Page47.ないならつくればいいじゃない
書き途中の内容を投稿してしまい、申し訳ありませんでした。
改めて投稿し直しました。
「あなた方にはここに集落を作って生活してもらいます。もちろん軌道にのるまでは最初はこちらでサポートしますので安心してください。」
「ははぁ~。分かりました。タクミ神様。」
跪いて平服している人々。
「いや、神とかわけわからないんで。立ってください。それに、僕は普通の人間です。」
『それはない(です)。』
目の前にいる奴隷達が一斉に顔の前で利き手を左右に振って否定する。
皆仲良くない?
息があってるな!!
しかもピリカ達まで仲間入りしてるし。何やってるんだか。どう見ても冴えない童顔目の只の元高校生でしかないでしょ。
「いやいや、俺は一介の派遣員ですよ?」
「いやいやいや、それなら一瞬でここまで連れてこれるわけないじゃないですか。」
「いやですよ。ただの派遣員が欠損した足を治せる訳ないじゃないですか!!そんなものおとぎ話でしか聞いたことありませんよ!!」
「そうですよ、私なんて不治の持病を治してもらいました!!」
「アンデッドを袋に詰め込むとかあり得ないです!!」
「私は皆を不幸にする体質を直してもらいました!!」
「衰弱する呪い……解いてくれた」
「目を見えるようにしてくれました!!」
目の前いる奴隷達は処分寸前だったり、訳ありだった奴隷ばかり総勢200人。そろいもそろって僕を人とは認めてくれないようだ。
そしてだからなんで君たちもそっちにいるの?
こっち側でしょ!?
はぁ……。もらいもののスキルでこうなってるだけなのに辛い!!
アイアムヒューマン!!
「妾に近寄っても誰も砂にならなくなったのじゃぞ!!」
『え!?』
そしてリムも爆弾を落とすんじゃないよ!!
みんな一斉にリムの方見て目ん玉飛び出るほど驚いてるじゃん。
「いや、もう誰も砂になったりしないんで!!」
「ははぁ。やっぱり神様だぁ。」
「そんなことできるのは神様しかいないよなぁ!!」
『そうだそうだ。ははぁ。』
やっばい、さらに油を注いでしまったぁ!!
万歳して平伏するのはやめろぉ!!
とにかく何を言っても認めてくれなそうだから今は放っておこう。
ピリカに家というかブロック式の家を作ってもらってそこに住んでもらおう。未成年だからあまり分からないけど、それなら後から都市計画を立てても移動とかしやすいと思う。
それからリーダーというかまとめる人は必要だよね、全体と役割毎とかで。ラノベでも良く戸籍というか住民の把握はきちんとしていたからそれもやっといた方がいいか。
「ひとまずうちのピリカに家を作ってもらうので、一つの家につき3~4人で住んでもらいます。食べ物もしばらく持ってきます。この中で組織の長などを経験したことがある人は手を挙げてもらえますか?」
僕が奴隷たちに確認すると、一人初老というには少し早い筋骨隆々で目を跨いだ刀傷を持つ顔に持つ男が手を挙げる。
この男は買った時は酷い状態で片眼が見えず、右腕が無く、足も左足のくるぶしから下が無くなっていた。それをちょちょいと図鑑スキルで治してやった。顔の傷は戒めに残しておきたいというので、それだけ直さずにそのままにしている。
治す前はもう萎れて人生を諦めているような表情だったが、治してやった途端に全盛期の気迫を取り戻し、気が満ち満ちているように見えた。
たしか名前は……。
「ダンディムさん、でしたっけ?」
「はっ。大変不遜な物言いですが、私のような凡庸な人間に敬称や敬語など付けないでいただけないでしょうか!!」
そんなこと言われてもな~。年上にため口で話すって家族くらいじゃないかなぁ。僕にはもういないかったし、ずっと敬語だから、年上となるとかなり話しづらいんだけどなぁ。しゃーないか。
「ダンディム分かったよ。とりあえず君しかいないようだからここは基本的に君に任せることになる。」
「ほっ。えっ!?タクミ神様はこちらに住まれないので?」
一旦安堵の息を吐いた後、驚いた表情になるダンディム。
いやだって内政とか面倒じゃない。ラノベで内政チートだのやる人の気が知れない。それなら丸投げするのが一番いいでしょ。王の上に絶対逆らえない神として君臨するのが楽だよね。
そんでたまに見に来てダメなのが生まれたら天罰すればオッケー。
「うん。僕の目的は世界を見て回ることだからね。ちょこちょこ見に来るけど、基本的には君たちのことは君たちで決めて君たちで生活してもらう。もちろん方向性くらいはあるよ、一番大きな指針としては、差別しない、ことだね。それは君たちが体験しているだろうから分かると思うけど。」
「はっ。それは重々承知しております。」
奴隷ともなればどうしても扱いが悪くなる。その体験をすれば差別で虐げることの理不尽さが分かるはずだ。
僕も親が居なかったから色々されたっけな。今では遠い過去のような話だけど。
「ならいいよ。それと、今回は君たち200人だけだけど、これから世界の村や町を回るたびに君たちと似た境遇の人たちを買おうと思っている。その中には君たちと仲が悪かった国の人間や、違う種族なども多くいると思う。それでも差別しないと誓えるかな?」
『タクミ神様の仰せのままに!!』
完全に神様になってしまってるよ……。誰か助けて。
まぁ皆真剣だし、士気というかやる気も振り切ってるようだからいいか。
「ならよし。後は犯罪を犯さないのであれば問題ないかな。ダンディムが一番上に立ってまとめてね。それから育てたい農作物や欲しい家畜、建てたい施設などなど、要望をまとめておいて欲しい。必要なものは買ってくるよ。農作物は土地や気候とか一切考えなくていいから。後、ここに誰が住んでいるかすぐ分かるように全員の名簿を作っておいて。新しい人が来るたびに追記するように。紙とペンは後で渡す。」
「はっ。承知しました。」
「この場所の警護は基本的にアンデッドがやってくれるから気にしないで大丈夫だけど、念のため、何人か生身の人もいた方が居た方が良いかもね。」
「心得ております。」
これでひとまず大丈夫かな。後はピリカに家と保管庫作ってもらうのと、保管庫に食料を詰め込んでおけばいいか。
僕たちは今奴隷たちの住む場所として不死の庭園に来ている。
そういえばなんでこんなことになったんだっけなぁ。
僕達が次の日に奴隷商に行ったら既に町中の処分奴隷や訳あり奴隷が集められていた。そしてその人数を見た時、いつも通り支度金を渡して解散ってしようと思ったんだけど、リムから鶴の一声がかかった。
「こやつらは行くあてがないのか?なら妾の城の近くに住んだらどうじゃ?」
と。
僕はなるほどと思った。
あそこなら誰もいないし、周りは高い山や谷、森に囲まれてるし、アンデッドに言うことを聞かせれば外敵は殆ど寄り付かないだろう。それにどこかの国の領土ということもない。確かにうってつけの場所だ。
家はピリカが建てられるし、食料や必需品も魔法の袋で難なく運べる。
あとはどうやってみんなを連れてくかな〜って考えてたら。
『マップ転移機能を使用しますか?図鑑ポイントを十億ポイント使用します。YES or NO』
と表示されたので図鑑ポイント長者である僕はなんの躊躇いもなくイエスを選択したよね。御都合主義万歳!!
そして、これ幸いとばかりに強制力のある魔法契約書を図鑑ポイントで作成し、僕の事を絶対漏らさないようにした後、不死の庭園へと転移した。
その後、急によく分からない場所に視界が変わったことに狼狽えたり、渋谷のスクランブル交差点のごときアンデッド軍を見て気絶したりしたものの、僕の図鑑で精神を安定させて説明を行い、袋に大半のアンデッドを詰め込んだ事でなんとか落ち着いて今に至ると言うわけだ。
「それじゃ、ピリカ簡単な家を六十くらい建ててくれる?それと一つは大きめで。」
「はーい。」
僕の指示でピリカが家を建て、必要そうな項目決めて作った個人情報用の紙と名簿の紙とペンや、食料に備品や素材を渡し、無限に水が湧き出る泉を作った僕達は奴隷商人の元へと帰還した。
後日、この村を訪れた時、僕を百倍美化した等身大よりさらに大きな木像が立っているのを見て、「な、なんじゃこりゃー!?」と叫ぶことになるのだが、今の僕はまだ知らない。




