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カエデ  作者: アザレア
若き国の依頼
14/86

Checkmate

洞窟に到着したディーナ。周りには"マリー"の姿を確認したが何処にも見当たらない。「見張りみたいな"マリー"は居ない、無防備過ぎない?」敵の拠点だが何も無い状態に疑問を抱くディーナだが気にせずに洞窟の内部に進んで行った。


しかし内部は暗く視界には暗闇が広がっていた。外の明かりも差し込まずにディーナには何があるのかも分からなかった。


流石に何か灯りが欲しいと思ったディーナは一度外に出て見渡すと手頃な木の棒があった。「この子でいっか」と言って木の棒を拾って銃を取り出した。


「えっと、着火用の弾どれだっけな……」コートのポッケから様々なマガジンを手に取りながら探した。「あったあった」マガジンを取り出して着火用のマガジンを装填して木の棒の先端に発砲すると木から火が燃え上がり簡易的な松明が出来た。

「よし、出発しますか」洞窟の内部に歩いて行った。


松明の火を照らしながら進んでいく中で分かっのが所々壁に黒い血のような液体が付いている。指先で液体に触れると固まっていて指先には何も付いていない。


「"マリー"の血。空気に触れて固まっている所を見ると直近の物ではない、でも……」松明で他の壁を照らすとまだ固まっておらず液体が垂れている黒い血もある。「さっき争った跡、"マリー"がここでやられたって認識で大丈夫かな。問題は何にやられたか、まぁ答えは出てるけどね」


黒い血とは"マリー"が流す血である。人間や動物等は赤い血、他の生物でも黒い血を流すのは他ならぬ"マリー"しかいない。


血の付いた壁を照らしながら更に進んでいく。洞窟は一本道で寄り道するような場所もない。ただ光が灯らない道を行くディーナだがある異変に気づく。


「静かだねぇ。普通の洞窟なら当たり前なんだけど"マリー"が根城にしている洞窟なら不自然ね。それに侵入者が入ってきたってなったら何かしらの"マリー"が来てもおかしくないはず、人型の残党もいない、さっきの血の跡があるのに何も無い、ってことは戦力を全部エニーに向かわせたのかな?それはでも良くないよ、だってどれだけ数がいてもヴァレアとスイレンには勝てないでしょ」


独自の推測をするディーナだがまだ引っかかる事が。「でもそれだとしても人型の残党が居ないのは説明がつかないね。やられたとしたら何処かに死体があるはずだけどっ!」ディーナは足元の何かにぶつかり転びそうになった。感触は柔らかくまるで人の身体に足をぶつけたような感覚だった。


「ちょ、何?」足元を松明で照らすとそこには人型"マリー"の見るも無残な姿があった。"マリー"の身体の大部分は噛みちぎられた跡のようでほとんど無くなっていた。"マリー"を調べようとしゃがんで手を近づけようとしたが、あることに気が付き、立ち上がり更に奥を照らすと無数と人型"マリー"の死体が周りに転がっていた。


ぶつかった"マリー"のように噛みちぎられた"マリー"や焼き爛れ全身黒焦げになっている"マリー"もいた。普通ではない殺され方をしている"マリー"に表情は何一つ変わらないディーナは「元凶は、この奥ね」と呟き死体を掻き分けながら進んで行った。


しばらく歩くとさっきよりかは少し広い場所に来た。そこから先は行き止まりになっていた。辺りを見渡しても何も無い。行き止まりの壁に触れてもただの壁で仕掛けも無かった。


「あれ、見当違いだったかな?絶対に何かいると思ったんだけど」首を傾げて来た道を戻ろうと思った瞬間にいきなり地響きが起こった。「なになに?真打でも登場する?」余裕を見せるディーナだがさらに地響きは続いて遂には洞窟が響き始めて小さな岩が天井から降ってきていた。


そして、ディーナの目の前の天井が穴が空きそこからディーナよりも数倍の身体を持つ頭が三つの巨大な狼が降り注いだ。

三つの顔は意思があるようでそれぞれ別の動きをしているが全ての顔はディーナを向いて完全に敵意を指していた。


明らかに動物型の"マリー"ではあるがディーナに「貴様、我が領土に足を踏み入れるとは良い度胸をしているではないか。殺される準備は出来ているか?」その"マリー"は人の言葉を話したのだ。声自体は女性の声だがエコーがかかっているように洞窟に響き渡る。


流石に人の言葉を話す"マリー"は初めて出会したディーナは驚いて「すごい、"マリー"が喋れるのは初めて見た。それに頭が三つ、正しく珍しいの一言ね。でもワンちゃんならちゃんとワンって鳴かないと人気にはなれないよ。ワンちゃんは可愛らしさが大切なんだから」恐ろしき"マリー"にも余裕の態度で接するディーナ。


その態度に腹が立ったのか「貴様、高貴なる我を愚弄する気か!人間風情が我に勝るとでも言うのか!」激怒する"マリー"。「まぁまぁ落ち着きなよ。言葉を話せるなら話し合いも出来るでしょ?人間の方が貴方達よりも勝っているのは事実だけど知能がある"マリー"は人のために役に立つ事が出来るはずよ」


挑発的なディーナの言葉に激昂した"マリー"は雄叫びを上げると同時に身体に炎を纏わせて三つの顔にも炎を纏い全身に炎の鎧を作り、さらに周りにも円状に炎を這わせてディーナが逃げられないように一体一の空間を作った。


「人間如きにひれ伏すと思っているのか!これで貴様は逃げられない!我が炎に包まれて死ぬか我が牙に噛まれて死ぬか選ばせてやる!どちらがいい!!」究極の二択を迫られたディーナだが不敵の笑みを浮かべて「炎ね、やっぱりあの人型を倒したのはこの"マリー"ね。でも知能が高いと思ったらやっぱり普通の"マリー"ね、私からも選択式をあげる。頭を撫でられるか、頭を撃ち抜かれるか、どっちがいい?」窮地の状態でもあくまで自分の態度を崩さないディーナ。


"マリー"は当然二択に答えるはずもなく勢いよくディーナに突進した。ディーナは左に転がって突進を回避した。壁に激突した"マリー"はその衝撃で壁にヒビが割れた。


衝撃を目の当たりにしたディーナは「その巨体らしい攻撃ね。これは飼い主も大変ね、散歩なんてままにならないでしょ」"マリー"は顔をディーナに向けて「この状況に置いてもその余裕、命が惜しくないのか?我も人間を襲い続けたがその顔は恐怖以外には無かった。貴様のように笑う人間など、見たことがないな」


「私はどんな状況でも、とにかく楽しむ。生きるか死ぬかの戦いなんだからそれを何も感じずにいるなんてもったいないでしょ?感性はそれぞれだけど私はこういう人間なのよ」


自分の生き様を語る人間に対して嘲笑する"マリー"は「フッ、くだらないな。貴様は我との戦いをそんな些細な感情で挑んでいるのか。ならば、死ぬ間際に思い知らせてやろう。我がこの領土の女王に相応しく、我の恐怖を植え付け、絶望を見せてやろう!」"マリー"は大きく吠えると炎が更に燃え盛り人が近づけない程の熱気になってきた。


「やっぱり動物型のボスね。まぁここで倒しちゃえばエニーに平和が戻るって感じね。じゃあ……」ディーナは一丁の銃を取り出して"マリー"に銃口を向けた。「勝負よ、ここで終わらせる」完全に臨戦態勢入ったディーナ。


"マリー"の三つある顔の一つが天井に向かって吠えるとディーナの頭上から炎の柱が数本落ちてきた。いち早く気づいたディーナはその場から左に転がって炎の柱を避けた。転がる最中に懐からマガジンを取り出して今装填してあるマガジンを取り出して新しく装着した。


転がったディーナはすぐに起き上がり銃口を"マリー"の顔に向けて「まずは邪魔な炎を消化させないとね」三つの顔にそれぞれ一発撃つと、水の玉が"マリー"に顔に当たり顔に纏っていた炎が消化されていった。「我が鎧、水が弱点とはよく分かったな。人間にはしては知能が高いな」「常識でしょ。お姫様だから何も分からないんじゃないの?」


ディーナの挑発に乗った"マリー"は顔の一つを地面に近づけて炎のブレスを吐くと地面から炎が噴き出しディーナの周りにも炎が噴き出し、ディーナの足元にグツグツと音がしだして火山が噴火する直後のようだ。


しかしディーナはその場から動かずに足元に数発銃を撃つと水のベールがディーナを包んだ。包んだ瞬間足元に炎が噴火した。ベールに包まれたディーナは上空に吹き飛ばされた。しばらく噴火が続き鎮静して行くと同時にディーナも地上に降りて来た。水のベールが剥がれ落ちていき噴火に巻き込まれたはずのディーナだったが無傷のままだった。


「なるほど、三つの顔それぞれに得意な技があるんだね。レパートリーが多いのは凄いけど相性的に私には効かないよ、"マリー"の炎なんて私の水に勝てるわけないでしょ」銃をクルクルと回しながら"マリー"に話しかける。余裕の笑みを見せるディーナに"マリー"はさっきのようにディーナに向かって勢いよく突進してきた。


「芸がないね、何度も同じことことやって……!」"マリー"は目の前で止まって炎を纏った鋭い爪で引き裂こうとした。ギリギリ当たらない範囲までバックステップしたがその巨体とは思えないほどの俊敏な動きでディーナの前まで行き前脚を大きく振り上げてディーナを叩き潰そうと振り下ろした。


避けられないの判断したディーナは両腕で"マリー"の脚を受け止めた。巨体の力は凄まじいものだった。ディーナの足が地面にめり込む程の威力だ。


受け止めることがやっとのディーナ。「戯言は済んだか?我が自身の属性しか無いと思ったか?炎が効かないのであれば力で対抗するだけ。人間は力が無い、よく受け止めたな褒めてやる」


受け止めてはいるが震える手で抑えているディーナは「いやー、まいったな、属性なら、属性で。だけど、物理的な攻撃は、ちょっと、苦手なんだよね。それに……」"マリー"の前脚は炎を纏っているためディーナの手がどんどん焦がされていく。「さて、このままじゃ、炎で焦げるか、叩き潰されるか、悲惨な末路になりそう。どうしよ……」苦笑いを浮かべながら打開策を考えるディーナ。


だが、"マリー"は攻撃の手を止めなかった。一つの顔が地面に炎のブレスを吐いて地面から炎の柱が噴き出した。同じようにディーナの足元に噴火する直後だった。


「終わりだ人間。久方ぶりに楽しかったぞ、褒美だ、我の炎で焼き焦がれろ」勝ちを確信した"マリー"。前脚を離したとほぼ同時に足元から先程よりも威力が高く燃え盛る炎が噴き出した。


噴き出している最中だが振り返って歩き出した"マリー"。「さて、奴らも国を堕とした頃合だろう。よくやくこの辺りの領土も我がものになる。しかし、あの巨大な人間のような"マリー"とやら何処に消えた?」


噴火が鎮静されて行き振り向くこともしなかった"マリー"だが、何故か一瞬の殺気を感じ振り返る"マリー"だがそこには誰もいなかった。「焼け焦げたか、死体も残らないほどに……」「残んないよ。まだ生きてるからね」


上から声が聞こえた。三つの顔が一斉に上を向くと、ディーナが上空から飛び込んで来た。空から飛び込んだディーナに対応出来なかった"マリー"に、"マリー"の一つの顔に一発の銃弾を撃った。顔に直撃した銃弾から電撃が起こり電気の衝撃とショックで顔の一つが生命活動を停止した。


活動を停止した顔に着地したディーナは一瞬の早業でマガジンを取り替えて次の顔に銃を撃った。こちらも顔に直撃した。その一瞬で顔がどんどんと氷漬けになっていき、完全に氷で固まった。


撃ったディーナは地上に降り立って氷漬けになった顔に一発放つと顔が砕け散った。


何が起きたか理解が出来ていない"マリー"。「き、貴様、何故、どうやって……」動揺を隠せない"マリー"に「勝負の最中に油断なんてナンセンスだよ。油断してくれたおかげで生きれたし反撃も出来た。戦力的にもお釣りが出ちゃうね」そう言うとディーナはもう一丁の銃を取り出した。


「秘密兵器、と言うほど秘密でも無いけどこっちの銃を使うのは久しぶりだなぁ。そんな危ない状況にも最近なってなかったら使うこと無いか」独り言を呟き続けるディーナに"マリー"は「それは、先程のとは違う」二丁持っていたことを知らなかった"マリー"に銃の説明をした。


「私のもう一つ持つこの銃はさらに強力な属性弾を撃つことが出来るマグナム。こっちを使って窮地を脱したって感じかな。ちなみに脱出方法は貴女が手を離した瞬間に銃を取り出して地面に風の属性弾を撃った。炎が噴火する前に私の体が天井高くまで浮いちゃう風を吹かした、炎は威力は高くても当たらなかったら意味が無いよ。そして油断した貴女は生死も確認せずに振り返ったから風が止んだ瞬間に貴女の顔をいつも使っているこっちで撃ったって所かな」


ディーナはもう一つの銃を普段は使わない。こちらのマグナム型の銃はその威力の高さから被害が拡大してしまう可能性があるため極力使用を控えている。また強力の属性弾も何発も生成は難しいために使ってはいない。


しかし一つの疑問が「ならば、早々にそちらを使えば我との戦いも有利に進められたのではないか?」マグナムを使えば明らかに圧倒的に優位に戦えたはずだがディーナは使わなかった、それが疑問になっていた"マリー"。


「あんまり使えないのよ。乱発すれば反動が凄くてすぐにダメになっちゃうし、こんな洞窟で強力のバンバン撃っちゃえば洞窟が耐えきれなくて崩れちゃうでしょ?貴女みたいな脳筋じゃないのよ私はね」戦いの中でも冷静な判断を瞬時に行う、数が少ない"マリー"との戦いでは出来ない、経験が多いからこそ出来るディーナの戦闘である。


「どう降参する?話せる"マリー"なら可能性は極わずかだけど人と分かり合える。そうしたら見逃してあげる」人の言葉を理解し話せる"マリー"に可能性を感じてすぐに討伐するのではなく人との共存を望むディーナだが、まだ残っている顔が臨戦態勢に入り喉元が赤く光始めた。


「小娘が、我が人間に跪くとでも言うのか!

ふざけるな!!この一つ残った顔があれば貴様など造作もない!我が渾身の炎で貴様を今度こそ焼き焦がそうではないか!!」

ディーナの申し出に怒りを見せる"マリー"に呆れて首を横に振るディーナ。「私の優しさを無駄にするなんてね。もういいわ、期待した私が馬鹿だった。そんなに燃えたいのなら一生燃えていろよ」


マグナムを取り出して握りこぶしを握り開くと一発の銃弾が手の平に。銃弾をマグナムにリロードし"マリー"に銃口を向けた。


「死ぬがいい!人間がァァ!!!」"マリー"の口から特大の炎の玉がディーナに向けて放たれた。ディーナもトリガーに指を当て「Check」と、一言。トリガーを引くと炎の光線が放たれた。その威力は凄まじく"マリー"の炎の玉にぶつかると炎の玉は消え去り、一直線に"マリー"に向かった。渾身の一撃がいとも簡単に消された事に驚愕した"マリー"は動くことが出来ずに炎の光線が直撃した。


身体を貫いた光線は次第に消えていき貫かれた箇所から発火して行き、元々炎の鎧を纏っていた身体が光線の炎と融合して"マリー"の身体に引火し身体が燃え盛り始めた。


地に顔も身体もひれ伏した"マリー"に近づいていくディーナ。顔まで来たディーナはマグナムを懐に納めてもう一丁の銃を取り出した。


「貴様、人間では、ないのか……我を倒すなど、人間は存在、しないはずだ」虫の息になりながらも声を出す"マリー"にディーナは「自分でもよく分からないよ、なんで全部の属性が使えるかなんてね。それに私なんかよりもおっかない"リンドウ"はいるよ。でも、仮に人間じゃなくても私は"リンドウ"になってるよ。貴女みたいな"マリー"を倒さないといけないからね。お望み通り、黒焦げになったね。良かったね、相応しい最後で。Checkmate」


銃のトリガーを引いて、一発頭を撃ち抜いた。属性も何も込められていない銃弾だったがトドメを刺すには充分だった。"マリー"は絶命し身体は黒焦げになるまで燃え盛るのだった。


辺りを這っていた炎も消えていて洞窟から出られるようになっていた。キョロキョロと見渡して来た時と同じ木の棒を拾って燃えている"マリー"の炎から木の先端を燃やした。


「よし、帰ろ」来た道を戻って行った。「あぁ手が痛い。炙られる気持ちがよく分かったよ、今度はもっと感謝しながら炙らないとね」

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