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-5-

ちょっと引っ張り気味に終わっています

-5-


探索パーティの構成は以下の通り。

タンク四名に剣士二名、魔術師三名に回復術師二名、ガンナーが一名。

主要メンバーからはino、タコス、ちひまん、1n、とうちゃん、アヴァロンが参加している。後ろから三名は魔術師だ。

それをino率いる第一パーティと、ちひまん率いる第二パーティに分けたのだった。

ちなみに天恵の旅団には、回復術師が二人しかいない。

理由としてはUSOで回復術師の人口が少なかったのもあるが、30人の団員たちのHP管理なら二人で十分だから、というのが一番だ。

その回復術師が二名。

つまり、本隊の方には回復術師が一名もいないのだ。

一応、リルクも回復術を使えるのだが、inoの使うものには遠く及ばない。

それでも二名付けたということは、どうやらリルクはこの事態を相当警戒している様だった。

それは、サブマスター二人も同じ考えだったといえよう。


inoもちひまんも、ばつ印の意味を考えていた。

有力なのは異界接続による、周辺地理の変化。

ハバロスに続く街道は一本道だ。そしてばつ印がついてるのはその途中、森の中である。

そんなところに建物などの建造物が出現したら、通れなくなるのは確実だろう。

森を抜けるのもありだが、森の中では馬も思う様に動けない。モンスターに遭遇する可能性もある。

しかし、彼らはほんの微々たる可能性を考えていた。

モンスターやPKによる、妨害や襲撃の可能性。

後者についてはありえないと思われた。なぜならここは現実だから。

好き好んで人を殺める者はいないだろう。


問題は前者だ。

コンビニで生活していたと思われる者たちは複数だった。

その人数で突破できないとしたら、相当数のモンスターの群れやボスモンスターの出現などが考えられる。

しかし彼らが撤退できたことを考えると、最悪の場合でも撤退は可能だろう。

そんな考えを浮かべながら、一行は森に入った。

木々が生い茂り、午前にもかかわらず日差しが悪い。視界の悪さに、団員たちは警戒をさらに高める。

そしてーーーーーその時は訪れた。




リルクの持つモニターが淡く光り、空間に文面が投影された。

『目的地到着。建物による通行不可でした。建物の破壊は不可能です』

inoからの報告を受け、リルクは安堵の吐息をもらす。

ひとまず、危惧していた事態はなかった様だ。

inoに即時撤退の旨を伝え、リルクはもっちゃんとRyuueiを呼び寄せた。臨時の行程会議である。

もっちゃん、Ryuueiは共に初期からのメンバーであり、今ではギルドの古参メンバーとなっていた。


ギルド、【天恵てんけいの旅団】。

USOに数多くギルドはあれど、このようなギルドは天恵の旅団以外に無いだろう。

天恵の旅団はその名の通り、旅をする放浪のギルドだ。

一応、ウェルザムという街に本拠地を構えてはいるが、基本的には様々な街を転々することがプレイスタイルとなっている。

旅がてら行商の真似事をしてみたり。そうして集めた資金で各地に小さな拠点があったりと、USOの地理に関しては他を凌駕する知識を有するのだ。


「やっぱ、森を抜けれないとなると回り道しか無いですねー」

もっちゃんが顎に手を当てながら、首をひねる。

森は多くの危険がある。今の状態で行くのは危険だ。

「そうなると2日かかるね」

Ryuueiの言葉に、リルクも頷く。

「とりあえず、物資は2日保つので大丈夫でしょう」

なんだかんだ言って、ダリウスはリルクたちに二週間分の食料を持たせてくれた。

おかげで、行程に遅れが生じても問題はない。

リルクは心の中で、少しダリウスに感謝した。


「でも2日の間夜営するとして、どこで夜営しますか?

森の付近は通れても、夜営は危険ですよね」

「それはあるかも。リダ、確かこの近くにNPCの村があったはず」

もっちゃんの指摘を受けてRyuueiが指差したのは、ハバロスに向かう回り道の丁度真ん中。

NPCの村でも、宿泊施設はあったはずだ。

無かったとしても村の中なら、道端で夜営するよりずっと安全である。

「あー、ありましたね!」

もっちゃんが懐かしそうに言葉を弾ませた。

確か一度、クエストの途中で村を見かけたことがあった。

地図に載ってない村だったので、ギルド全員大はしゃぎだったのだ。

もっとも、クエスト途中ということで立ち寄るのはやめたのだが。

「では、今日中にそこまで行くことにしましょう」

リルクはそう締めくくり、モニターを確認する。

丁度、ちひまんからチャットが送られてきたところだった。


『inoさん達がモンスターと遭遇したそうです。撤退している様ですが、私達に先に撤退しろとの伝令でした。

とりあえず森の入り口で待機しています』

要点をかいつまんだわかりやすい報告に、リルクは少しだけ冷静さを保つことができた。

側頭部を押さえつつ、間違えないようにチャットを打つ。

『伝令ですか?チャットではなく?』

『アヴァロンさんが馬で。遭遇直後に伝令に出たので、モンスターの種類などは分からないそうです』

『分かりました。全員撤退の準備は整えつつ、ちひまんさんとうちゃんさんアヴァロンさんで森の入り口を攻撃できるように待機してください』

『了解です』

ちひまんからの返事を確認し、リルクは急ぎ全員を集めた。

少し緊迫した声に、全員が何事かと駆け寄ってくる。

とりあえず簡単に、探索パーティがモンスターと遭遇したことを伝えて、リルクは出立の準備を命じた。

援護の提案が出たが、リルクはそれを却下する。

全員で向かえば、いや一パーティでも援護に向かえば状況は変わるだろう。

しかし、そうすると再召喚までのリキャストタイムにズレが生じる。

夜までに村に着かなければならないため、それだけは避けたかった。



*****


時は少し前に遡る。


inoは森に入るや否や、ちひまん達第二パーティにすぐに引き返して森の入り口にて待機するように命じた。

ちひまんはinoの考えを察したようで、了承と共に引き返して行った。

流石はinoが推薦したサブマスだけはある。

ちひまん達がinoの探知範囲外に出たのを確認し、inoは付近の警戒に集中した。


「inoさん、目的地です!」

少し進んだところで、inoの前を進むタコスが大剣を振って合図してきた。

合図を受けて前を見ると、目の前には大きなビルが建っていた。軽く5、6階はありそうな大きさである。

どうやら、周辺地理の変化で街道が封鎖されたものと見て間違いないらしい。

とりあえず外側からだけ調査することにして、inoは馬から降りた。

その横を、タコスが馬を降りてついて来る。

それから十数分かけて周辺を見て回り、探索結果をモニターにまとめる。


その内容を送信したところで、視界に影が落ちた。


「inoさん上ッ!!」

タコスの叫び声と同時に、ドンという衝撃を背中に受けて地面に転がるino。

直後、大地を砕くかの如く、轟音が響き渡った。

舞い上がる砂煙の中、inoは探知で全員の位置を確認する。

隣にいたタコスが、剣を支えに立ち上がった。

「inoさん、大丈夫でしたか?」

「…なんとか。ありがとうございます」

どうやらマンションの上から、何かが落ちてきたらしい。

タコスの話では、速すぎて何だか分からなかったそうだ。

inoは探知の幅を狭めて、スキルの精度を上げた。

一定範囲のすべての動きを把握する能力。その範囲で何かが唐突に動き出した。

「タコスさん、左に跳んで!」

inoの言葉にタコスが左に跳んだ、その瞬間。

砂煙を突き破って、人の顔以上の大きさの拳が突き出された。

風圧によって一瞬で砂煙が晴れる。


開けた視界の向こう側、先の時揺れと轟音の正体が姿を現わした。


猿のような姿に、二本の剛腕。

その全身が白で覆われ、目だけが青く光っている。

USOボス級モンスター【モンティール】。

その姿がそこにはあった。

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