魔女と呪われたもふもふ王子(いわゆる「美女と野獣」のハッピーエンド)
王子と対峙する老婆の姿が変わってく。
ホームレスのような風貌が青いローブをまとった魔法使いになる。
その身にまとう宝石は彼女が高位の魔女であることを示している。
「仕方のないやつだね。
最後に与えたチャンスも棒にふるなんてね。
ここまでのクズだとは思わなかったよ」
蔑むように王子を睨む魔女。
それに王子は言葉も出ない。
「この哀れな老婆にパンひとつ恵むことができないなんてね。
本当におまえは人間のクズだよ。
獣にでもなっておしまい」
魔女が杖を振ると、王子は黒いもふもふの毛に包まれる。
そして、人間の身体から獣の身体に変化していく。
王子は2本足で立てなくなり、四つんばいになる。
そう、王子は大きな黒ネコにされてしまったのだ。
「この姿がお前にはお似合いだよ」
魔女は高らかに笑う。
王子は大きな翡翠の目で魔女を見上げる。
「この姿で一生過ごすがいいさ…」
王子は前足の肉球を舐めて顔を擦る。
「と、いいたいところだが…
やっぱわたしも甘いよね。
おまえにチャンスをやろう」
王子は後ろ足をあげて足の付け根を舐める。
「おまえに人の心がわかるようになったら、呪いは解けるようにしてあげるよ。
よくお聞き、真実の愛、それがわかったらおまえは王子に戻ることができる。
そうお前が人を愛し、人に愛されるようになったら、元の王子にもどしてやろう」
王子は魔女の前で虫を追いかけていた。
「わかったか。
いままでの自分を見つめ直すがいい!」
王子は、魔女の横をすり抜けて、城の外に駆け出すのだった。
地面に背中を擦りつけ、草の匂いを嗅ぎ、蝶を追いかける。
王子にとって生まれて初めての自由であった。
王子は幼い頃から寝るまもなく帝王学を叩き込まれてきた。
武術でも学業でも常に人より上を行かなければならない。
そんな生活は王子のこころを蝕んでいったのだ。
だんだん王子の顔から微笑みは消えていった。
冷酷で人を人とも思わない王子はこうして造られたのだった。
人間に戻る?
そんなことまっぴらごめんだよ。
せっかくの自由をてにいれたんだからね。
そう言うように、目の前の黒いもふもふは身体を大きく伸ばしてあくびをし、一度魔女を振り返っては草むらの中に消えていくのだった。
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