第三話
「え?ちょ、そんな話し聞いてないんだけど?」
確かに世界に対する憎しみはある。が、いきなり滅ぼされてはちょっと......困る。
「ったく。ごたごた言うと塵にするぞ?」
ち、塵?もはやなんの脅し?
「は、はいわかりました......」
「ん?塵...? そうだ!」
神は、子供のように目を輝かせた。正直いって気持ち悪い。
「いいことを思い付いた。お前はこれからも私と協力して世界を破壊するのだ。あとは転生してからいろいろ言うからとりま行け!」
「いや、ちょっと!」
さすがに扱いが雑すぎる。突っ込みどころが多すぎてなにも言えないまま僕は白い光に飲み込まれた。
僕は目覚めた。まず感じるのは体の感覚がないことだ。
手足の感覚に至っては皆無だ。動かそうとしても体に力がはいらない。
視界は緑色で覆われている。
ここでようやく自分がうつ伏せになっていることを理解した。
というか何でこうなってんだ?訳がわからん。
思い出そうとしても、一部に霞がかかっているようで、うまく思い出せない。こういうのって何て言うんだっけ?転生とかそう言う類いのやつ?
と。
僕の体は宙を舞っていた。
物凄い力で捻り上げられていく。そのくせ痛みがない。
緑一色だった視界に窓ガラスや襖が映り、その奥にみえたのは、暗い穴だった。
《まてまてまてまて!その穴はなんだよ!》
必死で叫ぶも声が聞こえてる様子はなく、更に驚きと焦りで閉じていたと思われる聴覚が覚醒すると、ブォーンという聞きなれた音が爆音で降ってきた。抵抗は一切できず、その穴が掃除機だと気づいたのは吸い込まれたあとだった。
掃除機の中は物凄いスピードだと思っていたのだが、以外とゆっくりと進んでいく。しかも爆音はどんどん大きくなっている。掃除機の中心に近づいていることを示していた。
【実績解除。“吸引”を解除しました。吸引耐性が発動します。】
このままだとゴミだらけのところに入ってしまう...
と思った刹那。
《え?》
吸われてきたときよりもずっと早いスピードで反対側に進み始めた。周りの埃は吸われているせいでスピードが倍以上に感じる。
まて、怖い。僕は速いのが嫌いなんだよ...
《うわあああああああ!!!》
そして僕は明るい世界に飛び出した。しかし、これだけでは終わらなかった。明るい世界に出た僕はすぐに新たな力の虜になった。今度は捻るような強引な力ではなく、ふわっと包み込むような。そう。僕は風にのっていた。
【実績解除。風に乗ってを解除しました。方向転換機能が発動します。】
ん?今なんか聞こえたよな...
しかし考える暇もなく、ゴォッと吹いた風に飛ばされ、僕は巨大な茶色い物体の方へ。まて、ぶつかったら死ぬ!しかし方向転換なんてできんよ...
しかしやってみるしか方はない。僕は全体重を右に傾けて。思いよ届けと願って。
《うおおおおおお!!》
グゥンと車の運転が下手な人のようなコーナリングで、僕はすれすれを通った。
《はぁ、はぁ、なんとか命の危険を免れた......》
【実績解除。風中転換を解除しました。】
なんなんだこの声は。
〈ほう。ようやく気づいたか。〉
いや、誰?......どっかで聞いたことあるような声が?
《あのう......どなたですか?》
〈そうじゃ、記憶を消したのを忘れていた。知らないと思うが、私は神じゃ。前みたいな問答はやめてくれよ?〉
なぜか、神、という言葉がすとんと落ちた。
何でだ?
《神、ね。ふうん》
〈そう。今のお前の状況を伝える。今、お前は埃になっている。〉
《......は?》
〈自分の体をよう見るんだ。手足の感覚がないじゃろ?あと、埃でなければ掃除機に吸われたりしないはずじゃ。〉
言われて見ればそうだ。しかも体軽いし。
......ってことじゃねえよ!!!
《なんで埃になってんだよ!》
〈まあまあそう喚くな。お前は覚えてないだろうが、世界を滅ぼす約束をしたのじゃ。これからお前にはミッションを与える。それをすることで世界を滅ぼすことができるのじゃ。あと、先ほどの声じゃが、お前のなかに存在する私の分身じゃ。色々な行動をする事によって実績が解除されたり、新たな技を授かったりするから、しっかりと聞けよ?では、健闘を祈るぞ〉
《あ、おい!!!》
どうやら切れたようだった。色々説明されたが、さっぱりわからん。でも、技や実績解除のような物は、ゲーム感覚で楽しめそうだな......
......面白そうだな。楽しんでみるか!!
って...まずはなにをしようか?
考えていてもわからないので、取り敢えずは埃として空を飛ぶ感覚を身に付けよう。
運命の歯車がまた回りだしたようだった。