眠り姫ならぬ眠り王子(作:奈月ねこ)
眠い。とにかく眠い。これはきっと春だからだ。
「中島!」
チョークが飛んできて俺の頭に当たる。
「寝るな!授業中だぞ!」
国語で朗読されると眠くなるのは当然じゃないか。それにしてもチョークは俺の頭に当たり、まっ二つだ。コントロールのいい先公だ。窓際で陽射しが入るのもまずい。ぽかぽかと気持ちいい。あ~眠い。
俺はその他の授業でも寝続けた。先公には怒られたが、眠いのだから仕方ない。俺はぐっすりと眠ってしまっていたようだ。もう夕方。授業はとっくに終わっていた。教室には寝ていた俺一人になっていた。
友達も薄情だ。授業が終わった時点で起こしてくれればいいものを。俺は一人で眠り続けていたことになる。
帰るか……。
パサッ
ん?何だ?
俺の机から落ちたのは一通の封筒。俺はそれを開けた。
『校舎裏で待ってます』
告白!?時間は?もう六時近い。まだいるだろうか。差出人の名前もない。とにかく行ってみよう。
俺は急いで校舎裏へ行った。すると夕陽に照らされて目を伏せた女子が壁に寄りかかっているのが見えた。
ドクンッ
俺の胸の心臓が大きくはね上がった。
俺が立ち尽くしていると、その女子が気づいた。
「中島君、来てくれてありがとう」
彼女ははにかみながら俺に向かって話しかけてきた。心臓の音がうるさい。落ち着け、俺!
「えーと、手紙をくれたのは君……?」
「うん」
これは告白か?こんな綺麗な子から?
相変わらず俺の心臓はうるさい。
「あの……原田澄江って知ってる?」
「え?えの問題児の?」
原田澄江といえば、学校にケバい化粧をしてきて、髪の毛も色を抜いて先公にいつも怒られている女子だ。まさか……。
「澄江から頼まれたの。これを渡して欲しいって」
彼女は一通の封筒を俺に差し出すと、踵を返して帰っていった。
俺は呆然とその封筒を眺めた。
おそるおそる俺は封筒を開けた。
『果たし状』
俺は脱力した。女子から「果たし状」って何だよ。確かに俺は少しだが腕に覚えがある。それを知ってのことか……?
日付は……今日の夕方!?しかも川原ってベタな……。もう夕方を過ぎてる。……帰るか……。
翌日
「お前、原田澄江に負けたんだって?」
友達が話しかけてきた。
「はあ?」
訳がわからない。
「お前、敵前逃亡したんだろ」
何だそれは!昨日川原に行かなかったことで、そんな噂が流れてるようだ。面倒くさい。もう、どうでもいい。
「中島!寝るな!」
今日も俺は窓際の席で寝ている。