Page45.猫車
総合評価が500ポイント突破しました!!
読者の皆様ありがとうございます!!
感謝の更新です。
俺の名前はバシャミーチ。アレスタでバシャ作ってる職人さ。以前は嫉妬狂いと呼ばれていたが、今ではすっかり卒業さ。
モテる男が来てもしっかりと話を聞いて、その男にピッタリのプランを提案し、丁寧な仕事をしてるうちに少しずつ評判も良くなってきた。
それもこれも10日ほど前に来てくれた偉大な男のおかげなんだけどな。
それにしても昨日は街が色めき立っていた。なんでもブラックスコーピオンやターミネイトベアなんかのモンスターの死骸が丸々各ギルドに卸されたそうな。それも複数。
とんでもない人もいたもんだ……。
まさか……な。
俺はとあるモテ男と綺麗な女達を思い出したが、頭を振って思考を追い払った。
ーーガチャリ
ドアが開いて客が俺の店に入ってくる。
あれは!!あの方は!!伝説のモテ男!!
俺の心の師匠であり、男としての目標である偉大なるお方だ。
「いらっしゃーせー!!あ、こないだのオーダーメイドのモテ男……コホン……お客様じゃないですか〜?」
俺は平静を装って話しかける。
声が震えて全く装えてない!!
「そうですよ。素材取ってきたので馬車作ってもらえますか?」
「は?」
俺は言ってる意味が分からなくて間抜けた声を出してしまった。
ヤバい、これじゃあ前とおんなじじゃねぇか。
「え?」
師匠も呆れ気味の色を顔に浮かべている。しっかりしなきゃならなねぇ
「まさか……全部取ってこられたので?」
「うん」
「ということは、商人ギルドに聖樹やハイブラックストーンを下ろしたのも?」
「うん、僕達ですね。」
「うっす!!すぐに作らせていただきますっす!!」
「いやうざいんで普通にしたください。」
「うっす!!」
俺は本当に取ってくるなんてやっぱりとんでもねぇお人だ。やっぱりあの噂の人はモテ男だったんだ。
この男のためなら人生をかけた馬車をつくってやろつと思う。
「あ、馬車引くのこの子達なんだ。この子達に合わせてくれる?」
師匠がエルフと猫人族の抱える猫のような生き物を指し示す。
えっとそれじゃあ小さ過ぎるような気がするんだが。
「あ、ごめんごめん。ルナ、ソル大きくなってくれる?」
俺が困惑の表情を浮かべていたら、師匠がしまった〜という顔になりながら、猫らしき生き物に指示を出した。
「「にゃ」」
返事をした二匹の獣は腕の中から抜け出し、床に降りると、巨大化した。
何言ってるか分からないかもしれないが、俺も意味が分からない。
猫が馬サイズに大きくなってしまった。夢かと思って何度も目をこすっては凝視するが結果は変わらなかった。
「驚かせてごめんね。この子達は体の大きさを変えられるんだ。」
驚いた俺を気遣ってくれる優しさ。やはりモテる男は違うなぁ!!
なるほどこの猫ちゃん達は体を大きくしたり小さくしたりできると。それで大きくなったサイズに合わせて馬車を作って欲しいってことね。
完全に理解した!!
「分かったっす。そちらの猫ちゃんでいいんすかね。馬とは体の作りが違うので測らせてもらっても大丈夫っすか?」
「うん。にゃん狐のルナとソルって言うんだ。測ってもらっても構わないよ。」
快く計測させてくれる師匠。やはり心が広い。これもモテる秘訣なんだろうな。
ふむふむ。計測完了っと。
「ありがとうっす。それでどんな馬車がご希望っすか?」
「そうだなぁ。二頭引きタイプ。色は藍色とか落ち着いた色で、完全な個室タイプかな。長距離移動する予定だから、出来るだけ揺れないと助かるよ。」
「分かったっす!!」
師匠の要望を聞いてイメージは固まった。最速かつ最高品質のモノを作り上げよう。
「うん、よろしくね。どの位でつくれそうかな?」
「そうっすね。7日あれば仕上げてみせるっす。」
「分かった。支払いは先にするね。」
「とんでもないっす!!師匠なら後払いで構わないっす。」
先払いだって!?一見さんは先払いとか、半金前払いか基本だが、師匠から先払いさせるなんてダメに決まってる!!
「師匠?」
あ、やば。心の声が漏れてしまった。誤魔化さないと。
「あ、いえいえお客様なら後払いで構わないっす。」
「いや、派遣員なんてそこまで信用できるもんじゃないから。先に渡しておくね。」
俺の言葉を無視して、師匠は袋から代金をするっと出した。
本当に先払いしてくれるとは!?
「な、なんと!?分かったっす。最高の仕事をしてみせるっす。」
師匠の漢気に答えねばなるまい!!
「あ、資材はどこに出したらいいかな?」
「はいっす。案内するっす。」
倉庫に必要な素材を出した後、師匠は帰っていった。
さてやるか!!
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派遣員ギルドで買い取りのモンスターと素材を沢山出したら、「これ以上はウチだけでは買取できません。」と言われたので商業ギルドや木工ギルド、鍛冶ギルドにも下ろして回った。
どのギルドでも蜂の巣を突いたような騒ぎになり、査定は明日の昼までには出して連絡してくれることになった。勿論全ては出していない。自分達で使いたい分もあるし、解体済みで使いやすくしてるし。
それから馬車工房に行って正式に注文してきた。なんだか性格の書き換えもしないのに性格が変わってしまった。何かあったんだろうか。まぁいっか。
とにかくこれで7日後に念願の馬車が手に入るぞ。やったね。
馬車の注文が終える頃にはすでに日も暮れたので、夜の街に興奮するリムを引っ掴んだまま、僕たちは宿へと戻った。




