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Page41.森の守護者(笑)

400ポイント突破しました。

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感謝の更新です。

「整列!!まずは僕に付いてくる聖樹班とモンスター討伐班に分けるよ。」


 僕の号令で皆が一列に並ぶ。


 ピリカかハクのどちらかは僕と一緒にいてもらわないと戦力が釣り合わないけど、どっちもモンスター討伐に行きそうだな~。


「はい、はーい!!私はご主人様班で!!」

「え!?ピリカはモンスター班じゃないの?」

「だって聖樹の方が儲かりそうじゃないですか!!」

「そんなこったろうと思ったよ。」


 ピリカが元気よく手を何度も上げて僕と一緒に行きたいとアピールする事実に一瞬驚くも、ピリカはピリカだったということに安心する。


 これで手間は省けた。


「じゃあ戦力的にハクはモンスター班ね。」

「ん。足りないから……ちょうどいい……。」

「ピリカは戦いたい?」


 僕は少し考えた後、トリアに確認する。


 トリアは自分でも戦えるようになりたいと思っているので、時間がある時にハクかピリカの監督の元戦闘訓練を受けた方がいいと思う。僕自身も戦闘技術を習得したいけど、僕の場合は基礎訓練から腰を据えてやらないといけないから、少なくとも馬車が出来上がった後からになるだろう。


「そ、そうですね、もっと戦えるようになりたいです。」

「分かった。ピリカとルナとソルはハクについてって。」

「わ、わかりました。」「「キュ!!」」

「ハク、皆をよろしくね。」

「ん。」


 ついでににゃん狐に変化したばかりのルナとソルについてもハクにお願いしておく。少しでも経験値を積んで強くなっておいた方がいいからね。


「それからリムはどうする?帰る?」


 リムは自分の力を調整して無害にできることをすでに証明している。特に用がなければ城で待っていてもらっても構わない。


「妾はそうじゃな。ど、どうしてもというなら手伝ってやっても良いぞ?」


 腰に手をあてツルペタな胸を張って答えるリム。


 ははーん。見事なツンデレ乙。


「いやいやそれは悪いよ。リムは帰るってことで!!また帰りに寄るよ!!」

「い、いや、日暮れまでまだ時間はある。しょ、しょうがないから手伝ってやるのじゃ!!」


 僕の返事にリムは急にワタワタと焦り始める。焦った仕草も可愛いなぁ。


「えー、無理しなくていいよ?」

「妾が手伝ってやると言っておるのじゃ!!有り難く受けるが良いのじゃ!!」


 意地の悪い笑顔を浮かべる僕に、リムはまくし立てるように言い募る。


 しょうがないこのくらいにしとこうか。あんまりやるとホントに落ち込みそうだし。


「分かった分かった。ありがと。でも、することほとんどないと思うよ?退屈かもしれないけどいいの?」

「良いのじゃ!!」

「了解。リムは僕の班ね。」

「うむ。」

「班分けが決まったところで、集合は日暮れくらいに集合ね。じゃあ解散。」


 打ち合わせが済むと、ハクがピリカとにゃん狐を連れてピューっと風が吹くように去っていった。僕たちはマップと図鑑の機能で伐採しても問題なく、品質の良い木を探しながら森の奥へと進んだ。


「この木はかなりよさそうだね。」

「どうやって持って帰るのじゃ?」


 良さそうな木を見つけると、リムがどうやって木を運ぶのか興味津々といった表情で僕を見上げる。


「こうするんだよ。ピリカ、お願いね。」

「はーい。ノーム、お願い!!」


 ピリカの掛け声で土がぼこぼこと盛り上がり、木を根っこ事持ち上げて地面に横たえてしまった。


「おぉ~!!土が独りでに!!!!凄いのぉ!!」


 目を輝かせて木を見つめるリム。その姿はまさに幼子のそれだった。


「次に。」


 僕が"ふくろ"にしまう。吸い込まれるような演出付きで。


「ふぉーーーーー!!なんじゃその袋は!!どうなっておるんじゃ!?」


 今度は僕に視線を移し、胸の前でこぶしを握り、腕をワキワキさせてズキューンっという音がふさわしい勢いで近づいてきた。


 食いつきが凄いな。


「これは僕のスキルで作った魔法の袋だよ。容量無制限で物を入れることができるんだ。食べ物も腐らない優れもの。」

「な、なんと!?そのような袋が作れるとは!?妾が普通に生きてた頃にもそんなものはなかったのじゃ。お主、妾の力を修正できることといい、ほんとにとんでもないの。」


 僕が得意げに話すと、リムも相応の反応を示してくれるので気分が良い。


「まぁね。とは言え、僕自身の力じゃなくて与えられただけの力だから複雑だけどね。」

「妾の力も似たようなものじゃ。大事なのはその力をどう使うかじゃろう。」

「そうだね。」

「そ、それでなんじゃが……こんなことお主に頼むのは違うかもしれぬが、わ、妾にもその魔法の袋とやらを作ってくれんかの?」


 リムは言いづらそうに視線をそらして胸の前で指をつけたり離したりしている。そんな仕草も可愛くて撫でまわしたくなる。


「なーに言ってんの。水臭いな。リムなら作ってあげるよ。友達だからね。魔石も沢山貰えるし。」

「ふぉ!?と、友達じゃと!?あ、あの伝説の!?」


 友達という部分にリムは過剰反応する。伝説とは一体!?ボッチ拗らせ過ぎでは!?


「ふ、ふん。不敬じゃが、特別にお主を妾の友達と認めてやるのじゃ!!」


 コホンと咳払いした後、リムははしゃいでいたのを隠すように腕を組んでそっぽを向く。無理にツンツンしている姿がいじらしくて可愛すぎる。なんなんだろうこの生き物。


「ありがと。君の城に帰ったら作るね。皆の分もついでに作ろう。」

「うむ。」

「やったー!!これで今まで以上に稼ぎ放題ですね!!」


 自分も袋を持てることにピリカが大喜びする。あれ……なんかやってしまった感あるけど、なんだったかな。気のせいかな。


 その後、僕達がじゃんじゃん聖樹を袋に放り込んでいると、森の奥の方から何かが飛んできた。


「こらーー!!何本木を引っこ抜いてるんだぁ!!」


 見た目は空飛ぶ毛玉というのが一番わかりやすい。毛玉ボディにデフォルメされた顔があり、20~30センチくらいの体を持ち、背中に花弁に近い形の羽を4枚、左右対称に二枚ずつつけている。上の羽が下よりも大きく、トンボのように半透明に透き通っていた。


「何本って数百本くらい?」

「取りすぎだよ!!」

「マジ!?もう抜いちゃったよ。」

「もうなんてことをしてくれちゃってんの?これは僕と勝負してもらうしかないね。勝ったら持ってってもいいよ。」

「えー、なんの勝負するの?」

「勝負はズバリ腕相撲だよ!!」


 僕が嫌そうにしているのも見えてないように飛んでいる毛玉が得意げに何か言ってる。腕もないのにこいつは何を言ってるんだろう。


「君腕ないじゃん。」

「ふふーん。おまえは僕を舐めてるね!!実はこの姿は仮の姿。真の姿を見せてあげるよ!!」


 呆れ気味に僕が呟くと、毛玉が光り輝いて十秒くらいで光が収まる。そこに表れたのは毛玉が生えたムキムキの人間の肉体だった。ブーメランパンツ以外は裸で、毛玉とのギャップでかなり気持ちが悪い。


「見れくれよ、この筋肉。到底君たちには勝てないだろう?なんなら降参してくれてもいいんだよ?」


 どや顔で僕たちを見下す毛玉筋肉。


「ハーーーーーーーーーークーーーーーーーーーーー!!」


 僕はイラっとしたので大声で叫んだ。


「ん。なに?」


 呼んで数秒後に現れるハク。背中にトリアを背負い、両脇にルナとソルを抱えているが、どちらも目も回して気絶している。どんだけの速度で走ってきたんだよ。それも気配もなく。


「この気持ち悪い生物が腕相撲の勝負したいんだって。お願いできる?」

「ん。まかせて……。」

「なんだとー!?気持ち悪いだって!?もう怒ったぞ。手加減してやらないからな!!ついてこい!!」


 僕の言葉に怒った毛玉筋肉がプンプンと怒り出す。気持ち悪さが増していく。いち早くこの勝負を終わらせねば。


 毛玉筋肉についていくと、おあつらえ向きの切り株が目に入った。そこには体が女性型の毛玉が立っている。その女毛玉もムキムキの体つきをしていた。


 あそこが舞台か。


「はん、あんたたちが私の旦那リモリモに喧嘩を売った愚か者かい?止めといた方がいいよ!?なんせ私の旦那はケダキン族一のパワーの持ち主だからね。」


 左右に分かれて並ぶと女ケダキンが僕たちに話しかけてくる。めちゃくちゃ自信があるようだ。


「弱いものほどよく吠えるっていうことわざ知ってる?」

「はん、せいぜい粋がってな!!」


 僕が少し煽ってやるとすごんで睨んでくる女ケダキン。デフォルメされた顔は迫力に欠けるから全く怖くもなんともない。むしろ微笑ましくさえある。僕は生暖かい笑みを浮かべた。


「モコモコそれくらいで。やればこいつらも僕の強さが分かることだよ。」

「くくく、そうだね、悔しさでゆがむ顔が目に浮かぶよ。」

「ブフッ。」


 毛玉同士の会話。一切緊張感がない。あまりの名前に噴き出してしまった。


「それじゃあ始めるよ。相手はその猫人族の子でいいの?」

「あ、うん。ハク。」

「ん。」

「審判は僕の妻のモコモコがするよ。じゃあ始めよう。」


 切り株を挟んでハクとリモリモが手を合わせる。むっ、後でアルコール消毒しよう。


「レディ……ゴー!!」


 モコモコが二人の手の上に自分の手を置き、掛け声を発して試合が始まった。



 ■■■■■



 僕は目の前にいる小さな猫人族と手を合わせた。その瞬間、手から感じる圧力にゾクッという悪寒が背筋に走る。全身から脂汗が吹き出し、ガクガクと足が震える。僕は目の前の少女の背後に山のように巨大な猛獣を幻視した。


「レディ……。」


 モコモコの手が僕の手の上に置かれる。その瞬間、彼女も顔色を変えるが、時はすでに遅し。猫人族の目が光を発するように爛々と輝く。


「ゴー!!」


 試合は始まった。


 ――バキャア、ミシミシ


 合図とほぼ同時に、雷が木を割ったようなすさまじい音と地面に亀裂が入り、少し陥没した。


「あ、あんたーーーーーーーーーーー!!」


 モコモコが僕と下の方を交互に見て叫ぶ。


 ん、いったいどうしたっていうの?


 僕も釣られるように下みると、僕の腕はおかしな方に折れ曲がり、舞台は無残に壊れてしまっていた。


「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」


 事実を確認することで遅れてやってきた激痛に、僕は崩れ落ちて転げまわった。


「あんた、あんたぁ!!」


 モコモコが僕に近寄ってくるが、痛みでそれどころではない。


「あの~、そろそろ、ジャッジしてほしいんだけど?」


 人族があきれたような顔を浮かべて僕たちを見つめると、モコモコが仇でも見るかのような目で彼を睨んだ。いや、勝負を持ち掛けたのはこちらだし、相手はそれに応じただけだ。そんな目で見るのは逆恨みもいいところだ。


「文句ある……?」


 猫人族が視線を遮るように立ち塞がった。その体の周りには先程とは比べ物にならない闘気がほとばしっている。


「ひっ……。勝者猫人族……。」

「ん。」


 モコモコは顔を引きつらせて短く悲鳴を上げると、勝者を告げた。猫人族は満足そうに頷いた。



 ■■■■■



 やっぱり瞬殺だった。


「よしよし、ハクありがとね。」

「ニャァア……ニャア……嬉しい。」


 僕はハクをピリカの精霊魔法でキレイキレイした後、なでくりなでくりして、リモリモに近づく。


「あ、あんた何するつもりだい?」


 モコモコが怒りとおびえの混じった色を浮かべて僕に尋ねる。


「怪我を直すだけだよ。」


 僕はそういうと、リモリモの腕の状態を書き換えて完治させた。


「え!?あ、ありがと。」


 突然痛みが無くなり、手を開いたり閉じたり、腕を曲げたり伸ばしたりして確認した後、僕に礼を告げる。


 ただの腕相撲で腕を破壊したままってもきまりが悪いからね。


「僕たちの勝ちってことでいいよね?」

「ああうん、いいよもちろん。木はいくらでも持ってっていいよ、うん。なんなら他にもなんでも持ってっていいよ。この森かなり広いし、人がほとんど来ないからね。」


 怪我が治ったリモリモは最初のころの見下すような雰囲気は一切なくなり、揉み手をしながら従順になった。どこかのこずるい商人のようだ。


 しかも幾らでも持ってっていいって事は最初にいちゃもん付けて来たのは完全に難癖つけに来ただけだったってことじゃん。それなら腕が折れた痛みも自業自得だと思ってもらおう。


「木以外にも何かこの辺の特産ってあるの?」

「うん、森だからね。果物や木の実。キノコに薬草なんかかな。」

「うーん。」

「ご主人様~、集めましょう!!売れます!!」

「はいはい。」


 僕が悩んでいるのを見てしな垂れかかってくるピリカに若干呆れながらも、聖樹とモンスターだけでなく、他の食材や素材も集めることに決めた。日が暮れるまで集めまくった僕らはリムの城へ帰り、そこで一泊してから街へ戻ることにした。

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