家庭(仮定) その1
--------------あー、嫌だ嫌だ、大っ嫌いだ----------------
「さて、幹性さん、やることやるぞ。」
「や……やること? ですか?」
「とぼけるんじゃねーぜ。 仕事が残ってるだろう?」
「い……嫌です! 断固として拒否します! 嫌です嫌です! 働きたくありません!」
将来が不安になる一言だった。
あんまりそういうことを言うんじゃない。
「嫌だって言ってもいつかはやらなきゃいけないんだよ。」
時間経過で問題が解決されることなんてないんだよ、と私は言う。
「くどいようですが僕は何度でも言いますよ。 今日は休日です!」
「休日だって汗水流して働いている奴はいるんだぞ。 もし働かなかったらレギュラーメンバーから降ろすぞ。」
「おっと、脅すんですか?」
「そこまで働きたくないの!?」
「……冗談ですよ、働くのは嫌いじゃありません」
むしろ好きですかね、と隹さんは言う。
おー、素晴らしい精神の持ち主だ、素直に同意するし、尊敬できる。
「さて、そろそろ本題に移りましょうか先生」
「あぁ……そうだね、えっとね率直に言ってしまえばこの前の題名の話の続きだよ。」
「ああ、その件は後回しにしようかなって……」
「あ゛あ゛ん゛!?」
「やりますやります! なんか今日の先生怖い!」
いつもだけど! と隹さんは余計なことを付け加えた。
ふむ、今度、鏡を見て観察してみる必要があるな。どんなひどい顔をしているか非常に楽しみだ。
「そんなに怖いか?」
「怖いです!」
「じゃあその怖い先生から話がある。いいか、よく聞けよ。」
と、言って私は話を切り出した。
半ば強引に、流れを断つように。
「この際だからはっきり言う、幹性さんの作品は完璧だ、非の打ち所がない。 だからと言って天狗になるな、とも言いたいが、この話の焦点は違うぞ。 」
一呼吸間をおいて話を続ける。
「幹性さんの作品は完璧だ、だがな、タイトルがないんじゃのっぺらぼうも同然なんだぜ。 つまりな、私が言いたいのは、今はタイトルにだけ集中しようということだ。 いいか? でっけぇ目標じゃなくて、まずは手元にある小さな目標を少しずつ解決していけばいい。」
「先生……ごもっともな意見ですがどうして突然こんな話を?」
「いやあさあ、なんか最近、幹性さんが何かに焦ってるように見えてね」
と言うと、隹さんはビクリとした様子で、おまけに汗までかいていた。
「図星かな?」
「図星というか梅干しというか……」
訳が分からない。相当混乱しているようだった。
「あ、あ、あ、焦っているのは本当ですけども、作品の方には若干の余裕があったりなかったり。」
「なんだ、ないのか」
「あるんですね、これが。」
といって隹さんは、話し始めた。
「なんともう既にタイトルは決めてきたんですね。」
「ふーん、それで? 続けて。」
「では発表します。」
そういって隹さんは口を開いた。