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カエデ  作者: アザレア
感情の解答
47/86

さくらんぼ

ヒガンと名乗った女性。ヒガンは煙管キセルを吸って吐きながら「"リンドウ"のディーナじゃな。お初に目をかけるが良き顔をするのう。わっちの目に留まるだけはある」


「それはどうも。ヒガンって言った?私に頼みたい依頼ってどういう"マリー"退治?」"リンドウ"である以上ディーナに来る依頼は"マリー"討伐であるため、ヒガンからの依頼も"マリー"関係であることは確信していた。


しかし一つ違うとすれば「人間の形をした"マリー"のような化け物。クロカはそう言ってたけど、詳しく聞かせてもらってもいい?私も思い当たる節があるから」クロカの依頼主であるヒガンは必ず詳細を知っている。あの鎧の"マリー"についても何か知っている可能性が高いと思っている。


「そうじゃのう。一から説明するが、まずは客人をもてなさんとなぁ。クロカ、菓子の準備じゃ。食卓に並べるんじゃ」「分かったの。すぐに準備するの」クロカはすぐにロウソクが何本か灯っているがまだ少し薄暗い部屋の中で歩いてどこかに行った。


「主らはそこの椅子に座っておけ。客人に手間はかけさせん、少々だが待っておれよ」煙管(キセル)を矢印代わりに向けた方向には木の食卓と椅子が置いてあった。薄暗くてディーナとフェリスは気がついていなかった。


「この人、主らって…フェリスの事をちゃんと認識していたのね」ディーナの後ろに隠れて影が薄い、さらに服装は黒を基調、髪色も紫黒のため薄暗い部屋の中ではフェリスの存在を確認するにはよく観察しないと分からない。

しかしヒガンはしっかりとフェリスの事を認識して主らと言っていた。


ディーナの目から見て怪しさ満載であったヒガンだが観察能力は他の人よりも高いと分かった。だがまだ不信感が拭えないディーナ。


「それじゃお構いなく」ディーナとフェリスは置いてある椅子に座ってくつろいでいると、クロカがお盆に四人分のグラスとアイスペールと呼ばれる氷を入れる器、透明色の瓶に入ったブルーハワイ色の炭酸を持ってきた。

クロカはお盆を机に置いてグラスをディーナとフェリスの前に、向かい側にも二つ置いてアイスペールからトングで氷を取りだしてそれぞれのグラスに一つずつ入れていった。氷の形も木の実を模した形をしていた。瓶に入った炭酸を四つのグラスに均等に入れた。


炭酸を見るのが初めてだったフェリスは「お姉ちゃん何これ?お水がなんだかシュワシュワしてるよ」不思議そうに見つめるフェリス。好奇心が今の環境よりも勝っているフェリスに微笑んで、先にディーナが炭酸を飲んでしっかりと毒味をした。

「甘い、ソーダのようね。それになんだか口の中に甘さが広がるけど甘ったるいようなくどさは無くてすごくスッキリしてる。それにこの氷も簡単には作れないぐらいこだわってる。初体験のフェリスでも大丈夫そうね」


一口飲んでグラスを机に置いて「フェリスも飲んでみる?美味しいよ」ディーナが飲んで美味しいと分かったフェリスはグラスを両手に持って恐る恐る一口飲むと、炭酸の刺激で口をすぼめて一瞬身震いをした。

飲み込んでグラスを両手に持ったままディーナに「すごい、不思議な感覚。でも甘くて美味しい」初めての炭酸に感動を覚えたフェリス。


「口に合えば何よりじゃ」そう言いながらヒガンはディーナ達と向かいの椅子に座った。

「何処で飲んだかはもう忘れてたがのう。あの時初めて飲んだそれがとても舌に残ってな、わっちなりに再現してのう。味はその時とは違うだろうがそれなりの出来じゃ」

「貴方が作ったの?」「ああ、菓子作りは得意でのう。それもその要領でやってみれば案外上手くいってのう」

見た目では想像出来ない菓子作りが趣味のヒガンに少し関心を持つディーナ。


そう言いながら煙管(キセル)を吸うヒガン。吸った煙をディーナ達から顔を逸らして吐くがディーナが「あんまりこの子の前で煙草を吸わないでくれる?悪影響になっちゃうかもしれないでしょ」まだ子供のフェリスの前で煙草を吸うのは悪影響で煙草の煙を少しでも吸わせたくないディーナ。


指摘されたヒガンはフェリスを見て少し間があった後に「それはすまんのう。気をつけるさ」と言って振袖に煙管(キセル)を入れた。


「お姉ちゃん、ひ、ヒガンさんが吸ってたのって何?」初対面の人の前でもある程度はディーナに話せるようになってきたフェリスだが、まだぎこちなさが人前では出てしまう。


「あれは…」ディーナが説明しようとすると「煙管(キセル)というものじゃ。俗に言う煙草と同じじゃがどちらでもよい。わっちは吸っているがあまり吸うものではない。身体が悪くなってしまう」先にヒガンがフェリスに説明をした。


「あ、あの…こ、こんにちは、フェリス・あ、アスルロサです」必ず初対面の人には挨拶と自己紹介をするようになったフェリス。確固たる成長を見せるフェリスにディーナは満足気になっていた。

「主はフェリスじゃな。わっちの方こそよろしく頼むよ」ヒガンは挨拶をしたフェリスに対して微笑みを見せた。


「お待たせなの、持ってきたの」クロカの手には小さなホールのチョコレートケーキを持ってきて机の中央に置いた。置いて小走りでどこかに行くと四人分とお皿とフォークと包丁を持ってきて、包丁でチョコレートケーキを十字に切って四つに切ると包丁を支え替わりにして崩れないようにケーキを一つずつお皿に乗せていった。


「ヒガンが作ったチョコケーキなの。召し上がれなの」そう言うとようやく一仕事終えたクロカはヒガンの隣に座った。「ご苦労じゃった。洗い物はわっちがするから置いておけ」「分かったの、ウチはケーキを食べるの」


かなり綺麗な見た目をして洋菓子店で売っているケーキ遜色ないほどの出来をしている。「これも貴方が作ったの?」「いかにもじゃ。これはよく出来ているじゃろう?チョコの他に酸味の効いたさくらんぼも入れて調和をとっておる。食ってみろ、自信作じゃ」


クロカはディーナ達よりも先に食べていてとても幸福そうな顔をして笑っていた。フェリスよりも先にディーナはフォークでケーキを割ると断面はチョコのスポンジと苺ではなくさくらんぼが入っていた。

ケーキの切れ端を刺して、口に運び食べてみるとディーナは驚いていた。


「美味しい。チョコの甘さも程よくて、さくらんぼの食感もすごくマッチしてる。苺じゃなくてさくらんぼを入れるって斬新、センスが無いと出来ないことよ」そう言ってさらにケーキを口に運ぶディーナ。


「フェリスも食べてみなよ。美味しいよ」ディーナが先に食べて後にフェリスも小さく一口サイズにケーキを切って食べると「美味しい!フェリスこんなの食べたことないよ!」とても喜んでいた。


二人の喜ぶ姿を見てヒガンも笑って「そこまで喜んでもらうとわっちも少しは照れてしまうのう」微かにだが頬を赤く染めるヒガン。


だがフェリスはさらに一口を小さく切って食べるとそこから食べることはしなかった。その様子を見たクロカは「やっぱり口に合わなかったの?美味しいって言うのは嘘?」美味しいものを二口だけで済ませるフェリスに嘘をついたと思っているクロカ。


「それは違うよ。フェリスは本当に少食なのよ、一日に一つのクッキーだけで満足するらしくてね。私も心配になってもう少し食べることを勧めたけど、二口三口以上食べると戻しちゃってね。人間の体質だから、あれやこれやを言えないよ。それでもフェリスが満足出来ればいいと思ってるから」

食べる物全て美味しいと言うフェリス。美味しいと言った時の顔はとても笑顔のため嘘はついていないと思っているディーナ。フェリスにご飯を一口だけではなく三口程食べさせるとそのまま吐いてしまったこともある。

それ以降はフェリスは不思議な体質だも思い込むようにしている。現にフェリスは健康そのもので体重もほとんど減っていない、食べ物を本当に無駄なく体内でエネルギーに変えているとディーナは自己解釈していた。


「ご、ごめんなさい、美味しいけど、これ以上は気持ち悪くなっちゃうから…フェリスももっと食べたいけど…」

多く食べれないフェリスはどうしてもこれ以上は食べられない事に罪悪感を感じていて少し落ち込むがヒガンは「そればかりは仕方がない。ケーキを美味しいと言ってくれただけでわっちは満足しておるよ」励ましの言葉を言うヒガン。


まだ会って数分だがヒガンの言動やもてなしを見たディーナは「まだ分からないことだらけだけど、初対面の私達にこんなにもご馳走をしてくれて、言葉も嘘をついてるようには見えない。クロカもヒガンには完全に警戒心を解いてる。独特な服装や言動だけど、悪い人ではなさそうね」

ヒガンの笑っている顔を見て作っている笑顔ではなく、純粋に嬉しくて笑っていると感じたディーナ。そのまま四人は軽いトークをしながらケーキを食べていた。


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フェリスが食べきれなかったケーキはクロカが貰って四人はケーキを食べ終えた。ヒガンは食後の一服とと言って部屋から出て外で煙管(キセル)を吸いに行った。

ディーナがクロカが食べ終えた皿を片そうとしている時にディーナが「さすがに私が片付けるよ。一宿一飯ではないけど、お世話になりっぱなしはちょっと性にあわないから」そう言ってディーナがシンクに皿を置いて洗い始めた。


そうしているとヒガンが戻ってきて「なんじゃ別に置いてもらって構わなかったのじゃが」「これぐらいはね。美味しいものを食べさせてくれたお礼だと思って」

ヒガンは洗うディーナの後ろを姿を見て「フッ、良き母になりそうよな」「まだそんな歳…でもあるか。もう若くないからね~」


洗い物を終えて机に戻りディーナは「それじゃあ出張Dina's hideout、今回はどのような依頼を?」仕事モードに入ったディーナはここから本題に入ることに。


「なに、"マリー"退治には変わらん。だが、少々他とは勝手が違ってのう。お主にはある組織を壊滅させてほしいんじゃ」穏やかだった顔をしていたヒガンだが依頼の話になると、一つ声のトーンを落とした。


「ある組織?それが"マリー"とどう関係あるの?」

「その組織は"マリー"を捕え自らの組織の都合のいいように改造する。主らが"マリー"を討伐し世界を守る側の人間"リンドウ"であれば、奴らは"マリー"を捕え"マリー"をいいように扱い属性を掠め取る対反乱組織、それが"アフィシャル"じゃ。今の世界に仇なす存在の一角じゃ」「"アフィシャル"、世界の反乱組織…」


ディーナはふと思い出した。『敵は"マリー"だけじゃない』あの時エーデルが言った言葉が今となって体現する、ヒガンの口から出た反乱組織"アフィシャル"、ディーナの過去の鎧の"マリー"の全貌が明らかになり始めようとしていた。

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