決着の行方
自身の肩に属性弾を撃ち込んだディーナだったが、突如として”マリー”をも吹き飛ばす力をと手に入れた。”マリー”は瓦礫の山から体を起き上がらせて「貴様、なんだその力は!我に匹敵する力を手にした言うのか!?」純粋な力負けをした”マリー”はまだディーナの力が信じることが出来ずにディーナに説いた。
ディーナは”マリー”の質問に対して「自分からタネ言うはずないでしょ?自分で戦いながら分かればいいじゃん」”マリー”に属性を明かすことはしなかった。
既に”マリー”の余裕の態度は消え失せ、ディーナの増した力に警戒を強めていた。
”マリー”は飛び上がりコロシアムのど真ん中に立った。ディーナは振り返り”マリー”を見ると”マリー”も構えを取り始め完全にやる気になり「来るがいい、完膚なきまで叩きのめしてやろう。そして貴様の持つ銃を我が宝物庫に納めようではないか」ディーナに対して本気で挑もうとしていた。
本気の”マリー”にディーナも「私の銃をねぇ。やれるものならやってみたら?私もひねり潰してあげるわよ」”マリー”の決闘に乗るつもりだった。
ディーナはグロリオサの火力を上げ、”マリー”に突っ込んで行った。”マリー”は銃の時とは戦うスタイルを変えているディーナがどう動くか分からないため下手に動くことはせずに突っ込んでくるディーナの動きを見ることに。
ディーナは瞬く間に”マリー”の懐に潜り込みがら空きになっている腹に右ストレートを繰り出した。だが”マリー”の反射速度は懐に潜り込んだディーナよりも速く見下ろすディーナを叩き潰そうと腕を振り下ろした。
ディーナの方が速く動いたのにも関わらずに反射神経や振り下ろす速度は”マリー”の方が速く、腹にストレートが届く前に”マリー”の叩き潰す方が早い。
だがそれを想定していたディーナは足を踏み込み、振り下ろす"マリー"の拳を両手をかざし受け止めた。
受け止めたディーナは汗だくになり全集中を両手に捧げなければ押し潰されてしまう。
「なるほど…やっぱ本気じゃなかったのね。痛かったけど属性弾を撃って正解だったようね」"マリー"の力は明らかに強化されていた。今まで本気で戦っていなかった事も分かり全力を持ってしてディーナを叩き潰すつもりだった。
「でもね、全力だったら私も一緒よ!」ディーナも両腕に力を込めて"マリー"の拳を弾き返した。
「何!?」自らの一撃を跳ね除けられたことに驚いた"マリー"。間髪入れずディーナは飛び上がり自分の体を捻り、回転させながらディーナの顔面付近まで飛び上がった。
「ここだ!」弾き返された"マリー"はその反動でまだ自由には動かせなかった。その隙にディーナは顔面よりも少し高く飛び足を上げ"マリー"の脳天にかかと落としを繰り出した。
よろめく"マリー"に「今だ!」"マリー"が顔を下に向けている間に勝負をつけようとディーナは懐からフォーリーを取り出そうとした。
だが見えていないはずの"マリー"はディーナの体をその巨大な手で掴んだ。「しまった、油断した」少しの気の緩みで掴まれてしまった。
"マリー"は掴んだディーナを勢いよく投げ飛ばした。コロシアムの壁に激突した。身体能力が上がっている影響か先程までのダメージは負っていないが壁にめり込み少しだけ自由を奪われた。
「急いで抜け出さないと」めり込んだ体を抜け出そうとするディーナだが目の前には拳を地面に刷らせながら駆けてくる”マリー”の姿があった。鋭い刃でも固い地面を刷らせることなど出来ない。だが”マリー”は地面を抉らせながら突っ込んで来る。
「どれだけ力があるのよ」ここまで来れば”マリー”の力に少し引き気味のディーナ。
「終わりだ!人間風情がァ!!」感情的になる”マリー”はディーナに地を抉る拳でそのままアッパーを繰り出そうとしていた。壁から抜け出したディーナはアッパーが来る拳を受け止めようと手を開けた。
だがその力はディーナの想像を遥かに超えていた。アッパーはディーナの手を軽く吹き飛ばし腹に直接拳を入れた。
「がはッ!」身体強化されている身体でも”マリー”の力に腹に入っているもの全て吐き出しそうになるほどのとてつもない威力だった。
さらに追撃と言わんばかりにディーナの腹部にストレートを入れる”マリー”。その衝撃により壁が壊れさらに奥まで吹っ飛んでいくディーナ。
「どうだ人間、我に勝ろうなど…」勝ち筋が見えてきた”マリー”だと思っていたが、ディーナが吹っ飛んだ壁から大きな岩が”マリー”に飛んできた。等身が高い”マリー”ほどの大きさの岩だが”マリー”は近くまで来た岩を軽く叩くといとも簡単に砕け散った。
だが、岩を砕いたその先には既に”マリー”の顔面まで飛び上がり殴り掛かろうとしていたディーナがいた。”マリー”の瞬発力でも避けられないほど近くまでいたディーナはその勢いのまま”マリー”の顔面を殴り飛ばした。
まともに喰らったディーナの拳に立つことが出来なかった”マリー”はここで初めて膝をついた。着地したディーナは傷だらけになりながらも確かな手ごたえにニヤリと笑い「ようやくひれ伏したわね。もう少しで吐くところだったわ危ない危ない」”マリー”の一撃は確かに効いたディーナだが”マリー”にそれ以上のダメージを与えたことに多少は余裕を出していた。
「貴様、下級生物如きが我に膝をつけさせるとはな。癪だが認めるしかないか、貴様は人間の中でも強者であることを」今まで見下すことしかしてこなかった”マリー”だが、自身に傷をつけ膝をつけさせたディーナを強者と認めた。
"マリー"は立ち上がるがまだ膝は少し震えていた。「やはりあれは自傷ではなく貴様の力を増幅させる銃弾だったのどな。全ての属性を扱える貴様だからこその銃弾、私と同類の闇属性と言ったところか」"マリー"は冷静にディーナの力を分析した。その結果、肩に撃った銃弾は属性弾であったことが分かりそれも自分と同じ身体強化系統の闇属性であることを。
「まぁ流石に分かるわよね。そうよ、私の闇属性は身体能力の向上。常人とはかけ離れた力を有する事が出来るのよ」今までディーナがほとんど使ってこなかった闇属性の正体は自己強化の属性弾であり人間とは思えない程の全てのステータスを向上させる。
「何故我との戦いで初めから使わなかった、そうしておけばもっと有利になったはずだが?」「嫌よ。闇属性は他の属性弾と違って自分に撃ち込まないと効果を発揮しない。つまりは私が自分を自分で撃たないといけないのよ?銃弾って痛いのよ、自傷なんて嫌に決まってるわ」
ここまでディーナが強力な闇属性を扱ってこなかった理由、それは自分に属性弾を撃ち込まないといけないためであった。ローゼンの威力は他の銃とは比べられないぐらいの威力になっている。そんな銃を体のどこでもいいが撃つのはディーナでもはばかられる。
だが今目の前にいる"マリー"に手を抜く事は出来ない。ディーナもある種切り札とも言える属性弾を使ったのだ。
「さて、そろそろ決着をつけよっか。私は仇討ちでもあるからね」グロリオサの火力を上げて早々に決着をつけようとしていた。だがその内心は「時間が無い。一気に決めないといけない」"マリー"に気づかれないようにではあるが焦りを見せていた。
「いいだろう、我の一撃を与えてやろう。光栄に思うがいい。我が最大限の力を見せるのは貴様が初めてだ」
強者と認めたディーナに"マリー"も最大限の一撃を見せようとしていた。"マリー"は右手を上げ拳を震わせた。集中力を高めていると、"マリー"右手は神々しく光輝いているように見えた。
「発光しているのね。まともに喰らえば私の命も無いわね。でもあれを止めなければ私の勝ちも無い。いいわよ、受けてやろうじゃないの」逃げ回った所で勝ち目は無い事を知っていたディーナは"マリー"の一撃を受け止めようとしていた。
光り輝いていた右手はどんどんと光が収縮していき完全に無くなると"マリー"は右手を下ろしディーナに向けて構え「命運尽きし貴様の墓標はここだァ!!!」"マリー"は最大の一撃を繰り出した。
「墓標は、お前の方だ」ディーナは懐からフォーリーを取り出した。フォーリーの照準は無防備になる"マリー"の胴体を捉えていた。
「Check」お決まりの台詞を口にしたディーナはトリガーを引くと二発の雷の弾丸が放たれた。フォーリーの属性弾は普通の属性弾ではなく大型"マリー"ですら一撃で仕留められる超強力な属性弾だ。
それは例に漏れず、ディーナに拳が当たる前に"マリー"の胴体に直撃した。複数の落雷が頭上に降り注ぐような電撃が襲いかかり"マリー"は断末魔を上げる。
「グアアアアァァァァッ!きっ、貴様ァッ!!」ここで銃を使われるのは想定外だった"マリー"は避ける事は出来なかった。
電撃により動くことが出来ない"マリー"に「私って肉弾戦よりもこっちの方が向いてるのよ」"マリー"が完全に隙を見せるまでフォーリーを温存していた。好機があるのならば撃つ準備は出来ていた、だが決定打になるには"マリー"が銃の存在を忘れた時だった。その瞬間を狙いディーナはフォーリーを撃ち見事成功した。
「さて、これはお前に殺られた皆の分よ。噛み締めて喰らいなさい」ディーナはグロリオサの火力を最大限に上げ今もてる力を全て引き出し"マリー"の顔面まで飛び、ディーナの渾身の一撃を"マリー"に喰らわせた。
「ガハッ…」"マリー"は吹っ飛んでいき壁に激突した。土煙が舞い、姿は見えなかったがこの属性弾と一撃には"マリー"にとっても相当なダメージが入り、戦闘不能になってもおかしくはない。
そしてトドメとばかりに掌に二発の属性弾を生成し、フォーリーのシリンダーに装填し土煙の方角に銃口を向けた。
「これで仇討ちもおしまい。天国のドレアちゃんに謝って地獄に堕ちてね、Checkma……ッ!」フォーリーのトリガーを引く前にディーナの目の飛び込んだのは猛スピードで叫びながら突っ込んで来る"マリー"の姿だった。"マリー"は血まみれになりながらもディーナを殺そうとする執念により体を動かしていた。
フォーリーの弾速では撃つ前に"マリー"の一撃を喰らってしまう。ディーナは咄嗟にフォーリーを上空へ投げ、ローゼンを取り出し"マリー"に撃った。炎の属性弾であり、狙った部分は"マリー"の左目であった。
属性弾は見事"マリー"の左目に命中したがそれでも"マリー"の拳は止まることなくディーナに向かっていく、避けることは不可能と判断したディーナは両手を突き出した。
"マリー"の拳はディーナを地面に叩きつけた。まともに"マリー"の拳に当たってしまったディーナは倒れ伏せてしまった。だが"マリー"も追い打ちはせずに左目を抑えた。
「下級生物がァ!我の目を潰すなど、はぁはぁ、小賢しい、真似を!」冷静さを失い意識も朦朧としていた"マリー"は既にディーナを倒せる力は残っていなかった。
倒れ伏せていたディーナだが、両手で防いだおかげもあり致命傷までにはいっておらず目を開け体を起き上がらせた。だがディーナも消耗し、追い打ちをかけるのは不可能だった。
「貴様の顔は覚えたぞ、痕跡を辿り必ず殺してやる、少ない余生をせいぜい楽しむがよい!」"マリー"はよろめく体を何とか動かし、コロシアムの客席まで飛び自分達が落ちてきた穴に飛び込みその場から去っていった。
ディーナも息を荒くし闇属性を撃ち込んだ左肩を手で抑えた。少しその場を動かずにいると上空へ投げ飛ばしたフォーリーが降ってきて、抑えていた手でフォーリーを掴んだ。「お帰り」優しく微笑みを見せた後にフォーリーを懐に収めた。
「討伐出来なかったなんていつぶりかしら。でもあのまま戦い続ければ私も相当厳しい戦いになってた」すると、突如として左肩から血が流れ始めた。
「闇属性は効果の持続がそこまで長い訳じゃなかったから早めに決着をつけなきゃいけなかったけど、あの"マリー"相手に早期決着は難しかったかな。でも撃たないと私は今頃…」ディーナが焦りを感じていたのは闇属性の効果切れが間近だったためである。
ディーナの闇属性は自身に撃ち込めば圧倒的なフィジカルを有する事が出来るが、反面効果時間は五分程度のものでありその効果が切れれば属性弾で撃ち込んだ銃弾のダメージが入り状況次第では一気に不利になってしまう。
強力な属性弾であるがそのデメリットも大きなものでもある。
「因縁は持たれちゃったとは言え私は生きてる。あいつもここに滞在することは考えづらいし、ドレアちゃんの宝石を持って早めに行かないと」充分な休息をとったディーナは立ち上がり、ローゼンの属性弾を足元に撃つと風が纏わりそのまま浮かび上がり落ちてきた穴に入っていった。
宝石の山まで戻ってきたディーナは風が消え地上に降りると辺りを見渡し"マリー"がいない事を確認した。
確実いないと確信を持ったディーナはドレアの宝石を掴んだ。「これがドレアちゃんの宝石。待っててフクちゃん、今から帰るから」目的を果たしたディーナはその場を後にした。
だが帰る前にディーナは宝石の山に向かいローゼンの銃口を向け属性弾を撃つと炎が宝石を覆った。「私に出来るのはこれぐらい。"マリー"の物になるぐらいなら消し炭にした方が…ごめんね」持ち主には返せない。だがこうした方が天国にいる皆に送れる。それでも思い出を消す事になる、ディーナは一言謝りの言葉を送った。
「歯切れの悪い結果になっちゃったけど一応は依頼は完了って所かな」"マリー"討伐は出来なかったが目的は果たしたディーナの依頼は達成した。




