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カエデ  作者: アザレア
王都の近衛
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国家元首 アザミ

ディーナは自分の過去を語り、金に汚い性格だったことも、過去に一人守ると誓った人を守れなかった後悔も、自分が何故Dina's hideoutを設立することにしたのかも、この場にいる全員に話した。

全てを話し終えた後のディーナの表情はどこか哀愁が漂いながらも、どこかスッキリとして肩の荷が少し下ろせたようだった。


「驚きました…ディーナさんがそのような部隊にいたことも、何より今のディーナさんとは全く別の人物だったようでした。本当に人というのは変われるものなのですね」

スイレンはディーナの昔の姿と今の姿が全く異なっている事に驚きつつも、人間が変われることも知った。


「私もハオウやあの部隊に出会ってなかったら今の自分は無かった。でも失った後悔を数えるんじゃなくて、その後悔を増やさないようにしなくちゃいけないって分かったから、きっと全部無駄な事じゃなかった」

過去の経験があるからこそ、今でもディーナは成長している。喜びも幸せもあの場で分かり、同時に悲しみと寂しさも分かった。後悔は先に立たない。だが、目に見える後悔は防ぐことが出来る。


「なるほどな、それでナイフに想いがあったのか。だがそれ以降は刃物は手をつけなかったのか?得意だったら一つの武器になると思うが?」

「得意ってほどでは無いけどね。ちょっとした自分の戒めみたいなものだよ。あのナイフで"マリー"からの攻撃で助かったと同時に失っちゃったから。武器を壊す自分だから、持ってもまた壊すかもしれないから、持つことを辞めたんだ」


まだチハツが創ったナイフを持つことを少し躊躇うディーナに、座っていたチハツは立ち上がりディーナの胸元に自らの拳を当てて「そんな戒めぶっ壊せ。そのナイフがあるから助けられる命があるんだ。自分のためにも、他の奴らのためにも、アンタの力を引き出す武器として持ってけ。昔も今も守るべき人がいるだろ」

チハツの言葉に突き刺さるものがあり、過去の守る人は居なくなったが今はか弱いあの子がいる。


ディーナはフェリスの方を向いてじっとフェリスを見つめた後に、ナイフをあの時のように肩に装着させ「ありがとうチハツ。もう一つ、自分の武器を増やしてみせるよ。もう、『守れなかった』なんて言葉を使わないように」過去の自分と決別して、再びナイフを自分の力として扱うようだ。


「おう、手入れを怠るなよ」今後こそナイフを本当に受け取ったディーナに満足気な表情を浮かべるチハツ。一つの戒めを解いた事によりまた一つ吹っ切れたディーナにチハツも貢献したと考えていた事による表情だったのかもしれない。


「お姉ちゃんがそんな人だったんだ。フェリス知らなかったよ」ずっと近くにいた人の昔を初めて知ったフェリス。今目の前にいる優しい姉とはかけ離れた人だということまだ心から信じきれない。


「当然だよ、言ったことないんだから。ガッカリした?フェリスのお姉ちゃんが、昔は乱暴な人だったってことに」

心の内ではどこか不安だった。昔の自分を語ればフェリスは失望してしまうのではなかいと。

今の関係のままでいたいと思うディーナだが遅かれ早かれ自分の事は打ち明ける時が来るとは分かっていた。隠し事とはまた別だがそれでも、いつかは語る日が来る。


目が隠されているフェリスだが、ディーナに真っ直ぐ向かってディーナの手をギュッと握って「ううん」と言って首を振った。


「お姉ちゃんの事をもっといっぱい知れて嬉しいよ。色んな事を経験して今のお姉ちゃんがあるんだって思ったらフェリスお姉ちゃんの事もっと自慢できるよ。やっぱりお姉ちゃんはかっこいい人でとっても素敵な人だよ」嘘偽りのないフェリスの満面の笑み。純粋無垢なその想いにその場にいた全員の心が少し優しくなった。


それはもちろんディーナそうであって、打ち明ける事に億劫になって心配していたが全て杞憂に終わった。

「…ありがとう、フェリス。これからもフェリスにとってかっこいい姉として頑張るね」そう言って優しくフェリスの頭を撫でるディーナ。待ち焦がれていたように頭を撫でられたフェリスはとても幸せそうな表情をしていた。


「実に興味深い話を聞かせてもらったよ。私の感想も素直に言いたいところだが、私達もそろそろ向かわなくてはいけないのではないか?私達の目的はあくまでグラトだ。油を売る暇はここらでお開きしなくては」当初の目的であり依頼が来たグラトに赴くように促すナデシコ。


「それもそうね。呑気にしてる場合じゃなかったわね」気を引き締め直したディーナ。

すると、グラトと言う名前を聞いたチハツは「アンタらあのでっかい国に用事あんのか。二つ名"リンドウ"なだけはあるな、暇していられないか」大国からの依頼に関心していた。


「それではチハツさん、ありがとうございました。今度は遅れないように予定を調整してから来ますね」表情は普通だったが、また怒られたくないスイレンは絶対に手入れの日だけは予定を空けるように心に誓った。


「のんびりしていられないんだろ、早く行けよ。アタシの作品をぶっ壊したりしたらキレるが、その時はまた新しく創ってやるから存分に暴れてこいよ」チハツなりのエールを送ったが、二人は「怒られるのさえ無かったらなぁ~」と、内心では思っていた。


----------


大国ルムロから電車を乗り継ぎ、ディーナも知らない土地に降り立った一同。電車から降りた場所は、グラトの首都フィグ。都市部の駅に降りたディーナはキョロキョロと見渡し「やっぱり大国ね、人の多さはルムロとほとんど同じ…規模で言ったらこっちの方が大きいのね」人口の多さに少し驚いた。

グラトは都市国家、徐々に領土を広げていき今はルムロよりも大きな国となっていた。


フェリスもその人の多さにディーナとはぐれないように手を繋いで「すごい、ルムロと一緒くらい人がいる」ディーナの手をギュッと力強く握ったフェリス。

人混みの多さにフェリスを心配するディーナは「大丈夫?」と、声をかけた。


「大丈夫だよ。お姉ちゃんもいるし、スイレンさんとナデシコさんもいるから、フェリス怖くないよ」余裕はあまりなかったがそれでもフェリスはディーナにあまり心配をかけさせないように微笑みを見せた。


改めてフェリスの成長を実感するディーナ。少し昔までは外に出ればどんなことがあってもディーナから離れずに自分の気配を消していたフェリス。

それが今はまだ苦手だが外の世界に勇気を持って踏み出している。それが、たまらなく嬉しいディーナ。それでも自分だけが感動してこの場で涙を流す訳にはいかない。何よりスイレンはともかくナデシコの前で泣いてしまえば絶対にいじられてしまう。


ディーナは感動する心をグッと抑えて「良かった、なら行こっか」フェリスと手を繋ぎながら「それで、私達はこれからどこに…」スイレンにどこに向かえばいいかと聞こうとしてスイレンの方を向くと、手で涙を拭くスイレンがいた。


「え、スイレン!?」突然涙を流していたスイレンに驚くディーナ。スイレンは口を開き「すみません、フェリスさんがどんどんと成長して行くのを見てしまうと自分事のように嬉しく思ってしまい、つい…」ディーナ程では無いがフェリスと会ってから時間が経つ一人である。会ったばかりのフェリスを知っている一人としてはとても成長しているフェリスに感極まってしまい涙を流してしまった。


「フェリス君と付き合いは長いんだねぇ。涙脆いディーナ君と君はなんだかんだで似たもの同士なんだねぇ」

「いや、私は涙脆くなんて…」「フェリス君絡みになると涙目になるのは目に見えて分かるさ。姉バカなのか親バカなのか」「親バカ…」自分の行為を考えるとそう思われてもおかしくないレベルであった。

その後スイレンがこの状態では何も出来ないため泣き止むのを待ってから依頼主の元へ。フェリスはかなり戸惑っていた。


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フィグの司令部でもある国の基地に赴いた四人。依頼を受けたと言った"リンドウ"達とフェリス達が来た理由を説明すると、フィグの元首が許可を受け司令部への立ち入りを許した。


そして、元首の元へと案内された四人。一つの部屋に入ると、そこはデスクの先の椅子に座り"リンドウ"達を待っていたグラトの元首。


緊張感が漂う中で椅子に座っていた元首が立ち上がり四人の目の前に立ち後ろで手を組み「ようこそ、都市国家グラトへ。貴方達の訪問を楽しみにしておりました。心より歓迎致します」笑顔を向けた元首。

彼女の名はアザミ・ルリタマ。グラトの国家元首。今のグラトの領土を広げたのも彼女によるものであり、グラトが大国と呼ばれるようになっのも彼女の手腕や巧みな話術によるものであり、今のグラトは間違いなく築き上げのは彼女によるものである。


優しく微笑みを向けるアザミは年齢は若くはないがそれでも五十と言う年齢でここまで国を大きく出来たのは才能の一言でしかない。

黒髪の長髪であり髪は短く見えるように束ねている。

見た目は穏やかな顔をしており元首だと言われなければ優しい顔立ちの女性である。


もっと厳格であり畏怖するようなイメージを想像していたディーナだったが優しい雰囲気を出し思ったよりも穏やかな顔立ちに「へぇ、意外。都市国家の元首って言う勝手なイメージで怖そうだったけど優しそうで良かった。話し合いが通じない人はちょっと苦手だからね」ちゃんと話が分かる人だと思いほっとしていた。


「ディーナさん、それは…」ディーナの少し失礼とも捉えられる発言に言葉を選ぶようにと伝えようとした時アザミは「いえいえ、よく思われることですから大丈夫ですよ。それにしてもスイレンさんが連れて来たのが今勢いに乗ってる"奇術の属性弾"のディーナさんだったとは、いやはや"リンドウ"の人脈と言うのは広いもので縁も紡がれていく、面白いものですね」と言って微笑むアザミ。


器の広いアザミ、それと同時にディーナ「大物ね、それになんだかただならぬ雰囲気。結構強いんじゃないの?」アザミの落ち着きから過去に"リンドウ"だったのでは無いかと勘ぐるディーナ。


「いえいえ、全ては昔の話ですよ。今はもうご老体、前線で戦うにはもう体がついてきませんよ」と言って少し俯きながら首を横に振った。「強いって言うのは否定しないんだね」


「それよりも今回は"マリー"の依頼ですが、どのような"マリー"なのですか?」話が脱線する前にスイレンが今回の"マリー"の特徴を聞いた。

「今回の"マリー"はこのフィグの街の離れにある湖に出没する"マリー"なのです」ディーナのスイレンは二人同時に「湖?」と、声に出した。


「離れにある湖はこの街の観光名所の一つで連日多くの観光客の皆様が訪れる湖なのです。透き通る程の綺麗な水にとても見とれてしまうと話題になり、この街いえ、この国においても誇れる湖なのです。

ところが最近、湖を見ていた観光客が湖から突如出てきた謎の化け物に引きずり込まれてしまう事件が発生してしまいました。それも一人ではなくその場にいた数十人の方々が、その結果その湖から浮かび上がったのはその人達の血や衣類…一瞬にして湖は透き通る美しい水から一転して血の滲んだ水に変わってしまいました」

その惨劇の話を聞いて和やかなムードだった場が重たく陰鬱な雰囲気になってしまった。


すると、話を一緒に聞いていたフェリスが「湖の話が載ってたけど、ここだったんだ…やっぱり、"マリー"は皆を不幸にするんだね」毎日のように新聞を読んでいるフェリスはこの湖の事件を知っていた。

新聞では連日のように"マリー"の事件が起こる記事を見たフェリスは、"マリー"はどんな存在でも皆を不幸にする悪い人達。純粋無垢なフェリスの心を持つフェリスですら"マリー"を悪として認識するほどの、邪悪な存在なのだ。


「おやお嬢さんは知っているんだね。そう、"マリー"はこの世には居てはいけない存在。私達はその存在に対抗していかなくてはいけない。それが今を生きる女子達の宿命だからねぇ」

その事を仕方ないと捉えられるような発言をするアザミにフェリスは自分もその一人でディーナのように強い力を持たない自分はどうやっても"マリー"には勝てないと思い込んでしまい少し落ち込んでしまった。


しかし、落ち込むフェリスに即座に気がついたディーナは「そのために私達がいるんでしょ。宿命も何もかも、私達"リンドウ"が守ってやれば関係ない、そうでしょ?」アザミの言葉に反論した。


少し眉を上げて驚く様子を見せた後に笑顔になったアザミ。「そうですね。貴方のような"リンドウ"がいてくれればいつかは全てを無くしてくれるかもしれませんね」今度はディーナを肯定するような事を言った。

だが優しいアザミの笑顔にほんの少しだが何かの違和感を感じたディーナだが、ただの気のせいだと思い何も言わなかった。


「湖の"マリー"、なるほど。水の属性を持つ私とは好相性。だから私をお呼びになったのですね」「それもありますが、水の属性の使い手で今正に強者と言えるのはスイレンさんだと言えますので、今回の件を任せようと思いました」少し大袈裟に言った評価だったがそれでもスイレンはまんざらでもない様子で少し頬を赤く染めた。


「さて、それでは詳しくは私よりも我が国が誇る近衛大将に詳細を聞いた方が早いと思います」聞きなれない言葉にディーナは「近衛って何?」と、スイレンに聞いたが「私も初めて聞いた言葉です。近衛…響き的に兵士のようなものでしょうか?」


二人が疑問になる所にナデシコは「まぁ聞きなれないのも無理ないさ、ある国の固有の単語のようなもの。意味合い的には近衛はよりすぐりの精鋭が集まりこの国の最古参となる兵士に付けられるようなもの。

つまるところ、その大将と言うのはこの国において一番の最優と言った所だろう」

ナデシコの説明に二人は大きく頷いて「へぇ~貴方って物知りねぇ。そんな情報どこから分かるのよ」「知識に際限は無いさ。頭の片隅に覚えておいたことがたまたま役に立っただけさ」


「その子による説明を終わったところ、そろそろ呼びますよ。入りなさい」すると、ノックをした後に「失礼します」と、言ったと同時に部屋の扉が開いた。

一斉に振り返りその姿を確認すると「……えっ」言葉が詰まり、喉が詰まったディーナ。


軍人の証でもあるベレー帽を被り、迷彩柄のズボンと防弾ジョッキを着用し、太ももにはナイフを装着した女性だった。そして、首元には何かで抉られた深い傷跡が残っていた。


部屋に入った女性は自分の自己紹介をした。「グラトの近衛大将にしてアザミ・ルリタマを守りし兵士、ハオウ・ディアルここに参りました」そこにはかつてのディーナの師であり友のハオウだった。

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