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カエデ  作者: アザレア
若き国の依頼
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大手の依頼

廃園の"マリー"討伐を終えて数日、ディーナの事務所には少しづつではあるが依頼が増えてきていた。

というのも最近は事務所を開けてあり電気もしっかりと付いている、腕利きの"リンドウ"が営業している店として巷では噂になっている。


そもそもディーナは"リンドウ"の界隈ではそこそこの有名人であり、名は知っているがどこで依頼をすれば分からない状態にだった。その人が店を経営しているとなれば依頼が来るのも当然である。

この日も依頼を終えて帰宅して来た所である。


----------


「うぅ〜ん、疲れた」徒歩で事務所まで帰っているディーナは歩きながら伸びをしていた。「依頼が続くのはいいけど疲れるなぁ。やっぱ週休四日は欲しいかな、三日働いたから明日はゆっくり出来るかな」


しばらく依頼が続くことが無かったこともあり体が少し訛っており週休四日と言う一般人よりも休みを求めるディーナである。


そう思っていると事務所に着いていた。「ただいま~」と、事務所の扉を開けると「お姉ちゃん、お帰り!」と玄関にいたフェリスが出迎えた。


「今日も留守番偉いね」ディーナが依頼を受けると同時にフェリスも事務所に一人でいることが増える。初めはついて行きたいフェリスだったが危険な場所と促して留守番を頼んでいる。


ディーナが帰ってくるまでは一人のフェリスで、最初は一人でかなり寂しくて帰ってきたディーナの傍から離れないこともあったが今は一人でも居られるようでディーナが帰ってくるのを待ち遠しくしている。


「うん、お姉ちゃんがお仕事で大変だったらフェリスも一人でいられるよ。でもこうやってお姉ちゃんが帰ってきたらフェリスも嬉しい」少しだけ恥じらいながらも本音を言うフェリスをディーナは目線に合わせて「私もそう言ってくれたら嬉しいよ」二人はお互い笑いあった。


「それに、今日は一人じゃなかったから寂しくなかったよ」「えっ?」事務所に入ると隅に置いてあるソファにヴァレアが足を組んで座っていた。武器である刀をソファに寄りかけていた。


「あれ、なんでいるの?ヴァレア」「依頼終わりで悪いが仕事の話だ」「仕事?悪いけどほか当たってくれない?最近依頼続きで・・・」ディーナの話を聞かずにヴァレアは立ち上がり手に持つ丸めてあった紙を広げた。


「大手の依頼、国から"リンドウ"への救援要請だ」

一気に表情が険しくなるディーナは「それは、しのごの言ってる場合じゃないね」そう言うといつもの椅子に座り「依頼の内容は?」と、いつも以上にやる気のディーナ。


雰囲気の違うディーナにフェリスも戸惑っている。「今すぐに行く訳ではない。明日の早朝に出発する。そう身構える必要は無い」「なんだ、ヴァレアが事務所にいるから今すぐだと思ったんだけどね」

「連絡がつかなかったから来ただけだ」ヴァレアはデスクに依頼文を置いた。それを手に取るディーナ。


「今回は国から私に依頼が来た形になる。国の名はエニー、"マリー"の目撃例も少なく至って平和な国ではあったが最近になって"マリー"が国に現れるようなり住民達が襲われているようだ。"マリー"の種類は三つ、人型、動物型、異形型。毎日この"マリー"達が襲撃している。それに種類は一種類だけ、ほかの二種はその日は来ない。

何かの法則があるのかは分からないが、国の防衛だけでは限界が近い。そこで・・・」「そこで私達"リンドウ"の出番ってことね」「そういうことだ」


ディーナは依頼書をデスクに置いて「にしても、国の要請とは言えヴァレア一人でどうにか出来る規模だと思ったけど私に協力を求めるなんて、急に自信でも無くなった?」


「先に話だけ聞くためにエニーに行った。状況を聞いて私一人でも問題は無かったがせめて三人の"リンドウ"は欲しいと頼み込まれてな、報酬を増やす条件で私を含めた三人で"マリー"を討伐する」

「心配性な国の偉いさんだね。ヴァレア一人でもどうにかなるのに、私も来たら大変だよ?凄腕の"リンドウ"さんだよ」「今からでも他の"リンドウ"に頼んだ方が・・・」「ごめんなさい協力させてください」


しかし、ここでディーナがふと疑問に思った。

「三人ってことは私とヴァレアともう一人もいるの?」三人の"リンドウ"と言うことはもう一人必要である。


「ああ、既に連絡は済ましている。現地集合だ」

「ヴァレアが誘う"リンドウ"って結構な実力者?」「別名はついているほどの活躍はしている。ただ、お前と合うかどうかは分からないがな」

「大丈夫でしょ、誰とでも友達になれるから」「だといいがな」


大方の事情が分かったディーナはまだ少し怯えているフェリスをこっちに来るように手招いた。フェリスはよく分からないままディーナの元まで来た。


「国絡みってことは結構な長期戦になるってことよね?」「"マリー"の討伐、"マリー"が何故頻繁に現れるかの調査、今後の危険かあるかどうかも調べなくてはいけないからな。数日は帰れないだろうな」


「フェリスも連れて行っていい?さすがに事務所に留守番も数日間は出来ないから」留守番が出来るとはいえまだ一人でもしばらくいることは不安なディーナはフェリスも連れて行くことを提案した。


「問題ないだろ、国には私から言っておく」あっさりと同行を許可した。即答だったためか戸惑うディーナ。

「早過ぎない?考える間もなく、一応その国は危険なんでしょ?フェリスみたいな気弱な子を・・・」

「お前が提案したことだろ。大丈夫だ、三人の"リンドウ"が国もフェリスも守る」「・・・まぁ確かにそうだね」


ディーナはフェリスに「明日から違う場所で寝泊まりすることになるけど、フェリスにとっても良い経験になると思うし違う文化を見るのも悪くないことだよ」


ディーナの裾をずっと掴んでいるフェリスは少し俯いて「・・・お姉ちゃんと、一緒なら、フェリスはどこにだって行くよ?だって、お姉ちゃんはフェリスの家族だから」


初めてディーナを家族と言った。フェリスとディーナの間で深まった絆、家族の一言はそれを意味していると言っても過言ではなかった。


ディーナは家族と呼ばれて驚いて、とても嬉しかった。今まで感情表現は豊かではあったが言葉でディーナの事をどう思ってるかは分からないままだった。そんな中で家族と呼んでくれたフェリスを優しく撫でて微笑みを見せた。


「それじゃ、決まりで。現地集合にする?」「場所が分からないだろ。ここから少し遠い、電車で行くのが手っ取り早い。案内はしてやる」


そう言うとヴァレアは何故かソファに座った。

「どうしたの?」「今日はここで寝る、いちいちホテルを探すのも面倒だ」「ここで寝るの?いや別にいいんだけど」

「二階にフェリスのベッドがあるだろ、三人が寝れるスペースはあるはずだ」「いやいや私は普段そこで寝てるんだけど」「椅子で充分だろ、明日に備えてさっさと寝ろ」


そう言うとヴァレアはソファに横になった。顔を見せないようにディーナ達とは逆に寝た。

「ちょ、ちょっと!」既に寝息を立てて寝ていた。「寝るの早っ!まぁヴァレアは依頼終わりだからちょっとは疲れてたかな・・・疲れ知らずだと思うけど」


ずっと裾を掴んでいたフェリスも「明日は早起きしないと、フェリスももう寝た方がいいのかな?」話を聞いていたフェリスも空気を読んだらしい。

「そうだね、起きないとヴァレアがうるさいだろうし、今日はもう寝ようか」「うん、明日は頑張ってねお姉ちゃん!」

こうして、二人もすぐに寝入り明日の依頼に備えることに。


----------


翌朝、フェリスとヴァレアは予定通り起きたがディーナは雑誌で顔を隠しながら寝ていた。その後、ヴァレアにかなり怒られたのは別の話。


三人はエニーに向かうため電車に乗り込んだ。四人がけの席で、お互い向かい合う形で座っておりディーナとフェリスは隣同士。ヴァレアは一人で足を組んで窓際に肘をついて手で顔を支えながら目を閉じていた。


「うわぁ、すごい!こんなに速く進む乗り物あるんだ、フェリスが走っても絶対に追いつけないよ。それにこんなに速いのに景色も見れる、色んな風景が見れてすっごく楽しい!!」初めて電車に乗ったフェリスは見える景色にとても感動していた。純粋無垢な心だからこそこんなにも楽しめるのだろう。


「楽しむのは何よりだけど、他のお客さんもいるから大声を出すのはダメだよ」しっかりと社会のマナーも教えるディーナ。「あっ、ご、ごめんなさい。フェリス、ダメだね。周りのことも考えずに一人で騒いじゃって・・・」


怒られて反省すると同時に落ち込むフェリスにディーナは「別に怒ってないよ。初めてはテンション上がるのは普通だよ。私だって初めて乗ったら興奮するよ」「テンションって何?」「テンションって言うのは・・・何て言ったらいいんだろ?改めて説明するって結構難しい」


テンションの意味について考えていると突然ヴァレアが口を開いて「気分が高揚する、意味合い的にはそう呼ぶ。だがテンションは元々不安や緊張を表す言葉、意味を間違って使っている場合もある。一般化している言葉だから、気にしなくてもいいがな」


言葉の意味を提唱した。「起きてたの?急に喋ったからビックリしたよ」「ウトウトはしていた。私もそこまで早起きは得意ではないからな」「寝過ごした私をめっちゃ怒ったくせに」「関係ないだろ」


フェリスは言葉の意味を詳しく説明したヴァレアにオドオドはしていたが「そんな意味なんだ。あ、ありがとう、ございます」しっかりとお礼した。「気にするな」


しばらく電車は進み目的地まで近づいているとディーナはあることを聞いた。

「現地集合の"リンドウ"ってどういう人?」一切もう一人の"リンドウ"について聞かされていないディーナはこの電車の中で聞くことに。


「一言でまとめれば、お前と逆」「どういうこと?」「真面目すぎる、と言ったらいいだろ」

「ちょっと、それって私が不真面目って言ってるってこと?」「お前が真面目なわけないだろ」


するとディーナはフェリスに「フェリスはちゃんと分かってるでしょ?私が真面目ってところ」「えっ、お姉ちゃんが、真面目・・・えっと、お姉ちゃんは優しくてフェリスに普通に接してくれてる、でも真面目・・・」


明らかに困るフェリスに「ごめん、私が悪かった、この話は忘れて」ディーナもそれなりに困ったようだ。

一つの質問にここまで困るフェリスを見てヴァレアは口には出さなかったが「純粋無垢だな、ディーナに悪い影響を受けなければいいが」今後のあり方を心配していた。


こうして電車に揺られてエニーへと向かった三人。彼女達を待つ国の状況とは、果たして。

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