LAVN【LAVE SONG】【DEVIL SONG】(男3女1 or 男2女2 or 男1女3)45分
LAVN――ラヴン――
【LAVE SONG】【DEVIL SONG】
(男3女1 or 男2女2 or 男1女3)
30分台本。
作:七菜 かずは
CAST
●シプレツィア♀
(ハーピー。生まれたての悪魔。女。可愛らしい姿をしている。歌で全てに愛を与える。喋るととても弱弱しいが、強い意志を持っている。産まれた時から、沢山の知識を持つ。
自分の故郷、地獄が楽園になるように、愛を歌い続ける。全身、ふわふわの毛で覆われている。外見年齢12歳。
人称:ボク。ヴァドゥーの恋人だったリーナの妹だと言われて育てられている。リーナとシプレツィアは血が繋がっているが、ヴァドゥーとリーナは血が繋がっていない?)
●ヴァドゥー♂
(小さな魔城の主。ケンタウロス。全身真っ黒。いつもイライラしている。外見年齢24歳。実年齢167歳。人称:俺)
●バビィナ♂(※集まった役者の性別に合わせて、お姉さんでも可。)
(スタイル抜群色気むんむんのオカマ。メドゥーサ。ヴァドゥーとシプレツィアの姉的存在。外見年齢22歳。実年齢201歳。人称:あたし)
●ググマグ♂(※集まった役者の性別に合わせて、お婆ちゃんでも可。)
(ヴァドゥーの育て親。お爺ちゃん。化け亀。実年齢千歳。みんなをいつも優しく見守っている。人称:わし)
役表
●シプレツィア♀ :
●ヴァドゥー♂ :
●バビィナ♂ or ♀:
●ググマグ♂ or ♀:
死の国。地獄。とある小さな魔城。一番てっぺんの部屋、窓際に腰掛け歌っているシプレツィア。
シプレツィア「♪……すすむことやめないで。
さあ、その声で、すべて壊して。楽園の墓場で落ち合おう。きっと。約束♪……」
彼女の歌を、その下の部屋でお茶を啜りながら聞いている、ググマグ。
ググマグ「その歌は、夢を与える……」
魔城の螺旋階段をのぼっている、しかめっ面のヴァドゥー。それを追い掛けているバビィナ。
バビィナ「ちょっとヴァドゥー! どこ行くのよぉ!? 待って! そっちの部屋に入らないで!」
ヴァドゥー「俺の耳がいいことを、知ってるだろう!」
シプレツィア「♪勇気をくれた あなたがそこに居るなら
ずっと、私は見守っているから……。絶望を(解き放つように)……♪」
ヴァドゥー(歌を遮り)「やめろ!!」
シプレツィア「――っ!!?」
ヴァドゥー「歌うなと言ってるだろう。このヘタクソめ」
シプレツィア「……ごめんなさい」
バビィナ「ちょっとちょっとぉ~。キング。そんなに威嚇することないでしょ? ってか、レディの部屋に勝手に入るなんて!」
ヴァドゥー「悪に歌は必要ない!」
シプレツィア「悪?」
ヴァドゥー「ああ、そうだ! 魔族は皆、悪だ。正義という名の、悪だ……」
シプレツィア「そんなことない! 地獄は楽園になって行ってる。ぼくは、カジュリアとジュデアを信じる」
ヴァドゥー「俺に刃向うのか。シプレツィア」
シプレツィア「違うよ。ヴァドゥー、そんなに歌が怖いの? 平和や希望が怖いの?」
ヴァドゥー「やかましい!」
バビィナ「あんた、元々歌やってたじゃない」
ヴァドゥー「黙れ!」
バビィナ「ああ、怖い怖い」
ググマグ(部屋に入ってきて)「うるさいのう。お前ら、これからわしの大事な昼寝の時間じゃあいうのに」
シプレツィア「ごめん。ググマグ」
ググマグ「おい、ちがうわ。お前じゃ、ヴァドゥー」
ヴァドゥー「チッ」
シプレツィア「ぼくの歌、うるさかった?」
いつものようにシプレツィアのベッドに乗っかるググマグの背中を、大切にさするシプレツィア。
ググマグ「じゃから、」
ヴァドゥー「ああ耳が腐る! シプレツィア。二度と歌うな。わかったな? もう我慢の限界だ」
シプレツィア「でも、今度カジュリアと一緒に。人魚岬で歌う約束をしてるから。歌を作ってるの」
バビィナ「あぁら。素敵じゃない!」
ヴァドゥー「ふざけるな! 人間だぞ、あの青髪の女ァ」
シプレツィア「わかってるよ。でも、とってもいい子だよ? ぼくの髪も、歌も、バビィナのスタイルも、いつも褒めてくれる」
バビィナ「ふふっ♪ そうね。あたしもカジュリアは割と好きよ」
ググマグ「アア、アア。正に、次期女王に相応しい。すばらしいおなごじゃて。わしの甲羅もなぁ、優しくさすってくれるんじゃよ」
ヴァドゥー(唸って)「魔族の誇りを忘れるな」
バビィナ「そんな古い考え方してるの、最近じゃアンタぐらいよお?」
ヴァドゥー「黙れ!」
バビィナ「何よ。黙れ黙れって、それしか言えないの?」
ググマグ「語彙が無いのは育て方の間違いじゃて」
シプレツィア「ググマグ、それ自虐?」
ググマグ「ほっほっほっほ」
ヴァドゥー「シプレツィア、二度と歌うな!」
シプレツィア「嫌だよ。ヴァドゥー、もう出て行って。騒がしくされるの、あんまり好きじゃないんだ」
ヴァドゥー「誰の城だと思ってる!」
シプレツィア「もう権力者でもなんでもないんだから。落ち着いてよ」
ヴァドゥー「いい気になるなよ。シプレツィア。これ以上歌を続けるのなら出て行け」
シプレツィア「言われなくても、あと一週間もすれば出ていくよ」
ヴァドゥー「何?」
バビィナ「えっ、どういうことぉ?」
ググマグ「死の城で吟遊詩人として働くんじゃと」
バビィナ「えええっ。そうなのお!? なによ~! そんなおめでたいこと黙ってるなんて! シプレツィアったら!」
シプレツィア「ごめん。昨日、合格通知が来たんだ」
バビィナ「おめでとう。夢が叶うのねっ」
シプレツィア「うん。ぼく、これからもっともっと綺麗になっていく地獄に、愛がたっくさん降り注ぐように。歌い続けるよ!」
バビィナ「そう……。お姉さん、ちょっとだけ寂しいわ。でも今までの努力がようやく報われるのね」
ヴァドゥー「ふん。何が歌だ。お前の下手な歌で、地獄に何億何兆とたまった黒い心が癒されるものか。わからないか?」
ググマグ「理解がないのはお前じゃ。ヴァドゥー」
ヴァドゥー「なんだと」
ググマグ「希望を潰せるものなど何もない」
シプレツィア「ぼく、わからないよ。不安だってあるよ? でもね、これしか出来ないから。ジュデアだって、いつもボクの歌を」
ヴァドゥー「阿呆め。ふん」
バビィナ「ちょっと、どこ行くのよ。シプレツィアの門出が近いのよ? 祝ってあげて! あ、そうだ。今日はパーティしましょ! ね!」
ヴァドゥー「ジュデアと同じように気が狂ったか。善人のふりなどするな。シプレツィア。出て行ったら最後。お前は俺の妹ではなくなる」
ヴァドゥー、部屋を出ていく。
バビィナ「ちょっと、ヴァドゥー! ったく。もっと静かに出て行きなさいよね。城が壊れるっちゅーの」
シプレツィア「はぁ……。ねぇ、ヴァドゥーが機嫌良くなる方法ってない? ググマグ」
ググマグ「お主が歌を捨てればええ」
シプレツィア「またその極論?」
バビィナ「あいつ、歌上手かったのにね?」
シプレツィア「そうなんだ」
ググマグ「ああ。過去、歌の力で閻魔の病を治した。それに、地獄の血の海を枯らす程の癒しの力を持っておった」
シプレツィア「ヴァドゥーが?」
バビィナ「そうよ?」
シプレツィア「信じられない」
ググマグ「……シプレツィア。あいつの歌は、お前の愛の歌と同じじゃ」
シプレツィア「支配する為じゃなくて?」
ググマグ「ああ。そうじゃ」
シプレツィア「誤解してるのかな、ぼく」
バビィナ「恨まないで。色々あったのよ」
シプレツィア「ヴァドゥーの首にある傷と何か関係あるの?」
ググマグ「そうじゃのう、少し、昔話でもするとするかの」
シプレツィア「教えて。ググマグ。ヴァドゥーは歌を愛していたんだよね?」
ググマグ「百年前。ヴァドゥーは……」
ヴァドゥーの部屋。
ヴァドゥー「ふぅ……。しばらく城に顔を出すのもやめるか……。はぁ……」(憂鬱そう)
シプレツィア(窓際から部屋の中にふわっと入ってきて)「♪その音で、すべて壊して。再生はこちらの番♪」
ヴァドゥー「シプレツィア!? ッ勝手に部屋に入って来るな!」
シプレツィア「ふふっ♪ おあいこでしょ? ねえヴァドゥー。一緒に歌おうよ。歌、好きだったんだよね?
カジュリアとジュデアのデュエット、聞いたことある? 凄いんだよ! もう、ぶあーって感じで。飲み込まれそうで。ボク、」
ヴァドゥー「黙れ黙れ黙れ! 失せろ!」
シプレツィア「♪歌は、消えないから♪」
ヴァドゥー「やめろ……」
シプレツィア「♪その心に与え続けよう♪」
ヴァドゥー「やめてくれ! 歌はこりごりだ!」
シプレツィア「ヴァドゥー……」
ヴァドゥー「もう、ないんだ……」
シプレツィア「どうして傷付けるの? 自分の痛み、誰かに知って欲しいの?」
ヴァドゥー「何が言いたい」
シプレツィア「ヴァドゥー、悪に染まりたいんなら。人間界にでも行けば? 君の力なら、誰だって傷付けられるでしょ?」
ヴァドゥー「目的無く滅ぼしたりはしない」
シプレツィア「怖がり。臆病者!」
ヴァドゥー「なに!?」
シプレツィア「守りたいんなら。心を打ち明ける勇気を出さなきゃ! 変わらなきゃ! 変わらないものなんて、この世にもあの世にもないんだよ!」
ヴァドゥー「何を言い出すかと思えば……。そんな抽象的な話。虫唾が走る!」
シプレツィア「愛を信じて」
ヴァドゥー「っ……。そんな言葉。愛など」
シプレツィア「ボクのお姉ちゃんのこと、好きだったんでしょ?」
ヴァドゥー「フッ。ググマグに余計なことでも吹き込まれたか?」
シプレツィア「リーナとヴァドゥーの歌は、大地を癒したって」
ヴァドゥー「忘れたな」
シプレツィア「ヴァドゥー」
ヴァドゥー「思い出したくないんだ」
シプレツィア「……魂の墓場に、行かないの?」
ヴァドゥー「行ってどうなる」
シプレツィア「さよならして。スッキリしようよ」
ヴァドゥー「リーナが俺を許すことはない」
シプレツィア「そんなことない。愛してたんだから」
ヴァドゥー「勝手なことを言うな」
シプレツィア「逃げないで! ヴァドゥー。お願い。ボクだって、このまま君と離れるのは心苦しい。血が繋がってなくたって、家族なんだよ」
ヴァドゥー「出て行くのは勝手にお前が決めたことだろう。はっ。まあ、吟遊詩人など務まるとは思えんけどな」
シプレツィア「頑張るよ! 絶対、きっと大丈夫!」
ヴァドゥー「やめろ……」
シプレツィア「はやく、色んな人の前で歌いたいな」
ヴァドゥー「やめろ!」
シプレツィア「許されたくないの? 負の感情でもなんでもいいから。誰かの心に存在したいんだよね。ヴァドゥー」
ヴァドゥー「何がわかる」
シプレツィア「わかるよ。ボクだってそうなんだ。でも歌しかないから」
ヴァドゥー「お前のように流暢に喋るヒツジ、サーカスに売れば見世物になるんじゃないか?」
シプレツィア「……♪勇気をくれた、あなたがそこに居るなら。ずっと、私は見守っているから。
絶望を、解き放つように。哀しみの詩を奏でて♪
(行こう。きっと……♪)」
ヴァドゥー「消えろ!! もうやめてくれ!」
シプレツィア「ヴァドゥー! カジュリアが、ボクの歌を何度も褒めてくれたんだ。きれいだねって。新しい女王になるの、あの子だって凄く緊張してる。だから、少しでも」
ヴァドゥー「死者でもないただの人間が! 死の国の女王になるなど有り得ない!! 俺は反対だ!」
シプレツィア「カジュリアのこと何も知らないくせに! ねえ、手を取り合って行こうよ!
ボク、誰かの為に歌っていたいんだ。ヴァドゥー。君にも……もっと笑って欲しいんだ」
ヴァドゥー「必要ない」
シプレツィア「頑固者っ。だったら……。これはどう!? ……♪今、滅びる、この世界に。輝き溢れる♪」
ヴァドゥー「な……!?」
シプレツィア「♪選ばれし戦の人よ、何求め歩むの?♪」(歌い続ける)
ヴァドゥー「何故その歌を……! 知って……」
シプレツィア「♪私の心を揺らす♪」
ヴァドゥー「シプレツィア……」
シプレツィア「♪この時が永遠に続けばいいと、願ってしまう私を♪」
ヴァドゥー「ッ頼むやめてくれ!! ……やめてくれ……」
シプレツィア「リーナと一緒に作った曲なんだよね?」
ヴァドゥー「……何故、知って」
バビィナ「あたしが楽譜を見せたのよ!」
ヴァドゥー「バビィナ……。貴様」
バビィナ、窓から侵入してきて。
バビィナ「よい、しょっと。お邪魔様っ。……いいでしょ。リーナに貰ったんだから。沢山の人に歌って欲しい、って」
ヴァドゥー「勝手な女だ。勝手に現れて、勝手に居なくなって。俺は……。変われない、のに」
バビィナ「ヴァドゥー……」
シプレツィア「リーナのこと、そんなに好きだったんだね」
バビィナ「そうねえ。婚約していたくらいだもの。あの頃は、……いい時代だったわ。私たち魔貴族が、低級魔族を好き勝手に使えて」
シプレツィア「バビィナ!」
バビィナ「ぷぷっ。ごめんごめん。ちょっと、ね。懐かしく思ってただけよ」
シプレツィア「ヴァドゥー。時代は変わる!」
ヴァドゥー「そんなものはわかっている」
シプレツィア「昔は、ジュデアともよく飲み交わした程、仲が良かったんでしょ? なのに。人間と関わるようになったせいで、距離を置いてるの?」
バビィナ「シプレツィア。それは誤解」
シプレツィア「誤解?」
ヴァドゥー「……あいつの怒りも、彷徨う思想も。俺は理解していたつもりだ。だが、今まで互いを癒すことはなかった」
シプレツィア「どういうこと?」
バビィナ「ヴァドゥーは、親友を取られてちょっと拗ねてただけなのよ」
ヴァドゥー「!」(唸る)
バビィナ「ほら。カジュリアって、誰の心にも、するって入って来ちゃう子でしょ? ヴァドゥーにはそんなこと出来ないもんね」
ヴァドゥー「バビィナ」(睨む)
バビィナ「ひーっ。ふふっ。はいはい」
シプレツィア「ヴァドゥー」
ヴァドゥー「ん」
シプレツィア「歌いたいんだ」
ヴァドゥー「勝手にしろ」
シプレツィア「一緒に歌いたいんだ! ヴァドゥー!」
ヴァドゥー「断る」
シプレツィア「お願い!! ヴァドゥーは、ボクの歌を聞いても。リーナとの歌を思い出しても、心はなんにも動かないの!?」
ヴァドゥー「っ……俺には」
シプレツィア「ジュデアも、言ってたんだ。ボクだけじゃなくて。ヴァドゥーにも一緒に来て欲しいって」
ヴァドゥー「ジュデアが?」
シプレツィア「うん」
ヴァドゥー「あいつだって、リーナを殺した俺を、憎んでいるはずだ」
ググマグ「いい加減にせい。ヴァドゥー! っ! しょっ」(窓から入って来る)
バビィナ「ググマグ!?」
シプレツィア「ググマグ! 危ないよっ!」
バビィナ「シプレツィア、足掴んでっ」
シプレツィア「ほいっ」
バビィナ「ググマグ! 何してんのよっ!」
シプレツィア「普通にドアから入って来なよ!」
ググマグ「鍵がのぅ~」
ヴァドゥー「まったくお前らは……。俺にはプライベートはないのか? ふっ」
シプレツィア「ヴァドゥー……」
バビィナ「久々に見た。普通に笑ってるの」
ググマグ「ほっほっほっほ」
ヴァドゥー「……シプレツィア」
シプレツィア「うん?」
ヴァドゥー「ふっ。お前はまったく。余計なことばかりしてくれるな」
シプレツィア「そうかなぁ? ふふっ。そんなに、イヤだった?」
ヴァドゥー「……リーナもそうだった。俺の心をそうやって、掻き乱して……」
シプレツィア「?」
ヴァドゥー「バビィナ、夕飯はここに運べ」
バビィナ「へっ!? 一人で食べるの?」
ヴァドゥー「違う。ほら、ググマグ、これを受け取れ」(小さな酒樽をググマグに投げる)
ググマグ「おっ!? っとっ! なんじゃ」
ヴァドゥー「お前が飲みたがっていた酒だ。バビィナと一緒に飲め」
バビィナ「えーっ!? いいのっ!?」
ググマグ「ほっほっほっほ」
シプレツィア「ヴァドゥー? 心が変わったの?」
ヴァドゥー「ふん。勘違いするな。お前の為じゃない」
シプレツィア「じゃあ、リーナの為?」
ヴァドゥー「……っ」
シプレツィア「お願い。来週、一緒に来て。ジュデアは君とどうしても話したいって言ってたんだ。どうして電話にいつも出ないんだとか、手紙は読んでくれてるのかとか、心配……してたよ?」
ヴァドゥー「……あいつは、俺を恨んではいないのか?」
シプレツィア「ちゃんと、向き合って。少しでいいから。目を開いて、ボクたちを、ジュデアを、カジュリアを、地獄を……見てほしい」
ヴァドゥー「俺の心は、変わらない。だが……」
シプレツィア「?」
ヴァドゥー「お前の歌を、聞いてやってもいい。新しい死の国に相応しいかどうか、確かめてやる」
バビィナ「もう。偉そうに」
ググマグ「ほっほっほ。シプレツィア。宴会の準備が先じゃなぁ」
シプレツィア「ありがとう……。みんな」
最後の、四人の晩餐。
三人の前に立つシプレツィア。少し緊張していて。
バビィナ「シプレツィア。さ、どうぞ」
シプレツィア「うん……」
ググマグ「リラックス、リラ~ックス、じゃ」
シプレツィア「うん」
ヴァドゥー「……」
シプレツィア「じゃあ、さっき出来たばかりの曲。です。名前はまだないけど……」
ヴァドゥー「はやくしろ」
シプレツィア「あ……」
バビィナ「ちょっと!」
シプレツィア「じゃあ……。歌います」
シプレツィア、深くお辞儀する。
バビィナとググマグ、拍手する。
(ググマグは物理的に拍手が出来るのか不明ですが頑張って)
シプレツィア(深呼吸して)「……♪すすむことやめないで。
さあ、その声ですべて壊して。
楽園の墓場で落ち合おう。きっと。約束。
勇気をくれた あなたがそこに居るなら。
ずっと、私は見守っているから。
絶望を、解き放つように。
哀しみの詩を奏でて。
夢は、消えないから。
その心にまっすぐでいて……。
★その音で、すべて壊して。
再生はこちらの番。
歌は、消えないから。
その心に与え続けよう。
(ハミング)
君を守るための歌が、
ここにある限り。
私たちが出会った、真冬の日がくるよ!
みどり夢見の木にね命が宿ったあの日♪」
シプレツィア、ヴァドゥーの手を取りに行く。
ヴァドゥー「!」
シプレツィア「♪その痛みはいつか、癒える。
あなたの声、ちゃんとここに。届いてる……。
ずっと、永遠に。
その在処。僕が、私が、君が、守って、いくから♪」
バビィナとググマグ、拍手して。
シプレツィア「……ありがとう」
ヴァドゥー「……何が。まったくもって不完全な歌だな」
シプレツィア「そっか……」
バビィナ「ちょっと!」
シプレツィア「いいんだ! ヴァドゥー。ボク、いいんだ。君に何を言われても。悪なのは変わらない。そうだよね?」
ヴァドゥー「……手を放せ」
シプレツィア「っいやだ!」
ヴァドゥー「シプレツィア?」
シプレツィア「いやだ。もう、これでお終い? もう聞いてくれないの? 一緒に歌ってくれないの!?」
ヴァドゥー「ッ!!」
バビィナ「今の……。同じ」
ググマグ「リーナ……」
ヴァドゥー「もう十分だろう。お前の実力はわかった。せいぜいジュデアとあの青髪人間の前で恥を晒して来い」
シプレツィア「ヴァドゥーと一緒に行くんだもんっ! それは絶対だもん!」
バビィナ「シプレツィア……」
ヴァドゥー「ふん。お前もそうやって、駄々をこねたりするのか。まあ、どう足掻こうが所詮はまだまだガキ……」
シプレツィア「バビィナもググマグも黙ってたけどね……。ボク、ジュデアから聞いたんだよ。リーナを殺したのは本当はボクなんだって! 聞いちゃったんだよ……」
ヴァドゥー「……でまかせだ」
バビィナ「シプレツィア……」
シプレツィア「ボクのように、片翼で生まれたハーピーは、生きることを許されない。なのに。君は見捨ててくれなかった。拾って大切に育ててくれた。なのに。ヴァドゥーはそれでも悪を語るの?」
ヴァドゥー「ああ。語るさ。リーナを殺し、リーナの両目と心臓を、産まれたてのお前に喰わせたのは俺だ!」
ググマグ「……シプレツィア……。あれは……(仕方がなかったんじゃ)」
ヴァドゥー「黙れクソジジイ!! シプレツィア。俺はただあいつを殺したかった。それだけだ!! そしてあいつを殺した近くに転がっていた出来損ないのお前を、便利な召使いに使ってやろうと思い拾って来た。ただそれだけのことだ!」
バビィナ「ヴァドゥー、やめてよ!」
シプレツィア「聞いたんだ。全部! ジュデアから!」
ヴァドゥー「戯言に惑わされているのはお前だシプレツィア!」
シプレツィア「瀕死のボクを助ける為に、ヴァドゥーはリーナを殺したんだそうするしかなかったんだ!! ……ハーピーは、同属を食せばまともになれるんだから! だからこうして翼はちゃんと生え。骨が無かったボクの両足は、しっかり大地に立てる……」
ググマグ「知って欲しく無かった」
シプレツィア「ヴァドゥー、もう嘘はたくさんだよ。ずっと考えてたんだ」
バビィナ「リーナの命は、長くなかったのよ」
シプレツィア「それでも。ちょっとでも長く一緒に居たかったよね?」
ヴァドゥー「お前の為じゃ、ない」
シプレツィア「本当の、親子でも?」
ヴァドゥー(深く溜め息)「……あいつはいつからなんでもかんでも秘密を暴露出来る軽い男になったんだ」
シプレツィア「ボクが、死の城でたまたま、リーナの日記を見付けちゃって……。それでジュデアにしつこく問い詰めたんだ。十日くらい追い回して」
バビィナ「執念……」
シプレツィア「どうして義理の妹なんて……」
ヴァドゥー「似ていないだろ。ちっとも」
シプレツィア「そんなことない! ねえ。バビィナ、ググマグ。鼻と目が、そっくり! だよねっ」
ヴァドゥー「!」
バビィナ「あー、うん。そうね!」 ググマグ「おお、おお」
シプレツィア「ヴァドゥー。やさしい嘘のつもりだったの? ボクを守る為に」
ヴァドゥー「違う」
シプレツィア「いいよ。勝手に、信じてるから。っ! 君の歌が聞きたいから! ……♪今、滅びる、この世界に……輝き、溢れる♪……」(歌い続ける)
ヴァドゥー「っ……」
シプレツィア「泣かないで。ヴァドゥー」
ヴァドゥー「……っ」
シプレツィア「ボク、本当はヴァドゥーの口から聞きたかった。でも君は……。ボクを生かす為に……リーナを」
ヴァドゥー「お前の命には……代えられない。もって数か月の身体なら。有効利用したほうがいいに決まっている!」
シプレツィア「そうじゃないよ。そうじゃない……。なんでそんな言い方ばっかりす――」
ヴァドゥー「リーナを殺せば、お前は確実に生き長らえた! そういう選択をしただけだ!!」
シプレツィア「!? 好きな人をなんとか助けようとかは思わなかったの!? 都会に行けば、医者なんていくらでも居るじゃんか!」
バビィナ「シプレツィア! もう、やめてっ」
シプレツィア「大切なことなんだ! 知らなくちゃいけないことのはずだよ!」
バビィナ「ヴァドゥーの首の傷は、あなたを救いリーナを殺した罪を償おうとしてヴァドゥー自らっ……!!」
ヴァドゥー「バビィナ!!!! ……黙れ。お前の首も切ってやろうか?」
バビィナ「……フェアじゃない」
ヴァドゥー「構わん」
バビィナ「こんなのはリーナが望まないと思う」
ヴァドゥー「あいつは関係ない!!」
ググマグ「種族の違いを未だ恥じておるのか?」
ヴァドゥー「違う……俺は……」
シプレツィア「ヴァドゥー。君だけが背負うなんておかしい」
ヴァドゥー「子供がそんなこと考えるな」
シプレツィア「子供扱いしないでよ! もう就職するんだから!」
ググマグ「シプレツィア、やめいっ」
シプレツィア「離れたくないんだ! 大切な人とは!」
バビィナ、ググマグ、ヴァドゥー、はっとして。
バビィナ「……ヴァドゥー」
ヴァドゥー「……」
シプレツィア「ごめん。わがまま、ばっかり」
バビィナ「これは、両成敗よ」
ググマグ「家族なんじゃから」
シプレツィア「ヴァドゥー、ねえ、こっちに来てっ」
ヴァドゥー「お、おいっ……引っ張るな!」
シプレツィア「座ってっ」
ヴァドゥー「っ。おい」
シプレツィア「バビィナとググマグも、来てっ! ソファに一緒に座ってっ」
バビィナ「んー?」
ググマグ「おお、おお」
シプレツィア「ヴァドゥーは、端っこね!」
ヴァドゥー「シプレツィア、おいっ」
シプレツィア「膝枕してっ! お母さんのかわりっ!」
ヴァドゥー「はあ? お、おい」
バビィナ「あらあらあ。ふふふっ。ヴァドゥーママ、大変ねえ」
ヴァドゥー「ふざけるな。どけ」
シプレツィア「やだもん」
ググマグ「どれ。もう少しつめられんかのう」
バビィナ「狭いわよっ! あははははっ」
ヴァドゥー「ぐうううっ……! くそっ」
シプレツィア(寝息を立て始める)「……ぅ」
バビィナ「ん?」
ヴァドゥー「!?」
バビィナ「シプレツィア、寝ちゃったの?」
シプレツィア「……すぅ……」
ヴァドゥー「ありえん」
バビィナ「あはははははっ」
ググマグ「最近は寝ずに作曲しとったからのう」
バビィナ「じゃあ歌姫様が眠っちゃったところですし。今度は帝王に子守唄でもリクエストしちゃおうかな~?」
ググマグ「おお。よいな。きらきら星、得意じゃろ? ほれ歌えい」
ヴァドゥー「ふざけるな。誰がっ……!」
シプレツィア「むにゃ……」
バビィナ&ググマグ「シィーッ」
ヴァドゥー「っ!」
バビィナ(ゆっくりと歌いだす)「ふふふっ……♪Twinkle,twinkle,little star!
How I wonder what you are!♪」
ググマグ「♪Up,above the world,so high,
Like a diamond in the sky♪」
ヴァドゥー「……♪Twinkle,twinkle,little star.
How I wonder what you are♪」
ググマグとバビィナ、あくびをし、眠っていく。
バビィナ「おやすみ……」 ググマグ「ふぁぁ……」
ヴァドゥー(シプレツィアを撫でて)「……♪Twinkle,twinkle,little star.
How I wonder what you are.
Up,above the world,so high,
Like a diamond in the sky.
Twinkle,twinkle,little star.
How I wonder what you are♪」
三人の寝息が聞こえる。
ヴァドゥー「……シプレツィア」
シプレツィア「……」
ヴァドゥー「俺も行こう。この命は……お前と共にある」
シプレツィア「♪きらきらひかる おそらのほしよ
まばたきしては みんなをみてる
きらきらひかる おそらのほしよ♪」
ヴァドゥー「シプレツィア役、(CAST)。ヴァドゥー役、(CAST)」
シプレツィア「♪きらきらひかる おそらのほしよ
みんなのうたが とどくといいな
きらきらひかる おそらのほしよ♪」
ヴァドゥー「バビィナ役、(CAST)。ググマグ役、(CAST)」
ヴァドゥー「♪きらきらひかる おそらのほしよ♪」
シプレツィア「♪まばたきしては みんなをみてる♪」
ヴァドゥー&シプレツィア「♪きらきらひかる おそらのほしよ♪」
シプレツィア「ありがとう。ヴァドゥー」
バビィナ&ググマグ&ヴァドゥー「おやすみ」
シプレツィア「おやすみなさい」
END
『LAVN挿入歌』
すすむことやめないで。
さあ、その声で すべて壊して。
楽園の墓場で落ち合おう。きっと。約束。
「勇気をくれた あなたがそこに居るなら
ずっと 私は見守っているから。
絶望を 解き放つように
哀しみの詩を奏でて。
夢は 消えないから
その心にまっすぐでいて……」
★その音で すべて壊して
再生はこちらの番。
歌は、消えないから。
その心に与え続けよう。
君を守るための歌が
ここにある限り。
私たちが出会った 真冬の日がくるよ!
みどり夢見の木にね命が宿ったあの日。
その痛みはいつか、癒える。
あなたの声、ちゃんとここに。届いてる。
ずっと 永遠に。
その在処 僕が私が君が 守って いくから。
誰かの心
爪跡を残させてみせる。
手を差し伸べたら
ぎゅっと握って
にっと笑って。
それだけでいいから。
■先書き(2014年2月1日 6:54)
全員の名前を覚える頃には、書き終わっていると思います。
愛がわからないあなたへ。この作品を贈ります。
いつも笑顔をくれるあなたに。この作品を贈ります。
迷って、沈んでいるあなた。この作品を贈ります。
最近知り合った方に、歌を作ろうとして。作曲に行き詰った為、この作品を書き始めました。
ああ、お腹空いた! ご飯食べると人って元気になるなーと、普通のことを普通に実感して。
風邪のせいで死んでいる喉をズボラに守りながら。本当に雑です。
最愛のPCを派手にデスクから落とし、負傷させ。コード絡まってイライラしてた。
風邪ひいてるのにプール行って泳ぎまくって筋肉痛です。ストレス発散!
単純な馬鹿です。でも、なんとか生きてます。
声劇用の台本を書く時に、いつも。
なるべくありきたりで、わかりやすく、美しく、人間らしく、七菜らしさを入れる、ことを念頭に置いて書いています。
ありきたりでないものを書けるんなら、プロになってます。
まあでも私、趣味ではお金を取りたくない人間なので。
歌や文章ではお金欲しくないですが。
ありきたりで普通なもの沢山書いておかないと。原点に帰ってこれないし。普通の人に読んで貰えない。
いきなり抽象的なものばっか書き始めても、役者さんも意味がわからないだろう。
わかりやすく、美しい文章を書かないと、恥ずかしい。大人なんだから。ちゃんとした文章を常に書くのは常識。文章力がどうこうは置いておいて下さいごめんなさい。
やっぱり人間ドラマが好き。人情が好き。愛を描くことをやめたくない。人と人が繋がっているから。人は人で居られる。
熱量とか、心にぐっとくるもの。沢山書きたい。あんまり、後書きだのなんだのというのは、あまり書くのが好きではないのですが。
時間が勿体ないんですよね。やっぱり芸術家なら、作品の中で訴えたいことを出せばいい。
さあ。だから、うだうだ言ってないで書きます。どうぞ、お楽しみ下さい。
悪の正義と、悪の愛。演者さんの力を、信じます。
……歌完成してなかった。やばい!
七菜かずは
後書き。
お疲れ様でした。この度は、わたくしの台本を読んでいただき、ありがとうございました。
歌を作り、作詞に苦戦し、作曲に死ぬ気で取り掛かり。久々に文章、物語のお先真っ暗な展開と書き上げられない気分満タンで。かなりこの話は苦戦をしました久々に。沢山の役者の方々にも、助けられました。本当にありがとうございました。りん、ドイト、ユウさん、らん、りゆなちゃん、敏昭さん、みなさんにご協力して頂いて、この作品をきちんと書き上げられる道が切り開けました。
いつもなら30分台本を半日から三時間くらいで書き上げられるのに、一週間? 二週間はかかりました。ね。私作曲向いてないわ!
シプレツィアも、バビィナも、ググマグも、ヴァドゥーも、今回はキャラクター全員が、私の執筆に協力的な子たちではありませんでした。いつもキャラクターさんたちに引っ張られて、自由に作品を書いてきましたが、今回は、キャラクターの力だけに頼らず、私がずっと書きたかった負の台本に近付くきっかけになった気がします。これからも、自分を越える為の作品を、書いていきます。結局は、いつもラストを書き上げられない私は、シプレツィアの意地と愛に救われて。書けたんだと思います。
作詞について。あんまり、絶望的な言葉は入れたがらないんですが。今回はどうしても、「破壊」みたいな言葉を、入れたかったんです。なぜですかね。やっぱり、渡したかった人、送りたかった人の、イメージが、壊す~って感じなんですね。う~ん。
先書きに、ありきたりなものを書きたい、と書きましたが。あれは嘘です。七菜の九割は嘘で出来てます。ヴァドゥーだって嘘をついていたじゃない。いいじゃない。こんなにこのキャラクターたちに、私が魅了されるなんて。書き始める時は思ってもみませんでした。これも、出会いの形な気がします。ま、私嘘つきなんで! これも全て嘘かも知れませんが!
十八の時、病気で一時的に声を失った私が。歌手を諦めた私が。神を恨んだ私が。もう二度と歌は歌わない、歌を供養して生きて行こうと決めた私が。とある人に出会って、また再び歌と向き合うようになりました。だから。こういった台本も書くようになった。最近までこの古い事実と記憶をなくしていた私が、この苦痛な事実を軽々と他人に話せるのは、過去の私は「自分」ではないからです。そういう意味で、私は欠陥人間なんだなぁーと嬉しく実感出来ます。ああ、息が出来て幸せ。
愛を描くことは、やめません。
誰かの為にまた、私も歌おうとしています。
たくさんの勇気をくれた、あなたに。この本を贈ります。
2014年2月15日 七菜かずは




