"アフィシャル"第四支部へ
予想外の人物に助けられたディーナとクロカ。ディーナは手に持っていたフォーリーを懐にしまってエーデルに近づいて「エーデル。なんで貴方がここにいるの?」
そもそも知り合いが自分の活動地域から遠い場所で遭遇する事は無いと思っていたディーナ、だからこそエーデルがここにいることが疑問に思っていた。
「いたらまずいか?私は目的のためであれば何処にだって行ってやるさ」「目的って…貴方も"アフィシャル"に用があるってこと?」
「"アフィシャル"共に興味は無い。ここにいる奴に用があるだけだ」「てゆーか"アフィシャル"を知ってたの?」
するとエーデルの肩に止まっていた黒い鳥、スワイが羽ばたいてディーナの顔の前に飛んで「ウチの情報収集をなめないでよ。"アフィシャル"は"マリー"や"リンドウ"を捕らえている。ディーナちゃん達と鎧の"マリー"戦った後にウチらなりにあの組織がどういう存在なのか調べてみたのよ。そしたらエーデルの目的に近づく情報が得られたのよ」
眉を上げて少し驚く表情をするディーナ。「"アフィシャル"と貴方達の目的ってどう関係あるの?」「それがね、"アフィシャル"の第四支部にいる人間なのか"マリー"なのか分からないけどそいつがあるネックレスを持っているって情報を手に入れてね。そこでウチらだけじゃど~しても不安だったからディーナちゃんの手を借りようとしてたのよ」
スワイがつらつらと話していると突然エーデルが持っている刀を鞘でスワイの頭を軽く叩いた。
軽く叩かれただけのスワイだが鳥にとってはかなり痛かったようで右翼と左翼で頭を抑えて「何すんのよ!」と、怒っていた。
「私がいつ不安だと言った?お前がディーナの力を借りるとうるさいから仕方なしにこいつの事務所に連絡したんだ」そう言うとエーデルは刀を鞘から抜かずに鋒をディーナに向けて「お前も何度電話をかけたと思っているんだ。いつまで経っても繋がらなかったぞ、何のために事務所を開けているんだ」
ここしばらく電話線を切っていた事でエーデルからの連絡も取れないようにしていた事でエーデルもディーナに対して少し怒りを見せていた。
「いやぁ、ちょっと長期の依頼を受けていたから私も休みが欲しかったから…」「"リンドウ"だろ、まともに仕事をしろ」「おっしゃる通りで」流石に休み過ぎたと反省するディーナ。
「じゃあ尚更なんでここに?私の手を借りたかったんじゃないの?」「お前を待っていたら"アフィシャル"がどう動くか分からなかったからな、早々に第四支部に潜入したかっただけだ」エーデルは既にこの近辺にて"アフィシャル"の様子を伺っていた。ネックレスを持った何かが"アフィシャル"の第四支部から出てくるのを待っていたが一向に姿を現さなかった。
Dina's hideoutに訪れてディーナをここに連れてくるのにも時間がかかってしまう。そのため電話でディーナを呼び出そうとしていたが電話線を切っていたため繋がることはしなかったのだ。エーデルは痺れを切らして単身で第四支部に乗り込もうとしていた。
「だがお前の方こそ何故ここにいる?偶然にしては出来すぎだと思うが」まるで狙ったかのようにディーナがここにいるのにエーデルはスワイが勝手にディーナを呼んだと思っていた。
「出来すぎなのよそれが。私も"アフィシャル"をあの子と一緒に壊滅させる依頼が来てね。まぁ私個人としても"アフィシャル"がやっている事を放っておく訳にはいかないからね」依頼としてやってきたが"アフィシャル"の非道を聞いた限り黙って見過ごすわけにはいかないディーナ。
ディーナは振り返ってクロカの方を見て、エーデルもディーナの振り返った方を見るとクロカがまだ動揺していた。
「誰だ?あの娘が依頼主なのか?」「エーデルの属性がやっぱ衝撃だったんじゃない?初見じゃウチだって驚くわよ」
ディーナはクロカに近づいて腰を抜かしているクロカに手を差し伸べて「立てる?エーデルの属性は驚くよね」クロカは差し伸べられた手を掴んで立ち上がった。
「あ、ありがとう。知り合いなの?あの属性を使いこなす人と知り合いなの、やっぱりすごいの」ディーナの交友関係を改めて関心するクロカ。
エーデルとスワイも来て「その目の傷や火傷跡…"アフィシャル"にやられたのか?」「う、うん。目はウチが自傷したけど」クロカの片方しか開いていない目をじっと見つめるエーデルは「"アフィシャル"を潰すのなら利害が一致する。足手まといになるなよ」
ディーナは何かを察したエーデルに「さっきの続きだけどこの子はクロカ・イリア。依頼主じゃなくて依頼主が養ってくれている子。貴方が言ったように"アフィシャル"に非人道的な実験をさせられた。話せば長くなるけど、今は一緒に"アフィシャル"を壊滅しようとしているの」
クロカも少し恐れてはいたが「あ、貴方の名前は?」自分よりも強い闇属性を扱う目の前の人に興味津々だった。
「エーデルだ」「ウチはスワイよ、よろしくねクロカちゃん」「鳥が喋ってるの!」ナチュラルに話すスワイに驚くクロカ。
「あぁ、ウチはエーデルの属性から生み出された。鳥っぽいけど人間とお話している感じで話しかけてね」闇属性で生物を創造したエーデルにクロカはキラキラとした目でエーデルを見つめて「すごい。こんなにも属性が強大な人は初めて見るの。ウチ、エーデルの属性をもっと見たいの」
同属性のクロカは種類は違えどエーデルの闇属性に強く惹かれていた。
「私に興味を示してどうする?まぁいい、"アフィシャル"を潰すのなら自ずと私の属性を近くで見れる。その時で充分だろ、あまり属性使いたくないからな」
エーデルは"アフィシャル"の支部の中に入ろうと歩いたが、突然立ち止まった。
エーデルの目の前には先ほどエーデルが討伐した鎧の"マリー"の軍勢が再び支部の入口から出てきた。その数は討伐した数とほぼ同じほどだ。
「チッ、ぞろぞろと鬱陶しい」舌打ちをした後に"マリー"の足元に再び亜空間を出現させて同じように棘で穿とうとしていた。
しかしスワイがエーデルの顔の前に飛んで「ちょいちょいエーデル、ストップ」「邪魔だ、どけ。奴らを確認出来ないだろう」
「ここで過度に属性を使いすぎたら後々枯渇しかねないよ。ここは多少は温存して"アフィシャル"支部に乗り込んだ方がいいよ」
スワイの言葉に目線を下に下げたエーデルは足元の亜空間を消して自身の後ろに亜空間を出現させた。
「面倒だ。だが貴様らに割く時間が惜しい。さっさと片付けさせてもらうぞ」一気にではなく時間をかけて討伐するよだ。
しかしここでディーナがエーデル達を通り過ぎて、先ほど銃弾を込めたフォーリーを手に持ち"マリー"達に銃口を向けた。
銃口から溢れはじめる炎、引き金を引くと巨大な炎の球が"マリー"に向かって放たれた。
一体の鎧の人工"マリー"が炎の球を身を犠牲にして止めようと剣と盾を捨てて両手を突き出して炎の球を両手に触れた。すると、触れた瞬間に炎の球が炸裂してその辺が中規模な爆破を起こした。
その爆破に人工"マリー"達は全員巻き込まれてしまった。爆破した事により辺りは爆風に見舞われ、直視出来ない風がディーナ達を襲った。
ようやくまともに見れるほどの風になり人工"マリー"を見ると全員鎧が所々剥がれていて、黒焦げになっている人工"マリー"もいた。目で見て人工"マリー"を討伐を確認したディーナはフォーリーを懐にしまった。
「良い格好ばっかりはさせられないでしょ。私だってこれぐらいは出来るよ」エーデルがあまり属性を使えない事を察してディーナがフォーリーで一掃したのだ。
唖然となるエーデルとスワイ。それとクロカ。今まで見たことがない程の強力な属性弾を撃ったディーナにエーデルは少し笑って「はっ、こんな力を持っていたのか。少し驚いた、お前の力はまだ底が見えないな。だが私と仕事を共にした時から使ってほしかったな」少し皮肉を入れながらディーナの属性弾の威力をエーデルになりに褒めていた。
「あの時は銃が私の属性弾に耐えられないから。でも今は特注品だからね。私の強力な属性弾を撃っても耐えられる代物、こんな感じで撃っても傷一つ付かないよ」ある程度無茶な属性弾を込めて撃っても大丈夫と分かったディーナは今まで以上に強力な属性弾をフォーリーに込めていた。
「まぁいい。その銃があれば私も多少は楽できそうだ。出し惜しむなよ」「連発はちょっとね。危ないって少しでも感じたらもちろん撃つけどね」
今度こそ"アフィシャル"支部に入ろうと歩みを進めるディーナ達。
だがまだ唖然として動けていなかったクロカを見かけたディーナは少し離れたクロカに「クロカちゃんー行くよー」と言って手を振った。
意識がディーナに戻り、走ってディーナに追いつくクロカ。「敵の陣地なんだからあんまりボーッとしちゃいけないよ」「ご、ごめんなさい。でも分かったの、ディーナも二つ名を持つ"リンドウ"なんだって。ウチじゃあんな真似は出来ないの…ウチ、ディーナとエーデルの足手まといにならないかな?」
圧倒的な力を目の当たりにしたクロカは実力では二人には絶対に勝てない。二人のお荷物にならないかと不安を抱くクロカ。
するとディーナはクロカの方に手を置いて「力の差って言うのは誰しも感じる事、私だってエーデルに属性では勝てないかもしれない。でも属性の力と属性の使い方は別、どんなに強い属性を持っていてもそれを使いこなせなかったら意味がないよ。
クロカはその属性を上手く使いこなしている、それだけでも強い属性に対抗出来るよ。私とエーデルに出来ないことをクロカちゃ?は出来るんだから、その時は頼りにしてるよ」
ディーナはクロカの属性を高く評価している。遠距離でも自由自在に動かせる大鎌は"マリー"にしても"アフィシャル"にしても脅威になりえる。さらに練度を上げれば、"リンドウ"になり活躍した時には二つ名を必ず貰える、ディーナはそう確信していた。
「そう、かな…うん。ありがとう、ちょっと勇気を貰えた。ウチも活躍じゃ負けないぐらい頑張るの」少し沈んでいた心がディーナの言葉で再び復帰して前を向いたクロカ。ディーナも安心して肩から手を離して振り返って支部の入口向かった。クロカもディーナの後について行った。
ディーナは入口から支部に入ると先に入ったエーデルとスワイと合流した。立ち止まった見ていたエーデルの景色は地下へと続くかなり長い下り階段があった。下を見ても暗闇が広がり光景を見ることは出来なかった。
「結構下ね。地下であんまり目立たないようにしていたのね。さっきの鎧の"マリー"でこの入口を死守していたってなると、確かに地下の方が円滑に研究を進められる、バレる心配もないって事ね」
大規模な実験などすれば更地になっている土地とはいえ周囲に見つかる可能性がある。それをカバーするための人工"マリー"で地下で研究をすれば見つかる心配もなくなると、ディーナは判断した。
「奴らどんな研究をしてようが興味はない。私は目的の奴を見つければいい。さっさと行くぞ」お構い無しに下へと続く階段を降りていくエーデル。スワイは飛んでディーナの隣に飛んで「警戒しながら行こうとしてたんだけどディーナちゃんがいれば安心したんだろうねぇ。慎重派のエーデルが堂々とね、ディーナちゃんにはウチも期待してるよ」母親のような目線で語るスワイ。
だがディーナは口には出さなかったが「エーデルって慎重派?結構ズカズカと進んでいくタイプだと思うけど。私が見ているところだけだからかな?」ディーナが見る限りでは慎重派とは無縁の行動をしているエーデルにスワイの親バカ要素が入っていると思った。
ディーナとスワイも階段を降りていく中でクロカは再度胸の辺りを握り「大丈夫、絶対に、終わらせなきゃ」誰にも聞こえない小声で覚悟を終えて、走ってディーナ達に合流した。
----------
"アフィシャル"内部では突然来た侵入者に焦り戸惑いを隠せない白衣を着た女性の研究者達が慌てふためいていた。
「何者なんだ!あの作り上げた"マリー"達を壊滅させるなんて!!」「知らないわ!とにかく今動かせる"マリー"を総動員するわ!数さえいればたった三人の侵入者如きに…」
数十人の研究者達は慌て冷静さを欠いていると「落ち着きなさい。たかが三人ですよ、私達が落ち着かなくてどうしますか」
白衣の研究者達を一斉にまとめあげる女性。「シラー様。しかしこの後はどうされますか?」「あの出来損ないを解放しなさい。不完全とは言え侵入者を殺す程の力はあるはずです。それに侵入者達と戦わせて実体験でのデータも取れます、早くしなさい。"アフィシャル"があんな奴ら共に落とされるなんて、あってはなりません」
女性の言葉で一気に引き締まる"アフィシャル"の研究者達、それぞれの役割があるのかその場を離れて不完全な何かを解放する準備を進めた。
「シラー様、侵入者の二名の詳細が分かりました」一人の伝令が資料のような紙を持ってシラーと言う名前の女性に渡した。
「"リンドウ"?二つ名、"奇術の属性弾"のディーナ。"リンドウ"如きが何故ここに?」ディーナの資料に目を通した後に二枚目の紙を見るとシラーは驚いた顔をした後に不気味に笑った。
「フフフッ…あちらから戻ってくるか。それならば会うのが楽しみだな、クロカよ」そう言って紙を投げ捨てたシラー。
----------
一方で第四支部内がかなり騒がしくなっていた。研究者達は慌てて声を荒げる女性もいる。
そんな中である部屋でベッドで優雅に眠る一人の女性がいた。女性は緊急事態の中でも無防備でタンクトップに下着だけ着ているだけであった。
しかしさすがに騒がしくなっていた支部の中で眠るのが困難になったのか目を覚ましてゆっくりと体を起こした。だがまだ眠たそうな目をしていた。しばらくして両手を上げて大きく伸びをした後に目を擦りながら「なんだい騒がしい。人が徹夜をした後にゆっくりと睡眠を嗜んでいるというのに」
女性はベッドから立ち上がって部屋の中にある洗面所まで行って顔を洗って歯を磨いた。口をゆすいだ後に櫛を手に取って長い白い長髪の寝癖を直した。
寝癖を直した後に長い後ろ髪の半分を持って器用に編み込んでいってヘアゴムで結んで三つ編みにして前に流した。
部屋に置いてある机と椅子の椅子に座って飲みかけの缶コーヒーを手に取って飲んだ。
「騒がしいのはいつも通りだが今日は少し妙だねぇ。ここにいる全員が慌てているように見えるが、何かあったのか?」さすがに支部の異常に気がついて疑問視しした女性。
すると部屋の外から「急げ!あいつを解放するんだ!」「分かっているわ!三人だけの侵入者にこいつを使わされるなんてね」
「つべこべ言うな!一人は"リンドウ"のディーナだ!数々の"マリー"を殺してきた"リンドウ"のスペシャリストの一人だぞ!こっちも総動員で迎え撃たないとな!」
外から流れる会話を聞いた女性はニヤリと笑って「へぇ~"リンドウ"がここに来ているのね。それに中々の実力者、これは中々興味深くて面白そうな事になりそうだねぇ」
----------
長い階段を降りた三人と一匹はドーム型の広場のような場所にたどり着いた。しかし辺りは薄暗く満足に見える状態ではなかった。
「広いって分かるけど暗いわね。こんな場所で実験してるの?」「さぁな。どこかに繋がる場所があるはずだ。暗くて分からんが壁に手を当てて進んだら扉ぐらいあるだろう」
そう言ってエーデルは壁に手を当てて歩き始めた。
「ここ、ウチの記憶が正しかったら、ここは…」何かを察したクロカは全員に声をかけようとした時、突然広場に明かりがついた。
明かりがついた事で辺りが見渡せるようになって、ディーナはキョロキョロと見渡すと、そこは壁一面真っ白で何も無い空間が広がっていた。エーデルが言った通り何も無い空間だったがどこかへと繋がるような扉も一つぽつんとあった。
エーデルは壁から手を離して扉に向かって歩き出すと、扉が突然開き鎧を装着した"マリー"が一匹入ってきた。しかし先程の鎧の"マリー"とは違い、鎧も黒く染められており、盾は同じだったが持っている武器は西欧の槍になっていて明らかに一緒の人工"マリー"ではなかった。
エーデルは違う人工"マリー"でもお構い無しに人工"マリー"の足元に亜空間は出現させて「私の歩く道を邪魔するな」と言って腕を振り上げて人工"マリー"を討伐したように黒い棘で穿こうとした。
しかし、棘が出てくる前に人工"マリー"は槍を突き立てて猛スピードでエーデルに向かって槍を突き刺そうとした。
驚くエーデルを服の襟を持ってスワイが真上に飛んでギリギリ槍を避けた。猛スピードで突っ込んだ人工"マリー"はそのまま進んで行き壁に槍を突き刺した。
スワイはエーデルをディーナとクロカの元へ運んでいき降ろした。「ふぅ間一髪だった。ウチがいて助かったでしょ?」「お前がいなくても何とか出来た。あまり調子に乗るなよ」
助けた礼を言わないどころか皮肉を言うエーデルにスワイはガミガミと怒るがエーデルが聞く耳を持たずにディーナに「さっきの奴らとは違うようだ。どうやら本気で私達を殺そうとしているようだな」
ディーナも白の拳銃、ローゼンを手に持って銃口を人工"マリー"に向けて「強化体みたいね。ここで私達を止めて中には入らせないつもりなんでしょう。私達勝てればの話だけど」
クロカも鎌を手に持って「ここは実験場の一つ、ウチもここで実験体にされる人を見たことがあるの。主に無抵抗の人をここで作られた"マリー"の力を見るために殺される。だから破棄するのも外に一番近いここなの。この"マリー"もウチらも実験としている」
「こんな状況でも実験しようって言うのね。まぁいいわ、それも今日まで、私が全部ぶっ壊せばいいから」人工"マリー"は槍を壁から抜いて振り返って三人に槍を突き立てた。
先に進むために三人は人工"マリー"と対峙するのだった。




