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添い寝は突然に。


「んん……」


ふと目が覚める。こんなに眠くても目が覚めてしまうなんて、普段の睡眠の質が問われるな……。


手元に転がっていたスマホで時間を確認する。午前0時過ぎ。帰宅したのが確か18時ごろだった記憶があるので、6時間ぐらい寝てたのか。だいぶ眠気は取れたな。


しかし、連日の騒音でまともな睡眠をここ数日とれていなかったからか、まだまだ寝れそうだ。明日は9時までに大学に行けば大丈夫だからもう一眠りするか。一応アラームをセットしておこう……。


そんなことを考えているとものすごい喉の渇きと空腹感に気づく。そういえば昨日から何も食べてない。


キッチンの冷蔵庫を漁ろうと起き上がる。いや、起きあがろうとしたがそれは叶わなかった。何か重りのようなものが体に巻き付いている。


「……ん?」


違和感の正体を確かめようと布団をめくった俺の目に飛び込んできたのは──。


「……んん……。ぐぅ……ぐぅ……」


──俺の体に巻きつきながら眠る布の塊だった。


「うおおおおっ!?」


思わず大きな声を出してしまう。呪◯で見たようなホラー映像だった。


そこで俺は思い出す。昨日、確か隣の部屋の行き倒れを連れてきたんだった。でも、確か俺の愛用の人ダメクッションによだれを垂らしながら爆睡していたはず──。


これだけの大声にも関わらず、巻き付いた布人間は起きる気配がない。ある意味羨ましい睡眠の深さだ。


「な、なんでこっちにきたんだよこいつ……」


無理やり振り解いて起きあがろうとするが、力の入っていない人間というのは思いの外重い。昨日こいつを部屋に運んだ時に知った無駄な知識だ。


しかし、そこで諦められるほどの空腹感ではない。正直このままだと俺も倒れてしまいそうだ。


「くっ……!」


火事場の馬鹿力を振り絞り起き上がる。が、振り解けない。腰のあたりをものすごい力でがっちりホールドしてやがる……。


そのまま腰に布人間を巻きつけたまま冷蔵庫まで突き進む。布人間は俺の腰に巻きついたまま、引きずられるようにくっついてくる。


……ずる……ずる……。


人1人腰に巻きつけながらなんとか冷蔵庫にたどり着く。その姿はまるでオアシスを求めながら砂漠を彷徨う男のようだった。


オアシス(冷蔵庫)に常備されているエナジードリンクを取り出す。というか、エナジードリンクしか入っていない。


プルタブを引き、翼を授けるエナジードリンクを一息で飲み干す。う、うますぎる……!


まるでカ◯ジのようにその味に打ち震えている間も、腰に巻きついた布人間は起きる気配がない。すげぇな、こいつ……。


「……おーい、起きろー」


無駄だと思いながらも声をかけてみる。起きない。


肩を揺する。起きない。


真冬の雪原のような白いほっぺを引っ張ってみる。起きない。


人形のような鼻をつまむ。「ふが……」息苦しそうにしているが……起きない。


「……はぁ」


まるでおとぎばなしの眠り姫みたいだな。キスしてやろうか。

そんな馬鹿なことを考えていると、満たされた飢餓感からか、また眠気が襲ってきた。


「ふぁ……。……とりあえずもう一眠りするか……」


俺は布人間を腰に抱えたままベッドまで戻り、無理やり寝転ぶ。めちゃくちゃ動きにくいが、なんとか寝れる体勢にはなった。よし、寝るか……。



──もちろん腰には布人間を巻きつけながら。



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