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Page44.え、僕なんかやっちゃいました?

7万PV突破。

またまた評価をいただきました。ありがとうございます。

感謝の更新。

 宿を取った僕たちはその足で派遣員ギルドへと向かって歩いていく。


「この果物美味いのう!!」


 リムがマンゴーっぽい果物を皮ごとむしゃむしゃと食べている。

 いったいどこから出した?


「何すんだい、この悪ガキが!!」

「な、何するのじゃ!?」


 怒っているのは今歩いている市場通りに店を構えるおばさんだ。おばさんはリムの手を掴んで捕まえている。リムは突然腕を掴まれてびっくりしていた。


 びっくりしても能力は暴発してないな。


 僕はホッと息を吐く。


 おばちゃんの店で売っているのはリムの持っているマンゴーもどきと全く同じ外見のフルーツ。他にも様々な種類が揃えられている。暖かい気候だけに南国風のフルールが多いらしい。


 状況だけ見ると、リムが売り物を勝手に取って食べたらしい。


「あ、お姉さんすみません。うちの娘がどうかしましたか?」

「お姉さんだなんてそんなこと言われてもごまかされないよ!!どうしたもこうしたもあるか!!うちの店の商品を勝手に食っちまったんだ。」


 お姉さんと呼ばれたおばさんは一瞬満更でもないような顔をした後、キッと表情を作り変えて説明する。


「なるほど。それは申し訳ありませんでした。代金は支払います。お詫びと言ってはなんですが、買えるだけ買わせていただきたいのですが、これで足りますか?」


 僕は軽く頭を下げた後、腰の袋から金貨を二枚取り出して、おばさんの前にちらつかせる。


「か、金を払ってくれるなら私としても問題ないさ。でも金貨2枚もかからないよ。精々金貨1枚ってとこさ。」


 お金をみたおかみさんはバツの悪そうな顔をしてリムの腕を離して店の中に戻る。相場は分かってるのでここで誤魔化さずに妥当な金額を提示してくれたのは評価にプラスだ。


「分かりました。常連の方もいらっしゃるでしょう?そう言った方の分を除いて金貨1枚で買いましょう。」

「いいのかい?」

「はい。迷惑料もこみってことで。」


 僕がそう言って金貨をおばちゃんに握らせた。


「どうやって持っていくんだい?」

「こうやってですよ。」


 おばちゃんは取り置きの分を分けると、何十キロにもなる果物をどうやって持っていくのか気になるらしい。確かに背嚢とかもってないからね。


 僕は疑問に答えるように袋の中に吸い込まれるように収納した。


『はぁ!?』


 おばちゃんだけじゃなく、周りで事件の推移を見守っていた人たちまで驚きの声を上げる。やっぱり派遣員ギルドで一回使っただけじゃそこまで知られていないか。


「そ、その袋どうなってるんだい?」


 おばちゃんが恐る恐る僕に聞いてくる。


「この袋は見た目より沢山入るようになってるんです。僕にしか使えませんけどね。」

「へぇ~、世の中にはそんな便利なものがあるのかい。」

「はい、旅をしているので助かりますよ。」

「確かに商人にとっちゃあ喉から手が出る程欲しい道具だろうね。」

「かもしれませんね。それじゃあ、ありがとうございました。」

「あいよ。また来ておくれよ。」


 おばちゃんとの買い物を終わらせるとリムに声をかけた。


「な、なんじゃ?」


 リムはビクッと震えて僕の顔を窺う。悪いことしたと感じているらしい。


「いいかい。そこらにある物に勝手に手を出したらダメだ。あの果物は売ってる人が一生懸命作ったものなんだ。リムも俺が力をどうにかした代わりに魔石をくれたよね?あの果物も貰う代わりにさっき僕が渡した金貨のようなお金と交換する必要があるんだよ。」

「なんとそうであったか。てっきり勝手に食べていいものかと。それはすまないことをしたのじゃ。」


 リムに説明すると、しゅんとして自分の何が悪かったか理解した。素直な良い子だなぁ、年上だけど。


「僕じゃなくておばちゃんに謝ってね。」

「う、うむ。すまなかった。」

「いいよ。お代はもらったからね。」


 リムがおばさんに頭を下げると、おばさんは手をヒラヒラとさせて苦笑いを浮かべた。


 その後、何故か店の売り込み合戦が始まり、品質や素材が悪くないもの、相場より高いものを除いて全部買ってやった。後にどこかの黒髪の貴族の若旦那が来たとして語り継がれたりしなかったりすることとなった。


 派遣員ギルドに着くと、「おお!!ここが派遣員ギルドとやらかえ?」とリムが大はしゃぎしたが、ハクに首根っこ掴まれてプラーンと子猫のように大人しくなった、


 僕たちはそのままギルドマスターの部屋に案内された。


「おかえり。もう帰ってきたんだね。顔を見る限り失敗ってことはないみたいだ。新しい仲間もいるみたいだし。」


 ギルドマスターが僕たちを見回しながら挨拶をする。その視線は、僕の隣に座り辺りをソワソワと眺めるリムや、後ろで立つピリカやハクが抱えているルナとソルに注がれていた。


「そうですね。首尾よくいきました。」


 僕は頷いて答える。


「そうかい。流石僕が見込んだ派遣員だ。それで今日は報告だけかな?」

「そうですね。それと、試験がどうなるか聞ければと。」


 報告はもちろんだけど、試験がどうなるか気になる。


「試験の方はもうちょっと待ってほしい。適当な指導役が今皆出払っていてね。14日~20日くらいかかるかも。」


 申し訳なさそうにギルドマスターが答えた。


「そうですか……仕方がないですね。決まったら連絡ください。もう遠出することもないと思うので。」


 ふむむ……調整にそんなにかかるものなのか……。

 まぁ分からないけどギルド側の都合ってものもあるんだろうね。


「分かったよ。」


 僕とギルドマスターの話が終わると、1階の買取カウンターへと向かう。


「すみません。買取をお願いしたいんですけど。」

「買い取りですね。えっと、何もお持ちではないようですが……外に荷車などあるのでしょうか?」


 買取カウンターで対応してくれたのは30代前半くらいの男性職員。


「いえ、この袋に入っていますので。」


 僕がぽんぽんと腰の袋を叩く。


「あ、ああ!!この間の方ですか。分かりました。どのくらいの数量がありそうですか?」

「かなり……としか言えないですかね。ちょっとやそっとの量じゃないのは確かです。」

「分かりました。ギルドの倉庫へ向かいましょう。」


 僕たちが以前袋から沢山の討伐部位を出した派遣員だと気づいた職員さんは、僕たちを倉庫へと案内した。


「それじゃあここに出してもらえますか?」

「分かりました。」


 体育館よりも大きな倉庫に着いた僕は、まずブラックスコーピオンの取り出す。


「おお!!ブラックスコーピオン!!これまた傷がほとんどないですね!!ブラックスコーピオンの殻は防具としてかなり優秀ですからね。肉もなかなか食べられない高級品です。完全な形で持ち込まれることはありませんからね。これはとんでもない高値が付きますよ!!」


 気真面目そうな職員さんだったけど、リアクションが結構大きい。こうなるとこっちも楽しくなってくる。次に出すのはハイパーブラックスコーピオン。


「ふぉーーー!!な、な、な、なんと!?ハイパーブラックスコーピオン!!ブラックスコーピオンの上位個体じゃないですか!!ブラックスコーピオン以上の貴重品。目は黒い宝石。ハイブラックストーンと呼ばれてますね!!」


 ハイパーブラックスコーピオンでさらにテンションが上がる職員さん。この後もターミネイトベア、ロックタイガー、レッサードラゴンと出すたびに大きなリアクションをとっていた。


 そして最後に奴の出番だ。


「こ、これは……ひょっとして……。」

「はい。聖樹ですね!!」

「ひょえぇぇぇぇぇぇぇぇl!!ここまで完全な形の聖樹は初めてみました!!普通枝とかをいくつかのチームで分けて持ち帰ってくるものですし、割に合わない依頼であることが多いので取ってきてくれる人もいないんですよね!!もう何年も持ち込んだ人はいません。ここまで完全な形であれば金貨2000枚くらいになりますよ。」


 聖樹を出すと、大興奮して飛び跳ねていた。30代とは思えない軽やかさだ。流石ギルド職員。


「実は沢山あります。」

「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 もう何本か出すと、職員さんは絶叫してフリーズした。


「おい、どうした?」

「なにがあったんだ!?」


 職員さんの絶叫を聞いた他の職員さんたちが次々と集まってくる。そして倉庫内に出されているモンスターや聖樹を見つけると、


『なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 と全員声を揃って吠えた。


 皆がそういうなら僕も言いましょう。


「え、僕なんかやっちゃいました?」

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