誰がために鐘は鳴る
あの後オレは由美子への罪悪感と睡眠不足のだるさで学校をサボった
ありがたい事に地元の友達も学校をサボっていたのでそいつの家で喋ったりテレビを見たりとゴロゴロ一日を過ごした
その地元の友達とオレは別の高校に進学したのだが何かと仲も良く大抵は地元でつるんでいる
由美子の事で色々と悩んでいるとそいつ持ち前の鋭い洞察力で見抜かれた
まあ誰かに聞いて欲しかったから正直助かったっていっちゃあ助かったんだけど
そして今は学校に向かって歩いている途中
出発前ちょっとだらだらしていたら案外余裕の無い時間になっていた
大智はもうすでに駐輪場を出発しているようで一人虚しく登校中
「あまり気負うな………か」
そうは言われても実際そうもいかないのが難しい所なんだよな…
謎に今日は遅刻したくないというのと色々なモヤモヤを断ち切るために残りの距離を走って行くことにした
ちょっと走って同じ高校の生徒達を追い抜かしていると見慣れた背中を捉えた
「はぁ、はぁ……うーっす!」
「おお間にあったんや」
走り疲れてるオレを見て大智が持っていたコーラを手渡してくれた
「ぷはーっ!!オレの原チャリ糞速いの知ってるやろ?」
「うん、こちゃんやん」
「しょーもね」
とか言いながら真面目な顔でしょーもない事を言う大智を見てると爆笑してしまった
「中野となんかあったんやろ?昨日中野もお前休んでたし。まあお前の場合は普段からサボりまくりやからわからんけど…中野が休む事ってほとんどないし。しかも昨日テストやで!?」
唐突に由美子の話が出て同様してしまった
そこを大智がぐいぐい突いてくるので事の経緯を詳しく話したてかテストやったんや
初耳ー(・ω・`)
「やっぱり…てか中野が少々の風邪とか熱あっても学校来る理由知ってるか?」
「んー興味無いかな(笑)」
「あららー、そやから潤はうんこちゃんやねん。そんなんやったら望ちゃんにフられるのもしゃーないわ」
「ちょいちょいちょいっ!!!!」
萎えー
望萎えー
「お前よー学校サボるやん?だから中野は自分が休んだりサボってお前に会える確率がもっと下がるのが嫌やから毎日学校来てるねん」
へー(・ω・`)
ちょっと感動したかも
てか学校は毎日勉強するために行くのが当たり前やろみたいなん思った方…
それが正しいよ
「そうやったんか…まあもうオレには関係無いからいいよ。充分反省したし、今日からまた真っ白に生きます」
「お前絶対良い死に方しやんわ。あとお前真っ黒やから」
…………今は真っ白だーい!!
そんなこんなで重たい話をしながらもホームルームに滑り込みで間に合ったのだがきのこ担任が実に興味深い話をしだした
「えーとねえ、テスト中だけど今日からうちのクラスに転校生が来ます」
「おいおいマジかよ!!」
「キャー!イケメンやったらどうしよ??」
「おー、モンハンやってるかなあ?」
クラスのみんなが騒ぎ出した
ほうほう、転校生か(・ω・`)
べっぴんさんやったらええのにな
「おいおい神倉!!転校生だってよ。女やったらいいのにな♪てか女来い♪(笑)」
クラスの友達?が嬉しそうににたにたしながら話しかけてきた
いやいや、お前確か女居たよな?
貴様の用なB級ヤンチャもどき野郎にオレのべっぴんは渡さねぇ
「おう、ありゃ絶対後々オレに惚れちゃう超べっぴんさんに違いねぇ。てかお前は彼女といちゃいちゃして性病かかって死ね」
「いや、性病て…。オレの彼女健康やから」
「あんな不健全性欲MAXな汚いギャルがか??」
しまった心の声が…
「あーん?てめぇさっきから調「やーかましい~!!さあ入っといで」」
汚ギャルの彼氏の言葉を担任が遮って教室の扉を開けた
クラスの面々は一瞬で静まって扉の向こうに居るであろう転校生の登場を期待した
………男かよ(´・ω・`)
「うわー、なんか残念な感じ」
「ぶっさいく…しかもなんかインキャラ感MAX」
「ありゃー、モンハン一人でやり込むタイプやなあ…」
さっきまで期待されていた転校生は登場したとたん周りから各々不服を漏らされた
…なんか気の毒やな
「オレに惚れるって??お前あんな陰気・ジミ男に惚れられちゃうわけ??あらまーそれは羨ましいこと」
汚ギャルの彼氏がオレにさっきのお返しと言わんばかりに嫌みを言ってきた
「マジかよ…」
転校生は蚊の鳴くようなか細い声で自己紹介(といっても担任の補助のお陰で名前を言っただけだが)をした
名前は森本宏明身長は163cmくらいかな?男の中では小さい方でひょろっとしている
目にかかっている前髪が陰気さをより酷くしてるって感じかな
まあいいや
男やし興味全然わかへん…
「じゃあ席は神倉の後ろに用意してるから適当にすわっちゃってくだーさい。うっとおしかったらどついてやっていいですからね」
転校生はコクっと頷くとこちらに歩いてきた。すれ違う前に転校生がオレの方を見て微笑んでいるように見えて少し寒気がした
不気味なヤツ…
まあ転校生には申し訳ないが男やし興味深いキャラでも無さそうやからまあ放置しておやすみといこうか
4時間目の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた
どうやら休み時間もぶっ通しでずっと寝ていたらしい
ぐっすり眠れたおかげで頭はぼーとするが眠気は全くといっていいほど無い
てかこんなガッツリ寝てるヤツ居るのに起こさん教師共ってどないよ?
こっちとしてはありがたい限りだが
ん??
2時間目までは昨日に引き続きテストとか誰かが言ってた気が…
よし気のせいだ
周りのヤツらは「やっと起きたよコイツ…」的な目でオレをちらっと見るだけだった
まあ席の周りに友達と呼べる程の人間はいないわけだが…
4時間目はどうやら化学のようだ
なんだか物々しい薬品が試験管に入って教卓の上に並べられている
実験でもするのだろうな
たかが化学の実験なんかに興味がわく訳もなく暇なのでケータイを開いた
何気なく新着メール問い合わせを押してみた
[新着メールはありません]
寂しいなオレ…
サイトからも見離されたぜ
いっそのことこんな鳴らないケータイ解約してやろうか??
困り泣き叫べa○、そんで倒産しやがれ
そういやそろそろいつもなら由美子が「潤ちゃん!!一緒に昼ごはんたべまそ♪」とか送ってくる時間やな
まあ来るわけないよな
別に何も求めてないし
そんな事考えながらケータイゲームの麻雀に没頭しだした時に誰かに声をかけられた
「ねえねえ」
儚く消え入りそうなか細い声
周りを見ても寝てるか真剣に授業を受けているヤツしか見あたらない
「ねぇってば」
今度は耳元で聞こえて不快感から身震いした
……後ろの転校生だ
「…なんだよ」
見た目からやる事から何かにつけて不気味なヤツだな
「ねぇ何してるの?」
「ケータイ」
オレは視線を画面に向けながらぶっきらぼうに答えた
画面越にオレのすぐ後ろで微笑む転校生が映った
「そうじゃないよ」
「わかったから、とりあえず離れてくれ」
オレは転校生から離れるようにして振り返った
すると転校生は不揃いに伸びた前髪の奥の不気味な眼を真っ直ぐオレに向け笑った
「ねえねえ何してるの?」
「麻雀のゲームやけど?」
やけど何?みたく聞き返すような感じで言ってやった
不気味な上に、正直めんどくさい
今の心境は席替えキボンヌといったところかな?(・ω・`)
「ふーん、ねえねえ。もうすぐ始まるよ」
「何が?」
転校生はそれには答えず「ちゃんと見ときなよ」と嬉しそうに言ってオレを前にむき直させた
実験の事を言っているのだろう
「今から溶液AとBを混ぜて反応を起こすので、みんなはこの2つの溶液が何か当ててね♪」
今年からうちの学校に来た若めの女教師が可愛い子ぶって言った
若いのは確かだけど可愛くもないのに可愛い子ぶりっこするからオレはコイツが嫌いだ
後ろからは「始まる始まる」とまるで初めてサーカスを見に来たかのように無邪気にテンション上げ上げの転校生
オレの周りにまともなヤツいないか?それはほんの一瞬の出来事だった
ぶりっこ教師が薬品を混ぜると途端に試験管から巨大な炎が立ち上って炎が教師の上半身を覆った
"立ち上った"というより"教師を燃やしにかかった"といった表現の方が適切な感じだ
ぶりっこ教師は悲鳴を上げながら教室を飛び出しどこかへ走り去っていった
クラス中がざわめき、戸惑いの声を上げた
実験失敗...ってあんな派手に失敗するのか??
ふと転校生が気になり振り返った
転校生は驚いた顔で教卓の方をぼーっと見ていたがオレの顔を見ると微笑んだ
「思ってたより凄いことになっちゃったね」
なんて言いながら転校生は笑いかけてきた
「僕は"失敗"じゃなくて成功が見たかったのになー」
無邪気な笑顔で語る奇っ怪な転校生にオレは言葉も返さず顔をそむけるようにして黒板の前に転がった試験管を見つめた
試験管から出た炎は何もなかったかのように消えていた
火災報知器の作動もあってそれからすぐに他の教師達が駆けつけた
授業を続けられるわけもなく残りの時間は自習になった
オレはケータイで麻雀を再開して暇を潰した
転校生がまた話しかけてくる事も無く授業は終わった
先ほどの教師は病院に運ばれたようだ
顔をまともに焼かれているんだからな
もとから残念な顔なのにより悲惨になってるんだろうな
あーあ可哀想。
担任が教室に入ってきた
「2日間テストご苦労様。元々テスト最終日やから4時間だったんですけど、色々あってこの後は部活動している生徒も全員下校になります」
色々ってオレらの授業で起きてんから隠さんでも…
てかやっぱり今日テストあったんや
全部0点やん…
オール白紙のテストの事を考えていると終礼の終わりを告げるチャイムが鳴った
しかしそれはいつもの定番のチャイムとは違っていて、教会の鐘の音に似たものだった
あれ?こんなチャイム初めてやぞ??
1分近く鳴り続いているにも関わらず誰も特に気に留める素振りを見せない
まあ何でもいいや
「あれ望ちゃんじゃない??」
「えっ!!?」
今は大智と駐輪場に向けて帰宅中
「あの女の子2人組。絶対そうやん」
「だからなんやねん」
それはガッツリ望だった
別れて1年近くたった今でもその顔を見る度に心臓を鷲掴みにされるような苦しい感覚に陥る
当初は立ち直るまで3ヶ月くらい沈んでたっけ
まあ数少ない友達のおかげで今はもうほとんど気にするに値しないが…
「やっぱまだ顔見たらなんか心苦しいわ。てか卒業するまでずっとこんな感じなんやろな」
「お前卒業できんの?てかまずは3年なれるかやな(笑)」
「は?お前より頭イイからな」
無理矢理に望の事を頭から遮断しようとする
けどやっぱ難しいな…
ふと色々思い出す事もあるし正直しんどい
もう顔も見たくないかも
「じゃーな潤!明日も学校来いよ」
「オマエに言われても全然嬉しくねーし」
笑顔で互いに別れを告げて各々帰路に着いた
しかし今日は珍しく色々あったな
その所為か心なしか体がだるい
帰ったら今日は早めに寝よ