8月15日
8月15日
二人だけで結婚式を挙げようといった日からもう夜が明けた
高価な物でも何でもない。
ただ月子はそれでもいいと言ってくれた。
そういえば昨日は満月がきれいに輝いていた。
この時期には満月も季節に合っている。
最近どうも理屈っぽくなってしまっているらしい。
考え事をすることが多くなった。
そんなことを考えていると月子がクローゼットにあった
一番の勝負服とやらを着てくる。
その姿は若いころの月子となんら変わりがなく
美しいままだった。
おどけたような表情見せつつすこし恥ずかしげな表情さえ浮かべながら
俺に似合っているかどうかを聞いてくる
「あぁ、似合ってるよ昔と変わらない、君はきれいだよ」
白く透き通った頬を少し赤く染める月子は
本当に何も変わっていなかった。
変わってしまったのはおれのほうかもしれない。
時間はあの時のままで止まっている。
針は動かない。ずっとずっと止まっていた
「陽介さんは、何も変わらないわね」
不思議だ、俺の考えていることを読み取ったのだろうか
「…そうか?」
「えぇ、たとえば…気がつけば考え事してて何も聞いてないところとかね」
いたずらっぽい顔を浮かべからかってくる。
「…すまない」
「…陽介さん、おとといからずっとあやまってばっかりね」
「そうだったか?す、すまない」
「ほら、また。自信持って。私はあなたの良さ知っているから」
「月子…ありがとう」
心からの感謝の言葉だった。
「ほら、結婚式するんでしょ?早く始めましょう」
もうずっと二人の時計は同時には動かない
しかし、時計の秒針は止まることを知らないのだった。