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カエデ  作者: アザレア
序章
1/86

Dina's hideout

この世界には"マリー"と呼ばれる人類の敵である化け物が存在する。"マリー"には種類があり、人型、動物型、異形型、等の様々な形をした化け物がおり全てにおいて共通するのは人々、主に女性を襲い命を奪うと言うことだ。


世界の女性にのみ限定された属性と呼ばれる特殊な能力を持っている。属性は多種多様であり炎や風を使った力を持っているが大抵の女性は「使える」だけであり"マリー"を討伐するまでの力は持っていない。しかし稀に強大な属性を持ち"マリー"を滅ぼせる力を持つ女性もいる。属性を振るい守る存在を人々は"リンドウ"と呼ぶようになった。


当たり前の世界を守るために"リンドウ"は今日もその属性を振るう。


----------


都内某所、事務所は昼間にもかかわらずに一つの電気も点いておらずとても営業中とは思えない様であった。

そこに一人の女性が、扉を開けようとも鍵が閉まって開かない。インターホンを鳴らしても誰も出る気配がない。

女性はため息を吐いて「まったく」と呟くと事務所の裏に回った。人一人が入れそうな窓を開けて事務所に侵入した。


事務所内は空気が悪く何日も換気をしていない様子、床には飲み捨てた空き缶が多数に散りばめられていて、服もそこらに散らかっておりとても綺麗とは言えず自堕落な生活を送っているとしか思えない。


女性は歩を進めると、デスクに足を組みながらかけ、椅子に腰掛けて雑誌で顔を埋めながら仰向けで寝ている女性がいた。デスクには食べさしのハンバーガーに飲みかけのエナジードリンクが置いてあり、デスクの隅に二丁の銃が置いてあった。

女性は手で顔を抑えて首を横に振ると顔を埋めている雑誌を取り上げて

「いつまで寝てるんだ!!」と一喝した。


寝ていた女性は何事も無かったかのように目を開けて大きな欠伸をしながら伸びをした。

「あれ、もう朝?」「昼だ。私が来ると言ってたはずだろ」

起こした女性の方を見るとキョトンとした顔で「なんでここにいるの?」

「一昨日に話しただろ。昨日の内に連絡をいれたけど電話が繋がらなかった」「だってうるさいから電話線切ってるもん」


呆れた顔をする彼女は埒が明かないと判断し「とにかくシャワーを浴びて来て、仕事の話はそっからでいいから」「えぇ~今からもう一眠りする予定なんだけど」「いいから浴びてこい!」

もう一度一喝すると仕方なしに椅子から立ち上がりシャワーを浴びに行った。


----------


しばらくして、事務所の片隅に置いてあるソファに腰掛けながら待っているとシャワーを浴びて部屋に戻ってきた女性。

「ふぅ~さっぱりさっぱり。朝に浴びるシャワーは清々しいもんだね」「だから昼だって」


「んで、何しに来たの?遊びにでも来た?」そう言いながら女性はさっきまで腰掛けていた椅子に座りもう一度デスクに足を組みながらかけた。


「仕事だと言ってるだろ。社長だろこの事務所の。もう少しぐらいしっかりしたらどうだ、ディーナ」

彼女の名はディーナ。"マリー"から人々を守る"リンドウ"の一人、都内に事務所を立ち上げて依頼で仕事を請負ういわゆる何でも屋。だが事務所は見ての通りガサツであり営業しているかどうかも分からない状態である。


「この生活で満足なんだから別に仕事なんて受けなくてもなぁ」「私からの借金まみれの分際でよくそんなことが言えるな」「ヴァレア金融には利子が無いって聞いてるけど?私のお金も預かってるって話だけど?」

「私は金融屋でも無ければ銀行でも無い、そもそもお前から預かってる金なんて一銭も無い。全て私の借金返済のための金だ。

私は"マリー"を討伐する"リンドウ"の一人、今回の仕事は"マリー"退治の一つだ」


仕事の依頼を持ちかけたのは"リンドウ"の一人であるヴァレア・オルヴェア。ディーナとは腐れ縁のような関係でディーナに貸しているお金は日々増えていっている。


「"マリー"討伐か。いいね、そういう仕事は久しぶりだね。最近はあんまり依頼が来なくて退屈してたところだからね」

「そもそも店が不定期の時点で依頼も何も無いだろ。電話すら繋がらないのだったら余計だ」

「それじゃ店開けるか。ヴァレアそれをコンセントに付けてくんない?」


ヴァレアはため息を吐くとソファの近くにある電源コードをコンセントに挿した。

すると、少し薄暗かった事務所は電気が点きロック調のサウンドが鳴り響き潰れていたかのような事務所は一転して完全に営業中となった。

ディーナはデスクから足を下ろしてヴァレアに

「ようこそDina's hideoutへ。今日はどのような依頼を持ってこられましたか、お客さん」


ヴァレアはソファから立ち上がりディーナのデスクに一枚の紙を取り出した。

「仕事の話だが、もう少し音下げられないか?雑音過ぎるんだけど」「このサウンドありきの店だよ。毎回毎回雑音言わないでよ、静かな曲はこの店には合わないよ」

「クラシックの良さが分からないお前とは音楽は分かり合えないだろう。

まぁいい、詳細はこの依頼書に書いてあるから目を通しておけ」


ディーナはデスクに置かれた依頼書を手に文を読み始めた。しばらく目を通すと再び机に置いた。

「森の"マリー"退治?市街からの依頼じゃないんだ」「大手の依頼では無く個人の依頼だからな。どうやら最近その森にて"マリー"が出現しているらしい。森は"マリー"の目撃情報は一切無く自然豊かで静かな森だったらしい。しかし突然"マリー"目撃が多発し近辺の町の住人も怪我を負ったらしい。幸い強力な"マリー"は目撃されていなく雑魚が多い。

だが放っておくわけにはいかないからな、お前に任せる」


「私に任せるって、ヴァレアは?」「他の依頼がある。そっちに行けそうにない」

「相変わらず忙しそうだね。まぁよっぽどのことがないと私に頼みはしないか」「それ以外に三つの"マリー"の依頼がある。この店であぐらをかいている暇はない」「よっぽどだね」

ヴァレアは振り返り店の出入口の鍵を開けて「私は他の依頼に行く。ちゃんと働けよ、ディーナ」そう言って出ていった。


ディーナは大きく伸びをしたあと「よし」と言って椅子から立ち上がり後ろにあったコートを羽織り、依頼書を胸のポッケに入れ、デスクに置いてある二丁の銃を懐にしまった。

準備が完了したディーナは店の出入口に立って「それじゃ、お仕事出発だね」と言って現場に向かった。


----------


事務所がある街から離れて小さな田舎町に来た。町は海が近くにあり潮風があたり自然豊かな環境が目に見えて分かった。海以外には恐らく"マリー"が多発している森もあった。


ディーナは依頼人の女性の元に行き現状の状況を聞いていた。

「ふむふむ、つまりこの近くの森に"マリー"が突拍子も無くやってきてこの町の住民を襲っている。まぁ依頼書に書いてある通りだね」「は、はい、とても落ち着いていて"マリー"が出てくるなんて今までに無かったのに突然やってきて、私の友達が襲われました。幸い命に別状は無かったのですがこのままで町が危険な目に・・・」「まぁまぁ私が来たから安心してよ。"リンドウ"のこのディーナさんに任せなさい」


依頼人の女性は疑わしい目を向けた。「あの、私はかの有名なヴァレアさんに依頼したはずなのですがヴァレアさんはどうしたんですか?」「忙しいらしいから私が変わりに来たって感じ。てか私も"リンドウ"界隈ではそこそこ有名だと思ったけど知らない?」「ご存知ではありません・・・すいません」

少し不服そうな顔をしたディーナだったが「まぁこれでまた名が知れ渡るから別にいっか。

じゃあここで待ってて、さっさと退治して町の平和を取り戻して来るね~」


話を途中で切り上げて依頼人の家から出て行こうとした。「えっ、待ってください!まだ森のどこにいるとか・・・」「大丈夫、根こそぎ倒せば問題ないから」少し笑みを浮かべて家から出て行った。


----------


森へと歩を進めたディーナ。夕暮れ時の森だが既に薄暗さが辺りを蝕み始めていた。そんなことには気にもとめずに歩みを止めないディーナ。しかし森を進めど"マリー"の姿は一向になく気がつけば森の深部に来ていた。


「う~ん、居ないなぁ。おかしいな、森を根城にしていたと思ったけど見当違いだったかな。まいった、結構森の奥まで来ちゃったよ」

途方に暮れるディーナ、夕焼けは沈み辺りはかなり暗くなってきた。


諦めて一度町に戻ろうと思い振り返ったその瞬間、朽ち果てた肉体である謎の物体がディーナの真横に飛び掛った。ディーナからは死角になって見えていない・・・そう思っていたが、肉体が鋭い爪でディーナに引っ掻くその瞬間一丁の銃を懐から取りだし肉体の顔面を撃った。

肉体は吹っ飛び地面に倒れ込んだ瞬間、肉体が限界を迎えて息絶えた。


一匹の謎の物体が倒れると同じような物体がディーナを囲むように無数に現れた。全て肉体が朽ち果て、元が人間であるのが辛うじて分かる程度である。

無数の物体を静かに見据えるディーナは不敵の笑みを浮かべて「ビンゴ、探す手間が省けたよ」


この物体こそが世界の敵である"マリー"である。"マリー"には種類がありこの人型の"マリー"は世界各地に出現している量産型。危険度は他の"マリー"に比べると低いがそれでも人にとっては脅威になりえる存在である。


ディーナは周りを見渡すと突然銃のマガジンを取り出して新しいマガジンを取り出した。銃を指で何度か回して新しく取り出したマガジンを装填した。「今日はこの属性で行かせてもらうよ。全員、大人しくしてろよ」


"マリー"がディーナに向かい一斉に襲いかかろうとした時、ディーナは銃を地面に三発撃つと、地面に稲光が走りディーナを中心に雷が地面を這って全ての"マリー"を直撃した。感電し一斉に悲鳴を上げる"マリー"にさらに"マリー"の近くにあった大木に一発放つと大木に落雷し大木は折れてそのまま倒れ去った、その場にいた"マリー"達はその衝撃によりさらに感電の威力が増し全身が黒ずみになった。大木に巻き込まれた"マリー"もいた。


一瞬で無数の"マリー"を葬り去ったディーナは倒れた大木に腰掛けて「こんなものね、これでお仕事終了っと」

マガジンをもう一度さっきのものと入れ替えて立ち上がると生き残っていた"マリー"が後ろから襲いかかってきた。ディーナは首を横にして顔の横から銃を突き立てまたしても"マリー"の顔面を寸分狂いなく撃った。

吹っ飛び倒れた"マリー"を振り向き倒したどうかを確認しようすると、ディーナの目の先にあったのは古びたレンガの家があった。ここは森の奥地、人が住むには少々苦しい場所である。

ディーナは立ち上がって興味本位でその家に近づいた。


これがディーナと女の子の初めての出会いとなっていくのだった。

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