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今日から学校と仕事、始まります。①莞

ザット・コイン

作者: 孤独

喫茶店の中で響く音は、ついつい耳を幸せにする。


ピィィンッ



指で高く打ち上げるコイン。

回りに回って、最高点に達して落ちてきても回転は止まずに



パァンッ


「どーっちだ!?」


手の裏に落ちたと同時に隠し。問いだされる。


「うーーん。表!」


のんちゃんはミムラにそう答える。その宣言を聞いて、楽しみながら隠した手をどかして、答え合わせ。


「答えは……表!のんちゃん、大正解!」

「やったーー!」


子供なら誰だってやるだろう。100円玉でも、10円玉でも、どんな硬貨でもやるだろう。コインを弾いたゲーム。

喫茶店の中、弾くコインの音がピィンピィンと、ちょっとうっせー……。しかし、ちょっとした時間潰しになるゲームの一つだ。子供ののんちゃん、女子大学生のミムラ、物凄く楽しみながらこのコイン当てゲームを続ける。


ピィィンッ


のんちゃんはゲームをしながら、正確にコインを操作できるように何度も上に飛ばしていく。


「楽しいんだね!のんちゃん!」

「はい!」


ギャンブルに嵌ったわけでなく、些細な事だけれど、試して挑戦していくという事を楽しんでいる表情。純粋無垢とはまさにこのことだろう。

しかし、そんなのんちゃんの笑顔の真実を台無しに思うのは、のんちゃんと遊んでいる大人。ミムラの方であった。



のんちゃん、こんなにコイン当てゲームに嵌って……、将来、ギャンブル中毒になっちゃうんじゃないかな?別に悪いわけではないけど、ギャンブルばかりする人は最終的に破滅してしまうもの。ここは大人かつ常識を持つ、私がのんちゃんを優しく説得して、これ以上は止めさせるべきではないかな?



ピィィンッ


「表!」

「うーん、表です!」


コインを弾いて、表と裏。自在に出せるように成りたい。人の答えによって、出す面を自在に変えられたら100%勝てます!のんちゃん、魔術師って呼ばれます!

掌に乗せる時にどちらの面になるか。コインを掌に乗せた状態で、隠した手でひっくり返せるか。のんちゃん、頑張ってやってみます。



ピィィンッ


「どっちでしょーか?」

「……裏!」

「えーっと、残念!表です!」


コインの表裏のデザインが違えば、隠した手を押し付けた感触で分かって来た。見えないところでひっくり返す感覚も分かってきました。

よーし、これからミムラさんの裏をかいて、驚かせてあげます!ただコイン当てを楽しむだけがのんちゃんじゃないですよ!


「ミムラさん!ここからのんちゃんが勝負をしてもいいですか?」

「え?」


もしかして、のんちゃん。ギャンブルに嵌ったの!?そんな、ちょっとした時間で遊べるゲームをしていただけで!?のんちゃん、そんなにギャンブルに……。


「いいよ!私、ミムラはね!”天運”っていう、運の強さだけはピカイチな者!のんちゃんからの勝負、受けて立つ!」

「分かりました!負けませんよ!」


よーし、ミムラさんを絶対に驚かせて……


「その前に私が勝ったら、もうコイン当てゲームはなしだよ!」


遊ぶのはいいけど、ギャンブルばかりはいけない。ここで禁止令を言わないと


「じゃあ、のんちゃんが勝ったら……」

「勝ったらなんでも言いなさい!さぁ、投げなさい!!」

「!分かりました!なんでもいいんですね!?夕飯は、ウナギでもいいですか!?」


ゲームはコイン当て。表か裏か、たったそれだけを賭けるゲーム。一回、限り。

研ぎ澄まされる集中力。緊張と平常の同居。投げるのはのんちゃん。


「表だよ!」

「え?」

「表しか出ない!」


ただ見守ることしかできないであろう、ミムラは即座に回答する。プレッシャーを掛けてきた。必ず、裏を出さなければいけない重圧は、のんちゃんの手の汗を生んだ。

まさかの宣言だったが、勝てる要素は増えている。投げてキャッチするタイミングで裏を出せばいい。万が一、表が出たら見せる直前で返せばいい。

テクニックを加味しても、イカサマの類を用いようとするのんちゃんは確かにズルい。しかし、それはミムラだって大人しく笑って見守る人ではなく、手は動く。


イカサマ VS 反則


そういった内容。勝敗を決めるのは、神様といったところか。2人の勝負を聞いていないものもいる。偶然に守られ、偶奇に歪められて


ピィィンッ


コインはのんちゃんの指によって、宙に上がった。のんちゃんはコインを目で追う、追う。タイミングを手の裏に乗せるタイミングを図っている。故にみせた無防備は、コイン側。

イカサマを証明するものはないが、ミムラには完全な運否天賦に持ち込みたかった。なにせ投げるのはのんちゃんで、自分は答えることだけ。すぐに勝敗を決められてしまっては何も意味がない。理不尽な負けって奴。そうはさせずと、


ピィィンッ


「ていっ!」

「ああっ!」


上がったコインが落ち始めたその一瞬を見計らって、手でのんちゃんが投げたコインを弾き飛ばした。


「あ、テーブル乗っちゃった!」

「困るよ、ミムラちゃん……」


コインを弾くため、テーブルに乗ってまでやったミムラの反則行為。ゲームそのものを壊したが、このゲームは運だけで行うがよろしい。手の甲なんて良くはない、床に落ちたその時、出る表裏こそ……



ボチャァンッ


「……………」

「……………」


床に、落ちた、その時に


「………なぁ、この店は……コーヒーにコインを入れるのか?」

「それはないです、よ」

「あは、はははは」


弾いたコインは飛び、別のお客様のコーヒーの中。広嶋が注文していたコーヒーの中に、コインは落ちてしまった。コーヒーの濃い色のせいで表か裏かも分からない。

いや、そんなことより、よりによって、広嶋くんのコーヒーにコインが


ミムラも、のんちゃんも、そそくさと逃げようとするが


「お前等ぁぁぁっ!!」

「ひぃっ」

「ご、ごめん!のんちゃんとゲームしてたら」

「のんちゃんのせいですか!?」

「ふ、ふ、2人のせいって事で」

「当たり前だろ!」


この後、広嶋に滅茶苦茶に怒られるのんちゃんとミムラ。店内でのコイン投げは禁止の発令を言い聞かせる。2人を泣かすほど叱っている間、喫茶店の店主、アシズムはそのコーヒーを回収した。アシズムがコインを掬ったとき、出たのは


「表ですか」


ま、どっちが出てもミムラちゃんの勝利になりましたね。さすが、”天運”というか。こんなにしなくても


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