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カエデ  作者: アザレア
過去の崩壊
79/86

弟子の仇を討つため、ディーナではなくヴァレアが"マリー"の前に立ちはだかった。

最早怒りで見境なく襲いかかる"マリー"はヴァレアに一直線に向かいディーナに浴びせた一撃を繰り出した。


ヴァレアは"マリー"の拳を受け止めるのではなく一本の氷翔剣を創り出し飛ばした。"マリー"に当てるのではなく"マリー"を通り過ぎて行く氷翔剣だったが、"マリー"の拳が当たる直前に消え失せた。


突如目の前から消えた人間に少しだけ驚く"マリー"。ヴァレアは飛ばした氷翔剣に飛び"マリー"背後に立った。反撃する程の近さではなく少し"マリー"との距離はあった。


人間の気配に気づいた"マリー"はすぐさま振り返ると、ヴァレアは左手で指を鳴らした。

するとヴァレアの足元から氷が張りめぐっていく。"マリー"の足元にも氷が張りめぐり警戒する"マリー"だが"マリー"が凍ることはなくさらに地面が凍りついていく。

かなりの範囲が凍りつくと、氷はどんどんとドーム型に形成されていき、ついにはヴァレアと"マリー"以外入ることの出来ない氷の帳が出来てしまい完全に一騎打ち状態にした。


だが"マリー"はこの帳を気にもしてなかった。

振り返り鋭い牙を剥き出しにし飢餓状態の獣が獲物を捕らえるが如く息を荒くし瞳孔は開ききりディーナによる怒りと邪魔をする怒りにより最早理性すらも無い。

恐ろしい形相だがヴァレアは臆することは無かった。


"マリー"は雄叫びを上げた後に右手を上げ拳を震わせると拳が神々しく光輝き始めた。ディーナを葬ろうとした"マリー"の全力全開の一撃をヴァレアに繰り出そうとしていた。光が縮小していき拳に光が凝縮され、ヴァレアに猛スピードで走り出し絶叫上げながらヴァレアに拳を繰り出した。


まともに当たれば命は無い。だがヴァレアは避けようとはせずに右腕を振り払うような動作をするとヴァレアの上空から巨大な氷翔剣が降り立った。氷翔剣はヴァレアの等身程の大きさをしておりヴァレアを守るように地面に突き刺さった。


"マリー"の勢いは止まらずにそのまま氷翔剣をぶち破りヴァレアに拳を浴びせ……ることは出来なかった。氷翔剣は砕け散ってしまったが、当たった拳はピタリと止まり拳はどんどんと凍りついていく。理性が無かった"マリー"だが凍りつく拳を見た瞬間に正気に戻り「な、なんだこれは!?」と、後ずさりしながら困惑を隠せなかった。


拳が凍りつくと次は右手へ。右手が凍りつき右腕は侵食されていき肘まで凍りついていく。

全霊の一撃の反動なのか力が入らずに呆然に自分の腕が凍りつく様を見るしかなかった。


ついには右腕が右肩まで侵食され完全凍りついた瞬間を見逃さなかったヴァレアは通常の氷翔剣を"マリー"の右肩の上空まで飛ばした。

ヴァレアはその場から消えた瞬間に氷翔剣があった上空まで移動しており、空中で刀のヒメの柄を握り急降下すると同時に一気に抜刀し"マリー"の右腕諸共斬り落とした。


地上に降り立ったヴァレアは刀を血払いの動作をした後に納刀した。

斬られた箇所を左手で抑える"マリー"だが少し赤みを帯びた黒い血を流す。完全に正気を取り戻した"マリー"だがヴァレアの実力を体感した瞬間に脳裏には初めて感じる恐怖が浮かぶ上がっていた。


「この人間、なんだ?我の腕が、簡単に斬り落とされた?」自分に起こった事がまだ実感出来ない"マリー"。人間に負ける感情なんて無いと思っていたが今は目の前に立つ人間から逃げ出したい気持ちだった。


だが"マリー"は瞬時に心を切り替え「貴様、卑怯だと思わないのか?我はこの力一つで貴様に挑んでいると言うのに貴様はそんな小細工の刀を使っているんだぞ。我に挑むのなら正々堂々己の力だけで来るがいい」斬り落とされたのは刀に何か細工していると考えた"マリー"はヴァレアを挑発した。


少しでもヴァレアの力を無くさせるためにも刀のヒメを無効化させたい"マリー"。"マリー"の挑発にヴァレアは左手に持つヒメをじっと見つめた後に突然ヒメを凍らせ始めた。


驚く表情を浮かべる"マリー"。ヒメの全身を凍りつかせたヴァレアはヒメを上空へと投げ捨てた。

無防備となったヴァレアに不気味な笑みを浮かべた後に"マリー"抑えていた左手を離したと同時にヴァレアに突っ込んでいく。


「馬鹿め!自らの死因を作るとはな!!」左拳でストレートパンチを繰り出す"マリー"。ヴァレアは繰り出される"マリー"のパンチをいとも簡単に避け、がら空きとなった"マリー"の腹部に今度はヴァレアがストレートパンチを繰り出した。


ヴァレアのパンチは"マリー"の腹部に直撃した。その威力は"マリー"の想像を絶する威力の高さだった。息も出来ない"マリー"は吹っ飛んでいき氷の帳に激闘した。激突した氷の帳は全体にヒビが入った。


赤みを帯びた黒い血を口から流す"マリー"はへたれこんでしまいはるか先にいるヴァレアを見た。

ヴァレアは殴った手を振り払う動作をした後に「どうした、お前の望み通りだが?」ヴァレアの両手には氷の籠手、両足には氷の具足を自らの属性で生成していた。


ヴァレアは切り落とした"マリー"の氷漬けとなっている右腕の近くに行き、"マリー"に向かって蹴り飛ばした。

豪速球をも超えるスピードで"マリー"に向かっていく自分の腕だがまだ立ち上がることの出来ない"マリー"はニヤけた。


"マリー"の目の前まで腕は来たが"マリー"は腕を掴み馬鹿力によりヴァレアの氷を砕け散り、切り落とした箇所に右腕を近づけると接合するように"マリー"の右腕はくっつき機能した。


手を広げては閉ざす動作をした後に立ち上がった"マリー"は「馬鹿なヤツだな。貴様ら下級生物とは違うんだ、我はこの程度であれば接合出来るんだ。右腕さえあれば貴様など……」"マリー"の能力の一つかは分からないが短期間であれば切り飛ばされた部位を接合出来ることが可能だというのが判明した。


力を取り戻した"マリー"は驚いている表情を浮かべているであろうヴァレアを見たがそこにはヴァレアの姿はなかった。


「ヤツめどこに……っ!」"マリー"は直感的に上空を見上げるとヴァレアが上空から空中前転を繰り返しながら右足を上げ"マリー"に踵落としを繰り出し脳天をかち割ろうとしていた。

"マリー"は本来であれば自分に近づき攻撃を仕掛ける相手に避けるなんて考えはせずに逆に迎え撃つ思考になる。


だが"マリー"は前方に飛び込みヴァレアの踵落としを避けた。そのまま地面に叩きつけた瞬間、叩きつけた地面は割れ周りもヒビに覆われた。


もし受け止めていれば恐らくは押し切られていたと悟った"マリー"。ヴァレアは避けた"マリー"を一点に睨みつける。冷たい視線、誰しもが凍りつく目を"マリー"にだけ見せつける。


今まで会ってきた人間とは比べるまでもない程の実力の高さと属性の強さ。

ディーナも相当な実力者ではあったが今目の前にいる人間はそれ以上の圧倒的な強者。


恐怖を感じるがそれでも人間、下級生物には変わりない。"マリー"は両手を神々しく光を輝き始めた光を凝縮させ拳に込めた。

「この人間とは戦い続けるのは我であろうと少し骨が折れる。ならば一息で決めれば済む話だ。見せてやろう、我の最上の一撃を!」"マリー"は早期決着を臨もうと今度は両手で殴りかかった。


「さっきの氷の剣を出してみろ、剣諸共砕けさせてやろう!」片手では凍りついてしまうが両手なら仮に氷翔剣で防がれようともヴァレアまで届くと判断し両手で攻撃を繰り出した。


今回もヴァレアは避けようとはせずに拳を一点に見つめていた。あまりにも冷静過ぎるヴァレアに違和感があった。

「何故だ、何故こいつは何も……」この時"マリー"はヴァレアではなく目を左に逸らした。その目に映ったのは高速で飛んできていた氷翔剣だった。


「我の腕を切り落とした際もあの氷の剣が……」その時"マリー"は分かった。ヴァレアは剣がある場所なら何処にでも飛べると。

それが分かった"マリー"だが既に氷翔剣がある空中にはヴァレアが右足を振りかぶり顔を蹴ろうとしていた。


"マリー"は咄嗟に気がつきヴァレアの蹴りを避けようと身体を動かそうとしたが突然身体にとてつもない重量がかかったかのような重たさがのしかかった。


理解が出来ない"マリー"。何が起こったのかも分からない。"マリー"はヴァレアに対しての怒りではなく、感じていた恐怖でもなく、今ある感情はただの無だけだった。


ヴァレアは振りかぶり"マリー"の顔を蹴った。この時点で既に決着はついていた。"マリー"は戦闘を継続することは出来ない程の威力だった。


だがヴァレアは氷翔剣を"マリー"の足元に突き刺しており瞬時に"マリー"の足元に降り立ち"マリー"の腹部を右手のストレートで殴った。

間髪入れずにヴァレアは勢いよく飛び上がり、"マリー"の顎に宙返りをしながら蹴り上げた。


ヴァレアよりも巨体の"マリー"だがはるか上空へと飛ばされる"マリー"。上空に飛ばされた"マリー"のさらに上には氷翔剣が一本。氷翔剣に届くまで飛ばされた"マリー"は氷翔剣に飛んだヴァレアが右足を上げ当たらなかった踵落としを今度は脳天ではなかったが"マリー"の肩辺りに打ち下ろした。


上空から次は地上へと真っ逆さまに堕ちていく"マリー"。ボロ雑巾のようにボロボロになっている"マリー"だが堕ちる地上には氷翔剣が突き刺さっており"マリー"が堕ちてくる前にヴァレアは地上に降り立っており、"マリー"が地上に堕ちる瞬間に横回転をしながら飛び足底で"マリー"を蹴り吹き飛ばした。


吹き飛ばした"マリー"はそのままいけば氷の帳に激突するがヴァレアは地上に足を着けた瞬間に右手を上げた。右手を上げると吹き飛ばされている"マリー"の上から巨体な氷翔剣が出現した。"マリー"程の巨大な氷翔剣が勢いよく降り"マリー"の胸部辺りに突き刺さった。


地上に氷翔剣と共に落ちた"マリー"。虚ろな目は空を見れば無数に広がる氷翔剣だった。右手を上げていたヴァレアは静かに右手を下ろすと氷翔剣も呼応するように一本ずつ落ちていき氷翔剣の雨が"マリー"を襲った。氷翔剣は"マリー"に刺さると同時に砕け、雨が止むと同時に巨大な氷翔剣も砕けた。


勝負にすらならなかった。ただ一方的にヴァレアが蹂躙しただけだった。"マリー"は全身から赤みを帯びた黒い血を流しその場は血溜まりになっていた。


だが"マリー"はまだ生きていた。だがこの生は不幸でしかない。息をする度に地獄のような苦しみが"マリー"に流れ込んでくる。

ヴァレアは"マリー"にトドメを刺すために歩き始めた。左手を掲げると凍りついたヒメが左手に落ちてきて鞘を掴んだ瞬間にヒメの氷は砕けた。


歩きながらヴァレアはこう語った。「属性による反動。それは属性を持つ生物であれば誰にでも起こり得る。それは"マリー"であってもだ。何度も本気の属性の力を扱えば反動は大きくなり身体の自由は効かなくなる。

本気を出したことの無いお前は分からなかった、自分の属性の欠点をな」

属性は確かに強力。だがその分の反動は誰しもに起こること。反動の効果はそれぞれではあるが一撃が重い属性を使えばその分のデメリットは起こってしまう。

ヴァレアが腕を蹴り飛ばしたのも敢えて"マリー"に本気を出させてその反動を促した作戦だった。一歩間違えればこちらが殺られてしまってもおかしくないがそれだけヴァレアには自信があったのだ。


徐々に"マリー"に近づいていくヴァレア。するとヴァレアが歩く足元の地面が凍っていきそれは"マリー"まで広がっていき"マリー"が足からゆっくりと凍っていく。

逃げることも反撃することも出来ない"マリー"はただ足から凍っていき全身に広がっていく様子を眺めるだけだった。

眺めるなんて生ぬるい感情だった。"マリー"にとっては今は地獄でしかなかった。


それでも"マリー"は最後の気力を振り絞り体だけ起こした。徐々に凍りついていく身体には見向きもせずにただヴァレアを一点に見て「貴様……人間、なのか?ありえない、人間が、高貴の我を殺すなど……」まだ現実を受け切ることが出来ずにいた。いや、間近に来る死を見ていたが人間にここまで一方的にやられる事をまだ受け入れられなかった。


ヴァレアは歩みを止めずに凍りついていく"マリー"に近づいていく。そして、"マリー"は胴体や腕も凍りつき後は顔だけになった瞬間に目の前まで来たヴァレアは鯉口を切った。


今から自分を殺す人間に「来るな……」と小さく呟いた後に少し離れているルムロにも響く程の怒号で「我に近寄るな人間がァ!!!!」


怒号も虚しくヴァレアは柄を握り「堕ちろ」ヒメを肉眼では見えない速さで抜刀し、鋒を鞘に納めた。納刀していく中でまだ顔だけ凍りついていない"マリー"は虚ろな表情で「下級、生物、がぁ……」ヴァレアにしか聞こえない声量だった。


そして納刀の音が聞こえた時に"マリー"の首は斬られた。首が斬られ落ちていく顔をヴァレアは手に触れると顔は瞬時に凍りつき、ドレアの想いを込めた拳を凍りついた顔に殴り"マリー"の顔は粉々に砕けた。


残された凍りついた身体もヴァレアはボールを思い切り蹴るように上空へと蹴り上げた。空を舞う"マリー"の身体は氷の帳に激突し身体も砕け散った。それと同時にひび割れていた氷の帳も全て割れた。


仇討ちが終わったヴァレアは氷の籠手と具足を溶かした。舞い散る氷の帳の破片。ヴァレアは破片を手の平に乗せた。呆然と破片を見るヴァレアは思い出していた。


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「お願いします!私を強くしてください!!この町を守れる、私の親友を守れる"リンドウ"になりたいんです!!!」依頼終わりに通りすがった町が"マリー"に襲われていたがヴァレアが瞬時に片付けた。町は半壊になっていたがなんとか守ることは出来た。

町を守り医療班を呼んだヴァレアは負傷者の手当てを急いでいる中、一人の少女が頭を下げ"リンドウ"になりたいと志願した。


「"リンドウ"は遊びじゃない。"マリー"を相手に命を懸けて戦うんだ。その危険は見て分かっただろ?」「それでもいいんです!私にはもうフクしかいない、あの子も両親を失った、もう守ってやれるのは私しかいない!だからお願いします、私を強くしてください!!」頭を上げる少女は真っ直ぐヴァレアの目を見る。


その目は見つめるヴァレアは大切な人を守るためならどんな厳しい訓練をも耐えられると直感で感じた。何より「もしかすると輝く原石かもしれんな」人を守る強さは何者のにも変えることは出来ない。少女に感じた意思を想ったヴァレアは「名前は?」「ドレアです、町とフクを守る"リンドウ"です!」


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ヴァレアは強くなりたいと願ったドレアを稽古を行っていたがその内容はかなり苛烈であり、容赦はせずにヴァレアはヒメを抜刀せずに鞘でドレアをぶっ飛ばしていた。


ボロボロになり倒れ伏せるドレア。だがヴァレアは倒れ伏せるドレアに「立てドレア。この程度で"リンドウ"になれると思うな」優しい言葉ではなくさらに厳しい訓練を続けるようだ。


ヴァレアに言われた通りに、震える手で立ち上がろうとするが「うっ……うぅ…」呻き声を上げながら何とか力を振り絞るが上手く立ち上がる事が出来ないドレア。


中々起き上がらないドレアに無理やりにでも起こそうとドレアに近づくヴァレア。

だがここで「やめてください!ドレアを殺す気ですか!?」ドレアの親友のフクがヴァレアの前に立ちはだかり手を広げてドレアを守った。


「こんなの稽古でもなんでもないです。ただヴァレアさんが嬲り殺しにしているだけじゃないですか、ドレアがこれ以上傷つくのなんて見たくない。ドレアだって……」親友が傷つき倒れる姿を見るのは辛くなり稽古を止めさせようとしているフク。


だがフクは後ろから肩に手を置かれた。振り返ったフクの目にはボロボロの状態のドレアが立ち上がっていた。


「ドレア……」決して大丈夫なんて言える状態ではないドレアだがフクの心配そうな顔を見て「フク、強くなるから待ってて」優しい笑みを浮かべた後にフクを通り過ぎてヴァレアの前に立って「もう一度、お願いします!」


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厳しい稽古を耐え抜いたドレアは見事ヴァレアから直々に"リンドウ"の証明書を渡された。

それ以降、ドレアは"リンドウ"として活躍を広げ続け町を守る"リンドウ"からさらに名を挙げ個人的な依頼も来るようになり遂には大型"マリー"を単身で討伐出来るほど強くなっていた。


"リンドウ"となってから二年が過ぎヴァレアはドレアの様子を見に町に赴いた。

ヴァレアを見かけたドレアはすぐにヴァレアの元に行き「ヴァレアさん!どうですか私の力は、"マリー"なんてもう目でもないですよ!」自分の成長を伝えるドレア。


「あまり調子に乗るな。"マリー"は多種多様、これからどんな"マリー"が来るか分からないんだ」明らかに調子に乗っているドレアに気を引き締めるように言った。

それは後からドレアを追ってきたフクも「そうだよ、あんまり無茶したら本当に大怪我を追っちゃうよ」ドレアの身を心配するフク。


「二人共大袈裟だって。私だって強くなってるんだから大丈夫。本当に危なかったらヴァレアさんと一緒に戦うよ」そう言ってヴァレアの方を見るドレア。

調子のいいことを言うドレアにヴァレアは少し笑みを浮かべながらため息をつき「はぁ、全く。その様子ならもう大丈夫そうだな」そう言ってヴァレアはドレアから振り返り歩き始めた。


「もう行くんですか?せっかく会えたのに……」少しだけ寂しそうな顔を浮かべるドレア。「私も暇じゃないからな、また来るさ。だが、その時には私から二つ名を貰える時かもな」このまま実力を上げていけばいずれは二つ名の称号を与えられると考えていた。


ドレアは落ち込みから一気に顔が明るくなり「ヴァレアさん!見ててくださいね、いつか隣に立つ私の姿を!」希望に溢れた顔を振り返り見たヴァレアは「楽しみにしてるさ」微笑みを混じりながら振り返りその場を去った。


これがドレアとの最後の会話になるとは思っていなかったが。


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ドレアとの思い出を浮かべ、目を閉じ破片を優しく握った。握った手を胸に当て天国にいるドレアとフクに「ドレア、"リンドウ"お疲れ様。ゆっくり休んでくれ、そっちに来たフクと一緒に。……またな」

ヴァレアはドレアに労いと別れの言葉を告げた。ヴァレアは目を開け手を開け破片を宙に飛ばした。落ちていくはずの破片だったが宙を飛んでいった。まるで別れを告げ、天に返っていく二人の親友のように。


振り返り"マリー"討伐を報告しようとルムロに歩を進めたヴァレア。だが歩を進める中でふと一言呟いた。

「……隣にいるお前を、見たかった」その頬には一縷の涙が零れていた。


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ディーナ達は王国に入りヴァレアの帰りを待っていた。

自由に部屋を使っていいと言われたディーナの部屋でフェリスとナデシコと共に待っていた。


任せたのは良いものの恐らくはあの"マリー"はヴァレアが言っていた上位種"カレン"。自分ですら手に余る"マリー"を一人で討伐を赴いた事にソワソワを隠せずにいた。


「ヴァレア大丈夫だよね……?」不安そうな表情を浮かべるディーナにフェリスも不安気な気持ちになる。

そんなディーナと比べてナデシコは普段と変わらずに読書に耽っていた。


ディーナはそんなナデシコに苦笑いを浮かべ「いつも通りだね貴方は。心配はしないの?」話しかけられたナデシコは本は閉じずに「私達が不安になっても仕方ない。彼女は"最強のリンドウ"なんだろ?だったら迎える準備をしておいた方がいい。それに君の見てきたヴァレア君は"マリー"に負けるのかい?」ナデシコの言葉にディーナの不安な気持ちは少し晴れたような気がした。ディーナは思い出した、ヴァレアは自分よりも強いということを。


すると、部屋の扉が開いた。一斉に扉の方を見ると無傷のヴァレアが戻ってきた。

無事に戻ってきた事でホッと一安心するディーナ。ディーナの不安の気持ちが消えたことでこちらも一安心するフェリス。


ヴァレアがディーナに近づき「終わったぞ」討伐の報告をした。「ヴァレアありがとう。その、私……」ヴァレアの顔を見るとフクの事を思い出した後ろめたい感情に襲われてしまう。


「お前が気負う必要は無い。私達は"リンドウ"なんだ、何時どこで命を落とすかは分からない。だからこそ、その意志を受け継いで行くんだ、"マリー"が居なくなる世界を作るまで」後悔は終わらせたヴァレアは次の段階へと気持ちを進ませた。悲劇を増やさないためにも。


ディーナは目線を下げて目を閉じ、フクの後悔を心に刻みヴァレアと目を合わせて「うん。もう迷わないよ。犠牲者を出したくないから、あんな子をこれ以上生み出さないためにも、もっと強くなるよ」決意と覚悟を持ちヴァレアに心のままに伝えた。


「お互い強くなるぞ」ディーナとヴァレアは二人共微笑んだ。


「それで話があるって言ってたけどなんだったの?」バタバタしていたがヴァレアが何か話すことがあると聞いていたディーナ。


「……この地域ではないが、また超大型"マリー"が現れた。手を貸してくれ、お前の力が必要なんだ」ディーナ、そしてナデシコを驚いていた。新たなる戦いの幕開けだった。


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今日は、おねえちゃんがおちこんでいた。おねえちゃんがおちこんでいるのはフェリスとってもかなしかった。でもナデシコさんのおかげでおねえちゃんは元気になった。

おねえちゃんはいっつもやさしくてフェリスに元気をくれる。だから今度はフェリスがおねえちゃんを元気にしていきたいと思った。

7月4日


七章「過去の崩壊」完

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