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カエデ  作者: アザレア
感情の解答
53/86

家族の思い出

目の前で異形化し"マリー"に成った女性。エーデルは突如の事に焦りはしているものの自分が何をすればいいかは明確に分かっていた。

エーデルの後ろに亜空間を四つ出現させて棘を飛ばす準備はいつでも出来ていた。


「こいつは何者かは分からん。だが、世に放たれれば混乱を招くだろうな。人間を助ける義理はないが、ここで仕留めさせてもらうぞ」

あくまで自分のために、もし地上にこの存在が知られればエーデルにも少なくとも焦点は集まる。下手に注目を集める訳にはいかないエーデルはこの人間ではなくなった"マリー"を討伐することにした。


まだ動きを見せない"マリー"をじっと見つめるエーデル。すると、異形化した手が微かに動いた瞬間を見逃さなかったエーデルはすぐさま四つの亜空間から棘を瞬時に飛ばした。細い棘ではなくまたしても身体に穴が空く程大きな棘を四つ飛ばした。


飛んでくる棘を見た"マリー"は異形化した手を棘の方に突き出すと、手に一本の棘が刺さる直前に棘を掴み有り余る力で先端をへし折ると先端をエーデルに飛ばした。こちらに向かう残っている棘も手を払うように動かすと全て粉々に砕け散った。


一本の先端はエーデルに向かっていく。奇しくも人間の時と同じ戦法だった。しかし決定的に違うのはその向かってくる速度だった。人間の時とは比べるまでもない程勢いを増した速度でエーデルに向かっていく。


悠長に考える暇は無かったエーデルは咄嗟にサイドに飛び込んだ。先端はそのまま飛んでいき壁に激突した。壁に突き刺さった棘の先端だが突き刺さった壁の周りが少しひび割れているのが見えた。


飛ばした先の結末が見えたエーデルの背筋は凍った。「この判断が少しでも遅れていれば…人間だった頃の記憶があるというのか、厄介すぎるぞ」

基本知性を持つ"マリー"はかなり少ない。なんのために女性を襲っているのかは分からないが"マリー"同士が連携を取ったり、作戦を立てて襲うというケースはごく稀である。知性を持つ"マリー"は他の"マリー"に比べればかなり危険度は高い。

だが人間が突然"マリー"に変異すれば元の人間の知識や知性を持っていてもおかしくは無い。エーデルが戦っている"マリー"はさっきまで人間だった。その面影で人間の頃の戦い方を真似をしているのかもしれない。それは知識によるものか、長年の経験が染み付いているのかは分からないが。


エーデルは体制を建て直して立ち上がり「さて、どう戦う…?闇雲に属性を飛ばしてもあの力だ、一緒のように私が危機に晒されるだけ。自分の属性で殺されるだなんて絶対ごめんだ。考えろ、奴を殺す最前の手段を」

頭をフル回転させてなんとか対抗する術を探すエーデル。


だが"マリー"はエーデルに考える時間を与えるつもりはないようだ。"マリー"はエーデルどんどんと歩いて近づいていき、異形化し巨大な爪に炎が纏っていき少しでも触れれば火傷をするほどの火力だ。


爪を突き立てエーデルに攻撃するように爪を振り上げた。何でもないような攻撃だが一撃でもまともに喰らえば貧相なエーデルの身体では耐えることは出来ない。

それは自分自身が分かっているエーデルはとにかく距離を取らないといけないと判断し、後ろに飛んで燃え盛る部屋の中でなるべく"マリー"と距離を取るために走った。


振り下ろした爪の先は誰もいない。攻撃は強大だがその分動作は少し長い。そしてその際に生じる隙も大きい。エーデルは距離を取りながら向かった先は"マリー"の後ろであり、がら空きの背中だった。


「その爪も死角であり離れていれば意味は無い。近づかれなければ脅威にすら感じないんだよ」近接戦では勝ち目は無いエーデルだが距離を取り遠距離において圧倒的にこちらが有利になる。大振りな戦いをする"マリー"においてエーデルの属性はかなり相性が良い。


この距離からでは一気に詰める術を持たない"マリー"に一方的に攻撃出来る。一気にカタをつけようとするエーデルは自身の前方にかなり大きな亜空間を出現させた。

「穿て、"マリー"に成り下がった人間が!」その亜空間から放たれたのはこれまで以上に大きく太い棘だった。棘は真っ直ぐ"マリー"に向かっていく。


間違いなく"マリー"とは言えど身体に刺されば即死は免れない。だが後ろにいるエーデルに気がついていないのか振り返る様子がない"マリー"。

エーデルはニヤリと笑い勝利を確信した顔をしたが"マリー"に棘が刺さる瞬間、"マリー"は振り返りざまに巨大な爪で棘を薙ぎ払った。薙ぎ払うと棘は瞬く間に二つに折れてしまった。


その衝撃に驚きを隠せないエーデル。「私の属性でもかなりの強度を誇るぞ、それをいとも簡単に…クッ!この方法では駄目なのか」

冷静に対処するエーデルだがさすがに焦りを感じてしまっている。自分の属性では奇襲も真正面からでも防がれてしまう。


「どうする、助けを呼ぶか。いや、ディーナも娘も呼びに行く暇等ない。あいつも小娘についていっている、ここから声を出した所で届くはずがない。

脱出しようにもこの炎の中で"マリー"を猛攻を掻い潜りながら出口を探すなんて私では不可能だ。まだ何かあるはずだ、何か必ず…!」焦れば焦るほど打開策が浮かばないエーデル。


するとここでエーデルは「ごホッ、ゴホッゴホッ!」突如咳き込んだ。「クソっ!空気が、吸えなくなってきた。炎の煙が私の体を蝕んできたか。早々に決着をつけないと、どちらにせよ朽ち果てるぞ」

炎の海となった周りから発する煙はエーデルを一酸化炭素により徐々に蝕んでいきエーデルも正常な判断が出来なくなってきていた。


「この中で戦えというのか、無謀すぎるぞ」この状況下でエーデルはかなり不利な戦いを強いられていた。"マリー"は炎の属性かあるいは体の構造が変わっているのかは分からないがこの中でも何も症状が出ていなかった。


弱っている姿のエーデルを見て"マリー"は突然「うおおおおおぉぉぉぉ!!」雄叫びを上げた。

「なんだ?」何が起こるかは分からないエーデルだが下手に動くとさらに体力を消耗するため敢えて"マリー"の出方を伺う事にした。


すると、"マリー"は巨大な爪を地面に突き刺して突き刺しながらエーデルに向かう走ってきた。走った後には炎を纏った爪により炎の後が出来ていた。

ここでエーデルは察した。「こいつ、この勢いで振り上げて私を刺し殺そうとしているのか!」走った勢いにより増した攻撃力によりエーデルの体を刺し穿とうとしていた。エーデルが"マリー"を刺し穿とうとするように。


既に避けられない程近くまで来ている"マリー"。咄嗟にエーデルは自分の前方の地面に三つよ亜空間を出現させて棘を飛び出してなんとか盾代わりにした。

"マリー"はほんの目の前に来ており棘を盾にしているエーデルに炎の爪で串刺しにしようと勢いよく振り上げた。


盾代わりにしていた棘に爪がぶつかるがいとも簡単に棘は破壊されバラバラに砕けた。その衝撃を目の当たりにするエーデルだがなんとか避けようと爪が腹に刺さる瞬間に後ろに飛んだ。

串刺しになる事は回避したが、身体に鋭く炎の爪で引き裂かれた。


「ガハッ!」傷と火傷を同時に負ったエーデルは口からも血を吐き吹っ飛んだ。地面に転がりながら倒れ、傷と火傷を負った身体を手で押さえた。


「はぁはぁ…クッ…まずい、意識が、飛びそうだ…」息をまともに出来ない環境に、エーデルの意識は既に朦朧としていた。加えて傷ついた身体に火傷も負って、炎に囲まれる状況下では火の粉が身体に移りさらに悪化していく一方だった。


口から流れる血すら拭えない程、体力が底を尽きかけているエーデルだが何とか震えながらではあったが体を起こして"マリー"の方を見て睨みつけた。

虫の息になっているエーデルだが"マリー"にはそんな事は関係なかった。エーデルに向かって歩いてくる"マリー"はエーデルにトドメを刺そうとしていた。


打つ手が無いエーデルは自分がどれだけ非力な事か、目的を果たせないまま死ぬのか、悔しさを滲ませ、地面の唯一炎に巻き込まれていない草の上に手を置いておりその草を握りつぶした。


だが何か違和感を感じ握っている手を見るとそこには"マリー"が異形化した際に落とした女性のネックレスだった。エーデルのいる場所は女性が異形化した時にいた場所だった。


後数秒後には"マリー"によって殺されるエーデル。"マリー"は遂に爪を突き立てエーデルの顔に目掛けて突き刺そうとした。だがエーデルは手に持つネックレスを"マリー"に向けた。

エーデル自身も何故こんなことをしたかは分からない。だが、死ぬ直前の最後の抗いを見せるにはこうするしかなかった。


ネックレスを見せつけられた"マリー"はエーデルに向かっていく爪をピタリと止まった。

「…ん?」見せつけたからと言ってどうにもならないと分かっていたエーデルだが攻撃する手が止まった"マリー"に少し驚いていた。


すると「あ…あぁ……」突然"マリー"は頭を異形化していない手で押さえて後退りをしていた。

ネックレスを見せただけで襲いかかる様子はなく、それどころか敵意も殺意も失せてただひたすら声なき声を発し頭を押さえるだけだった。


だがいつ戦線復帰するか分からない"マリー"にエーデルはこれが最後のチャンスと考えてボロボロになった体だったが力を振り絞り何とか立ち上がり、離さずに持っていた刀の柄を持ち抜刀すると、刀を"マリー"に向かう投げつけた。


真っ直ぐ"マリー"の方へ向かう刀、だが非力で重傷を負うエーデルの力では"マリー"に刀を投げた所で突き刺せる事は出来ない。

"マリー"に刀が当たる直前でさっきまでいた場所にエーデルは居らず、刀がある場所に瞬間移動して柄を持ち"マリー"の喉元を突き刺した。


突き刺された"マリー"は即死することはなく、エーデルに向かって爪を突き立て逆にエーデルを突き刺そうとしていたが、エーデルの後ろに二つの亜空間、"マリー"の後ろにも二つの亜空間が出現した。

出現した瞬間に棘が瞬時に飛び出し、前からも後ろからも"マリー"の身体を穿った。


複数の穴が身体に空いた"マリー"は最早反撃をする力も残っていなかった。ただ"マリー"の目に映るのは、自分を殺した人間だけだった。

そしてエーデルは柄を今より強く持ち「眠れ、後悔も忘れる程、永遠に」強く持った柄をさらに深く突き刺し、刀を"マリー"から抜いた。


"マリー"は虚ろになる眼をエーデルに向けて爪を向けるのではなく、口を開き、何かを話したかは分からないがエーデルは口の動きからして「ありがとう」と、確信を持って理解した。


最後の言葉を言って満足したのか"マリー"は膝から崩れ落ち、うつ伏せの状態で倒れ完全に息が止まった。

"マリー"に落ちた人間の最後を見届けたエーデルだが既に部屋が燃え尽きそうになっており悠長には長居は出来ないと分かりキョロキョロと出口を見渡すと、エーデルが入ってきた出口の扉は炎に塗れていた。


だがあの場しか出口は無いためエーデルは全速力とは程遠いが今走れる速度で走り出し、出口の扉の目の前に来て亜空間を出現させ棘を飛ばして無理やり扉をこじ開けた。

炎によって崩れかけていた扉を壊すのは簡単ですぐに扉は崩れてエーデルは少し勢いをつけてこじ開けた扉に飛び込んだ。


火の粉が身体に付いたがなんとか部屋から脱出したエーデルだが飛び込み着地すら出来ずに大の字になって倒れた。

酷く息も荒れて、額から流れる汗や口元の血も拭えない程の疲労がエーデルを襲った。


「駄目だ使い過ぎた。しばらくは動けそうにないな」足に力が入らないエーデルはこの場を動くことは出来ずにいた。だがエーデルの左手には刀を持ち、右手には"マリー"が付けていたネックレスを持っていた。


顔だけネックレスの方に振り向きようやく落ち着いてよく見えるが一目瞭然だった。

「違ったか、とんだ無駄骨だったな」エーデルが欲するネックレスでは無かった。そもそもネックレスを見せつけた時点で違うことは確信していたが。


少し休みなんとか体を起こせるぐらいには回復してエーデルはまだ動かない脚を手で引きずりながらか壁にもたれた。

もたれて手に持つネックレスを見て「にしても不可解だ。あいつ何故これを見せただけで戦意喪失したんだ、あいつにとってそれほど壊すのが怖かったのか…んっ?」ネックレスの先端をよく見ると、小さな写真が入るようなアクセサリーがぶら下がっており、開閉出来るようになっていた。


「ロケットペンダントか、何が入っている?」ぶら下がっているアクセサリーの中身を開けると、そこには一枚の写真が入っていた。写真には女性と女性の子供であろうまだ小さい少女が写っていた。

エーデルは写真をよく見ると、女性はあの"マリー"で間違いなかったがもう一人の少女にどこか見覚えがあったエーデルだが、すぐに分かり驚愕の事実を知った。


「……あの、娘、クロカ。どういう事だ、あいつが持っている…あいつは、クロカの母?」考えた先の答えは、エーデルが対峙したのはクロカの母親ではないかと。

写真に写るのはどう見てもさっきの女性とクロカの幼少期、この二人が同時に写りさらにこれを大切に持つ理由は、二人は家族であり、母と娘。それ以外にたどり着ける答えは見当たらなかった。


女性にとってこれは唯一の家族としての所持品。エーデルはこれを見せた瞬間に戦意喪失した理由も何となくだが分かった気がした。

「自分の娘が映る唯一の物、これだけは何もかもを失った奴でも記憶には消せない大切な宝だったのか」ネックレスを傷つける、これは自分が人間だった全てを否定し壊すことと同義。それだけは、ただ一つ心に刻まれた、我が子への愛情が全てだった。

あくまでエーデルの推測に過ぎないが、確実に言えるのは彼女はクロカを愛していた。それだけは変えられない事実だった。


ネックレスをこれからどうするか悩むエーデルだがひとまずこれを持っていくことにした。クロカに渡すかはまだ分からないままだが。


また少し時間が経ち、"マリー"から負った傷も何故か癒えてようやく立ち上がって歩けるまでは回復したエーデル。口元の血も指で拭って「あいつらと合流するか、だがやけに静かだな。ここにいる研究員や造られた"マリー"達は一体何処に…」ここがあの女性がいるから危険地帯となっていたのか誰も寄り付かないから静かなのか、もしくは何かがあって誰も来れないのか、不思議に思うエーデル。


だがここで何か物を壊す爆発音がエーデルに耳に入り少し地響きもしている。「爆発、この部屋からではなく、別の場所で?」エーデルが入っていた部屋からの爆発ではなく明らかに別の場所から聞こえる爆発音。


すると「エーデル無事だったのね!」こちらに飛んできたスワイが慌てふためきながらエーデルを呼んだ。

「お前、あの娘と一緒じゃないのか?」「それどころじゃないのよ!急いで、まだここが安全な内に!!」驚く表情を見せるエーデル。「あっちで何があった?ディーナと娘は無事なのか…?」


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少し時間が遡り、エーデル達と別れた直後のディーナ。三つの通路がある中で研究員が捕らえた"マリー"がいる左の通路を進んでいた。

人工"マリー"や研究員の影も形も無くただ無音の通路を足音だけが響く中歩いていくディーナ。


「人も、"マリー"も誰もいない。近寄れないの?まぁ多数の犠牲者を出してまで捕らえたって言ってたしそれだけ危険な"マリー"なのよね」研究員が話した言葉、研究員なのか人工"マリー"を犠牲にしたのかは不明。だが人工"マリー"だった場合はあの"マリー"を複数相手にして、そしてようやく捕らえた事になる。どれだけ危険な存在なのか。

ディーナはローゼンを手にして普段よりも強力な銃弾をリロードした。


しばらく歩くと、一枚の扉が目の前に。ディーナが通る道にも幾つか扉はあったが明らかに先にあるのは取っ手が厳重な鎖で巻かれており、その上で南京錠が何個も付けられていた。一目見ただけで分かった。ここにその"マリー"がいる事が。


ディーナは息を呑んで鎖と南京錠をローゼンで撃ち厳重に閉ざされた扉の取っ手を手に持ちゆっくりと開けた。

開けた先は何も無い空間が拡がっており、明かりがポツリとあるだけで他には何も無かった。


ディーナはキョロキョロと見渡しながら部屋の中に入り歩き出すと、突然部屋が冷蔵庫の中のような寒気が襲い身震いするディーナ。

すると、周りに氷の破片が散りばめられ始め、風と共に氷の破片は一箇所にどんどんと集合していき破片の影響か白い霧がディーナの目の前に見えてきた。


冬の寒空のような空気に白い息を吐くディーナ。そして白い霧が晴れていくと一匹の人型の"マリー"がそこにはいた。


"マリー"は女性型で白い着物を着衣して白い羽織も着ている。血色の無い病気にかかっているんじゃないかと思う程の真っ白な肌をしているが髪は肌とは対照的に真っ黒な髪で長髪。瞳が赤色だがとても綺麗な顔立ちをしておりパッと見、人間としか思えない。

だがディーナは長年の経験から彼女は人間ではなく"マリー"だと分かっていた。その根拠は赤い目、"マリー"の特有の真っ赤な瞳が"マリー"だと判明していた。


"マリー"はディーナを見た後に不気味に笑い「フフフッ、ようこそ」その"マリー"は他の"マリー"とは違い言語も話し無闇にディーナを襲わない、見た目も他の"マリー"とは違い人間に近い。


「あら、貴方はここにいる人間とは違うのね」「話せる"マリー"ね、前にも会ったことがあるけどお前はまた別のようね。なんだが知能も感じるし。でも人間を襲ってるんでしょ?」

「私達の宿命よ。貴方が思っているほど私達は意味も無く人間を襲ったりなんかしない。私はそんな気持ちあんまり興味無いけど」さりげなく言った"マリー"の言葉にディーナは強く引っかかった。


「意味も無く襲わないってどういう事それ?」知性を持ち話せる"マリー"等他に見たことが無いディーナはこの"マリー"から情報を引き出そうとしたが「貴方には関係ない事よ。それよりも退屈だったのよ、ここにいる人間は私を楽しませる事が出来ない。捕まっちゃたのも私が興味本位でどんな場所に案内されるか楽しみだったけど、牢獄みたいで本当につまらない。貴方なら私の欲求を満たしてくれるわよね?」


"マリー"は息を吐くと口元周りの息が凍り、その場の空気そのものが凍ってしまった。

ディーナは眉を上げて驚く表情を見せた後にローゼンを手に持ち銃口を向けた。「ヴァレア以外にいるんだね、空気を凍らせる氷の強力な属性の持ち主。でもそれが"マリー"だなんてね」

"最強のリンドウ"のヴァレアは氷属性。氷属性でヴァレア以上の強力な属性は見たことが無いディーナだがこの"マリー"が持つ属性はヴァレアに近しい力を持つかもしれない。


ディーナは銃口を向けた後に「"マリー"の何かを知っているのね、ここまで冷静に話してくれる"マリー"は多分他には見当たらないはず。

だったら私いや、私達"リンドウ"にとっては好都合ね。ようやく"マリー"って言う人類の敵の正体を掴めるチャンスなんだからね」

人間と会話が出来る自体かなり稀の"マリー"。さらに普通に対話が可能であれば"マリー"とは何なのかが判明出来る可能性がある。ディーナは長い謎にようやく近づけると思うと少し笑ってしまった。


余裕の笑みを見せるディーナに"マリー"は手招きするように指を動かすと「来なさい、可愛いお嬢さん」今までの"マリー"とは違い、超強力な属性を持つ"マリー"との戦いが幕を開ける。

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