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四話

 一夜明け、婚約してしまったらゲームと同じになってしまう! と危機感を持った私は婚約回避するべく行動を起こし始めていた。


 このまま婚約して学園で殿下とヒロインが恋に落ちたら、私は婚約破棄された傷物になってしまう。 しかも婚約破棄には、国外追放という重大すぎるおまけがついてくる可能性も高い。


 婚約が全体に発表されたら、私は追放ルートまっしぐらなのだ。


 これを回避するためにどうしようか考えた結果、とりあえず殿下に会わないことには何も始まらないと思い、お父様にもう一度茶会をしたいとお願いした。


 国の第1王子との茶会など、そう簡単に用意できるものではないが、何をどうしたのか頼んだ3日後に茶会が開かれることになっていた。


 侯爵家当主、恐るべし。 父よ、いったいどんな手を使ったんだ。


 どんな経緯をたどって決まったのかは知らないが、茶会は茶会である。 この機会を最大限に活かさねば。


 婚約話を完全に無しに、というのは私の最大の願いだけれど難しいのだろう。 一度決まっているのだ、簡単には取り消せないだろう。


 ならばどうするか。 婚約発表を先に延ばしてもらう。 これが最適解だと思う。


 ヒロインと殿下が学園で出会うまで発表をせずにいれば、婚約話が取り消されたとしても傷物にはならない。 周りには婚約者に内定していたと知られていないのだから。


 その歳から私が婚約者を探すのは難しいとも思うが、一生独身か国外追放か。 その2択なら皆迷わず前者を選ぶと思う。


 結婚願望が特に強いわけでもないし、うちには優秀な兄もいる。 私が結婚しなかったからといって侯爵家が廃れることもないだろう。


 とまあ様々な点から、発表の延期をどうにかもぎ取りたいと思う。



 ☆


 2度目の茶会当日を迎えた。


 挨拶もほどほどに済ませ、話は婚約のことへと移っていく。


「婚約発表の件なんだけど」

「あの」

「何か?」

「婚約の発表は、もう少し先にしませんか」


 発表の話が出るや否や、私は発表の延期を提案した。


「それには、何か理由でも?」

「もちろんです」


 この提案の最たる理由は婚約破棄と国外追放の回避だが、そんなことを話すわけにはいかない。 頭のおかしい令嬢だと思われるのがオチだ。


 それで婚約を回避できるのなら良いのだが、変な噂を立てられて実家の侯爵家に迷惑をかけることは避けたいのだ。


 そこから私は、これから殿下が自由な恋愛をしたくなるかもしれないだとか、侯爵家にも国にも何があるかわからない、政略結婚が必要になることもあるかもしれないだとか、昨日から必死に考えた理由を並べたてた。


「それは君が、僕以外と恋愛をしたいということ?」


 ずっと静かに、時折出された紅茶を飲みながら私の話を聞いていた殿下が、始めに発した一言はこれだった。


「そういうことではありません!」


 ほんとに違うんだよ。 むしろそう思うのは将来の殿下なんだよ。……とは当然言えず、決断を焦る必要は無いのだと繰り返す。


 先に折れたのは殿下だった。


「まあ君がどうしてもと言うのなら、そうしよう」


 勝った! 私が一晩で考えた理由なんかで納得してくださってありがとうございます!


 頭の中で感謝をしつつ、実際にも感謝を述べる。


「ありがとうございます。 クロード殿下」


 ……こうして私は、国外追放を回避する第一歩を踏み出したのだった。


 そういえば、せっかくの王城のおいしそうなスイーツ、全然楽しめてないや。


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