第一話
僕は不運な奴だ。世界不運ランキングをつけるとしたら、少なくともトップテンには入るだろう。
この不運は子供の頃から僕につきまとっている。
不運の始まりは小学5年生のときに、父親が乗っていた飛行機が墜落して、父親は死んでしまったことだった。
母親も気落ちしたのかその3年後に病死。
叔父のところに預けられたものの、叔父は大正時代の初期みたいなとんでもない頭の固さで学校に通うことを拒否。お金が無駄とかお前マジどの時代の農民だよ。
結局義務教育過程すら受けさせて貰えずに、就職もできず、家でYouTuberをやっていた。
始めて3年くらいはかなり順調だったのだが、同じステージを実況したことに怒り狂った器の小さい同業者に、ハッキングされた挙げ句、YouTuberのアカウントを消され、その5日後、鍵をかけ忘れたことから家のパソコンを盗まれる、ということがあり、金がほとんどなかった僕はパソコンすら買えず、無一文のニートまで落ちぶれたのだ。
僕は前世で、何をしたのだろうか。じゃなければこんな不運なんて襲ってこないはずなのに...
そんなことを思いながら暮らしていたある日。
僕に一通の電話がかかってきた。学校に8年間しか通っていない僕に、友達は皆無といっていい。
電話がかかって来ることなんてほとんどない。
しかし取らない訳にもいかず、受話器をとる。
間違い電話とかなら、電気代の無駄だからやめて欲しいんだが...
「もしもし、霧島亮様のお宅でしょうか。」
「は?は、はい。そうです。」
相手はなんと女性の声だった。
ここ数年女性と話したことがないのでかなり緊張する。
ついに俺にもモテ期が......
「あ、霧島亮様ですね!大変申しにくいことではあるのですが、亮様の叔父様の、翔様が残された借金が500万円ほどございまして...」
「......は?」
来るわけなかった。というか最悪の結末。
借金だと?あの糞親父め、やりおったな?
「わかりました。なるべく早く返済します。」
そう言って僕は電話を切った。
ここでも持ち前の不運を発揮。家を売っても500万円は返せない。ならばどうすればいいんだ?
何も考えられず、僕はその場に立ち尽くした。
......そして。答えは出た。簡単に。
「僕が死ねばいいんだ。」
今までいいことは考えてみればひとつもない。
この先、家を売ったりして、なんとか返済できたとしても、税金などは支払えない。とすれば、最低限の生活はできるが、楽しいことなど一切ない可能性が高い。
ならば今死んでしまい、生まれ変わって楽しい人生をなるべく早く生きたい。しかも借金から逃げられる。
これこそ一石二鳥と言うものではないか。
そんなことを考えている内に怒りが沸いてきた。
僕をこんな生活にさせた叔父に。また、叔父の所をすむはめになった両親の死に。というか、この世界全てに対する怒りが沸々と上がってきたのだ。
僕は遺言にそれを書き遺すことにした。
自分の指を切り、血をだすと、昔の怨霊みたいに血文字で、“生まれ変わって地獄の王になり、天災を地球におこして、破滅へ導く”
と。この僕が生まれた世界への憎しみを込めて。
それから家にあったら電気コードを天井にくくりつけ、本を重ねて積みその上にのる。首吊り自殺の基本だ。
あとは。生まれ変わったら、魔王になる。
そうあり得もしないことを考えながら、僕は本を蹴り飛ばし、中に浮いた。
視界が真っ白に染まっていく。これで不運ともおさらばだ。自殺は辛いっていうが、そうでもないなぁ......
これが、僕の、“人間として”最後に思ったことだった。