつこうとしたが、ディーナが左手で上の口を、右脚で下の口を抑えた。
左手も右脚もかなりの力があるのかプルプルと震えていたがなんとか押さえ込んでいた。
右手に持った銃を口の中に向けて「ナメるなよ、私は"リンドウ"だ。その気持ち悪い口を綺麗にしてやる」
銃口から電気がバチバチと流れていきディーナが引き金を引くと電気の珠が発射され"マリー"の口内に直撃した。さらに引き金を引き計五発の電気の珠を放った。
"マリー"の頭部は感電したかのように震えていた。ディーナは手と脚を離して一歩下がった。
遂に震えが収まり"マリー"は地面に落ちていき完全に息絶えた。
ディーナはほくそ笑み「良かったね、最後は花火みたいで綺麗だったよ。私の電気がだけど」
スイレンはディーナに近づいて「ディーナさん、大丈夫ですか?まさか"マリー"の口を抑えるなんて・・・」どこか怪我ないかディーナを見て回るスイレン。
「大丈夫大丈夫、私はこう見えてそれなりに力があるから意外と大丈夫だったりするのよ。それにしてもスイレンすごいね、水を作り出すだけじゃなくてあんな速度で泳げるなんて素直に尊敬しちゃうなぁ」
「は、はぁ、速い"マリー"にはあの手段が一番良いと思ったので」
ディーナは銃を懐にしまい「それは今回の正解だね。とりあえず報告しようか、もう暗くなり始めているし夜の森は暗くて怖いから」
ディーナが武器をしまうのを見てスイレンも両剣を二つに折り腰に備えて「はい、ディーナさん、今日はお疲れ様でした」「エニーに戻るまでが遠足だよ~」
こうして大型"マリー"を討伐に成功した二人。少し時が遡りディーナとスイレンが"マリー"と交戦している時、エニーでは・・・