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Page33.国境の街 アレスタ

UV6000、PV30000ありがとうございます。

それから100ブクマいただきました。

こちらもありがとうございます。

記念と感謝を込めて更新です。

「兄貴!!姉さん達!!ようこそ、アレスタへ。」


 次の日の朝、三人の無防備な姿と柔らかさと甘い香りを堪能し、朝食を食べ、出発してから10時間。僕達は国境にほど近いアレスタという街に辿り着いた。


 時間が掛かったのは、マップで見つけたモンスターを根こそぎ殺しながら進んできたからだ。「あっちに金貨1枚が居ます!あっちには金貨5枚です。」などとピリカにはモンスターがもはやお金に見えてるらしい。目が金貨になっていた。昨日今日でかなりのモンスターを屠ったと思う。


 僕は麻痺にするくらいで殆ど何もしてない。ハクが凄いスピードで引っ掛けてきて、ピリカが切り刻むという戦闘、というよりは虐殺を眺めていただけだ。


 ぶっちゃけ皆のヒモみたいなもんだよね。


 この辺りは国境からそれほど遠くない事もあり、アークダイとはそれ程変化がない。南下した分暖かくなった感じだ。馬車で一週間程度と考えると、アークダイ王都から南に400~500キロくらい下った程度だろうか。地球に照らし合わせると、東京~秋田間程度の距離だと大分暖かくなるのは当然かな。


 街の門番も舐めた態度を取ってくれたのできっちり代償を払わせて、真っ当な性格に掃除(スイープ)してやった。その後、派遣員ギルドの位置を確認して歩を進めた。


 街は国境の傍ということで、数メートルの高さの堅牢な外壁に囲まれて砦としての様相を呈している。兵士も多く常駐しており、街中には商人と兵士が多く見られた。要塞兼宿場町というのがこの街の役割なのだろう。


 ただアークダイと決定的に違うのは、そこら中に獣人が溢れていることだ。耳がピクピク動き、尻尾がユサユサ揺れる。


 8割くらいはケモケモじゃないかな。

 これがケモケモパラダイス!!最高だぜ!!


 犬耳、狐耳、猫耳、うさ耳、狸耳、牛耳角など様々な獣人が溢れている。中には、二足歩行の動物よりの獣人も居た。


 おっさんケモはノーサンキュー。


 ちなみに僕のケモナーレベルは低いので、人間をベースにケモ耳ケモ尻尾の特徴を持ってるくらいがストライクゾーンだ。それ以上になるとペット枠になりそうだ。ワシャワシャしたくなる。


「むぅ。」


 ハクの腕を掴む力が強まる。


 ーーミシミシッ!!


 折れる折れる!!

 いやいや、そういう意味で見てないからね!!

 ペット枠、ペット枠だから!!


 僕はハクの手を必死にタップして力を解かせる。あのままだったら左腕に潰れてたよ。


 それからハクに吸い寄せられるように群がってくるテンプレの強いと勘違いしてる獣野郎どもスイープしていると、ようやく派遣員ギルドに辿り着いた。


 30掃除(スイープ)したよ、最高記録だ。

 全く……ハクが魅力的なのは分かるけど、力があれば手に入るとかいう力至上主義は辞めて欲しい。

 全員からそんな思考は排除した。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「常時討伐依頼の完了報告をしたいんですけど?」

「分かりました。派遣員証を提出してください。部位はこちらに出していただけますか?」


 受付の台の上に討伐証明部位を出すように促す受付嬢ちゃん。今回の担当は地味子ちゃんだ。


「数が多いんですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。」

「分かりました。」


 僕は魔法の袋の中からセプタプルランクのモンスターから順に出していく。


 ゴブリン

 …

 コボルト

 …

 ポイズンスネーク

 …


「ちょっ!?ちょっと待ってください!!」

「え?どうしました?」


 僕は山のように積み上がる討伐部位を入れた袋を見て慌てて止めて来たので、わざとらしく確認した。


 大丈夫かって僕は確認したよ?


「いやいやいや、後どのくらいあるんです?というか、どこから出したんです?」

「後10種分くらいですかね。どこってこの袋からですね。」


 しどろもどろになって尋ねる受付嬢ちゃんに、手に持つ袋を指差した。


「いやいや、入らないですよね!?」

「いやいや入る袋なんで。」


 僕は明らかに巾着袋サイズの袋からそれ以上の大きさの袋をズリズリッと取り出す。


 ね?簡単でしょ?


「え?え?ええええぇ!?」

「静かにして欲しいかなって。」


 彼女は驚き過ぎて大声をあげた。ギルド中の視線が僕達に集まる。


 流石に五月蝿いし、所属する派遣員の情報漏えいにもつながるから静かにしてもらいたい。


 僕は混乱状態の彼女の正常に書き換えた。


「あ、は、はい。申し訳ございませんでした。」

「それで全部出しちゃって大丈夫ですか?」

「えっと、それでは大量討伐用の部屋にご案内します。」


 僕達はオドオドする彼女に別室に案内され、合計数百匹分の討伐部位と解体した素材を提出した。その結果は買取も含めて金貨200枚程度。なかなかの結果だった。


「あの~、それでこの後ギルドマスターがお会いしたいと仰ってるのですが。」

「分かりました。」


 申し訳なさそうに述べる地味子ちゃん。


 またか。低ランクのくせに自重しなかったせいかな。いやしてるといえばしてるんだけどね。『大地喰らい』は出してないし。できれば王都に行ってから出したいところだ。

 

 アークダイと同じように何かあれば、有無を言わさず直ぐに書き換えしてしまおう。僕達は地味子ちゃんの案内に従ってギルドマスターの執務室へ向かった。


「おお、君たちが大量討伐の功労者か。そこに掛けてくれ。」

「あ、はい。分かりました。」


 僕がソファに腰を下ろし、三人には僕の後ろで待機。すぐにギルドマスターが対面のソファに腰を下ろした。


 今回のギルドマスターはまともなのかな。


 ギルドマスターは、30台前半くらいの爽やかイケメン。サラサラの金髪に透き通るような青眼をもつ、王子を絵に描いたような人物だった。特に獣人らしき特徴が見当たらないことを見ると、人間なのだと思う。


「いや~助かったよ。お陰で北側が多少なりとも安全になった。『大地喰らい』が出たとも聞いてるしね。」

「いえいえ、報酬は貰ってますから。」

「それでもさ。これだけの仕事をしてくれる派遣員はなかなかいないからね。おっと申し遅れた、私はこの支部のギルドマスターのロイド。よろしく頼むね。」

「僕はタクミです。よろしくお願いします。……それで用件はなんですか?まさか礼を言うためだけに呼んだ訳じゃないですよね?高ランクパーティでもあるまいし。」


 僕とギルドマスターは一度立ち上がって握手した後、再び腰を下ろして話を進める。


「礼を言いたかったのも事実だけど、頼みたいことがあってね。……実はランクを上げて欲しいんだよね。君たち報告によるとかなり強いみたいだからさ。出来ればランクに見合った仕事をして貰いたくてね。」


 心を読ませない貼り付けたような笑みを浮かべて答えるロイドさん。


 ふむ。どうしたものか。現状討伐報酬だけで満足してるんだよな~。それにテンプレの如く、次のランクからは指名依頼や強制依頼受けなきゃいけないからね。でもこの世界に来て一番お世話になってるのもこのギルドだから恩返しするのも悪くないか。どうしても面倒な依頼がきたら脱退も考えよう。


「分かりました。確か試験を受ける必要があったと思うんですけど、どうすればいいですか?」

「ホントに!?良かった。ランク上げるの渋ってるって報告だから安心したよ。えっとね、君達には引率ありの護衛依頼を受けて貰いたい。王都までの護衛だよ。ランクが上がると人とやり取りすることが多くなる。依頼人、一緒に仕事する他パーティ、貴族など。それに慣れて欲しい。それから倒すのと守るのでは全く違うからね。その際の対処も覚えて貰いたい。と言ってもすぐじゃない。だからしばらくはこの街で活動してくれるかい?」

「いえいえ、試験が面倒だっただけですよ。じゃあ、条件て程でもないんですけど、良い宿、良い馬車が手に入る店、他必要な物を揃える店を紹介して貰えますか?」

「分かったよ。護衛依頼の詳細が決まったらまた連絡するから。30日も先になることはないとは思うけど少し先になると思うから、それまで好きに過ごしてくれて構わない。」

「分かりました。」

「それじゃあ地図と紹介状を書こう。どんな店を紹介して欲しいか教えてくれるかい?」


 僕は行きたい店を伝えて紹介状を書いて貰い、ギルドを後にした。すでに日も暮れているので宿に向かう。辿り着いたのは、今まで泊まっていたレベルよりワンランクかツーランクくらいは上の宿だった。


「申し訳ございません。一人部屋しか開いておりません。」


 いつも通りだった。うん、なんか知ってた。


 しかし、1日の宿泊費も全員分合わせて金貨2枚とかなり割高だ。その分部屋も食事も豪華で、20畳はありそうな部屋にキングサイズの天蓋付きのベッドに、ソファとテーブル、風呂とトイレも部屋に備え付けられていたけど。


「今後の予定を決めようと思う。」

「はい。」

「ん。」

「は、はい。」


 夕食を食べて、お風呂で三人の肢体を堪能した後、僕達はベッドの上に座り今後の予定を話し始めた。


「この街のギルドマスターに言われたように、ランクアップの護衛依頼に向けてしばらくはこの街で過ごす。それから、今まで働きづめだったので仕事をせずのんびりする日を作ります。それ以外は、図鑑ポイントを貯めるために魔物を殲滅かな。」

「うーん。その日にお金を稼げないのは残念です~。」

「働きすぎ……体にいくない……休憩大事。」

「の、のんびりですか?な、なにしたら……。」


 僕のお休み宣言に、ピリカは少々不満げに、ハクは得意げに、トリアは疑問げに言葉を交わす。


「具体的には、明日は皆で買い物がメインかな。特に今後旅をするなら馬車が欲しい。ピリカの精霊魔法でも良いかもしれないけど、できれば皆でのんびり景色を楽しみながら行きたいんだよね。」

「それはいいですね。魔法を使用すればそちらに意識をもっていかれますから。御者はどうするんですか?」

「それはまた奴隷を買うのが無難かな。ずっとついてきてもらう訳だし。」

「一応私は御者できますので、良い奴隷が居なければ言ってくださいね。」

「分かったよ。」


 ふふふ、馬車を手に入れたら僕の欲望は解放されるのだ!!

 待っててくれよ、馬車ちゃん!!


「それで、のんびりする日の内2日は、ご褒美にハクとピリカそれぞれとデートをしたいと思う。」

「デート?」


 ハクが疑問符を浮かべて首を傾げる。

 ホント可愛い子がやると破壊力高いよね、その仕草。

 胸がギュってなるよ。


「デートというのは、男と女が二人きりで出かけて、買い物したり、食事したりして仲を深めることだよ。」

「ん!!」

「それは楽しみです!!」


 デートの意味がわかった途端、顔を綻ばせる二人。

 嬉しそうで何より。


「予定は明日の買い物が終わり次第決めよう。リードしたいところだけど、二人でしたいこと、生きたい場所があれば考えておいてね。それで空いてる方は、トリアと一緒に出かけてもいいし、宿にいてもいいけど、必ず二人でいてね。」

「分かりました。」

「ん……分かった。」


 二人ともしっかりと頷いて返事をしてくれた。


「トリアには悪いけど今回はお留守番を頼むよ。その代わり、明日何か欲しい物があれば買ってあげるね。」


 トリアには申し訳無いけど、今回は二人にって話だったし、僕とトリアだけじゃ戦力に懸念があるからな~。また次回にお預けということで一つ。


「い、いえ、主様と二人でお出かけなんて私には恐れ多いですから。誰かに何か頂いたことなんてありませんので、それだけで嬉しくて幸せです。」


 僕の言葉に、本気でそう思っていると感じさせる表情で語るトリア。

 なんて健気な子なのでしょうか!?ギュッとしてヨシヨシと撫でたくなります。


「それじゃあ、明日に備えて寝ようか。」


 僕達は三交代で見張りをしながら眠りについた。

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