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USA耳の少年

今回はフロストが頑張ります。ラスネは一瞬映ります。


彼の宿命はいかに!?

「お~い。ラスネ~。どこ行った~~ぁ」

時を同じくしてフロストは『ネオ・カイル』の中央北部を歩いていた。

燻ぶった焼死体もところどころに見られるが小数な為、大多数はシェルターに逃げる事が出来たと予想される。

本来、モンスター対策が出来ている都市での避難所は最後の手段であることから、その防衛手段は多いとは思えない。ラスネイドが討伐に出ているからと言って安心は出来ないだろう。

そこまでをフロストはパパッと0.8秒で弾き出し、龍種を駆除しながら住民が避難したシェルターを探すという結論に至った。…結果ラスネイドは二の次である。

周囲を無差別に焼き払う龍種との連戦の中、運良く共通語で書かれた掲示板を見つけ、北区にあることが判明したのだが、それ以降はこれといった情報も手に入らず袋小路に陥ってしまっていた。

ところでラスネイドと別れてから遠くの方から微かな魔力の気配を感じる。どうやら監視されているらしい。その為奇襲に備え「クリア・カーテン」を解く訳にもいかず、魔法を連発出来ない状況にあった。

引き続き何か別の手掛かりが無いか探し歩いていると曲がり角から人間が現れた。長い耳から遠くからでも兎人だと言う事がわかる。だが……

怪し過ぎる。こんな危険な状況の中、ピョンピョンとスキップしながら歩いているのだ。いや、現状がこうでなくても怪しい。

しかし、貴重な情報源だ。恐らく何か知っているだろう。共通語を話せるならの話だが。

フロストは彼に近づくと声をかけた。

「ちわ~。ちょっとお尋ねしたいのですが~(やはり物凄く怪しい。顔が)」

「はいはい。何でしょう?(うわ~。変な人来ちゃったよ……)」

「ここの住民が逃げた避難所の場所が知りたいんですよ~(さぁどうくるか…?)」

「あ~、その場所の書かれている紙を無くしてしまって。僕も探しているんですよ(早く行ってくれないかな……)」

「ほう。そうだったら話は早いですな。私と一緒に探しましょうか~(仕方が無いがここは…)」

「あ、ああ。それは良いですね~(マジかー!!)」

 ひょんな事から共同作業を行うことになったのだった。



「さて~、ここからどうしようか~?」

 しばらくの間、二人で龍の駆除をしながらの捜索を続けたが、「ネオ・カイル」は広大であり、全く見当がつかなかった。

 次第に燃え尽きていく町と紅の空を見ていると、心に奇怪な物と美しい物を同時に見たような、そんな感覚が滑り込んでくる。

 そしてそう言った感動の類をラスネイドがとても好む事も熟知していた。

「ところで、君の名前は何と言うんだい?」

「ラビットス。ラビットス・コーネリアさ」

「そうかうさ公。私の名はフロスト。宜しくお願い申し上げるよ」

「よろしくフロスト。後、僕の名前はうさ公じゃないから」

 その時、突然甲高い女性の悲鳴が響く。

「!?」

「こんな状況でコンサートか?」

「いやそれは無いでしょ」

 二人が声の方向へ駆けつけると、十字路で子供を抱えた女性が十数体の龍の幼体に追われていた。

「よしうさ公。彼女を助けようじゃぁないか」

「あの数は流石に無理でしょ」

「はぁ?何を言っているんだね君は」

 そこでフロストは女性の方を見た。自分達との距離は遠く、女性と龍の距離は一メートル程しかなかった。悪魔の手の瞬間移動を用いても間に合うかどうかわからない。

 フロストが諦めかけたその瞬間に出来事が起こった。

 女性の足元に巨大な魔法陣が現れ、激しい突風が龍達を高く巻き上げた。ラスネイドの付加魔法『風護』だった。

 …恐らくあの女性は彼に会ったのだろう。

 自分がその手で守れないと解るとこれだ。多量の魔力を使ってまでこんな事をする、友のお人よし過ぎさは呆れてしまう程だ。

 言わずもがなそんな所が彼の強さの一因となっているとフロストは見る。

 フロストは反射的に魔法を唱えていた。空中のみに展開できる高威力広範囲魔法「氷の空」

煌めく冷気が強固な龍種の体を、細胞から凍りつかせる。続いて連続詠唱。凍りついた物を魔力で砕く「氷壊?」

 堅固だが魔素の吸収量に乏しい龍達は、フロストの魔力に耐えきれず、崩れ去った。

 残った敵は、地上で魔法を間逃れた5~6体。これを始末すれば束の間の安全が訪れるだろう。

 しかし、長時間持続する「クリア・カーテン」と数々の連戦、そして二つの強力な魔法を使ったフロストの魔力はのちの戦いへ影響が心配される程に擦り減っていた。しばらく魔法を打ち止めるしかない。

「ひゃー!!凄いねー。フロストの魔法は」

「君も見てないで手伝ってくれないかい?」

「ぐふふ、わかったわかった」

 ラビットスは両手を前に突き出すと、双剣『白雪』と『黒尾』を召喚した。どちらの剣からも強い魔力を感じる。…いや、この魔力と付加魔法はどこかで感じた覚えがある……?

 刀を召喚したフロストの思考に数瞬の空きが入り刀を取り落とす。突然の軽いデジャブに気を奪われてしまったらしい。慌てて掴み損ねた刀を拾い上げる。

そして双剣を召喚したラビットスはそのまま「タッチバーン」を詠唱し付加した。対象の物に火炎の属性を付加する物だが、龍種の大半はこの耐性に優れている。どうやら魔物の肉質についての知識は浅いようだ。

「君。無駄な魔力の消費は止めた方がいいんじゃないかい?」

「へ?面白ければいいでしょ」

「…その件に関しては私も同意するよ」

 ラビットスは双剣を構え魔物に斬りかかる。

 その後二人で龍の相手をし、双剣を使ったラビットスの奮闘により、数分とかからなかった。



龍の討伐が終わったフロストとラビットスは女性の安否を確かめることにした。子供を抱えた女性は電柱によりかかって怯えていた為、二人が行って話しかける。

「ちわ~。おケガはありませんか~?」

「そのあいさつ止めなって…かなり怪しいから……」

 女性は疲労でやつれた顔をしていたが、その目からは生きようという意思が強く汲み取れる。

「大丈夫ですか? ……えーっと、立てます?」

「ええ…どなたか存じませんが……本当にありがとうございます…」

「いえいえ。これから何処へ?」

「この町の避難用シェルターに………」

 どうやらかなり幸運な人助けを自分達はしたようだ。この女性に案内を取り付けられれば……。

 そこでフロストがラビットスを強く引っ張った。

「この女性は何と言っているんだね?」

「え!? 今さらかよ~!?」

「私は礎人の言語を勉強中なんだ。軽く意味がわからん」

「………ちょっと待ってて」

 そうしてラビットスは女性に向き直る。

「よかったらそのシェルターまで案内してもらいたいのですが……」

「あっ、そうですか! もちろんいいですよ!」

 よし、成功。……たまには人助けもしてみるもんだな。

「ありがとうございます! ……フロスト、この女性がシェルターまで案内してくれるってさ」

「おお! やったなうさ公!!」

 フロストが喜びいさんでラビットスの背中をバシバシ叩く。

「まーね。後、僕の名前はうさ公じゃないから」

 そう注意したがフロストの様子は明らかに聞いていなかった。



広大な自然公園の内部。人口の統一感と自然の壮大感が巧みに組まれて設計されたこの公園は、不思議な雰囲気を醸し出していた。

ラスネイドはバイクから降り立つ。

目の前には紅の空の反射を受けて紅に輝く湖。

 そして巨大な龍「ヴェニラ」の母体。青く幻想的な鱗はもはや人間の手では想像する事が出来ない美とパワーを兼ねていた。

 今はこちらに気づく気配は無く、一心に水浴びをしている。

 生命として体を清く保とうとしている様子は、確かな一つの命を感じさせた。

 同時にラスネイドは考える。

 あらゆる生命は同様の土地や国に住んでいながら、その本能や生命の価値観の違いから、互いに争い、血を流し、強者が最後に勝ち残る。

 そんな悲しい生命達に悲しみを覚えていた。いや、そうでなければいけないのだ。これが避けられぬ魂の摂理。変える事は許されない。

「悪い……な」

 そう呟いて、獲物を握り締めた。



「ここか~、かの安寧の地は」

「無理に難しい言葉を使うのはやめたまえ」

「フロストもその学者気取りの言葉使い止めたらいいじゃないか」

「これは素なのだよ……」

 二人は女性の協力を得、とうとう避難用シェルターへ到着する事が出来た。

 ガラス張りの建物が立ち並ぶ町の中、その建物は教会の様な出で立ちをしており、その扉は見るからに堅固であった。何とも斬新なチョイスである。

 そして中からは微かに人々の喧騒が聞こえた。

「さぁ……お邪魔しようじゃぁないか」

 フロストが歩き始めた時である。武器が召喚される気配がし、次の瞬間に「クリア・カーテン」が背後に密集し、何者かの攻撃を防いだ。

「!?」

 振り向くと、双剣を構えたラビットスが驚いた様子で立っていた。魔法陣の出現も無しに未知の魔法が発動したせいだろう。しかしなぜだ?ラビットスが自分を攻撃する理由が見当たらない。

 通常の魔法発現時間は平均で五秒から十秒。そして発動の際は必ず魔法陣が現れる。しかしフロストの開発した「クリア・カーテン」は詠唱が完了した時点で魔法陣が現れそれから約五分間、被撃時に魔力が集中しても魔法陣は現れない。念の為ラビットスにはばれない様、魔法をかけ直していてバレはしなかったが、そう言った性質を持っていた。それが吉と出たらしい。

 ただし……被撃時の魔力の密集は、魔力を大きく削る。今の魔力残量は、量と回復速度に優れるフロストでも極端に擦り減っていた。

 今の魔力残量では決定打を与えうる魔法を三~四回程度しか使えないだろう。

 危険な状況の中、フロストは冷静になっていた。そしてどうにか時間を稼ぎ、魔力が一定量回復するのを待つのが得策だと判断する。

「何故だ?何故私を攻撃した?その理由をお聞かせ願いたいのだが」

 ラビットスはしばらく無言で見つめていたが、考えが纏まったのか口を開く。

「…いや、ごめんね~。邪魔者は先に殺しておいた方がいいと思って」

「邪魔者……?」

「僕はある人物とその関係者を全て抹殺するように命令を受けているんだ。だから先に強敵である君を殺して、それから仕事を始めるとするよ~」

どうやら何かしらの組織の人間なのだろう先ほどの言葉から殺人を生業としている人間では無いとフロストは推測立てる。

「ふむ。だったら何故もっと前の時点で襲って来なかったんだい?」

「ぐふふ……シェルターの場所が書かれている紙を無くしたってのは本当なんだ」

 そこでラビットスは再び黙り込む。その俯きかけた瞳からは先程とは違った優しい色が見えていた。

「ねぇ、ここはおとなしくどっか行ってくれないかな…?」

「………?」

「せっかく友人になれたんだ。僕も友達を手に掛けるのは辛い。だから……さ?」

「断るよ」

……大親友が命を賭ける物に力を貸す。それが私の意思。

「決断が早いね……それじゃあ行くよ!」


始まります。うさバト●ーFINAL!!!

筋肉兎は登場しますがイメージとは違いますね。

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