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Page5.訳あり奴隷の末路

奴隷の処分までの期間を5年に変更しました。

 街に帰ると、派遣員ギルドは混雑していた。大体皆考えることは同じで、このくらいの時間に帰って来るみたいだ。


 僕はハンナさんの所に並び、順番が回って来ると、仕事完了の報告を行った。


「え!?これ今日全部とって来たんですか!?」


 ハンナさんは僕が取り出したものを見るや、目をパチパチさせて驚いた。


「はい、そうです。」

「へぇ~、今日登録したばかりなのに凄いですねぇ。タクミさんは有望な新人さんです。私、応援しちゃいますからね。」

「あ、ありがとうございます!!」


 ハンナさんからのウインクによる激励は、僕はみたいな健全な青少年には刺激が強かった。


 デレデレしちゃう。


 でも貰った報酬は全部で銀貨三枚。宿は銀貨五枚なので四割赤字。今のままだとジリ貧です。


 一月とかの区分けがあるか分からないけど、三十泊するのに銀貨百五十枚。これが日本円だとすると、ホテル一泊一万円と考えて、銀貨百五十枚が大体三十万円くらいだと思う。


 そして、現在一月の稼ぎは銀貨九十枚予定だ。つまり、日本円にして十八万円くらい。税金は派遣員ギルドが払ってくれるらしいので、手取り十八万円と考えると、日本では生活できなくも無い。


 宿賃による想定換算だと、


 金額1枚=200000円

 銀貨1枚=2000円

 銅貨1枚=20円


 くらいかなぁ。


 とにかく日々の目標は一日最低銀貨五枚、必需品もあるので六、七枚は稼がねばならんとです。


 今日は色々試しながらやってたし、明日はもう一つ袋を買ってきて、マップ頼りに薬草や果物を探せば、五枚は簡単にいけそうだけどね。


 マップの感知は生き物だけでなく、なんと薬草や果物なんかも見つけちゃうのです。もうイメージはグー○ルマップ。条件別に検索可能ですたい。


 便利すぎて困ります。


 俺は派遣員ギルドから出て、宿へと向かって歩いていく。


「ほら、入れ。」


 どこかで聞いた声がする。


 声の方を向くと、そこにいたのは奴隷商館の老人だった。


 老人は、奴隷たちを檻の中へ誘導していた。その中にはピリカとハクもいた。ハクはかなり具合が悪そうで、フラフラとしながら歩いていた。


 まさか買い手がついたのかな?

 僕は気になって老人の元へ駆け寄った。


「こんにちは。」

「あ、ああ、あなたでしたか。こんにちは。本日はどうしましたか?」


 僕が老人に声をかけると、老人は一瞬誰だろうと考えた後、思い出したかのように答えた。


 昨日の今日だけど、商売してる人に覚えてもらうのは難しいね。


「いえ、この奴隷達が気になりましてね。」


 僕は檻の中の奴隷に目を向ける。


「なるほど。実は言いにくいのですが、この奴隷達は処分されるんですよ。」

「え!?処分……ですか?」


 僕は目を見開いて老人を見つめた。


 処分ってことはつまり、殺されるってことだよね。


「そうです。五年売れないと、殺処分してもいいという許可が出ます。店に置いておくのもただとはいきませんので……。」

「な、なんだって!?」

「私も心苦しいんですがね……。これでもギリギリまで待って。定められた最低金額まで下げていたのです。」


 僕は愕然とした。


 まさかこの世界では、こんなにも命が軽いなんて。

 ピリカとハク以外はともかく、その二人とは実際に言葉を交わした。

 可愛いし、ちょっといいなと思った。

 そんな子達が殺されてしまうなんて、あんまりだった。


 彼も奴隷商人としては真っ当なのだろう。ひどく沈痛な表情をしていた。


「せめて、あ、明日まで、待って貰えませんか!?僕が全員買います。」


 僕はこんなこと口走っていた。


 自分でも驚いたけど、勝手に口が開いてしまった。


 だって嫌だったんだ。


「全員ともなれば、金貨百枚にはなりますよ?」


 老人からあまりに無謀な死の宣告が唱えられる。


「上等です。ただ、僕が欲しいのはピリカとハクだけです。それ以外は解放しますが、大丈夫ですか?」


 ピリカとハクが死んでしまうのならそのくらいどうにかしてみせます。


「構いません。彼らは犯罪奴隷ではありませんので。」


 流石に犯罪奴隷は僕でもどうにもできない。


 僕が死んでほしくないのは、ピリカとハクだけ。でもピリカとハクの手前、他の人も見捨てられないから買ってあげるけど、解放するからそれ以降はどうにかしてね?


 命を繋いだだけマシってもんでしょ?


 可愛い子以外側に置きたくないし、爺ちゃん婆ちゃんとかの世話とか出来ないとです。


 ごめんね!!


「ありがとうございます。」

「私も鬼ではないので、明日くらいまでは待ちましょう。明日が過ぎたら送ってしまいますからね。」


 この老人も本心では殺したくはないんだなと思って熱くなる。商人にも関わらず、酷く表情を歪ませていた。


 老人は檻に乗せた奴隷達を下ろして、店の中へと連れていった。


 猶予は一日。


 普通の方法じゃ間に合わない。なら、普通じゃない方法でやればいい。


 一日で一攫千金できる場所なんて限られている。ならいく場所は決まってる。


 誰もが自分の運を試し、一攫千金を夢見るあの場所だ。


 僕は両頬を手でパーンと挟んで気合いを入れて、目当ての場所へと走り出す。


 ピリカとハクを救うために。

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