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カエデ  作者: アザレア
属性の灯火
22/86

外道の始末

少し時が遡り、エーデルと二手に別れたディーナは二階の各部屋を調べていた。教室はどこも机や椅子が散乱しており元の学校の見る影もなくなっていた。


「酷いことするね、子供達の学び舎なのに。情って言うものが無いのかしら」改めてこの惨状を深刻に見るディーナ。しばらく部屋を調べたが特に変わった物も"マリー"の姿も見えない。


「何も無いし"マリー"もいない……やっぱり図書室に行くしかないか、気をつけろって言われたからあんまり行きたくなかったけどこればかりはしょうがないね」"マリー"がいたらそのまま退散しようと考えていたディーナは仕方なしに忠告を受けた図書室に向かった。


図書室に前に立ちキョロキョロと見渡した。「外見は特に無し、部屋の中ね」ドアノブに手をかけて開けると、至る所に本が散乱する所以外特に変わった様子はなかった。


図書室に入って辺りを見渡すが"マリー"の姿もない。「なんだ、スワイの勘違いだったのね」拍子抜けしたディーナは地面に落ちている本を手に取った。たまたま取った本の内容はどうやら"マリー"の事が書かれているようで、様々な"マリー"の特徴や被害等が書かれていた。


「子供が読む内容じゃないでしょ、私が"リンドウ"だから結構為になる事が書いてあるけど人が見たらトラウマになるよこれ」本には被害あった村や町の事が詳しく書かれてあり、"マリー"が襲撃する悲惨な状況が生々しく書いてあった。


その本に興味を持ち詳しく読んでいるディーナだが、何も音のしない廃校に足音が聞こえた。ディーナは一瞬エーデルかと思ったが足音は鎧を着ている兵士のように重く、「カチャ、カチャ」と言う音が響いた。


明らかにエーデルではないと判断したディーナは足音が止まった瞬間に銃を懐から取り出し後ろに振り返り銃を構えた。そこにいたのは"マリー"ではなく、全身に甲冑を着た人間だった。鎧の人間は1メートルほどある盾を左手に、レイピアような剣を右手に持っていた。


自分達以外にも人がいた事に驚いたディーナはすぐに銃を下ろして「ごめんなさい、てっきり"マリー"が来たと思っちゃったから」銃を向けたことに謝罪したディーナはその人間をそっちのけに後ろを向いて本を読み始めた。


「貴方もここにいる"マリー"を討伐しに来たの?だったらちょっと遅かったね、私ともう一人"リンドウ"じゃないんだけどその子がその"マリー"を討伐しに来たから貴方の出番はちょっとないかな。あっ、でももう一人"マリー"がいるって聞いてるからその"マリー"なら討伐しても全然いいからね。私的にもそっちの方がいいから」鎧の人間がディーナの話を聞いているかは分からないが淡々と話を続けるディーナ。


しかしディーナの話を聞いていないのか何も言葉を返さない鎧の人。「無口ね、他の"マリー"集中してるから余計に聞こえていないのかな?」自分なりに解釈したディーナは本を読み続けていたが、突然鎧の人間は右手に持つ剣をディーナに突き刺そうとした。


咄嗟に気づいたディーナは読んでいた本で剣を掴んだ。「どういうつもり、貴方が倒そうと考えてたの?でも、同業者が気に入らないからって殺そうとはしないんじゃない?」さっきまで明るく振舞っていたが武器を向けられたことにより敵対者と判断して、戦闘態勢に入っていた。


本で止められた剣を振るって、本を突き破った。ディーナは本から手を離して鎧の人間から少し距離をとった。突き破られた本のページが辺りに散らばり、ディーナは銃を再び構えた。


「今ならまだ許してあげるけど、どうするの?一歩でもこっちに近づいたら……」ディーナの警告を無視して鎧の人間はディーナに近づいていく。「私を殺そうとするのなら、そっちもその覚悟があるってことよね!」トリガーに手をかけて、完全に戦う気になったディーナ。


鎧の人間はディーナに近づくと再度剣でディーナを突き刺そうとした。「不意をついて当たらない攻撃が見えてたら当たると思う?」体を捻らせて剣を避けるとディーナは銃弾を三発撃った。銃弾はごく普通の銃弾で属性は込められていなかった。


鎧の人間は手に持つ大きな盾で銃弾を弾くと、盾を前に突き出してディーナに向かって走り出した。横にステップして突っ込んでくる鎧の人間を避けた。本棚にぶつかり並べてあった本が散らばった。


「物は大切にしなよ。本は遺産の一つだよ」聞く耳を持たない鎧の人間は振り返り、剣を構えた。「また来るの?悪いけど、同じだったら早々に決着つけるよ」余裕を見せるディーナだが、鎧の人間から微かに違和感を感じた。


「さっきとは何かがおかしいわね……ここって窓ガラスとか割られていないから風は入ってこない。けど、そよ風が一瞬吹いた。まさかっ!」何かに勘づいたディーナだったが次の瞬間鎧の人間から突風が吹き出した。手で顔を隠し風の影響を少しでも減らそうとする、立つことも困難になるディーナに、突風を利用して勢いを増しながら突っ込んでくる鎧の人間。


相手の来る速度を瞬時に理解し避けるのは不可能と分かったディーナは一瞬の判断で自分の近くにある大きな本棚を銃弾を数発撃った。すると撃った衝撃で本棚のバランスが保たれなくなり、本棚が倒れてきた。


地面に倒れる時、そこには鎧の人間がいた。鎧の人間は倒れてくる本棚に気づくことが出来ずにそのまま本棚の下敷きになった。突風は止んでいきディーナも安定して立てるようになった。


「ふぅ、間一髪。さすが私の判断ね……ん?」ふと倒した本棚の壁を見ると穴が空いていた。人間一人がギリギリ通れる程の穴だったが奥に続いているようだ。


気になったディーナは鎧の人間をほおっておいて穴の方に近づき穴をよく見ると「何よ、これ……」絶句したディーナが見たものは、幾人の人間の残骸だった。無造作に積まれた人間の残骸、一人一人の人間の死因は確認出来ないが、鎧の人間が持っている剣で貫かれた後や、"マリー"の爪で引き裂かれた後もあった。


"マリー"が殺った人間もいるだろうが少なからず鎧の人間が人間を襲いこの穴に入れている事が分かった。

鎧の人間は本棚を退かし、剣をディーナに向けた。ディーナが残骸を見たことに関しては何も思っていない様だった。


ディーナは静かに鎧の人間に振り向き銃を構えた。「私がこれを見ても何も言わないのね。私もここで始末するから?それは言うことないよね。

でも、ちょっと長く生きすぎだよ。この人達をどうするかは知らないけどさ、殺ったのは事実でしょ?」ディーナの質問に一切答えようとしない。


「聞いても無駄ね……外道が、死んでも文句は言うなよ」どんな敵の前でも余裕を見せていたディーナが怒りを顕にした。生きるか死ぬかの戦いでは楽しむのが心情のディーナだが遺体を集め私利私欲を欲する人間、外道な行いをする人間を許しはしない。


銃のマガジンを入れ替え、鎧の人間に一発撃った。鎧の人間は盾で銃弾を弾いたが、銃弾が盾に当たると銃弾が炸裂し中から水が出てきた。その水は特別ダメージが入るような銃弾ではなかった。


ディーナさらに何発も水の属性弾を撃ち続けた。しかし全て盾で防がれ一向に本体に当たる見込みが無かった。水の属性弾は当たったとしても痛手ではないと判断した鎧の人間は反撃を行おうとしたが、盾に異変が。水にさらし続けた盾がどんどんと錆びてきていた。


「私が無駄なことをし続けると思った?鉄で出来た盾、頑丈なら錆びさせてしまえばいい。私の属性は一つじゃないから、どんな状況でもある程度は弱点をつけるのよ。錆びちゃえば、どんな盾でもただよガラクタよね」ディーナの水の属性弾で瞬時に鉄を錆びさせて盾を使い物にならなくさせた。


錆びたと分かった瞬間に目にも留まらぬ速さで銃のマガジンを取り替えて、一発放つと雷を帯びた銃弾が盾に直撃した。頑丈だった盾は一瞬で砕け散り守るすべが無くなった。


ディーナは盾が壊れ怯む瞬間を見逃さずに、鎧の人間の下半身に銃弾を撃った。先程と同じ雷を帯びた銃弾が鎧の人間の膝に当たった。鎧を着ていたために深手は追わなかったが雷を直撃したと同じ衝撃が体に走り、膝をついてしまった。


膝をついた鎧の人間に向かってディーナは突然、猛ダッシュで近づいていき、その速度を活かして飛び上がり体にドロップキックを繰り出した。鎧の人間はディーナの思わない一撃に吹っ飛んでいき、本棚にぶつかり本の紙が辺りに散らばった。


ドロップキックから体制を立て直して「今のはこの人達の無念の一撃だと思いなよ。代わりに私がやっただけ」鎧の人間を倒す前に一撃喰らわせたかったディーナは機会をうかがって隙が出来た瞬間にドロップキックを繰り出したのだ。


「それじゃ、終わらせようか。何も言わないってことは遺言は無しでいい?」ディーナは銃を懐に収めて、もう一丁の銃であるマグナムを取り出した。


決着をつけるためにマグナムの弾を取り替えていると、鎧の人間は既に立ち上がっており、剣を構えてディーナに矛先を向けていた。すると、ディーナを襲った突風が再び吹き始めた。先程の突風よりもさらに風の勢いが増しており普通の人であれば立つのも困難である。


しかしディーナは突風を受けても平然と立っており、手で顔を隠すこともしない。「よくよく考えたらこれぐらいの風なら全然立てるね。さっきはカッコつけちゃった」そう言ってマグナムの銃口を向けた。銃口を向けると鎧の人間は再び風を利用して、ディーナに突進した。風の勢いも増した事で突進の勢いも増し鎧の人間は少し浮いていた。


ディーナは避けようとはせずに鎧の人間が来るのを待った。「Check」と小さく言った。そして鎧の人間は剣でディーナを貫いた。勢いが強すぎて鎧の人間もすぐには止まれずにディーナを巻き込みながら進んでいき壁に衝突した。


剣で貫き倒したと思った鎧の人間は剣を抜こうとしたが力を入れても抜くことが出来ない。鎧の人間はディーナの体を見ると、ディーナの手が剣の矛先を掴んでおり体にはギリギリ当たっていなかった。掴んでいる手からは血が流れており、かなり力を込めて止めているのが分かる。


「お近づきありがとう。私の事が好き?でもごめんね、貴方は友達にはしたくないよ。Checkmate」掴んでいる手とは逆の手にはマグナムが握られており、マグナムを首元に向けて撃ち放った。


属性弾は水で超高出力で発射される高圧洗浄機のような水の弾丸が鎧を打ち砕き、鎧の人間の首を貫いた。銃弾の勢いにより吹っ飛んでいく鎧の人間は倒れ込み一切動かなくなってしまった。手には剣が残っており、剣をほおり投げて鎧の人間の体に剣が乗った。


「情けはかけないつもりだったけど、逝けるのは一瞬で良かったね。もっと苦しんだ人達に失礼だったけど」

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