七話
入学式当日を迎えた。 やっと、やっとヒロインちゃんを見れる日がやってきたのだ。
朝はそのおかげか自分で起こされる前に起きることができた。 ちなみに、学園の寮には家から1人だけ連れてきても良いことになっている。 私はもちろん、小さな頃から一緒にいるエミー――侍女のエミリーについて来てもらっていた。
髪を整えてもらっている時、エミーにも「今朝は気分が良さそうですね」と言われた。 そんなに分かりやすかったかな、私。
せっかく早起きしたのだからと、今日は早めに登校することにした。 学園に着くと、新たなクラスが発表されていて書かれていた教室に向かう。
新たなクラスといっても、私のクラスは特別クラスで成績優秀者が集まるクラスであるため、中等部の時とほぼメンバーが変わらない。 一部の変化の中の1つが、ヒロインの編入である。
やっぱりヒロインってハイスペなんだなあ、と思った。
ちなみに、特別クラスには高位貴族が多い。 これは、幼い頃から質の高い教育を受けてきたからだろう。 このクラスが設置されるのは中等部からで、その入学試験で無事特別クラスに決まった時はとても安心した。
一応私も、高位貴族の1人なので。 当然クロード殿下も特別クラスである。
教室に着いても、まだ数人しかクラスメイトはいなかった。 殿下やヒロインちゃんもまだ来ていない。
準備のできた生徒から各自で入学式会場に向かうことになっているため、何も特にすることのない私は会場へ行き、案内された席に座る。
☆
早めに席に着いた私だが、早起きしたのが良くなかったのかもしれない、着席してしばらくすると少し眠くなってきてしまった。
けれど私は侯爵令嬢。 無様な姿をさらすわけにはいかないと、開式まで必死に眠気と戦っていた。 そんなわけで、ヒロインちゃんが入場してきたことに気が付かなかった。
私としたことが。 一生の不覚。
式が始まり、格闘の成果か眠気がおさまってきた私はやっとそこでヒロインの存在に気が付いた。
――――「私達はこれから、この学園で共に過ごすことになる。 爵位など気にせず、よりよい学園生活を送れるよう努力していこう」
壇上では、クロード殿下が新入生代表挨拶をしている。
けれど、ヒロインに気付いてしまった私にはそんなことを気にしている余裕はないのだ。
画面の外から愛を叫んでいた相手である彼女が、今現実にいるのだ。 目に焼きつけないでどうする。 動いた一挙手一投足をスチルとしてぜひとも収めたいが、あいにくこの世界に写真といった技術は存在しない。残念だ。
こっち向いてくれないかなあ、式の最中だし無理だよなあとか思いながら、ヒロインを眺めているうちにいつのまにか入学式は閉式していた。
☆
彼女と同じクラスになれたおかげで、ヒロインがノアイユ子爵家でシャルロットという名だということが分かった。
確かゲームのデフォルト名がそんな感じだった気がしなくもない。 名前まで可愛い。 シャル、とか呼んでみたい。
シャルロットはゲーム内で見たヒロインを現実に連れてきたらこんな感じなんだろうな、と思うような姿だった。 まずヒロインで間違い無いだろう。
こうなったら私はヒロインの幸せを邪魔するわけにはいかない。 しかるべきときが来たら、ちゃんと身を引く準備をしなければ。
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