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デウス・ウルト   作者: 妖怪はらへった
第一章 天峰学園入学編
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第7話 入学式

 校舎に入り、案内された教室で待っているが、輝夜や嵐が現れる気配はない。


「しかし、本当にいろんな所から受験してるんだな」


 ここが日本か疑ってしまうレベルで外国人が多い。

 少なく見積もってもこの教室の3分の1は外国人だ。

 言葉とかどうするんだろうか?

 文字は読めても会話は全く出来ないぞ。


 ・・・よし、話しかけられないように時間まで寝てよう。

 即断即決、俺は周りの目など気にせず健やかに眠ることにした。





 結局時間まで寝ていたがあの二人は現れなかった。


「まぁ、待機の教室はここだけじゃないしな」


 引率の教師に案内されるまま、入学式が行われる体育館に向かう。


 しかし、敷地も広ければ校舎も広いな。

 中庭のあるロの字型の4階建てで、どの教室も大学の講堂のような雛壇状の教室だ。

 生徒の顔がしっかりと見えるように作られており、授業中の居眠りは許されないのだろうとあくびをしながら見ていく。


 そうこうしているうちに目的地の体育館までたどり着いた。

 体育館まではわかりやすい一本道だったがこの道も日によって変わるのだろうか?

 そんなことをぼんやり考えながら、促されるまま体育館の中へと入る。


 中学校の時とは違って、式が始まっての入場ではないらしい。

 体育館を見回しながら、指示された場所へと向かう。


「左右の端から入り口の方まで並んでいる人たちが教師かな?」


 俺以外の生徒も周りを見ながらざわつく。

 立ち並ぶ教師たちの中に明らかな異質な存在がいた。

 上から下まで真っ黒なローブを纏った顔の見えない性別不明の奴が立っている。

 辛うじて胸の上下でマネキンではなく人であるのだろうということしかわからない。

 あとあのアイマスクをした幼女も先生なのだろうか?

 鮮やかなローズレッドのサイドテールを揺らしながら、ヘドバンしてるけど寝てるよなあれ。


「この学園、色々スゴいな」


 人を見かけで判断してはいけないのだろうが、教育機関としてどうなんだ。

 むしろこういう常識を逸脱した人が天才だったりするのだろうか。


 キィイイン――――


 マイクのハウリングで新入生の入場が終わったことを理解する。


「えー、皆様ご静粛に。これより、天峰学園高等部の入学式を執り行います。本日司会進行をさせていただきます教頭の――――」


 名門とかでもこういう退屈な感じは変わらないんだな。

 名門だからこそガッチガチなんだろうか。


 教頭の司会で式は進み、退屈極まりない校長の挨拶が終わり、壁側の幼女よろしくのヘドバン仲間になりかけた頃に、壇上によく見知った顔が現れた。


「――――それでは新入生代表の上代輝夜さん、お願いします」


 教頭に促され、輝夜は品のよいお辞儀をすると凛と澄んだ声を響かせた。


「春の息吹が感じられる今日、私たちは天峰学園に入学いたします。本日は――――」


 これはまた何ともむず痒いな。

 知ってるやつが表彰とか演説してたりすると、何とも言えないこのむずむずって何だろうな。


 直視できず周りをチラリと覗き見る。


「あー、これはまた増えたろうなぁ」


 何か恍惚とした表情で見ているやつがチラホラいるのを見つけてしまった。

 これは俺の学園生活は波乱でいっぱいだろうなと心の中でため息をつく。

 しかし、輝夜が新入生代表ってことはあいつが主席なのか。

 頭の良さの違いは比べる気が起きないほどの差があるのはわかってたが、まさかここまでとは思っていなかった。


思創の卵(プロキシー)も軍事方面では文句無しだしな」


 今朝の事を思い出しながら壇上の輝夜に視線を戻す。

 できる限りはサポートするつもりだがトラブルはつきないだろうな。

 多少は大目に見てもらいたいぜ監視役。


 輝夜の挨拶が終わり、在校生代表の生徒会長が壇上に上がるとどこからか黄色い声が上がる。

 ミディアムの波うったプラチナブロンド、柔らかな翡翠の瞳、外人特有の整った鼻筋、常に絶やさない微笑みの貴公子。

 俺でも知ってる有名人――――


「あれが・・・現代のパラケルススか」


 誰かがそう呟くのが聞こえた。


 彼の名前は『カール・フォン・ホーエンハイム』

 この学園の生徒会長であり、錬金術の講師であり、研究者だ。

 17歳でありながら医学分野では彼の右に出るものはおらず、度々テレビや雑誌でとりあげられていた。

 彼を目的としてこの学園を目指しているものが多く、出きれば講義を受けたいと著名な方々からのラブコールも絶えないらしい。


 あれだけ整ってると色々大変そうだなと思いながらぼんやり見ていると、一瞬目があった気がした。

 生徒会長から放たれる明らかにこちらを意識した視線を感じ、後ろを振り返る。


「誰か他にも有名なやつがいるのか?」


 視線を前に戻すと、ちょうど生徒会長の挨拶が終わり、体育館内が緊張と静寂に包まれた。


「えー・・・、それでは最後に学園長よろしくお願い致します」


 壇上にワインレッドのスーツに白衣を羽織った目付きの鋭い女性が立つ。

 後ろに一つに纏められた黒髪を揺らしながら、体育館内を一瞥するとマイクを手に取る。


「私は呼桜焔(こおうほむら)、天峰学園の学園長だ。長々と話すのは好かん。簡潔にいかせてもらう」


 学園長は生徒を見回し、異論はないなと頷く。


「まずは入学おめでとう。我等が学園に入学した時点で諸君らの優秀さは証明された。学力としては大学相当であると自負するといい。故に学園では基礎的な授業は行わぬ。ここでは更なる知識の研鑽を、探求をするといい」


 試験内容難しいなとは思ってたが高校超えてたのか。

 よく入れたな俺。


「更なる科学の発展、思創の卵(プロキシー)の研究、世界の真理の追及、望む答えを得るまで進むといい。けして傲るな、疑問を捨てるな、答えを諦めるな、悩み続ける愚者こそ賢者と知れ。汝等の答えは我等と共に。我等こそ真理の扉なり。以上だ」


 いい終えるなり学園長は足早に壇上から降り、出ていってしまった。

 有無を言わさぬその姿に、俺を含め会場が呆然とする。


「・・・あっ、えー、学園長ありがとうございました。以上を持ちまして天峰学園入学式を閉会いたします。新入生はこの後簡単な検査及び測定を行い、制御装具(インペリウム)が支給されますので担当教諭の指示に従い行動してください」


 お、ついにスーパー生徒手帳が貰えるのか。

 これで輝夜の暴走も多少は抑えられるだろう。


「中々に濃い学園生活となりそうだな。我等こそ真理の扉か、俺の探す真理があることを願うよ」


 俺は一人うんうんと頷きながら体育館の外に出るのだった。

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