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Page31.同族フェロモン

「猫人族の姉ちゃんよ、そんな男より俺んとここいよ。」

「おい、何抜け駆けしたんだよ。」

「ふざけんな、俺が目をつけてたんだぞ!!」


 俺たちの周りでピンと立ち上がった犬耳の若い兵士や、兎耳の兵士、垂れた猫耳の兵士達が、ハクに言い寄っている。


 その目はいやらしさ100%。

 自分の欲望を満たそうとしかしていない。

 やはり同類の方が魅力的に映るんだろうか。

 そんな目で僕のハクを見るな。気持ち悪い。


「僕のハクに近づかないでくれる?」


 ハクは無視を決め込んでいるけど、イラッとしたのでハクの前に立ち、兵士達を睨みつける。


「お前は黙ってろ。」

「乳臭いガキはすっこんでな。」

「獣人ですらないお前にこの子は勿体ないっての。」


 僕の顔も体格も威圧感に欠けているせいか、兵士は手をヒラヒラさせて僕をあしらおうとした。


 兵士のくせにこの規律のなさ。ヴェストリアが少し心配になってきた。獣人の国であるヴェストリアは実力主義の国として有名だけど、強ければ何をしてもいいという風潮でもあるのかもしれない。こういうやつは痛い目をみないと大人しくならないんだよな。




「おまえら……ごしゅじん……侮辱した?」




 底冷えするような声が耳に届いた。兵士達が足を止め、全身がブルブルと震え、汗を吹き出している。その顔は青ざめ、驚愕と絶望が浮かんでいた。無表情のハクの目には、途方もない怒りと侮蔑、そして闇より深い死の気配が支配している。幸い僕に向けられていないからほとんど分からないけど、放たれている殺気は、少しだけ僕の肌を焦がした。


 お、おう……。

 ハクさんがご立腹です。

 ヤバいです。国が滅びます!!

 ヘルプ、ヘループ!!


「お、おまえ、お、おお俺たちに手をだしたら、ど、どどどうなるか、わわ、分かってるのか?」


 兵士の一人がようやく言葉をひねり出すが、歯がガチガチと音を鳴らし、怪物でもみるように怯えていた。


 お前!!ビビってんのに煽ってんじゃない!!


「国ごと……壊せばいい?」


 コテンと首が傾げられ、口元だけが歪むその表情には、根源から湧き上がるような怖さがあった。


『うわぁーーー!!』


 兵士たちは恐慌状態になってハクに襲いかかった。しかし、次の瞬間に三つの死体……ではなく気絶した兵士が転がった。


「あちゃー。ご主人様を侮るようなことを言うから。ハクちゃんが怒っちゃいましたよ。」

「あ、主様悪く言う人は、き、嫌いです。」


 ピリカは額に手を当ててアイターといった表情を浮かべ、トリアはピリカの背後からひょっこり怯えるように顔を出しながらも嫌悪感を露わにする。


 僕は面倒なので、それぞれの能力を下げ、その分のポイントで性格を書き換えると、気絶の状態異常を消して起こしてやった。


「「「先程は申し訳ありませんでした!!」」」


 性格が善良かつ力絶対主義でなくなった彼らは、起こすなり深々と謝罪したのであった。その後は何事もなく門に着いたが、必要な措置として一室に軟禁状態。


 せっかく国境を超えたのに、なかなか自由に旅が出来ない。困ったものだ。


「待たせたな。時間を取らせて済まなかった。『大地喰らい』の件確認できたぞ。気になる点がいくつかあるが、関所は吹き飛び、確かに大きな穴が開いていた。アークダイ側と当国の騎士団に連絡が入るように手配させて貰ったぞ。」


 数時間程待つと、ようやく偉そうなおっさん兵士がやってきて俺たちは解放された。しかし窓から刺す光の色が山吹に変わりつつある。


「お前達。時間をとったついでに今日はここに泊まっていってらどうだ?」


 僕がどうしようか悩んでいると思ったのか、そんな提案をしてるおっさん兵士。あんな変態兵士がいるところには三人を泊めたくないので僕は丁重にお断りした。


「許さん!!許さんぞ!!エブリデイラバー!!」と地団太を踏むおっさんの言葉は無視。


 僕達は関所から出発した。


「無事国境を越えられたから、ここからはのんびり徒歩でもいいかなと思うんだけど、どう?」

「そうですね。いいと思います。出会う魔物は根こそぎ狩って資金を稼ぎながら進みましょう。」

「ん……徒歩での運動は……健康にいい。賛成。」

「わ、私も景色を楽しめるので、い、否やはありません。」


 僕が歩きながら提案すると、それぞれ問題ないようなので徒歩で国境近くの街に行く事に。まだ追手が来る可能性もあるけど、関所があの調子だとヴェストリアとの関係もあるし、すぐには動きにくいと思う。


 ようやく異世界を堪能できる。僕が異世界で過ごす中決めた目的は、世界中の訳ありで処分寸前の奴隷達を買うことだ。魔王なんかと戦いたくないし、戦っても勝てるかどうか分からない。でも少なくとも処分奴隷を買って解放することくらいは出来るし、訳ありでも僕の力があれば解放出来る。


 別に勇者になりたい訳じゃないし、可愛い女の子奴隷に感謝されるくらいが僕にはちょうどいいよね。どこかスレイヤーさんかゴブリンを殺しまくるように、僕は処分奴隷を買い続けるのです。


 その過程で観光したり、色んな体験を出来たらいいと思う。


「それじゃあ、モンスターを壊滅させつつ次の街へ行こう。」

「はい。」

「ん。」

「わかりました。」


 僕はマップの範囲を広げるとモンスターを検索する。どうやら街道の近くの森にお金になりそうなモンスターが沢山いるらしい。一番近くのモンスターから退治すべく僕らは進路を変えた。

毎日投稿ではありません。ご了承ください。

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