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死にいたる病

 教授から感想文を書くよう言われたけど、本の中身を全く理解できていないのに、感想文なんか書けない。しかたがないので、来週、教授に本の解説をお願いしようと思った。


 その前に、この本についてパパの意見を聞きたくなって、わたしは久しぶりにパパを呼び出してみた。


「パパ、こんばんは」


 声に反応して、いつものようにキッチンの白い壁にパパのホログラムが浮かび上がる。このホログラムは会話できるのだ。全てAIのお膳立て。


 生前のプロフィール、人種、性別、出身地、生育環境、宗教、血液型、趣味嗜好などさまざまな角度から、その人が生きていたら言いそうなことを割り出して会話してくれるのだ。こういう亡くなった人のホログラムは『ゴースト』と呼ばれ、その亡くなった人を知る人が生きている限り、ゴーストもある種の存在する人間として捉えられている。


 だからわたしたちは、そのために限りある命の時間を費やして、自分のプロフィール作りに精を出す。誰かの心の中に生き続けるために。


 パパのゆらゆらきらめいているホログラムがはっきりした時、パパの声がした。


「やあ、ニケ。こんばんは。今日は何の日かな?」


「え? 今日は特に何も」


「何か記念日かと思ったよ」


「1ヶ月ぶりだもんね。今日はね、パパの意見を聞きたくて」


 パパは生きていれば今年40歳だ。ホログラムは生前の姿そのままではなく、歳をとっている。もちろん、AIが故人の現在の姿かたちを推測して発現させているのだけれど。

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