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カエデ  作者: アザレア
属性の灯火
20/86

友達の時計

翌朝、廃墟に向かうために宿屋で準備を進めるディーナ。マガジンに弾丸を装填したり、弾を作り出してもいた。


エーデルとスワイとフェリスは助けた少女に色々と事情を聞いていた。エーデルは壁にもたれて腕を組みながら「ディーナに感謝するんだな。あの場で助けられていなかったら既に死んでいた」「は、はい。ごめんなさい慌ててしまって」


汐らしくなる少女に準備中のディーナは「別に気にしてないよー。私は"リンドウ"なんだから人を助けるのは当然だからー」少女を気遣った。


「そ、そう言えば、貴方のお名前は?」まだ名前を聞いていなかったフェリスが緊張しながら名前を聞いた。「私?私はスズカ」「スズカちゃん、可愛い名前」

「貴方は?」「フェリスって名前だよ」「フェリスちゃん。あの時はありがとう。人が倒れているとこを見たら、思い出しちゃって……」


倒れた女性を見た記憶が蘇って来たのかスズカは暗い表情を浮かべて泣き出しそうになっていた。「フェリスはね、スズカちゃんをほおっておけなかったから。泣いている女の子がいたら、フェリスが一緒にいてあげたかったから。だからもう安心していいと思うよ、お姉ちゃんだって、エーデルさんだっているから」


スズカの肩に手を置いて励ましたフェリス。「フェリスちゃん……ありがとう」勇気が出たのか明るく笑った顔を見せたスズカ。


「私は助けるなんてしないぞ。人を助けた所で何になる?そんなのは"リンドウ"とかに任せれば大丈夫だ」無情な言葉を突きつけるエーデル。「エーデルさん、ど、どうして?」あまりにも冷たすぎる態度にフェリスは疑問を持ってしまった。


「何が?」「フェリスには優しかったのに、スズカちゃんには怒ったように接する。エーデルさんはお姉ちゃんと一緒の"リンドウ"なんじゃ……」自分には優しかったエーデルだからこそ、聞いてみたかったフェリス。しかしエーデルはここで驚き発言が。


「私は"リンドウ"じゃない。人を助ける、"マリー"を討伐するなんて使命は持ち合わせてはいない」

エーデルは"リンドウ"では無かった。"リンドウ"になれば"マリー"を討伐する機会が増えるだろうがそもそも目的では無い"マリー"を討伐するのは時間の無駄。他者との交友も興味が無い、己自身でその"マリー"を殺さないと意味が無いため、"リンドウ"にはなっていない。


「フェリス、お前に興味を持ったのは私と同じで、たった一人で生き抜いてきたからだ。家族もいなければ友人もいないお前だからこそ、共感出来た。

だが、そいつは違うだろ?悪いが昨夜の晩にこの鳥にお前のことを調べさせてもらった」


肩に止まっているスワイが溜息を吐いて「本当に人使いが荒いんだから」ディーナは心中で「鳥でしょ貴方」

「そこのスズカちゃんこの町出世じゃなくて比較的に平和な町で育った子で、家族も生きてて不幸は起きていない。その町はここから近いから来ることは出来るけどなんで来たの?子供一人で、ここが危険なのは知ってるでしょ?」


スワイの情報網は広く、調べようと思えばどんな相手でも深く調べられる。それを一晩で調べ尽くせるためにエーデルもスワイの情報は頼りにしている。


「わ、私の友達が持っていた時計を探しに来たんです。でも、無かった、どこにも」時計の聞いてディーナとエーデルは少し思うことがあり同時に「あの"マリー"……」ここまでは口にしたがそこからは口を慎んだ。


「お友達は時計を落としたの?」「ううん。"マリー"に、殺されちゃって、目の前で、体に穴が……友達が大切にしてた時計を置いてきたから取りに来たからここに来た。お母さん、怒ってるかな?」

スズカの友達が持っていた時計を探すために危険を承知でここまで来た。スズカが目の前で倒れている女性を見た瞬間、友達が殺されて倒れた時と重なってしまってパニックになってしまったのだ。


するとディーナが準備を終えたスズカの肩に手を置いて「友達の形見を探しに来たのは素敵だと思う。けど家族に黙ってこんな危険な地域に来るのは間違ってるよ。今どれだけスズカちゃんのお母さんが心配してるかを考えたことある?自分の身だけじゃなくて人の気持ちをもっと考えないといけないよ」


ディーナはフェリスの前で初めて人に説教をした。優しく器も広いディーナだが間違った行動はしっかりと怒る姿を見たフェリスは「お姉ちゃん……優しいだけじゃなかったんだね。フェリス、なんだか嬉しい」


スズカはディーナの言葉に自分のした行動を振り返り、危険すぎる行動と反省して小さな言葉で「ごめん、なさい」泣きそうな声で謝った。


「友達の時計は任せて。エーデルは"リンドウ"じゃないけど私は立派な"リンドウ"さんだから、"マリー"討伐がてら時計を探してみるよ」「本当ですか?」

「うん。だからもう家に帰りな、これ以上心配はかけられないでしょ。私が送ってくから家まで案内してくれる?」「あ、ありがとうございます!」


ディーナがスズカを送ることにしたがここでスワイが「ちょっとちょっとディーナちゃん。送ってくって廃墟はどうするのよ。今から"マリー"退治に行くのに送ってく余裕なんて無いんじゃない?」スズカを送って行くのに反対した。


「別に今から行くわけじゃないでしょ。エーデルだって力が必要なら余計に時間はいるんじゃない?焦っても仕方ないんだから」正当な理由を突きつけられたスワイは「エーデル、どうする?」決定権を依頼主であるエーデルに託した。


「勝手にしろ。私は行かないぞ」急ぐ理由も無いためディーナに好きにさせた。


「それじゃ行こっか。フェリスも来る?」「うん、行く!」三人は宿屋の出入りに向かって「それじゃ、帰ってきたら廃墟に行くから。待ってて」

ディーナはエーデルとスワイに手を振ってスズカの家へと歩いていった。


宿屋に残ったエーデルはもたれながら目を閉じていた。「いいの急がなくて?"マリー"もそこにずっと居るとは限らないでしょ?」「限らないが突然住処を変えるのも考えにくいだろ。それにあの娘もついてくるとなったら邪魔で仕方ない、さっさと家に帰らせた方があいつも気兼ねなくやれるだろ?」


そう言うとエーデルは亜空間を出現させてその亜空間に手を突っ込んだ。何かを探すように手を上下に動かして手を抜くと手元にあったのは電子機器とイヤホンが。


電子機器にイヤホンを付けて耳に装着した。「私も力が完全に戻っている訳ではない。少しばかり休息して曲を聴きながら待つ」止まっていたスワイは飛んで「相変わらずの音楽通だねぇ。じゃあウチは廃墟に下調べでも行ってくる」


曲に集中しているのかスワイに返事をしないエーデル。ため息を吐いて窓から飛び立って行ったスワイ。


こうして各々の休息を過ごすディーナやエーデル。宿屋に戻りスワイも戻ってきた所で、いよいよ、"マリー"の住む廃墟に突入して行くのだった。

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