贖罪
「じゅんちゃ~ん!!」
聞き覚えのある嫌な声に反応してとっさに机に伏せて寝たふりをした
「潤?ウチの潤はどこ!?」
アホかっ!?アホなのか??
いつからオレはオマエの潤になったのやら…
「あっ!!また寝てる~」
あら、見つかっちゃったか
そらみんな帰っていってるし見つかるよな
だんだんと重低音が近づいてくる
心なしか空気が重くなった気もしてきた…
ヤツが教室に入る際キノコを押し退けたのか「んもうっ!!」とゆう不気味なキノコ声が聞こえたのはきっと気の所為だろう
「ちょっと~?潤ちゃん起きようよ。レディが待ってますわよ??」
誰がレディだ!!
死ぬ前に世の女性に謝って逝け
「ほらほらママでちゅよ!!起きないと今度は耳たぶ舐めちゃうぞ?♪」
平日の夕方から卑猥な事を言いながらやたらとほっぺたをぷにぷにしてきた
女の子にぷにぷにされてるのに何もそそられないのはやはり人が悪いからか?
でも耳たぶのくだりはちょっとイイかも…
そんな事を思っているとぷにぷにが終わって一瞬気を引き締めたが…
「…………もしもーし?潤ちゃんの留守電さんですか??ゆみちゃん寂しいから起きてほしいよー。じゃあね。
あーやっぱ出ないかぁ…」
オレに電話しだした
普通寝てる人にかけても出ないよね?
やっぱアホ?バカ??神様どうかコイツにもう少しだけ知力を与えてやって下さい
それからも3度着信してきた
しかししぶとい女だな
しつこいヤツは男女共に嫌いだ
かくゆうオレもかなりしぶとく無視してるわけだが
「もしもーし?もしもーし!!もしもーし!!もしもー…」
「やかましいっ!!!何遍電話すんねん」
「ありゃ?起きてたん!?起きてるのに無視とかんま潤ちゃんドS!!鬼畜!!変態!!キチガイ!!ウチの彼氏!!」
いやいや最後のはおかしいやろ
他の発言も自覚アリでもなかなか連続で言われたら痛いよ…
「で、なんなんよ??」
「はぁ?!ケータイ見てみ」
はぁー…面倒な女や
渋々ケータイを開くと着信3件、メール6件
着信は言わずもがなコイツからでメールは2件のサイトからのメールを除いて全てコイツからだった
[今日一緒に帰ろ?]
[おーい潤??あ、なんかお茶のCMみたいやな(笑)てか返事しろバカ]
[返事くれないとゆみちゃん寂しいなあ(泣)今から教室行っちゃうぞ?]
[起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろうんこ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ…(以下起きろとたまにうんこが果てなく続く)]
「…………オマエはストーカーか?」
「いえ、ワタシクは神倉潤の嫁の神倉由美子でありまする」
いえ、あなたは只のストーカーでございまする
てかオレの真ん前でメールもしてたとは…
なんか痛いくらい想われてるんやなオレ
「さて旦那様もお目覚めみたいだし一緒におうちに帰りましょうか♪」
「却下。」
オレの拒否も虚しく今はストーカーと駅前の駐輪場に向け帰宅中です
オレには拒否権がなかったみたいですはい
大智は学校に残って物理の講習だそうでまあ帰り道一人だったし…
ま、ええかな?
「ねえね?腕組もうよ♪」
「うん何故に腕を組むのかね??」
「潤が好きだから!!」
「それは答えになってないかと」
「そこに愛があればそれでいいのである」
何を言っているのかもうわからない
というかもう考えるだけエネルギーの無駄
コイツに使う細胞一つ一つが実に哀れである
「てか一緒に帰る言ってるけど自分家真逆やん?」
「え??今から潤ちゃん家いく…もとい私達の家帰るんやで」
「いやいや訂正しやんでも合ってたから、てかオレ原チャリやけど」
「今日は後ろ乗せてね?」
コイツ全力や!!
ガンガンやないけ
てかいっつも後ろ乗りたがるけどそんなにオレの後ろは魅力的なのか?
まだ今のバイク女乗したこと無いから絶対のせねーし
やっぱ最初の女は彼女やろ
「いや、危ないし」
「とか言ってよその女乗してるんちゃうん?浮気はイヤや…」
とか言いながら上目遣い+涙目でオレを見つめてくる
そんな目で見られたら…
「誰がオマエの彼氏や!」
何もそそられねーよバーカ
デコピンを一発食らわしてあげた
「イタッ!…チッ、鬼畜め。」
それからゴネるストーカーを意地で説得して電車+バス経由で家まで来させることにした
てかそろそろストーカーさんの紹介でもしてやるか
しゃーなしな
このどうしようもないアホでストーカーな女、名前は中野 由美子と言います
仕草とか性格は女らしくて可愛いものなんだが…
見た目はなかなか残念な感じなのである
お世辞でも可愛いと言えるレベルでは無く、たぶん一般的なものさしで見たところ残念ながら不細工の領域に入るであろうルックス
身長は小さめ(女の子の中だったら標準くらい?)で、これまた残念な事にちょっとぽっちゃりタイプ
そして極めつけには女の子らしからぬ声の高さであるわけだ
下手したらまだ声変わりを迎えてない男子諸君の方が高い声であろう
電話なんかしたらより一層低い声だからな
女と電話ってのにときめきも糞もないぜ
しかも痴女である
というか欲求不満MAXみたいな?
ともかく卑猥でストーカーで見た目が残念な訳です
あ、良いところ言ったっけか??(笑)
まあこんなヤツだけど気は効くんです
たぶん今時の女子高生でここまで気配りできる女そんな居ないんじゃないかと
あとバカが付くほど一途
そうオレに
オレの何が良かったのであろうか??まあ今では数少ない良き"女友達"って訳だ
ちなみにオレはコイツのこと嫌ってるわけじゃ無いよ
ちょっと冷たく扱ってる気がするであろうが…
オレはドが付くSっ子だから♪
まあそんなこんなで家に着いた訳だが
「お帰りなさいませ、旦那様♪」
「早すぎやろ!!…ってちょ、抱きつくな」
いきなり家の前で抱きつくか!?
てか電車バス経由のくせに早すぎやろ
どんなチート使ってるってゆうんや
これは作者の所為か?
そうなのか??
「じゃあ入ろっか??ウチらの愛の城に♪」
オレは学校の怠さと由美子のお陰でもう疲労のピークを迎えていたのであえてツッコまず部屋に入った
「ほ~、疲れた」
「うあー潤の部屋なにも変わってないねぇ」
「相変わらず綺麗やろ?」
「うん。」
オレは綺麗好きだから部屋は大抵整っている
多少の埃は気にしないでくれ
すると由美子は何か自分の鞄をあさりだした
「じゃじゃーんっ!!ゆみちゃん、お酒買ってきちゃいました♪」
350mlのチューハイと500mlのビール
しかもこのビールはオレの好きなヤツだ
「おっ!気ぃきくやん♪ありがとう」
「えへへー、潤ちゃんに褒められちゃった」
ちょっとだけ顔を赤くして笑った由美子はルックス云々を抜いてどこか可愛らしい
「潤ちゃんとお酒でも飲みながらライブのDVD見たいな思って」
という事で気の利くストーカーさんの意見を尊重してDVD鑑賞する事にした
オレと由美子は共通の好きなバンドが幾つかある事から音楽の話も度々していたのだった
酒を飲みながらベッドに2人並んで横になりライブ映像を見ていると由美子が突然話を切り出した
正直オレはさっき語った疲労と久しぶりの酒の所為で睡魔が襲ってきていて今にもおちそうだ
あーまぢでヤバいかも
「ねぇ潤?ウチらが初めて会った時のこと覚えてる??」
「うーん…微妙」
「ウチさ...潤ちゃんの優しいトコとかSなトコとか一々無駄にカッコいい所にたった1日で溺れていってた」
あーまぢダメやこら
由美子の言ってること8割方なんて言ってるか理解できへん
「おー………」
「でさ、もし潤がイイって言うんやったら…もう一回前みたいな関係に戻りたい。やっぱウチは潤が好き!!もう一回私と付き合って下さい!!」
……………………おやすみ。
「…………潤???」
スースー……
「寝てる!!?…ばーか。」
「………大好き。」
あららオレ潤、寝ちゃいました
なんだか眠ってる間に重大な言葉が聞こえて柔らかいモノが唇に触れた気がしたが…
気の所為だろう
目を覚ました時にはもう辺りは真っ暗で、由美子がとなりですやすや眠っていた
そしてオレが身を起こすと由美子が眠たそうに目を覚ました
「……寝過ぎ。ばーか」
「あー…すまん」
「なんか昔みたい」
「うん、てか寝てる間になんかしたやろ??」
過去を思い返すとコイツは人が寝てる間にチューだけでなくオレの"モノ"に触れたりとヤりたいほうだいしていた記憶がある
寝てる間なのに良く記憶があるなだって?
寝たふりで検証したに決まってるだろ♪
そうさオレは鬼畜さv(´∀`
「えっ?なんでちゅーしたの知ってん!!?」
「ばーか、今自分で言った」
ベタに「しまった!!」みたいな顔で由美子は驚いた顔をしていた
そしてオレは何を思ったのかそっと優しく口付けをした
それは罪悪感からか、只自身の欲求からの行動なのか自分でもわからなかった
その後二人は身体を交えた
そして二人はもう二度と交わる事はなかった
自分の軽い気持ちが相手をここまで溺れさせ、苦しめる結果になるなんて想像もしていなかった
最後に由美子はこんな糞みたいなオレに「ありがとう」と感謝の言葉を残した
身体を交えた所で、二人の心は永遠に交わる事はなかったのだ
その夜オレは、罪悪感と後悔に押し潰されて眠れぬ夜を煙草と共に明かした
朝日がとても綺麗でどこか胸が苦しくなった
世界はこんなにも綺麗なのに...
由美子の心はきっと汚れてしまった
他の誰でもないオレが汚してしまったんだ
今日は学校サボろう