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Page39.リム

評価頂きました。ありがとうございます。

感謝の更新。

「めちゃくちゃあるね!!」


 これだけあればどれだけの編集が出来るか分からない。なんでも作り放題じゃないかな。シングルランクの魔石さえもゴロゴロ転がっていて、それ以上と見られる魔石もある。馬車も魔改造して、防具を全員分整えてもあまりある程だと思う。夢が膨らむ!!


 正直全部めちゃくちゃ欲しい。でも、流石に全部貰う訳にもいかないし、編集に必要なポイントにちょっとした手間賃くらいを載せるのが普通だと思う。だけどめちゃくちゃ欲しい!!


「ふふん、どんなモンスターも妾の前では生きておられんのじゃ。昔は強いモンスター共が挑んできおっての。簡単に取れたのよ。今じゃさっぱりやってこんがな。」

「なるほどね。それじゃあ、報酬はあの魔石一つでいいよ。」


 自慢げに語る死神ちゃんに僕はトリプルランクの魔石を一つを指差す。


「何を言うておる。妾の力がどうにかなるのならここの魔石全部やるのじゃ。」

「えぇ!?それは貰いすぎだよ。」


 数秒キョトンとした後、死神ちゃんは魔石を背にして両手を広げるジェスチャーをしながら答える。


 欲しい!!めちゃ欲しい!!でも日本人として一度は辞退せねば。僕は形式的に拒否する。だって欲しいもの。


「そんなことはない。誰とも話すことも出来ず、触れることも出来ず、それこそお主達にとって悠久の時を妾は生きてきた。その孤独に飽いて何度も死のうとしたが、死ぬことも出来なかった。何をしても妾の体は元どおりじゃ。その永遠の孤独という呪縛から解き放ってくれるというのなら妾の全てをやろう。それに魔石など一度も使ったことがないのじゃ。置いてあるだけ肥やしにしかならんのじゃ。欲しいものがおるなら使ってもらった方がいいじゃろう。」


 重い!!とっても重い話になったよ!!見た目小学生の低学年にしか見えないのに辛い、辛すぎる!!


 しかもその長い時を、友達や部下などはもちろんのこと、ペットや使い魔の類もなく、ずっと一人で生きてたとかどれ程の孤独だったのだろう。さらに地球みたいな娯楽も殆どない世界。一人で暮らすには退屈で退屈で仕方なかったはず。


 僕だったら耐えきれず心がおかしくなっていたかもしれない。人を殺戮し尽くしたり、星を滅ぼしたりしていたかもしれない。でも死神ちゃんは壊れることなく、外界と隔離された場所でひっそりと今まで生きてきた。その心の強さは僕では計り知れない。


 そんな彼女にここまで言われたら貰わないのは逆に失礼だろう。いやただ自分が欲しいだけじゃないよ?本当だよ?


「分かったよ。僕が君の力をどうにか出来たら魔石全部もらうね。」

「それでいいのじゃ!!」


 死神ちゃんは晴れやかな笑顔で胸を張った。


「それで妾はどうすればいいのじゃ?」

「特に何もする必要はないよ。ベッドがあれば横になっていた方がいいと思う、多分。」

「うーむ。面倒だからこのままやるのじゃ。」

「横になってた方がいいよ?」

「ええい、いいからこのままするのじゃ!!」


 今までの経験からベッドで横になることを進めたんだけど、頑なに拒否する死神ちゃん。立ってられるとは思えないけど、本人が良いって言うんだから問題ないか。


「僕は忠告したからね。どうなっても知らないよ。」

「望むところなのじゃ。」

図鑑の(ビブリオ)顕現(インカネーション)


 別に見える形にしなくてもいいんだけど、ちゃんと見える形で治さないと実感しにくいと思うので、僕は図鑑を顕現させた。


「ふぉ〜、なんというという凄まじい力なのじゃ。」


 僕の目の前に光を放つ黒い図鑑が現れたことで死神ちゃんが目を輝かせている。図鑑が開き、パラパラとめくれて彼女のページで止まった。


 名前が死神になってる……。自分でももう覚えてないってことなのかな。年齢はじゅうま……ゲフンゲフン……乙女の秘密。ゾクッ……おっと危うく死ぬところだったかもしれない。種族は不死の女王。不死の王といえばアンデッドの最上位や吸血鬼のことを指すこともある。


 彼女の能力に「自分の意思に関係なく、周りの生物の命を奪い、自分のものにする。アンデッドを引き寄せ、命を奪われたものはアンデッドへと堕ちる。ただし、アンデッドを操れる訳ではない。」という部分があった。


 ホントヤバすぎる能力だ。


 他にも「対象を吸血することで眷属を作ることが出来る」という部分もあったから元々は吸血鬼だったのかもしれない。でも手を握られた時、温かみはあったからアンデッドとは違うのかな。アンデッドの弱点らしき光属性の魔法や日光が効くとも書いてないし、十字架やニンニクの類が効くとも書いてない。絶対無敵すぎる。そりゃ優しい彼女は引きこもるか。


 僕は彼女の能力を僕たちには向けることが出来ない制限を加えた上で、任意で調整可能に書き換えた。なんと編集ポイントが5万ポイントもかかった。


「な、なんじゃ!?」


 彼女を光が包む。


「うひーーーーーーーー!!こんなの聞いてないのじゃーーーーーー!!」


 光がへその下に収縮を始めると、死神ちゃんは両腕で自分の体を抱いて足をガクガクと震わせる。その顔には恍惚が浮かんでいる。以下略。彼女が立っていた場所には湿った跡が残っていたとかいなかったとか。


「ひ、酷い目にあったのじゃ。もうお嫁にいけないのじゃ。」

「忠告したじゃないか。言うこと聞かないからだよ。」

「可愛いかったですよ。」

「エッチ……。」

「な、艶かしいでしゅ。」

「う、うるさいのじゃ。」


 体の改変が終わると、ピリカ達とは違い、意識を失うことはなかった。これもとしのこ……ゲフンゲフン……力の違いってやつかな。


 既に体裁は整え終わっているけど、痴態を晒したことが恥ずかしいのか手で顔を覆っている。可愛い。


「それでどう?体の方は。」

「うむ。なんだか分からないが、力を調整できるのがわかるのじゃ。まだ実際に生き物の前に出た訳じゃないから実感できぬのじゃがな。」


 死神ちゃんは自分の手を開いたり閉じたりしながら確かめる。


 確かに周りに生き物いないもんなぁ、僕たち以外。流石に僕やピリカ達をそんな危ない実験に付き合わせるわけにはいかないし、彼女にそんなことさせたくもない。


 そうなると近所で生き物がいるのは不死の庭園の先にある樹海である神秘の森か、僕らが来たブランクレストの谷ということになる。どちらかで試してもらうとして、僕も最後まで見届けたいし、神秘の森まで一緒に来てもらうかな。帰りに報酬受け取れば問題ないし。


「それじゃあ僕たちこの先の神秘の森ってこと行くんだけど、一緒に行く?報酬はそこで実際に試してみてからってことでどう?」

「今の時点で力を調整できるから別に今渡しても良いのじゃがな……。まぁいい、せっかくの申し出じゃ、ついて行こうかの。……独りはもう嫌じゃ……。」


 最後の方に何か言っていたようだけど、小さくて聞こえなかった。それはともかく了承してくれたので僕たちは神秘の森へと向かうことにした。


 でもその前に、「そういえばなんて呼んだらいいの?」と問いかけた。流石に死神ちゃんってのは呼びづらいし、名前が無いとなにかと不便だ。


「そうじゃな、名前など忘れてしもうた。うーむ……面倒じゃ、お主がつけるが良い。」

「え!?僕がつけるの?」

「うむ。人と話したのなど久しぶりじゃ。その礼に名をつけさせてやるのじゃ。光栄に思うが良いぞ。」

「えー!?僕ネーミングセンスなんてないよぉ。」

「いいからつけるのじゃ!!」

「わ、わかったよ。変な名前でも怒らないでよね。」

「ふふん、それは約束できんのじゃ。」

「ズルい!?」


 しまった!!名前を確認するだけだったはずなのに、藪蛇になってしまった!!


 名前なー。図鑑を見る限り女の子だったから可愛い名前が良いよね。ヴァンパイアだったかもだから、ヴァンピィ、パイア、パイ……うーん、なんかしっくり来ないな。死神……死神といえば、グリム・リーパー。グリムだとなんか童話みたいだし、リーパーってのも悪くはないけどいまいち。あっ、これなんかどうかな。


「リム……っていうのはどうかな?」

「ふむ……。」


 僕が恐る恐る提案すると、彼女は腕を組んで考え込んでしまった。


 やっぱり気にいらなかったかなぁ。


「一応僕の故郷では死神ってグリム・リーパーって呼ばれることもあるんだよね。でもそれじゃ可愛くないし縁起でもないから、リムってとこだけを取ってみたんだけど……気に入らなかったかな?」

「リム……リム……リム……ふふふ。コホン……ま、まぁええじゃろ、妾のことはリムと呼ぶが良いのじゃ!!」


 僕が心配になって声をかけると、ブツブツと呟いた後、腕組んでそっぽ向いて答えるリム。顔を赤くしてるところを見ると喜んでるみたいだね。良かった。全く素直じゃないんだから……。


「僕のことはタクミって呼んでね。この子達は……。」

「私のことはピリちゃんと呼んでください。」

「ハク……。」

「わ、わたしはトリアでも、と、トリでもなんでも大丈夫でしゅ!!」

「うむ、わかったのじゃ。よろしく頼むぞ。」


 意気揚々と神秘の森へと向かった。

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