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Page28.幽霊(ゴースト)

 俺は殺し屋だ。自分で言うのもなんだが、この国で最高の実力がある。



 成功率100%。



 この数字が俺の実力を物語っている。俺にかかれば、どんなに強固な守りも、どんなに気を張っていても意味はない。どんな所にいても俺はターゲットを始末していた。


 そして、俺はアークダイ王国第二王女直属の暗部の一人でもある。 王女の影の犬だ。



 今回の仕事は、とある男の暗殺だ。



 なんでも、人を洗脳して意のままに操ることができる男がいるらしい。取り込むために何度か人を送ったり、殺すために何度か刺客を放ったそうだが、全て返り討ち。それどころか、全員が善人になって自首したり、ターゲットの言うことを聞く下僕に成り下がったとか。もちろん自分に繋がるような情報を持つものを使ってはいないようだが。


 最初は傀儡にして良いように使おうと思っていたらしいが、不用意に接触すると、全て逆に取り込まれてしまう可能性があった。それに、ターゲットの所持する二人の奴隷を攫おうかとも考えたようだが、二人の察知能力や戦闘力が並みじゃなく、それも難しいようだ。


 なんらかの罪に問おうにも、ターゲットに近づいた者が全て取り込まれてしまうのであれば、罪状を認めさせることも難しい。だから都合のいい駒としては使えず、逆に国の脅威とされた。


 しかし、表向きには下層街の治安を劇的に向上させた立役者としても見られていて、低ランクながらギルドの信頼も厚い。そのため、裏でひっそりと事を進める必要があった。そこで白羽の矢が立ったのが俺だ。


 俺には、気配察知能力はあまり意味はない。なぜなら俺は数キロメートルと言う短距離ではあるが、転移という稀有で強力な固有魔法と、遠くを見通すことの出来るこの瞳を持っているからだ。


 俺はターゲットの身辺調査や行動把握を始めると、これはたしかに脅威になりそうだと分かった。



 まず二人の奴隷。



 驚くほどに美しいというよりかは可愛らしい猫人族とエルフ族を奴隷としてそばに置いており、扱いは奴隷とは思えない程の水準の衣食住を与えていた。その二人は驚く程の戦闘力を持ち、派遣員ランクで見ても上位ランカーと遜色のない力を保持している。エルフは精霊魔法を自在に操り、猫人族は見たことのない高度な格闘術を納めていた。しかも処分奴隷だったという。今まで買われずにいたことが不思議なくらいの能力だ。



 それから本人。



 二人の奴隷の容姿があまりに人の目を引くせいか、驚く程人に絡まれる。しかし一度も戦うことなく、相手が謝罪して、以後悪事を働くことも加担することもなくなってしまうらしい。その上勤勉に働き、悪事を働くものがあれば、率先して捕らえるという。俄かには信じ難いが、実際に元悪党の態度を見るに本当なのだろう。


 こいつは最近になって街に来た人物らしく、出身や来歴が分からない。素性も能力も奴隷よりも得体が知れず非常に不気味だ。なるほど、女王が危惧するのも無理はない。


 俺は3人の行動把握に移ることにした。しかし、次の日いつもように出かけたらしいが、戻ってこないらしい。


 しまった。奴らは暗殺者の可能性に危惧してどこかに逃げようとしているんだ。


 俺は短距離転移を繰り返し、奴らの向かった南に進路をとった。転移を繰り返すと、奴らは比較的簡単に見つかった。なぜなら、数百人の盗賊を従えていたからだ。たった一日で。これは国に対する脅威度を上方修正しなければならない。俺は認識を改めた。俺は翌日直接接触を図ることにした、とある場所に潜り込んで。



 翌日、実際に接触してみると、ターゲットの印象は、「凡庸」だ。



 特に何かあるという印象はなく、平民にしては非常に丁寧だと感じた程度。ただ、奴隷二人は強者のオーラを纏っていて、直接戦闘は絶対に避けた方がいい相手だったが、一人の武人としては戦ってみたいと思わされた。


 ただ、その日の内にターゲットは、驚くことに街でも二日の間に数十人という悪党を改心させていた。驚くべき能力だ。さらに3人目の奴隷を購入していた。3人目はご同類で俺が知らない奴だ。そのおかげで、遠くからの監視をせざるを得ない状況となった。


 翌日、俺はターゲットが出発した後、こっそり尾けて行くことにした。馬車の数倍で移動する奴らではあったが、視認距離であれば短距離転移できる俺にとってはそれでも遅い。奴らはどうも南の国ヴェストリアに向かっているらしい。


 辺りが妙に静かだと思えば、奴らが国境に差し掛かった時、あの『大陸喰らい』が現れやがった。そしてそれは、俺にとってはチャンスと言えた。奴らが疲弊した時、油断した時を狙ってヤればいいのだ。俺はその時を眈々と待った。



 奴らはどうやってか分からないが、隠密能力のある奴がくるのを察知して、すぐに関所から離れていた。


 その後、ターゲットが奴隷二人から離れ、関所の方へ行くと、奴隷達が大陸喰らいを抑え始めた。なんて奴らだ。騎士団でさえ壊滅させるような化け物相手にたった二人で、行動を完璧に制御しやがった。でも、相応に疲労している様子が見て取れる。


 ターゲットを見ると関所の方から降りてきて別方向へと向かうと、奴隷達のいる場所から真左の位置の数百メートル先で止まった。


 そこで決着を付けるらしい。決着の瞬間、全員の注意が大陸喰らいの方に向く。その時が最大のチャンスだ。


 残り100メートル。80メートル。40メートル。20メートル。



 ついにその時がやってきた。



 私は必殺の距離、ターゲットの1.5メートルの位置に転移した。





 獲った!!!!!!





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