8月16日 送り火
8月16日 送り火
あのあとは眠れずひたすら彼岸花について調べていた。
自分の過去も明らかになってくる。
書斎からリビングに戻った時には
すでに太陽が昇っていた。
「陽介さん、おはよう眠れなかったの?」
月子はどうやらもう起きていたようだ
「おはよう月子」
微笑みを向けてくれる。
かなうことならばずっと月子とともに居たかった。
「月子、今日は送り火の日だろ?夜、川へ行こうか」
「え、えぇわかったわ」
月子はいきなりのことに戸惑いながらも了承する。
「夜になるまでまだ時間があるし、すこし出かけようか」
最後の日だということを悟ってしまったからだろうか。
気分は少し沈んでいた。
月子も俺のそんな様子に気づいたのか
微笑みかけながら俺に話しかける
「いいの陽介さん、私ここにいたいわ。」
また月子に気を使わせてしまった
俺がすまないという前に月子は手で制した
「謝っちゃダメ、大丈夫よ」
「ありがとな、月子」
月子には本当お世話になってばっかりだ。
また一人で生きていけるのだろうか。
黙っていても時は過ぎる
だったら楽しんだもの勝ちではないか
生きている時月子がよく言っていた言葉だ
「楽しんだもの勝ち、か」
月子に聞こえないようにつぶやく
それでも月子は美しく微笑んでいた。