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転移

1941年11月2日


日本は建国以来の二度目の危機に直面していた。その出来事は誰もが知らない間に起こった。最初に気づいたのは為替関連の人たちだった。まず、海外との連絡が一切取れなくなったこと。そして電波の途絶。夜が明けるころには日本国中が騒然となった。夜が明けてからはさらに混乱が広がることとなった。携帯電話の使用不能・日本にいた外国人の消息不明・外国にいた日本人の出現・極東戦争での死者や使用された軍事兵器が開戦前までの状態で復活。

そしてさらに、それまで当たり前のように使えていた携帯電話や車載ナビのGPS機能が使用できなくなっていた。それだけではなく、携帯電話による海外への連絡が不可能となっていたのである。そうして、一日が過ぎる頃には国内での通信は一部問題があるとしても確保されていることが判明する。しかし、海外との連絡は一切不可能であった。


この非常事態において、政府は原因を調べ、一つの結果が浮かび上がった。それは、過去の世界それも第二次世界大戦期に転移したことがわかった。このことを決定づける大きな要因がつい2時間前に海上保安庁の巡視船からの報告だった。



〜みずほ型巡視船〜

「艦長。前方から大型の艦艇群が接近してきております。」


「なに!?中国か?韓国か?どこの国の船だ?」


「はい、今、確認が取れました。前方の大型艦艇群は大日本帝国海軍の艦隊とのことであります。監視員の目視でも空母『赤城』が確認されました。そして相手方から我々の所属を聞いてきています。どうしますか?」


「なに?大日本帝国海軍だと?私にも確認させろ!」

そういって艦長は、双眼鏡で前方の艦艇群を見たがまぎれもなく空母『赤城』さらには、第二次世界大戦時に使用されていた艦艇がいくつも確認できた。


「あれは・・・『赤城』だな。間違いない。・・・・すぐに本国へ連絡しろ!!!」


「了解しました!」

この報告によって、本国では過去転移ということに決定づけた。政府は、この決定から、すばやく動き、まず海上自衛隊隷下にあったすべての対潜哨戒機群が発進し、日本周辺の調査、さらには航空自衛隊偵察部隊を発進させ、当時、日本周辺および近隣諸国の偵察を命じている。そのあとに陸上自衛隊と警察に国内の現状調査が命じられていたやしかし、この時、彼らは衛星を利用したすべての機能が使えなくなっている事を知ることになった。


「艦長。本国からの通信です。本国政府では、日本が過去の世界にタイムスリップしたということを結論づけたとのことです。年号で言うと1941年11月2日辺りだそうです。接触の許可が下りています。」


「やはり・・・了解した。前方の艦隊はこれから真珠湾攻撃を行う艦隊だ。接触を図る!所属を電文した後、期間を停止するよう願い出ろ!」


「はっ!了解しました。」


〜空母「赤城」〜

「艦長!前方の艦艇から電文です!日本国、海上保安庁所属の巡視艇「みずほ」とのことです!乗船を求めております!」


「南雲司令官。いかがなさいますか?一応日章旗は掲げているようですが・・・あのような船は見たことがありません。」


「(うーむ。まずは話を聞いてみるか。)全船に通達!機関停止!乗船を許可する!・・・参謀長、君も一緒に来てくれ。」

それから、空母「赤城」甲板で、

空母「赤城」

司令長官:南雲忠一中将、参謀長:草鹿龍之介少将、山口多聞少将、原忠一少将、三川軍一中将、大森仙太郎少将

巡視艇「みずほ」

艦長:桜井総一郎、隊員:宮本淳

以上8名での会談が行われた。


この時の会談で、大日本帝国側は、この戦争の結末を知ることになり、さらに未来に起きる悲劇も知ることになった。翌日、再度会談を開くことになった


〜翌日〜

昨日に引き続き、甲板には、

司令長官:南雲忠一中将、参謀長:草鹿龍之介少将

巡視艇「みずほ」

艦長:山田総一郎、隊員:宮本淳

以上4名での会談が行われた。

「では、我々は、このまま真珠湾攻撃を続行してもよろしいのですか?」


「はい。こちら側から、真珠湾攻撃の詳細な情報を提供します。」


「ありがとうございます。日本国はこれからどうするのでしょうか?」


「はい。本国の政府によると、これから大日本帝国との交渉し、軍の再編をしてから本格的に戦争に突入していく形となっていきます。」


「なるほど、わかりました。ありがとうございます。」


〜日本〜

日本政府により、国民に知らされたのは、地球の過去の時代へのタイムスリップというものであった。そのとき公開されたのが航空写真であった。航空機による写真ではあったが、日本の周辺は明瞭に写されていた。それは国民だけではなく、政府にすら衝撃的なものであった。少なくとも移転前とは異なる世界であることは間違いなかった。そこに写っていたのは、以前の日本国周辺ではなく、簡単に言えば日本列島が2つあるのだ。大日本帝国の約400km東の位置に日本があるのだ。

そして、さらに、大日本帝国とはその日のうちに接触し、交渉の末、大日本帝国と改名し、正式に合併することが決まった、ことが知らされた。


その後、日本政府は、最後の仕事として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に気象衛星・通信衛星・偵察衛星の打ち上げを依頼した。すでにこの時には宇宙に多数存在する筈の各種人工衛星がない事、自衛隊をはじめ警察、海上保安庁といった電波監視機能を持つ組織からの電波状況が報告されており、ある程度の推測情報が流されていたことも影響していたと考えられている。しかし、時が経るにつれて経済的なことに関連してくると、混乱はますます大きくなり、治安の悪化を招く事態へと進むことになった。

一つ救われたのは、石油問題だった。日本は元々資源の無い国であり、いまだに不足している資源は数え切れぬほどあったが、石油だけは人造石油技術を確立していたため通常通り石油が供給されていた。


さらに日本政府は、渡航先で問題が生じる可能性が高いと思われ、いまだに国外への渡航許可は出さないでいた。可能なのは大日本帝国のみであった。


いずれにしても、タイムスリップ前には日本の領土とされていた地域はそのまま現れていることに安堵したのは政府であった。さらに喜ばしいことは、大戦前までの軍力に戻っていたことだった。

しかし、問題はまだある、それは経済だ。

日本の経済は貿易によって成り立っていたのである。それが完全に途絶えたといってよかった。そうした経済の冷え込みが深刻化し、政府はその対応を迫られることとなった。そうした中で政府が打ち出したのが、内需拡大と大日本帝国への経済進出であった。当面、日本の交易相手となるのは大日本帝国やその友好国といえたかもしれない。


そして、それから5日後、通信衛星と放送衛星、偵察衛星が相次いで打ち上げられ、通信環境(携帯電話が以前のように使用できるようになったことも含めて)は一気に改善された。さらに、偵察衛星による情報収集の結果は公表されることはなかった。




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