新たな力解放
時が少し遡り、ディーナ達が超大型"マリー"と戦闘を繰り広げる中、ヴァレアはルムロ王宮の屋上に静かに佇んでいた。
ヴァレアの他にルムロの王女ネルルとエニーの国長タイムも一緒にディーナ達の帰りを待っていた。
屋上に来てから一言も話さない三人。緊張感が漂う中で、タイムが「あ、あのヴァレアさん」「なんだ?」タイムの顔を見ずにただ一点を見つめるヴァレア。
「ヴァレアさんは、ディーナさんの加勢には行かなくてよいのですか?ヴァレアさんも赴いた方がもっと勝てる可能性が上がるのでは…」タイムは前線に立たないヴァレアにずっと疑問に感じていた。二つ名である"最強のリンドウ"の称号を持つヴァレアが行けばすぐに勝てるはずではないかと思っていた。
「もし私が加勢に行って全滅したら誰がここを守る?ディーナ達が万が一戻らない可能性があるのなら、私は殿としてここに残らないといけない。戦いは常に最悪の場合を考えて行動する、これが私の最適の行動なんだ」
"リンドウ"達を信じていない訳ではない。だがそれでも強大な"マリー"の前に殺される可能性は充分にある。もしその最悪の可能性が引き出されてしまった場合はヴァレアが最後の砦として立たないといけない。だからこそヴァレアは前線に立つことはしない、いや、出来ないのだ。
「す、すいません。戦いに関してはまったくの無知ですので、口を挟んでごめんなさい…」ヴァレアならではの考えを理解出来なかったタイムは頭を下げた。
「気持ちは分かるぞタイムよ。だが私達が焦っていても仕方がない。現場にいるのはディーナやシスイじゃ、彼女等が戻ってくるまでは目を背けてはいけないからな」ネルルはタイムの目の前のためもう一つの殿下としての側面を見せていた。
国の命運がかかっている戦いには参加は出来ないネルルだがこの国の王女として、彼方へ戦っている"リンドウ"や兵士から目を背けずにただ帰りを待っていた。
大国を統べるネルルの姿に感服したタイムは一度目をこすり、エニーの国長として、自分も彼方の先にいる"リンドウ"達を見えずともずっと見ていた。
すると、屋上の扉が勢いよく開いた。ネルルとタイムは同時に振り返り、ヴァレアは顔だけ振り返った。そこにはケイが立っていた。
一礼したケイは走ってネルルの元に近づき、胸に手を当て膝をついた。
「どうしたケイ、何かあったか?」「伝令です。超大型"マリー"に接触した兵士二名が戻ってきました」
この報告にネルルとタイムは驚き「それじゃディーナ達は?」
「二人から話を聞くと、超大型"マリー"はすぐさま現場にいた"リンドウ"と兵士、計五名を殺害。二人はスイレンさんのおかげでなんとか無事。そこでディーナさんからこのルムロに戻るようにと指示を受けた模様。言伝として援軍は無用とのことです」
「援軍が無用…ってまさか残った三人で超大型"マリー"を討伐しようとしているの!?そんなの私が許さない、すぐに残っている兵士を現場に…」聞いただけではどうしても無謀な挑戦にネルルは怒り、ルムロに残った兵士を現場に送ろうとしたがすかさずヴァレアが「待てネルル!ディーナが援軍は必要ないと言ったのなら、こちらからは人員を送るな」
ヴァレアに止められたネルルは「何を言っているの!たった三人で超大型"マリー"を打ち破れると思ってるの?皆ヴァレアみたいに最強なんて呼ばれてないのよ、少しでも助けになるならすぐにでも援軍を向かわせないと!」タイムの前だが思わずに自分の素が出てしまったネルル。
非情の判断を下しているヴァレアだが「ケイの話を聞いていたか?この数日間血の滲むような訓練を耐え抜いた兵士と"リンドウ"が一瞬で殺られたんだ。付け焼き刃の実力ではどうしようもないとディーナは判断したんだ、これ以上無駄に命を散らさないように配慮しているんだ。あいつらの気持ちを踏みにじるな」
ディーナの考えを瞬時に分かったヴァレア。超大型"マリー"の力は想像以上、それを裏付けるように五人の命が無くなっている。援軍を送ったところで返り討ちにあうのは目に見えている。
ネルルはディーナの考えを理解し、下唇を噛み締めた。「ケイ、先の発言は無しだ。…兵士達ではどうしようも出来ないのだ」悔しさを滲ませていた。
「クラウン様…」それは同じ国を持つものとしてタイムの気持ちも同じだった。
悔しさを顔に出すネルルを見たヴァレアは再びを彼方を見て「チハツ、まだか」口には出さずにチハツの名前を出した。
「ネルル様…かくなる上は私が!」ケイがどうしようも出来ないネルルに代わり自分が現場に向かおうとした時だった。
再び扉が勢いよく開いた。しかしあまりの勢いに扉が外れてしまっていた。入ってきたのはルムロに残る兵士達であり、かなり大きい黒い大砲が持ち込まれた。一つではなく、残っている兵士達全員分の大砲があり全てで十五個の大砲が屋上に持ち込まれた。
ヴァレア以外の三人が突然の事に驚き、ヴァレアは大砲を見た瞬間にニヤリと笑った。「間に合ったか、さすがの仕事の速さだ」すると、扉を壊した張本人であろう人物が屋上に来た。
「ふわぁ」と大きな欠伸をしながら「まったくよ、こういうのはもっと事前に発注してくれ。二日前に十五個の"マリー"に対抗する物を作ってくれなんてな、漠然としすぎて考えんのに三十分掛かったわ。設計や制作合わせて二徹しちまった、遅れたなんて文句は言わせねぇぞ」
屋上に現れたのは目元にクマが出来ているチハツとその後ろにいるフェリスだった。
チハツに近づくヴァレア。「間に合うか間に合わないかの瀬戸際だったんだ。急速に頼んでの仕事の速さは見事だ」
「当たり前だろ、アタシを誰だと思ってるんだ」
状況が呑み込めない三人。「ちょ、ヴァレア!どういうこと!何この大砲は、チハツにこれ全部頼んでたの!?」ネルルは報告を受けていないことにさすがに戸惑いを隠せないでいた。
「すまんな、これは私達"リンドウ"で決めた事なんだ。好機が来た時に秘策としてチハツに頼んだ武器で応戦する。超大型"マリー"にしても外部からの奇襲には即座には対応出来ない」
「アタシが創ったんだ。これ以上ないぐらい威力の大砲を創り上げた。寝ずに二日掛かったが強度や精度、"マリー"を吹っ飛ばせる威力は保証してやるぜ」
"リンドウ"達で決めたことと言っているがそれならケイにも報告した方が良いと思ったネルル。それはケイ自身も同じだった。
「何故私にも伝えなかったのですか?私も"リンドウ"ではありませんが戦力には充分な実力があると自負出来ますが」
「さっきも言ったが間に合うか瀬戸際だった。不確定な情報を伝える訳にはいかない、混乱を招いてしまう可能性だってある。だからこそ私達だけで情報共有をしていた、それでも間に合わせるのは、チハツの腕があるからこそだけどな」
「なるほど、私達に情報を流さないのは切り札であったとしてもそれが間に合わなくては意味が無い。過度な期待を負わせないためでもあったのですね、納得です」ケイはヴァレアの説明を聞いて大方は納得した。自分であればネルルに伝えてしまう可能性があるために、自分にも伏せていたのであることも察した。
「これを待っていたから人手が必要だったのですね。ヴァレアさんが全員を出撃させない理由は大砲を待っていたから…」「それもあるが、"マリー"の正体が分からない以上総戦力で向かわせるリスクは高すぎるからな」
ヴァレアの策にタイムは先の先まで読んでいるヴァレアに改めて感心していた時「ってか誰だ?ここにいるってことは王族の人間か?」タイムと初対面であったチハツ。タイムもチハツとは初対面のため「あ、えっと、私はタイム・ヨモギって言います。ルムロの近くの国、エニーの国長です」軽く自己紹介をした。
「エニーか、あんま知らねぇが聞いたことはある。ルムロと共闘してるってことか」「あの、貴方は…」タイムがチハツについて聞こうとしたが「紹介なら後だ。チハツ、大砲の発射準備は出来ているか?」気を引き締めるようにヴァレアがいつ合図が来てもいいように準備確認をしていた。
「大砲に付いている紐を引っ張ればアタシが込めた属性の球がぶっ飛ぶ、飛距離に関しても問題ねぇよ」「よし、すぐに準備しろ。いつ合図が来るか…」
ヴァレアが大砲の準備を進めるように兵士達に伝えようとした時、彼方の方に空に赤い煙が漂った。
赤い煙を見逃さなかったヴァレアは「頃合か、急げ!合図が来たぞ、一時の方向は向けて大砲を放て!!」
すぐさま兵士達は準備を始めた。赤い煙を見ていたフェリスは小さく「お願いします…お姉ちゃんや皆が無事に帰ってきますように…」空に向けて祈っていた。
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同時刻、赤い煙弾を撃ったディーナ。「ヴァレアならきっと気付いてくれる。後はチハツが間に合ってくれていれば、何かしらのアクションはあるはずよ」ディーナ達もチハツの武器が出来上がっているか分からない状態でもあった。
「信じましょう。チハツさんなら必ず何かしらは形にしてあるはずです」「チハツ様なら間に合わせているはずですよ~なんだかそんな気がします~」スイレンとシスイも確証はないがチハツを信じていた。
すると、ディーナ達の目の先に大砲のような球が複数個飛んできたのが微かに見えた。チハツが何を創っているかは分からなかった三人だが球を見た瞬間に大砲だと確信した。「大砲だったんですね!チハツさん特製の大砲であれば威力は絶大です!」
しかし"マリー"も大砲が飛んできているのを気がつき、その場から離れて大砲を避けようとしていた。
「まずい、"マリー"が気づいてる!"マリー"の警戒心、傷ついて再生している今しかない。チャンスがあるのは一回限り、これを外せば次は無いよ!」"マリー"の俊敏性や空を飛べる特徴からこの動きが鈍っている瞬間以外にチャンスを作るのは厳しいとディーナは二人に伝えた。
ディーナが白の拳銃のローゼンを構えた。しかし、ディーナが発砲する前にスイレンが息を吸ってからしゃがみ、左手を地面に置いた。
「私に任せてください。もう無様な姿は、ディーナさんに見せない!!」スイレンは左手を地面に置いた瞬間に"マリー"の周りから水が吹き出した。四方八方に"マリー"とほぼ同じ高さの激流が吹き出し"マリー"は一歩も動くことが出来なかった。
しかし囲んだ激流だが上空だけが空いており"マリー"はそこから脱出しようと翼を広げた。だがスイレンも脱出させるわけには行かず、地面に置いていた左手を振り上げると激流がどんどんとドーム状になっていき、"マリー"の逃げ場は完全に無くなった。
「これで逃げる場は無くなりました。"マリー"は大砲に確実に当たります」「さすがスイレン!でも大砲がバラバラ過ぎる、あれじゃ当たっても一発二発だけで…」どんどんと近づいてきている大砲だが"マリー"の直撃するのはせいぜい三発が限度、いくら強力な大砲でもほとんどが当たらなくては大したダメージにはならない。
「それでは私にお任せを~」シスイは両腕を広げた。「えい~」広げた両手を交差させた。
すると右と左に風が吹き出し、バラバラだった大砲の球が一箇所に集結した。大砲同士が当たらないように絶妙な距離感を保ちながら大砲を全て集結させた。
集結させた大砲が"マリー"にどんどんと近づいていき、"マリー"に当たる直前にスイレンは頃合いを見て握っていた左手を開けると、激流は即座に無くなっていき"マリー"は剥き出しとなった。
激流から逃げようと必死だった"マリー"は突如無くなった事に反応出来ず、大砲にも何も出来ずにそのまま十五発分の球が当たった。当たった瞬間に発火し、威力と量も相まって"マリー"一帯が焦土と化していた。
「すごいなぁ、二日であんな球作れるの?チハツの腕の高さが目に見えて分かるね」口には出していなかった。たった二日で超大型"マリー"に対抗出来る武器を創れるチハツを改めて凄さが分かった。
「二人共良い連携だったよ。チハツがどんな凄い物を創っても当たらなくちゃ意味がないもんね」「足を引っ張ってばかりではいられません。私も役にたたなければいけませんので」「スイレン様が動きを止めてくれたおかげで私は集めるだけで良かったです~」
集めるだけと言ったシスイだがディーナは「集めるだけじゃなくて球同士が当たらない距離感を保ちながら"マリー"に外さないように集めた。あれって考えなしにやってる事じゃないでしょ。繊細な属性を扱えるから出来る、でしょ?」あの一瞬で高度な扱いを瞬時にやり遂げたシスイの芸当を見逃さなかったディーナ。
「いえいえ~そこまで難しい事はしておりません~少々偶然でもありますが~」シスイの自己評価の低さにスイレンは「シスイさんはもっと自信をもってください。私はシスイさんの実力は正しく二つ名に相応しいと思っていますので」「そうですか~?お褒めに預かってありがとうございます~」
火だるまとなった"マリー"、膝と手をつき悶え苦しむ様子が三人には見てとれた。火が"マリー"の手によって消火されていき、至る所が焦げた"マリー"はもはや再生が追いつかないどころか再生が出来ない箇所も増えていき、追い詰めているのも三人は分かっていた。
「あと一歩です!絶対ここで討伐します!!」ここで逃がす訳にはいかないスイレン。両剣を構えて"マリー"に特攻しようとしていたが、ディーナがスイレンの前に腕を広げてスイレンの特攻を止めた。
「ディーナさん?どうして止めるんですか?」「焦りは禁物、油断は大敵よ。動きは鈍ってるとは言え、油断を誘って奇襲を仕掛けてくる可能性もある。スイレンが一人突っ込んでも討伐出来るとは思わないようにね」
速く討伐しなければと言う焦りからスイレンは冷静になっていない事に気がついたディーナはまだ"マリー"が何か隠している可能性もあるため、スイレンを止めた。
「す、すいません。また私は冷静さをかいていました」「でも気持ちは分かるよ。絶対に私は逃さないから」
ディーナもここで必ず討伐する気持ちだった。
「でもどうしますか~?私が先行してもよろしいかと思いますが~」風の属性を持つシスイは確かに先行するにはかなり打って付けではあった。
だが、ディーナは「実は私も隠し球を用意してたのよ。この場でお披露目しようかな」誰にも伝えていなかったディーナの隠し球発言にスイレンは「えっ!」と、分かりやすく驚き、シスイも表情には出ていなかったが内心少し驚いていた。
ディーナは目を閉じて息を吸い込み、目を開けると両手と両足に灼熱の炎が纏わりついてきていた。「でぃ、ディーナさん!?これはいったい…」あまりに唐突に炎が出現したためスイレンは動揺していた。シスイは「おぉ~」驚くことはせずに何が出てくるのか楽しみにしていた。
炎はどんどんと鎮まっていき、炎から現れたのは両手に狼の頭部を意識したであろう炎を纏っている籠手、狼の手足を意識したであろう炎を纏った具足がディーナの両手両足に装着されていた。
炎の籠手と具足にスイレンは「そ、それは、炎の属性が付与されている武器?」「すごいでしょ。これもチハツが創ってくれたんだ」炎が両手両足に纏っているディーナだがどうやら炎の熱さは一切感じていないらしい。
「チハツさんがですか?ディーナさんが発注をしたんですか?」「いやいや私じゃこんな発想まではいたらなかったよ。詳しい説明は省くとして、簡単に言うよ。
私が銃を創ってもらったと同時にチハツがもう一つ私専用の武器を創っていたのよ。それがこれ、名前はチハツが命名して"グロリオサ"って名前。チハツはこの武器に自分の炎属性を込めたてあるって言ってた」
炎属性を込めてあると聞いたスイレンだが「ですが、武器に属性を付与するのは使用者以外の人に渡れば例え同属性でも完全に同じ属性では無ければ属性が発動出来ないと研究などで明らかになっているはずです」
女性なら誰しもが持つ属性、基本的に六属性に分類されるが全く同じ属性はこの世には存在しない。同じ属性でも扱える力が変わってくればそれは別の属性になる。
炎属性でもライター程の炎しか出せなければ、辺り一面を炎で囲む事が出来る属性は違う属性になる。
強大な属性を持つ人間であれば自身が扱う武器に属性を付与させ武器にも属性を宿す事が出来る。だがこれは付与した属性を持つ人間にしか扱うことは出来ない。同じ分類の同じ属性でも、使用者以外が扱ってもその付与された属性は効果を一切出さない事が一般的であった。
「私もそれは知ってたけど、いざ装着してみると自分でもびっくり。チハツが込めた属性が私でも扱えるのよ。
原理とかは私もよく分からないけどチハツ曰く『アタシの見込み通りだな。全部の属性が使えるアンタならアタシの属性も使えるんじゃないかと思って属性を付与したが間違いなかったな。人間の常識ぶっ飛ばすアンタなら超大型"マリー"なんて余裕だろ。それでぶん殴ってくるのを楽しみにしてるぜ』って言ってた。
炎の属性を纏ったら武器も炎に収納されてくれるから、出し入れも便利なんだよね~」
前代未聞である。他者が付与した属性の武器を扱えるなんて。六属性を扱えるディーナだから出来ることかもしれないがそれでも普通ではありえないことである。
シスイはチハツの属性を扱うディーナに「これはすごいことですよ~チハツ様のお力をディーナ様が扱えますから~鬼に金棒とはこのことですね~」驚くのではなくその誰にも出来ない芸当に感心を示していた。
「それはありがとうね。それじゃあそろそろトドメと行こうか。スイレン、シスイ。"マリー"の動きを止めてくれる?再起不能ぐらいに。その後にスイレンが私と"マリー"同時に上空に飛ばして、シスイはさらに私だけをさらに上に飛ばして。ちょっと無茶だけど、二人ならやってくれるって信じてるよ」ついにディーナは"マリー"にトドメを刺すため全力で集中することに。
上空に飛ばす意図は二人共理解しスイレンとシスイは目を合わせて「行きますよ、シスイさん!」「りょ~かいです~。……今回はディーナ様を持ち上げてさしあげます」シスイも表情を一変して戦闘モードに入った。
スイレンは再び地面に手を置くと地面が水に覆われ始め、膝元程水が浸水し始めるとスイレンは水溜まりに飛び込み常人では出来ないスピードで泳いで行った。
どんどんとこちらに向かってくるスイレンを目撃した"マリー"は震える足で立ち上がり、巨大な手でスイレンを叩き潰そうとしたがスイレンのスピードに追いつけずに、スピードを活かしてトビウオのように水から出てきて手に持つ両剣で"マリー"の片足を斬った。
片足を斬られた"マリー"だが切り落とすまでは刃先が通らず足から血を流す程度だった。「さすがの巨体と硬さ、一振だけでは切り落とせない!」斬られた血をものともせずにスイレンの方に振り返りそのままスイレンを叩きつけようとした。
「前方不注意です」"マリー"が振り返った瞬間に風の力を借りて猛スピードで"マリー"の足元に来ていたシスイは気がついていない状態の"マリー"の片足に追い討ちをかけるように短刀で斬った。
追い討ちをかけた"マリー"の片足はついに切り落とされ、"マリー"は体制を崩した。足を切り落とさた"マリー"だが持ち前の翼で上空に逃げようとしたが、全て二人の計算通りだった。
スイレンは足元に自分を上空に上げる激流を吹き出させて"マリー"の高さよりも上空に飛んだ。シスイもその場から姿を消してスイレンと同様の高さまで姿を現した。
そして、二人は落下の速度と合わせて急降下して行き"マリー"の右翼と左翼を斬り落とした。
蓄積されたダメージはもはや再生機能全てを停止させるほどであり、足と翼をもがれた"マリー"は逃げ出すことも出来なかった。
スイレンは着地するとすぐさま地面に手を置いて「ディーナさん行きますよ!!」"マリー"の目の前まで来ていたディーナは「いつでも行けるよ!」の声と同時にスイレンは激流をディーナと"マリー"の足元に吹き出させた。
空高くまで打ち上げられたディーナと"マリー"。ここでディーナだけに風が纏い始め「ディーナ様、少々の荒らさはご勘弁ください」微かに聞こえたシスイの声がするとディーナだけさらに上空へ飛ばされた。
上空へと投げ出されたディーナは風が纏っているおかげかあまり空中での抵抗を感じずに体制を立て直して、籠手を装着した手を握ると灼熱の炎が纏わりついた。
風の力と落下の速度も合わせてディーナは猛スピードで"マリー"へ落ちていく。「Check」ディーナが"マリー"を討伐する際に言うお馴染みの言葉を呟くと、"マリー"の顔面まで落ちていき、炎を纏った籠手で"マリー"の顔面を殴り飛ばした。
その衝撃は巨体な"マリー"ですら地面に墜落しその場の地面が地割れ寸前になるほどだった。
すかさずディーナはフォーリーを取り出し落下しながら墜落した"マリー"に銃口を向けて「これでコート代はチャラにしてあげる、Checkmate」銃口から雷と炎が入り交じった弾丸が発砲された。炎は光線のように、その周りに稲光が走っていた。炎雷の銃弾は墜落した"マリー"に追い討ちをかけ、炎雷の威力の化学反応なのかその場が爆発し、土煙で"マリー"が見えなくなっていた。
着地した"マリー"は状態の分からない"マリー"に銃口を向けた。スイレンとシスイも武器を構えていた。土煙が晴れていき、"マリー"の状態を確認出来るようになった。
"マリー"は身体のほとんどが爛れ、大きな口から生えている牙も全て折れて、棘も全て折れて、何もかもが戦闘が出来る状態ではなくなっていた。
それは戦いの終わりを告げる光景でもあり、確認するまでもなかったディーナはフォーリーを懐にクルクルと回転させて後にしまい「超大型"マリー"討滅完了。私の新しい銃と力のデビュー戦にしては、上出来じゃないかな」三人の"リンドウ"の手によって超大型"マリー"は絶命し討滅戦は"リンドウ"達の勝利と終わった。




