死にいたる病
わたしは授業が終わると一目散に家に帰った。スクーターのスピードを法定速度ぎりぎりまで上げて。
なぜなら早く本を読みたかったから。
もちろん、紙の本は図書館に行けば読めるし、書店もまだわたしの住む街にもある。
ただし、わたしたちが読みたい! って思う本は扱っていない。もはや紙の書籍は家具の一種、家に飾られる置物。現代では、インテリアとして購入されている。あとは高名な学者や政治家の自伝だったり、有名な作家がステータスとして、紙の書籍を出版したりするだけだ。
それ以外の書物や読み物は、すべて電子書籍なのだ。いつからか、そうなったらしい。
別に不便は感じないからいいのだけど。子どもたちにとっての娯楽である絵本やゲームは、全てVRになっていて、そのほうが楽しいわけだから。
だから私も、物心ついた時から、紙の本なんてほとんど触ったことがなかった。
今日、教授がくれた本は、教授の手づくりと言っていた。
何かすごく重大なことのように思える。教授の思い入れたっぷりの内容なのかもしれない、と思ったりする。
家に帰り着いてすぐ、わたしはキッチンのテーブルで、その小さな手づくりの本を開いてみた。
しかし読み始めてすぐ、わたしの期待や高揚感が一気にしぼんでいった。
何だろう、これ。何が書かれているか、さっぱりわからない……。わたしは途方にくれながら、それでも読み進めていく。