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カエデ  作者: アザレア
討滅戦~過ぎ去りし代償~
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期待と優しい声

時はほんの少し遡りディーナが出て行った後の家に残された三人。「しかしまぁ個性的な奴らじゃのう。まぁそうでなくては二つ名"リンドウ"は名乗れんか」勝手な行動をするディーナとソニアだが皇帝であるヒガンの目の前でも出ていける精神が無ければ二つ名"リンドウ"にはなれない。


子供達もいなくなった事でヒガンは振袖から煙管キセルを取り出し吸い始めた。

するとシスイは椅子に座っているヴァレアがいる食卓のテーブルの上に資料を置いた。資料の手書きのメモを置き「ヴァレア様こちらが"マリー"の情報をまとめたものになります~ヴァレア様は目をお通しになられた方が良いと思います~」ヴァレアは資料を手に取り目を通すと「短期間でここまでの情報を集めるとはな。さすがだ」


ヴァレアから褒められたシスイは顔を赤くして「えへへへ」喜びを隠せていなかった。

ここでシスイは家の扉の前に行き「ディーナ様やソニア様がいなければ会議の続きは出来ませんので引き続きわたくしは情報を集めてまいります~何かあればすぐにお呼びください~」シスイは扉を開けると同時にその場から消えてしまった。


ヴァレアはシスイを見送ってから再び資料に目を通していた。二人きりとなったヴァレアのヒガン、"リンドウ"から見れば皇帝二人がいる空間はあまりにも神々しく見えるだろう。


煙管キセルを吸って煙を吹いた後にヒガンは「主はどこかにはいかんのか?」出ていった皆に続いてヴァレアにも何処かに出ていかないかと聞いた。


「私は彼女達の帰りを待っています。何もしない"リンドウ"ではないのは分かるので」資料に目を通しながらヒガンの質問に答えた。


ヒガンは煙管キセルを振袖に入れ「変わったのう主は。十年前とは大違いじゃ」過去のヴァレアと照らし合わせていた。


「子供の時の話です。心身共に成長しますよ」十年前と言えばまだヴァレアは十一歳でありその頃から"リンドウ"として活動していた。


「それでもじゃ。昔の主は他者に任せることはせずに全て自分で任務等を行っていた。それは主自身の方が効率が良く任せていられない、他者を信じることはしなかっただろう」淡々とヴァレアの過去の性格を語るヒガン。


ヴァレアは資料を読むのを止めた。「いつからか分かりませんが気づいんたんです。私だけが強く、どれだけ私が活躍しようが、たった一人では何も出来ないんだって。私以外ももっと強くなってもらわないと」ヒガンの方を向き「私は後悔ばかりしてきました。だから仲間を信じます、裏切ったりなんかしない」その目からは覚悟で有り余る目をしていた。


少しだけ驚く表情を見せるヒガンは口を開け「それは、彼奴あやつの事を言っておるのか?」誰かのことを言ったヒガンにヴァレアは「っ!」目を見開き言葉を詰まらせた。


ヒガンはハッとなり「すまん。愚問じゃったな、忘れておくんなんし」ヴァレアのタブーに触れたように感じたヒガンはすぐに謝罪をした。

「じゃが主の気持ちは分かる。特にディーナには主も期待してるんじゃないか?」すぐに話題を変え”リンドウ”への期待、特にディーナへの期待を聞いた。


ヴァレアはすぐに切り替えて「ディーナ…あいつは、強いですよ。過去に大勢の仲間を”マリー”に殺されそこから命の重みを分かり、今となってはフェリスと言う守るべき人も出来た。ただ元々"リンドウ"となった時から目はつけていました。

いずれは、私と並ぶ"リンドウ"の一人になってくれますよ、ディーナは」

ヴァレアにとっても初めて口に出したディーナの本当の評価。それはいずれディーナは自分、”最強のリンドウ”と並ぶ存在になると口にした。


ヒガンは驚くと思っていたがクスクスと笑い「ふふふっその気持ち分からん事もない。彼奴あやつはクロカを"アフィシャル"の呪縛から解き放ってくれた。わっちでは出来んかった事を。

その実力も人格も二つ名"リンドウ"の中でも指折りじゃ。そろそろ、わっちらと同じ称号を与えてやってもよいのではないか?」"アフィシャル"第四支部を崩壊させたディーナの実力とクロカの復讐を終わらせた人格を踏まえディーナは皇帝の称号に相応しいとヒガンは考えていた。


だがヴァレアは首を横に振り「あいつの弱点はすぐに調子に乗ることですよ。皇帝を名乗るのはもう少し先ですよ」ディーナの性格を知った上でまだ皇帝の称号を与える訳にはいかなかった。だがヒガンは心の中で「その様子じゃ実力共々認めているようじゃな。機会があれば、か」ヴァレアのディーナへの信頼が高い事が分かる。


ヒガンと会話を続けているとヴァレアが「にしてもディーナ達遅いな。一体どこまで行ってるんだ」ラゴンの街を探索しているはずのディーナ達だが帰りが遅い事を気にしていた。「確かにそうじゃのう。ディーナとナデシコがいれば安心ではあるが戯れにでも行っておるのか?」「一応会議中なんですけどね」苦笑いを浮かべるヴァレア。


すると部屋の扉が開き入ってきたのは最初に出ていったフェリス達だった。「主らだけか?ディーナとは会ったのか?」そこにはディーナの姿もなく、当たり前だがソニアの姿もなかった。


「うん会ったの。でもソニアが"マリー"元に向かった可能性があるってナデシコが行ったらもう一回ソニアを探しに行ったの」「う~んその可能性は低いじゃろうが万が一、向かっていた場合は取り返しのつかない事になるじゃろう。単身では勝利することは不可能じゃ」


「やれやれ」ヒガンは突然玄関の前に立ち「ヴァレア、クロカとフェリスを見てやってくれんか?」帰ってきたクロカは「どこ行くの?」扉のドアノブに手をかけ「何、わっちも訛っておる。"マリー"と戦う前にちょいとした準備運動に行ってくるさ」


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ラゴンの離れの地に立ち一人で超大型"マリー"の探索をしているソニア。腰には箙に何十本かの矢が入っていた。

何も言わずにただ"マリー"の行方を探っていた。


すると突然そよ風が吹き始めた。それと同時にソニアの後ろにはシスイが立っていた。気配でシスイと分かったソニアは振り返ることはしなかった。


「ソニア様~おひとりで超大型"マリー"と対峙するつもりですか~?」いつどこで超大型"マリー"が現れるか分からない中でこんな場所に一人でいれば格好の的である。


「無謀な挑戦は致しません。仮に出現してもひとまずは貴方達に報告をしてからです。足止め程度には一戦交えるつもりですが」最後の一言を聞いたシスイは笑顔の表情を変え「それが無謀だとわたくしは思います。足止めであろうとたった一人で強大な"マリー"に挑むのはわたくしが許しません」命を棒に振るような行為をシスイは許す事が出来なかった。


その発言にソニアは振り返りシスイの目を見た。いつもの笑顔のシスイではなく何故か少しだけ悲しげな表情を浮かべていた。「わたくしは一度死にました。この命は既に無くなっているも同義。今更 わたくしの命に重みなどありません。使命を果たす事が出来るのであればこの地で息を引き取っても……」過去に重症を負ったがなんとか命を繋ぎ止めたソニアだったが自分の命に何も感じていなかった。


だが、暗殺者でもあるシスイが「ソニア様、助けられた命を投げ捨てるような言い方はやめてください。命を賭して戦うのが"リンドウ"の使命。ですが命は軽くありません、人を殺めてきたわたくしだから分かるのです」"マリー"よりも人を殺めてきた数が多いシスイはソニアの自分の命の価値観に静かな怒りを見せた。


目を見ていたソニアは目を逸らし「命については貴方が語る資格は無いと思いますが?」シスイが暗殺者というのを知っているソニアは皮肉交じりに言った。


その発言に表情には出さないがフツフツと怒りが湧いてきていた。殺意のような怒りで無意識にソニアに近づいていくシスイ。

だがその時シスイは誰かの気配を感じすぐに振り返ると「何を話してたの?」ディーナが少し笑みを浮かべながらいた。


「ディーナ様~どうしてここにいるのですか~?」ディーナの顔を見た瞬間に怒りを忘れいつもの口調に戻った。

「ソニアを探してここまで来たの。手探りだから時間かかっちゃったよ」元々ソニアを探すために家から出たディーナはようやくソニアを見つけることが出来た。


シスイを通り越してソニアに近づいていったディーナはまず最初に「ソニア、ごめんなさい。貴方の過去を興味本位で聞いちゃって」ソニアを過去を聞いたディーナは話すのもはばかられるような事を気軽に聞いた事を謝罪した。


ディーナが来た事に気づいているシスイだがディーナの方を向くことはせずに「知ったところで意味はありません。全ては過去、わたくしは……」言葉を詰まらせるソニアは「守れなかった。全て、失った、あの日、全部……」過去を思い出しありとあらゆる感情が流れはじめソニアの情緒はおかしくなる寸前だった。


息遣いが荒くなり瞳孔も開き心の奥底に蓋をしていた思い出が開きかけた瞬間「ソニア!」今度はソニアが振り返る声で、背中を痛くない程度に叩いたディーナ。


別世界に意識が行きそうになっていたソニアは呼び止められ意識がこっちに戻り再び思い出に蓋を戻した。

「大丈夫、大丈夫だから。貴方は"リンドウ"よ、私をどう思ってもいい。けれど、"リンドウ"は貴方だけじゃなくて私達がいるから」囁くように過去を思い出しそうになっていたソニアに優しく声をかける。


ソニアは複数回深呼吸をした後に完全に落ち着き「問題ありません。心配はご無用です」さっきまでの無感情の人格となった。


ディーナはホッと一呼吸置いたがソニアから「ですが、ありがとうございます」ディーナに聞こえるか聞こえない程の声だったが感謝を伝えた。

だがしっかりと聞こえていたディーナは「やっぱり、ちゃんと感情があるじゃない。優しさもね」喜怒哀楽があることを確認した、何故か嬉しくなって笑みがこぼれた。


シスイは二人のやり取りを見てソニアに対しての怒りが無くなり「ディーナ様、貴方は言葉や声は誰に対しても良い方向に向かっていくのですね~」自分にかけてもらった言葉も思い出しディーナは人変えてくれる人だと改めて感じた。


「”マリー”の偵察中だった?変わったところはあった?」状況的に”マリー”の偵察中であった二人に”マリー”の情報がないかと聞いた。

わたくしは先程来たばかりなので分かりません~」「問題はありませんでした。今のところは”マリー”の気配はありません。ですが警戒は怠る理由にはなりません。引き続き”マリー”の警戒を」

「根を詰め過ぎもよくないから見張りとかなら交代でやっていったら…」ディーナはある気配を感じ先を見ると「超大型”マリー”じゃないけど部外者が来たようね」シスイとソニアもディーナの方を見ると、少し先から人型”マリー”が数匹こちらに向かって来ていた。

皮膚は爛れており鋭利な爪で一般人を引き裂けてしまう。


「前哨戦ってとこね。相手にはならないと思うけど」最近のディーナの相手は超大型”マリー”や”アフィシャル”、”カレン”といった一筋縄ではいかない相手ばかりだった。下位の”マリー”と戦うのは久しぶりだった。

ローゼンを懐から取り出し銃口を向けようとしたとき、ソニアが左手を空へと掲げた。すると、ソニアの手から電流が走り始めた。「えっ何?」突然のことに戸惑っていた。


電流が走り時間が経つと晴れていた空から突然雷がソニアの掲げていた手に落ちた。しかし雷で痺れることもなく、ソニアの手には武装された弓を持っていた。

「おぉ!」ディーナは弓の登場や電撃の煌びやかに輝く姿にかっこいいと思っていた。


終始無表情のソニアは弓を”マリー”に構え箙から一本の矢を取り出し弓矢を逆手に引いた。だがその矢は電撃が纏いバチバチと音鳴らしていた。矢を逆手に引き放ったその矢は数匹いる人型"マリー"の一匹の胴体に刺さった。するとその矢から強力な電流が辺りに流れ、伝染するように数匹の"マリー"に流れ"マリー"は関電し、少し時間が経つと黒焦げになってしまった。


「すごっ」初めてソニアの属性を見て思わず言葉に出してしまった。ソニアはディーナに振り返り「"可憐の雷霆姫"の二つ名を持つ通り、わたくしは雷属性」ソニアは手から電流をバチバチと流し「我が愛弓あゆ"ミズバ"と共にこの命動き限り"マリー"を討伐するがわたくしの使命であり課せられし天命」ソニアはディーナに属性を見せ自分の覚悟、"マリー"討伐が自分に課せられた天命だと言った。

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