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カエデ  作者: アザレア
王都の近衛
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不穏の兆し

湖の"マリー"を討伐した事により臨戦態勢を解除したディーナはすっかりと馴染んだ相棒の白の拳銃ローゼンを何度か指先でクルクルと回した後に懐に戻した。

同様にスイレンも一息ついて両剣のロータスを背中に収めた。


ハオウは討伐した"マリー"の死体に近づき息が無いことを確認すると二人の元に行き「討伐を確認した。任務完了だ、よくやってくれた」ハオウはずっと険しい表情だったがフィグの安全が確保した事によって柔らかな表情になり任務完了を終えた二人と同じく少しほくそ笑んだ。


「当然でしょ?二つ名"リンドウ"として私達は勝たないといけなかったらね」「そうですね。この称号を頂いた限り不甲斐ない真似はもう出来ませんから」


「スイレン、お前の活躍は天晴れだ。今回お前に依頼を任せた私の目に間違いはなかった」国を守護する近衛大将、ディーナの元上官に褒められたスイレンは「ありがとうございます。そう言ってもらって光栄です」嬉しそうに笑った。


「ハオウもあのタイミングは完璧だったね。やっぱり貴方の得意分野である奇襲、全く敵に察知されずに潜り込み対応出来ない相手に一方的に攻め込む。前よりも制度が上がったんじゃない?私も全然気づかなかったもん」

頭のキレるハオウの戦術で最も得意とするのは、奇襲。相手に悟られずに忍び込み弱点を見抜き対応する。戦場を駆け回った歴戦の軍人の経験から出来る高度な戦術である。


「この五年間鍛錬をしていたのはお前だけではない。あの時よりも確実に私は強くなっている。"マリー"に遅れを取る訳にはいかない。これがその結果だ」

立場は変わったがそれでも守る存在がいる。鍛錬を怠る理由はハオウには無かった。


「そう、やっぱり貴方は変わっていなくてなんだか安心したわ」昔のまま強さを求めるハオウに少し安心感を持ったディーナ。


「どうやら終わったようだねぇ」"マリー"討伐を終えたと分かったナデシコがフェリスを連れてディーナ達の元に歩いて来た。


フェリスはディーナに駆け寄り「お姉ちゃん、お疲れ様」ようやく依頼を終えたディーナに労いの言葉を送ったフェリス。

「ありがとうフェリス。でも駄目だよ"マリー"が近くにいるのに近づいてきちゃ。どんな危険が潜んでるか分からないんだから」「ごめん、けれどお姉ちゃんをもっと近くで応援したくて」「気持ちは分かるけどね…」


「まぁ責めないであげてくれ。行かせてあげたのは私が許可を出したからだ。君を心配してここまで来たんだ、彼女の安全を私が保証していたからこそ許可を出した。何か問題でもあるのかい?」絶対的な自信があったナデシコにディーナは「貴方が言いって言ったならいいけど、でもありがとね。私のためにここまで来てくれて」と言ってフェリスの頭を撫でた。

フェリスは笑顔を向けながら小動物のような可愛さをディーナに見せた。


「では、報告に向かうぞ。我が主であるアザミ様にお伝えしなくてはならない」と、言ってディーナ達から振り返り司令部の方へと向かうハオウ。

ハオウに続いてスイレンとナデシコも後を追った。「私達も行こっか」「うん!」二人は手を繋ぎながら向かった。


----------


司令部に到着した一同はアザミの部屋の前に来ていた。ハオウがノックをして「アザミ様、入ります」と、言って部屋の扉を開けたハオウ。部屋に入るとアザミは椅子に座りデスクに山のように置かれた書類に目を通し自分の名を書いていた。


「どうかしましたか、皆さん勢揃いで?」ハオウ達の方は向かずに書類を一目散に片付けるアザミ。「湖に住まう"マリー"を討伐致しました。これにてフィグの安全は再び確保されました」ハオウの言葉を耳にしたアザミは書き進める手を止めハオウ達に顔を向け「なんと、お早い事で。貴女方に依頼を任せたのは正解でしたようですね」椅子から立ち上がりディーナ達の目の前まで来たアザミ。


「この度は我が国を守って頂きありがとうございます。心より感謝します」アザミは元首ではあるが一人の依頼主として依頼を完了した"リンドウ"の二人に深々と頭を下げた。


「あ、頭を上げてください!私達はただ依頼をこなしただけですので」慌ただしくなるスイレンだがディーナは「頭を下げれる国長は少ないよ。それだけこの人が寛大な心を持った立派な人って言うのが分かるよ」

ディーナは"リンドウ"の立場上、国からの依頼を多数受けてきたが大抵の国長ら頭は下げずに報酬をただ受け渡すだけの国長や統率者を見てきた。自分の方が立場が上、守られて当然、"リンドウ"だから当たり前の仕事、数々の人の上に立つ人を見てきたが大抵はそんな事を言う人ばかりだった。

だからこそディーナはアザミの行動がどれだけ凄いことなのかが分かる。国を本当に想っている人だと分かるのだ。


頭を上げたアザミは「買いかぶり過ぎですよ。私はただの人間です、人間は助け合うもの。感謝をするのは当然ですよ」アザミはディーナに優しい微笑みを見せた。


「それではハオウ、今回の報酬を渡してください。見事な仕事の成果には相応しい返礼を、ですよ」ハオウは頷くと一度部屋から出てすぐに戻ってくると多額の報酬金の入った袋を手に持っていた。

「スイレン、此度な働きは見事なものだった。今後ともまた依頼を任せるかもしれん。その時はまたよろしく頼む」スイレンに報酬金を手渡した。

トントン拍子に話が進み少し戸惑いつつも報酬金を受け取ったスイレンは「あ、ありがとうございます。グラトと言う大きな国のお役に立てて嬉しいです。またいつでも呼んでください、微力ながらお力添えを出来ればと思います」初めての大国からの依頼を達成したスイレンは少し自信がつき、またグラトからの依頼が来れば迷わず受けることにした。


ハオウはもう一つの報酬金をディーナに手渡した。ディーナは受け取り「ありがとね」と言って中身も何も確認せずに懐に収めた。

その姿を見たハオウは少し満足気に微笑み「やはりもう金に執着は無いのだな」出会った時とは全く見違えたディーナ、そこには金を必要なまでに欲しがる姿は何一つ見えなかった。

「依頼の報酬だから受け取るけどね。私達も生活があるから。でもまぁ必要な分があれば充分かなって、多く持ちすぎても使い切れないからね」執着しても結局残るのは虚しさだけだった経験を知ったディーナは求める事はしなかった。


「改めて皆様、グラトの代表としてお礼を申し上げます。今後ともご贔屓をよろしくお願いします。また国が危機に見舞われればお力添えをお願い致しますね」手を前で組みながら優しい微笑みを見せるアザミ。

「是非、いつでも依頼を受けます!」「国が一大事になったら私も協力は惜しまないよ」二人の"リンドウ"も今後もグラトの救援要請に応えるようだ。

「頼もしいですね。ではまたお願いします」笑顔を絶やさなかったアザミに二人もつられて笑ってしまった。


「それではアザミ様、次の会談予定が入っております。彼女達とはここで別れを」「あらもうそんな時間でしたか。それでは皆さんまたどこかでお会いできたら嬉しいですね」と言ってディーナ達を通り過ぎ、部屋から出ていった。


ハオウもついて行こうと進み出したがその前にディーナの前に立ち止まり「ではなディーナ。達者でやれよ、もう部下の死は見たくもないからな」ハオウはディーナの肩に手を置いた。

ディーナはハオウに対し少し微笑んだ後に「私も、上司の死は見たくないよ。お互い死なない程度に頑張りましょ」軍を目の前で失った二人だからこそ、この発言が二人には出来るのであろう。


「…そうだな。"マリー"討伐の任を全うしろよ」ハオウもディーナに対して微笑んだ後にアザミの後を追って部屋から出た。


「この国もあの方々が元首を警護をしていれば、治安も全てが安心と言っていいでしょう」アザミやハオウの人柄に触れたスイレンはグラトはとても安心感がある国という認識を持った。


だがディーナはこのスイレンの発言には何も言わなかった。アザミに感じた違和感、あれは気のせいではなかった事を確信した。「ハオウ、本当にあの人大丈夫?」


その違和感を感じていたのはディーナだけではなく、一言も話さずに壁にもたれかかり腕を組んでいたナデシコもだった。依頼を達成したにもかかわらずどこか二人の暗い雰囲気にフェリスは「お姉ちゃん?ナデシコさん?」と、二人を心配そうな声で呼びかけた。


フェリスを不安な気持ちにさせてしまったディーナはフェリスの目線までしゃがんで「大丈夫だよフェリス。きっと私の隊長だった人は間違った道には進まないからね」ハオウがアザミにつく理由は間違いはない、そう信じることにしたディーナだった。


----------


同時刻、ルムロの王宮には玉座に座り足を組み王冠をクルクルと回しながら会談相手のどこかの国の使者と交渉を持ちかけられていたネルルの姿があった。


「我が国はルムロに勝るほどの軍事力があります!同盟を結べばどのような"マリー"に襲われようとも国に攻め込まれても協力すれば突破出来ます!王も貴女と面会がしたいと言っております、王がために我が国との同盟を求めます!」

必死に国のアピールをする使者だがネルルは使者を見下ろすように「軍事力?馬鹿げた事を言うんだな。その程度の国の誇示は五万と見てきたがいずれもルムロと同盟を結ぶに至らん。私は貴殿の国の軍に、興味は無い」ネルルは何も魅力に感じない国に一蹴した。


歯を食いしばる使者はここで「ではなぜあのエニーとは同盟を結んだのですか?あの国は未だに"マリー"に襲われた傷が癒えておらず復興の目処は立っていません。未来がどうなるかも分からない国と同盟は結んで我が国とは……っ!」

エニーと同盟を結んだことはすぐに世界中に広がった。エニーは一つの国ではあるが小さな国ではある。"マリー"に襲われ復興途中の国と同盟を結んだ事に世界中は波乱だった。あられも無い記事を書かれルムロの黒い噂は絶えなかった。


エニーとの同盟の件を口にした使者だったが、俯いてエニー対しての不満を伝えており顔を上げ時にはネルルは静かな怒りを見せていた。


「貴様、我が同盟国をバカにするのか?私はエニーを、タイムをこの目で見てきた。国を復興することに常に真っ直ぐで努力していた姿を目の当たりにした。何より彼女は国に住む国民の安全や暮らしを最優先にしている、国民の安全よりも王の事を優先する貴様がエニーを見下すなんて百年早いわ!

そもそも王自ら出向かずに私が直接足を運ぶ?それが同盟相手に対しての態度か?気分が悪い、私の機嫌がこれ以上変わらない内にルムロから立ち去れ。もしまだ同盟を求めると言うのなら、貴様の首を王に献上しようではないか」使者はネルルの目を見て一つ確信した。先の言葉は本気だと言うことが。


「ひぃ、し、失礼します」怯えきった表情で早足でその場から立ち去った使者。使者が出ていき少し時間を置いた後にクルクルと回していた王冠を頭に被り「……はぁ」ため息をつい。


「やっぱり疲れるなぁあの姿をするのは。けれど、これも皆のためしっかりしないと。でも感情的になるのはあんまりだったかな?ついあんな事言っちゃった」ディーナや信頼出来る人以外の前でしか見せない本来の性格に戻ったネルルはエニーがバカにされた事に怒って使者を怖がらせてしまったことに少し罪悪感を抱いていた。


すると、部屋に「ネルル様、お疲れ様でした」と言って一礼して入ってきたケイが来た。

「ケイ、もしかして私の声が聞こえた?」「あそこまで感情的になるなんて珍しいですね。余程タイム様の事を悪く言われたのがお気に障ったのですか?」

普段は会談中はとても冷静で自分のことをどれだけ言われようとも何も動じないネルル。だが同盟国の主が言われたのなら話は別である。


「当然でしょ。タイムが今どれだけ大変なのか、タイムに招待されてエニー赴いた時の事を覚えてる?」「もちろんです。復興作業中のエニー、タイム様は私達に気を遣いながらも四方八方に向かっては復興の手助けをしていました。国の長としてあそこまで自分で動く人は滅多にいません」

「そ、もちろん国長になってからまだ時間は経っていない。分からない事だらけの中でも懸命に色んなことを覚えて自ら行動する。

あの時タイムは私に言った。『ディーナさん達のおかげで国は助かりました。けれど国民の皆は深い心の傷を負っています。私は、母の意思を引き継いで少しでも皆の傷を癒してあげたいのです。完全に傷は癒せなくても、私が頑張れば笑顔になってくれる国民がいた。そんな人達のためにも一刻も早くエニーを復興しないといけないのです』

驚いたよ、母を亡くして深い傷を負っているのは自分もなのに感情を押し殺して国民に寄り添った。

彼女は、強い子よ。私の選択はきっと間違っていない。エニーは必ず強い国になる」


ネルルはタイムを高く評価していた。同盟相手になってから交流が増え国に招待してもらった際に見たエニーの現状、"マリー"に襲われた家や"マリー"により奪われた手や足、陰鬱な雰囲気が漂ってもおかしくない状況でも国民は笑顔だった。

それはひとえにタイムが国民の目線に立ち、寄り添い、自らが手助けを行っていることにより国長が努力する姿を見てきたからである。この国の長がタイムなら大丈夫、国民の大半がそう思い、タイムを信じている。どこか安心した国民達は笑顔を向けていたのだった。

たった一人でエニーをここまで持ち直したタイムを評価しないわけがなかった。


「だから許せなかった。努力する国をバカにするなんて、ちょっとした冗談のつもりで言ったけどあの人の発言次第では本当に実行に移していたかも」ネルルは本気だった。国民のために動くがルムロの女王、その権限は絶対のものである。彼女の発言で使者や国そのものを脅威にさせることも出来る。


「貴女様のお考えは間違いではありません。ルムロに少しでも悪影響になるのであれば私は一切止める行為は致しません」「ケイ、もし私が間違いそうになったら止めてよね」二人の信頼関係だからこそ、王女と従者の関係は二人の中では既に無くなっているのかもしれない。


「それでどうしたの?わざわざお疲れ様だけを言うために来た訳じゃないでしょ?ケイだって忙しい身だし」ネルルが要件を聞くと穏やかだったケイの表情は一気に険しくなり「ネルル様、シスイさんからの言伝です。近いうちに、"アフィシャル"が動きを見せる可能性が高いとのことです」


"アフィシャル"という単語を聞いた瞬間、表情は変わらなかったネルルだったが口元に指を置き「そう…身を潜めていた組織が遂に動きを見せるのね。"アフィシャル"の方で何か問題でも起こったの?」この時点でネルルの脳内では国の防衛の強化と騎士達のさらなる指導、同盟国との今後の動き等最悪の事態に備える考えになっていた。


「どうやら"アフィシャル"の四つある支部の一つが何者かによって壊滅していたそうです。建物の崩壊から"マリー"の仕業ではなく属性を扱った人間だと思われます」

「"アフィシャル"に対抗する人?"リンドウ"だったらヴァレアが知ってるはず、でも今の時点で誰かは分からない。"リンドウ"だったら味方だし、それ以外だったら私達の敵になる。

ケイ、極秘でヴァレアを呼び出して。シスイが"アフィシャル"の崩壊した支部にいるのなら、多分ヴァレアもいるはず。色々と話を聞かないと」


ケイに指示を出しヴァレアを呼び出す事にしたネルル。だがケイは何かを黙っているような様子で俯いていた。

明らかに様子がおかしい状態に「ケイ?まだ何かあるの?」伝えづらい事のようだった。


「……"アフィシャル"とは関係があるかどうかは分かりませんが、もし壊滅まで追い込んだのが"リンドウ"ではなければ…ルムロに危害が加わる可能性は今は無いと言えますが、実はとある街の住民が一夜によって約三百人以上が殺されたと報告がありました。それも"マリー"の仕業ではありません」


"マリー"の仕業ではない大量殺害に絶句したネルル。「それ…って」だが何か思い当たる節があるようだった。

そしてケイはネルルの耳元であることを伝えると、ネルルは玉座から立ち上がり表情を変えてずっと落ち着かせていた気持ちだったがそんな余裕な無くなっていた。


「やめてよケイ!!だって…だって…っ!」感情的になるネルルだが言葉が上手く見つけることは出来なかった。


「その現場を見た目撃情報はありません。これはあくまでも可能性です。ですが、彼女はまだ生きています。いずれはこの国にも……」ケイの言葉に歯を食いしばるネルル。脳内で考えていた事は全て忘れてしまい頭の中はぐしゃぐしゃの感情に染まりきっていた。


ネルルは玉座に座り俯きながらケイに一言伝えた。「…誰にも部屋には入れさせないで」静かに誰かに部屋を入れさせるのを拒んだ。

ケイはネルルの命に「御意、貴女の声がない限りこの部屋には誰一人として入れさせません」気丈に振る舞うケイだが内心はネルルと同じく色んな感情で入り交じっていた。


ケイが部屋から出て一人となったネルルはしばらく俯いた後に玉座にもたれかかりながら上の空を見て「ヴァレア…あの時止まった私達の時間がやっと、やっと動きそうよ」と、独り言を呟いた。


----------


時は少し遡り、"アフィシャル"第四支部の跡地。建物から全て崩壊し何も無くなった地に「全て破壊されているか。この地で何があった?」ヴァレアが来ていた。


「"アフィシャル"が動く前兆があったがため、早急に何者かが"アフィシャル"を潰した…いや、たった一人でこの支部を壊滅させるのは相当な実力者じゃなければ不可能だ。

となると"アフィシャル"支部内での反乱が起こったか、だとしてもここまで全てを無くすほどの反乱を起こすか…?」様々な考察をするヴァレア。


するとそこに「ヴァレア様」声のする方へ顔を向けると風の音と共にどこからともなく姿を現したシスイがいた。

「シスイ、この近辺の街の話はどうだった?」「皆様口を揃えて、爆発音と共にこの建物は無くなっていたそうです。様子を見にこの場に来られた方もいらっしゃいましたがその時には誰もここにはいなかったそうです」

どうやらシスイは第四支部の近くの街、ラゴンで聞き込みをしていたそうだ。


「有力な情報は無しか。やはり奴らが動き出すのを待つ方がいいかもしれんな」ヴァレアは口元を手で少し抑えた。神出鬼没の組織に中々情報を掴むことが出来なかった。


だがここで「いえ、それが、妙な話を聞き及びました」シスイの顔が少し曇った。

「妙な話?」「はい。複数の目撃証言がありますのでほぼ確信と言ってもよいのですが…その……」何故か言葉にするとこを躊躇っていたシスイ。


「どうした、私に言いづらい事なのか?大丈夫だ、私であればある程度対応は出来る」シスイが躊躇うには必ず理由があると分かったヴァレアはシスイに伝えるようにした。

「…"アフィシャル"の支部が崩壊したその日に、二つ名"奇術の属性弾"のディーナ様をこの街で見たと言う証言が複数ありました。その一人はディーナ様と鎌を背負った女の子と一緒にこの第四支部の方角に向かったと言っておりました」シスイが躊躇っていた理由は、同じ"リンドウ"の仲間であるディーナがここに居たとの事を聞いたからである。


これにはヴァレアも驚き「それは、本当か?」シスイに再度確認した。「はい。もし本当にここにいらっしゃたのなら、ディーナ様が"アフィシャル"の関係者だと言う可能性が…!」青ざめる顔になるシスイ。


だがヴァレアはすぐに冷静さを取り戻し「早まるな。その可能性が否定は出来ないが、ディーナがフェリスを捨ててまで"アフィシャル"に向かうなんて考えられない。

それに鎌を持った少女…その子の容姿は?」「フェリス様ではないのは確かです。ただ顔は傷だらけだった模様です」


共にいた少女の事で少し気がかりなったヴァレア。「鎌…顔に傷…」考える事で黙り込んだヴァレアは伏せていた顔を上げると「シスイ、ルムロに戻りネルルに伝えろ。"アフィシャル"が動く可能性が高いと。奴らも、黙って見過ごす真似はしない」疑問に思うことは山ほどあるがひとまずはネルルに情報を共有しなければいけないと悟り、シスイに一足先にルムロに戻れと伝えた。


「分かりました。そして、もう一つお伝えしなければいけない事があります」またしても情報を掴んでいたシスイ。

「なんだ?」「これは今すぐに起こることではありませんが、あくまでも噂の域。わたくしもこの目で見なければ分かりませんが、この地から少し離れた土地に…超大型"マリー"の姿を見たという噂がありました」


「……異常事態だ、何が起こってる?」またしても目撃された超大型"マリー"、討滅戦の始まりが刻一刻と迫ってきていた。


----------


今日は、おねえちゃんとナデシコさんといっしょに大きなたてものがいっぱいあったばしょに行った。ナデシコさんといっしょに色んなものをみてとってもたのしかった。

おねえちゃんのむかしもきいた。フェリスたちに言うのがこわかったって言ったけど、フェリスはおねえちゃんのことをもっとしれてうれしかった。

おねえちゃんもナデシコさんもやさしい、また三人でどこかにいっていっぱいわらいたい。

6がつ26日


六章「王都の近衛」完

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