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Page15.掃除屋(スイーパー)、そして旅立ち。

つなぎ回

 三人で初めて薬草採取に行った日から一週間が経った。


 現在オーク狩りが軌道に乗り、毎日二頭分丸ごと納品し、派遣員ランクも全員セプタプルランクにしている。


 そうなった要因は、


 服屋のオネェさんに相談して、地球のバックパックを参考にめちゃくちゃ丈夫で大きな七十リットル級のバックパックを三つ作ってもらったこと。ピリカの精霊魔法のリハビリによってシルフにお願いできることが増え、街とモンスター間の移動速度が向上し、バックパックの重さを軽減して持ち運べるようになったこと。


 の二つが挙げられる。


 オーク肉二頭分で二百二十六キロ前後。全員のバックパックに全力で詰め込めば二百キロくらい入るし、残りは別の袋に入れて三人で手分けして持ち込んだ。


 シルフの力で町の近くまで運んでもらい、そこからはバックパックに肉を詰め込み、シルフに荷物の重さを軽減してもらって普通に歩くことで目立つことなくオークを持ち込んでいる。


 派遣員ランクは、セプタプルランクまでは規定回数仕事をこなすだけなので簡単に上がった。移動時間が減ったので、その分複数の依頼を同時にこなし、あっという間に規定数を突破出来たんだ。次のランクに昇格するには仕事の規定回数達成と、昇格試験を受ける必要があるけど、それは別の国行ってからでもいいかなと思っている。


 また、魔石はゴブリン以上のモンスターが体内に持っている心臓だった。そして、硬貨以降、図鑑ポイントで一ポイント以上になるアイテムが見つからなかったけど、魔石はモンスターによって変換値が違った。


 ゴブリン、コボルト、ホブゴブリンは十ポイント。フォレストウルフ、トレント、キラービーは五十ポイント。オーク、トロール、サイクロプスは百ポイント。オーガ、ジャイアント、デススパイダーは千ポイント。といった具合に増えていく。魔石は売却するよりも変換してしまったほうが価値が高いので、売らずにポイントに変えるようになった。


 ちなみにオーガ以上のモンスターはクインティプル級のパーティ推奨だけど、ハクとピリカの前にはいつもと変わらない光景があるだけだった。毎日殺しているモンスターの数は納品数をはるかに超えるので、魔法の袋の中身が出せない素材で溢れかえっていると同時に、図鑑ポイントが増えてホクホクだった。


 毎日の収入が金貨一枚を超え、現在でもおよそ金貨三枚くらいの蓄えがある。計算より少ないのは、二人の装備を整えたり、生活必需品を購入したり、旅に必要な物を購入したりしたからだ。ピリカは魔術師然とした服装を好み、ハクは動きやすいショートパンツやタンクトップのような服装を好んだ。


 この国もそろそろ頃合いなので旅立つことにした。魔法の袋の中には大量の素材や食料などが大量に入っているので、道中飢えたりすることも無いと思う。


「「おはようございます!!兄貴!!」」

「おはよう。元気そうだね。今日も仕事に励むように。」

「「うっす。勿論です。」」


 この一週間で一番変わったのは、僕への扱いかもしれない。


 一週間の間で数十回ものテンプレ君たちを書き換えていたら、いつのまにかテンプレ君達から兄貴と呼ばれるようになり、さらにはそれを聞きつけたきな臭い組織の連中も全て書き換えてやったら、僕達パーティにちょっかいを出す奴らがほぼ皆無になった。


「エルフと猫山族の女には手を出すな。掃除屋(スイーパー)にお前もやられるぞ。」

「女もヤバイが本当にヤバイのは飼い主の掃除屋(スイーパー)だ。止めておけ。」

「真っ当になりたければ、掃除屋(スイーパー)にちょっかいを出せ。」


 というのが町の下層での噂らしい。ハンナさんが教えてくれた。「なにやったんです?」と聞かれたけど、返り討ちにしただけだと伝えておいた。


 ということで僕にちょっかいを出したものが悉く改心し、悪事から抜け、自首し、真っ当な道を歩むようになることから、


 悪党を一掃するもの、悪党の心もキレイに掃除してしまうもの、という意味で掃除屋(スイーパー)


 という二つ名が付けられた。


 中二病を卒業した僕には些か恥ずかしい名前であった。


 悪党の大量改心により、下層の犯罪率の低下や、元悪党が害獣や雑魚モンスターの駆逐をしたり、町の雑用に励むようになることで、下層、町近辺の治安が劇的に向上した。


 だから僕は下層ではかなりの有名人になってしまったのだった。


 これ以上は国の上層部に目をつけられたり、取り込もうと考えている組織に目をつけられたりする可能性がある。いや、すでに目をつけられているかもしれない。だから僕達は受付のハンナさん、宿の受付嬢ちゃんとその家族、奴隷商館など最低限に挨拶を済ませ、今この街から旅立つところだ。


 目立つのを避けるため、いつもと同じように依頼を受け、いつもと同じように旅立った。これで僕達が街を去ったことに気づくのは何日か遅れると思う。その時間を利用して、ちゃちゃっと国境を越えてしまおう。


 僕達が目指すのは獣人の国ヴェストリア。


 アークダイ王国の南にある国で、年中比較的暖かく、地球の南国のような国らしい。アークダイ王国とは戦争をするほどでは無いものの、奴隷の扱いなどを巡りあまりいい関係では無いのだとか。


 僕を追ってくるのがアークダイ関係者なら、ヴェストリアなら手を出しにくいと思ってこの国を選んだ。あっちでドドーンと実績を挙げて僕の地位を確立し、ちょっかいを出すとヤバイぞ大作戦を決行する予定だ。


 アークダイが横長の国でより短時間で国を出ることが出来ることや、寒いより暖かい方がいい事も選んだ要因の一つだ。でも、本当の理由は、未知のモフモフ天国がそこに広がっていること、というのは僕だけの秘密である。


「じ~……。」


 多分ばれてない。

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