死にいたる病
『限りある生を精一杯生きよう』
って誰が言ってたんだっけ。
朝食を摂りながらわたしは考える。
玄米パンと水、それにビタミンサプリという粗末な朝食を。
粗末というか、簡素。
けど、世の中の大部分の人はこんな食事しか摂ってないはずだ、多分。親友のナツはビタミン剤だけだと言っていた。
「ね、ママ」
わたしは正面の壁を見つめながら呼びかける。
すると、壁にゆらゆらと影が立ち昇り、やがてそれは人の形をとってきた。
「何? 平日朝から珍しい」
透けて見えるひとがたは、優しい声で答える。
「平日の朝食なんて、みんな大したもの食べてないわよね」
「そんなこと聞くために私を呼んだの?」
母の声は少し戸惑っている。
「ママもわからないわ。エーアイに聞いてちょうだい。……今日は授業、何限目から?」
「今日は2限目からよ。ママこそ、そんなこと聞くなんて珍しいわね」
わたしの学校のことなんて興味もないくせに、という言葉は飲み込んだ。
朝食を終えたわたしは、大学に行く準備を始める。準備は、Tシャツとジーンズに着替えて、長い髪の毛を梳くだけ。メイクはしない。
「学校行くのね」
壁に映るママのホログラムが尋ねる。
「そうね。行かないと、なんかダメになっちゃう気がするから」
わたしはジーンズに脚を通す、ちょっとキツく感じる。太った、と思った。
「それこそ世の中の人みんな、学校に通ってないんじゃない?」
ママが言う。今日のママは口数が多いな。珍しい。
「そうかもね。通わなくても単位は取れるし。でも社会人になったら、週に何回かは勤務先に行かないといけないでしょう? その練習をしてるの」
わたしはそう答えた、それは本当。
キッチンの壁掛け時計を見ると、もう9時だ。
プロメテウスで飛んで行くと、10分くらいで大学に着くけれど、今日のわたしは道路を使って学校に行きたかった。
「じゃあまた、ママ。ごきげんよう」
ママのホログラムは次第に薄くなり、消えていった。