森の調査
翌朝、三人の"リンドウ"とフェリスは寝坊することなく起きて本部に来ていた。ディーナはあくびをしてまだ眠そうだった。自力で起きた訳ではなくヴァレアに起こされてはいたが。
作戦会議室に来て三人は来ていて遅れてエニーの国長、タイムが大きな地図を持って部屋に入ってきた。
「皆さん、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」「はい、宿も心地が良くてとても良いベッドでしたので快眠出来ました」
スイレンは宿の居心地の良さをタイムに言った。
「ふわぁ~良すぎて二度寝しそうになっちゃった。朝早いのは罪ね~」「二度寝しそうじゃなくてしてただろ。私が起こさなかったら一生寝ていただろ」
「誰が永眠するって言ったのよ」
二人のやり取りを見てタイムはクスッと笑い「お二人は良いコンビですね」これに反応してディーナとヴァレアは二人揃って「どこが良いコンビよ(だ)」と、同じタイミングだった。
一瞬ニコッと笑ったタイムだったがすぐに真剣な顔になり「では、これよりこの地域一帯に出現する"マリー"の調査及び討伐の作戦会議を開きます」ついに国に蔓延る"マリー"についての話が行われた。
タイムは作戦会議室のテーブルに大きな地図を広げた。地図は国の地域が描かれていた。
「この地図を見てください。エニーの周りに関してはこの地図を見れば分かります。エニーの周囲は基本的にはのどかな草原が拡がってます、皆さんもご覧になられたと思われますが」
「そうね、あの一帯に"マリー"なんて似合わないわよね」「はい、それはご最もです」
ここでヴァレアが「草原に"マリー"はいたが一匹しかいなかった。恐らく根城にしているのはここのどちらかだろうな」
地図を指さした。その場所はエニーから少し離れた森と洞窟、ここが怪しいとヴァレアは思っていた。
「奴らは目撃情報はあるにしてもすぐに姿を消す神出鬼没、毎日のように"マリー"の襲撃にあっているが"マリー"がどこから出てきているのかはまだ分かっていないのだろう?」
「実はそうなんです。周辺に怪しいと思われる場所は森と洞窟、分かってはいたのですが連日の兵士達の疲労や"リンドウ"が居ない状況ではあまりにも危険すぎます。意図的に調査はしていませんでした」
「賢明な判断だ、"リンドウ"がいない中で無駄に命を散らす事は無い」
「それを一番危惧していました。なので今日はこの森の調査をお願いしたいのです。"リンドウ"の皆さんが来てくれたおかげでようやく動き出すことが出来るので」
森への調査を推奨するタイム。ここでスイレンが
「調査に関しては同意見です。ですが今日も"マリー"の襲撃があるのならば三人で行くのは得策ではないかと思いますが」
スイレンは三人で行く必要は無いと提案。
「いや、私はここに残る、ここでやる事もあるからな。森の調査はお前達に任せる」
ヴァレアがエニーに残り"マリー"の襲撃に備えることにした。
「なるほどね、それが一番かもね。ヴァレアがいたのなら絶対安全だし私達も安心して"マリー"の調査が出来るね」
ある程度話がまとまってきてヴァレアが指揮を取り始めた。
「よし、ディーナとスイレンはこれより森の調査。"マリー"を見つけ次第即討伐しろ。私はここに残り兵士達の様子や防壁の強度等の確認、そして"マリー"襲撃のためにここに残る」
ディーナとスイレンは「了解、頑張ってきますか」「吉報をお待ちください」二人は会議室から出ていった。
「わ、私の立場が・・・」「別に誰が指揮を取ろうが関係ないだろ」
呆然としていたタイムだったが一つだけ気になることが。
「と、ところで、ずっとあそこに隠れていらっしゃる方はいったい、"リンドウ"の方ですか?」
今日もずっと隅に隠れているフェリスについに疑問を持ってヴァレアに聞いてみた。
「いや、ディーナが養っている子だ。名前はフェリス、私もあまり生い立ちは聞いていないが恐らくずっと一人だった子だ」
「フェリスさん・・・」ずっと一人と聞いて何か思うことがあったのかフェリスに近づいて「あの」と、声をかけた。
声をかけられると思っていなかったのか驚いた声で「ふぁい!な、なななんですか?」はっきりと顔を見ていなかったためなまずは特徴的な容姿を見て驚いたタイムだったがここで驚いたりしてしまったら怖がらせてしまうと思い一旦深呼吸をして「初めましてフェリスさん。ようこそエニーへ。貴方を歓迎します」と、ぺこりお辞儀をした。
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一方で国から出て近くの森に向かっているディーナとスイレン。
雑談しながら森まで歩いていった。
「ディーナさん、一つ聞きたいことが?」「何?」「昨日ディーナさんにずっと離れずにいたあの子は誰なんですか?」
スイレンもどうやらフェリスの事をずっと気になっていたようだ。
昨日でかなり仲良くなった二人だが本人の目の前もあってかスイレンも中々フェリスについて聞けなかった。ましてや昨日の宿屋についてから一言も話さなかったがずっとディーナについているフェリス。本人に聞くことも出来なかったためこの場で聞くことにした。
「あぁ、フェリスのこと?」「フェリスさんと言うのですか?すごく、なんと言うか言い方がどうかと思いますが影が薄くてディーナさんの後ろを見ないと分からないぐらいだと思います。それに目を隠されていてあれは見えているのですか?彼女の疑問が募るばかりなのですが」
「ん~まぁその気持ちは分かるよ。あの会議室の隅いる感じでよく見ないとフェリスは見つけられないぐらい影が薄いし、容姿もかなり特徴あるしね。
でも、私はもうフェリスを追い出したりすることは出来ないし、私の大切な家族で妹だから」
妹と聞いてスイレンは驚いて「妹なのですか!?いや、他の家庭なので私が口出しするのは違いますよね」かなり動揺していた。
「いやいや、血は繋がってないよ。出会って一緒に住んでだいたい一ヶ月ぐらいになるかな?姉バカなのかもしれないけど可愛いんだよねぇ。見てると小動物みたいで、不意に抱きしめたくなるし。何かをした後におねだりとして撫でて欲しい時なんて私のハートがっちり掴まれるしね」
あまりにも幸せオーラを出していたのかスイレンも微笑みを見せていて「フェリスさんを大切にされているのがよく分かります。だからこそディーナさんの事を信頼しているのでしょうね」
「そうかな?また帰ったら色々と話すね」「はい、是非聞かせてください」
と、話している間に遂に森に到着していた。
「ここが噂していた森ね、森なんて一ヶ月ぶりかな来るのは」「見た感じでは普通の森、"マリー"がいるとは思えませんね」
「ね。まぁ行ってみて分かるでしょ」「そうですね、行ってみましょう」
森の中に二人は入っていった。
森は鬱蒼としていて少し肌寒い。木々が多くて伸びきっているため太陽の陽射しもあまり入ってこない。薄暗い中道という道が無い中で森を進む二人。
「かなり年季が入ってますね。森の木がとても伸びていて手入れもされいないようですね。それに虫や動物の気配がありません、"マリー"が根城にしているからでしょうか?」
「可能性は充分にありえるね、この森前に行った森と明らかに違うのは・・・見て、あれを」
ある木を指さしたディーナ。スイレンもその木を見ると明らかに動物の仕業ではない複数の爪痕があった。
「この爪痕、"マリー"ですか?」「多分ね、この形状からして動物型、熊のような"マリー"の可能性が高いわね」
「熊の"マリー"、私も動物型とはよく戦いますが熊型の"マリー"が一国の驚異になるとは思えません」
動物型の"マリー"は凶暴で一人の人では対処は難しいが群れを作ることは基本的にはしない。そのため複数人でかかれば何とかなる場合もある。ましてや一つの国を攻め落とすことなんて一匹の動物型の"マリー"ではかなり厳しいのである。
「ヴァレアの情報では動物型や人型、そして異形型もいるって聞いているけど・・・あれ?スイレン見て」
「えっ、これは」
二人の目に入ったのは黒い体毛をした熊のような"マリー"だった。しかし"マリー"は既に息絶えていて、倒れ込んでいた。
「どうして"マリー"が倒れて、それに傷跡からして他の"マリー"によって倒されています。木の爪痕はこの"マリー"が正体でしょう」
「"マリー"が"マリー"を襲うね。う~ん珍しくはないけど襲われた理由は分からないわね。この"マリー"が森を乗っ取ろうとして他の"マリー"に襲われたのか、もしかして"マリー"同士で派閥争いでもあるのか。今は決定づけることは出来ないわね」
「一度戻った方がいいかもしれません。これは報告しないと」「そうね、とりあえず戻って・・・ッ!!」
突然二人の後ろから謎の巨大な頭部が二人を噛み付こうとした。咄嗟に二人は避けた。頭部は爪痕の木を噛み付きそのまま木を折り進んで行った。
体は毛虫のように長く五つの体節で構成されていて、頭部は大きな口で牙に覆い尽くされており、顔のほとんどが口だった。
木を放り捨てて二人の前に獣のような鳴き声で威嚇のようなことをした。
ディーナは一丁の銃を取り出してその物体に銃を構えた。スイレンも折り畳んで腰に備えていた両剣を取り出して、戦闘態勢になった。
「いきなり大型"マリー"討伐戦ね、それに人型でも動物型でも無く異形型、スイレン行ける?」
「もちろんです、ディーナさんここを凌ぎましょう!」