死闘
いつの間にこの小説はスポコン魂全開チックなバトル物になったのだろう…
まあ場面が場面だし
「さようなら、神倉くん」
森本は左手を横に突き出して次の剣を手にした
情けない事に敵の攻撃を目前にしているというのに、力を使い切った身体は言うことをきかなかった
くそッ、まぢでもう終わりか…
オレは諦めて強く瞼を閉じた
と、覚悟を決めたその時屋上の扉が激しく開かれた音がした
突然の激しい物音に目を開けるとまず森本が振りかぶるのが目に入った
高圧縮されたエネルギーの剣が一直線にオレ目掛けて放たれた
それが目前に迫るのとほぼ同時に男が飛び込んできて剣を殴り飛ばした
「……………力!?」
「ふぅ…間に合って良かったッスよ、潤さん」
オレを救ったのは中学からの良き後輩、郷田力だった
「すまねぇ、助かった…」
力がいなかったらオレは確実に死んでいた
死を覚悟していただけに生きている事が信じ難かった
何より高島の迅速な行動に心から感謝した
「おい力!隣で押されてるおっさんも助けてやってくれ!!!」
「うっす!」
力は快く返事を返すと、グレイを追い詰めている剣を力の限り殴りつけた
あれほどグレイを圧していた剣は力の一発の拳によってバラバラに分解された
「大丈夫か?」
「へッ、こんなの余裕っすよ」
圧倒的な力で破壊したかのように見えたがかなり強力な力のぶつかり合いが起こっていたのだろう
力の右の拳は傷だらけで血だらけになっていた
「次から次へと…何人集まった所で結果は同じだよ?僕の力には適わないんだから」
森本は左手を前に突き出し、力を溜め始めた
「させぬッ!」
それを見てグレイが刀を構え森本に飛びかかる
跳躍の勢いに合わせ切り上げたが森本を取り囲むバリアにより弾かれた
「無駄だよ。誰も僕に触れる事すらできない」
「くッ、どうすればよいのだ…」
さすがのグレイも為す術がなく戦意を喪失しかけているかのように見えた
「おい、アンタが諦めたら誰が戦うんや!」
「そんな事貴様に言われなくともわかっておる!!!」
「ちょっと、二人とも!今はケンカしてる場合じゃねぇッスよ!!!」
「ふっ、その筋力馬鹿の言うとおりだよ。まあ何を言ってもみんな死ぬだけなんだけどねッ!!!!!」
「誰が筋力ば…」
力が啖呵を切ろうとしたとき剣が力とグレイを狙って飛んできた
先ほどよりも威力を増した剣は攻撃を抑える力の両手をさらに潰していった
グレイは刀を横に構え両手を添えて防御の姿勢を取った
「くそッ…なんてエネルギーなんだッ!全然壊れねぇ」
「おや?どうしたんだい??君のそのデタラメな力量でも適わないかい??僕は待ってあげるほど優しくないよ」
森本は次の剣を放つ準備に入った
その時また屋上の扉が開いた
そこに姿を現したのは高島だった
「神倉クンッ!!!!!」
チッ、なんてタイミングの悪さだ
「高島逃げろッ!!!」
森本は剣を構えたまま高島を横目で見た
「おや、出来損ないが現れたようだ」
森本は獲物を見つけた様に不気味に顔を歪ませると剣を高島に向けた
「逃げろッ!!!!!」
「もう遅いッ」
森本の構えた剣は高島目掛けて一直線に軌跡を描いた
「クソッタレがーッ!!!」
力は両手の力で剣をもみ消してすかさず高島と剣の間に体を入れた
「………嘘でしょ?」
「おやおや?自らの身体を張って…友情とか言うヤツかい??」
「害のねぇ女に手ぇ出してんじゃねえよ…クソッタレめ………」
力は超高圧エネルギーの塊の剣を諸に左手の肩に受けた
剣は肩に刺さったまま未だ凄まじいエネルギーを放っている
「力ッ!!!!!」
「おい…女。潤さんの事…思ってんだったら、早く…いけ」
左肩に刺さった剣を抜きながら力が告げると、苦渋の表情を浮かべながら高島はその場から去った
「あんな出来損ないは放って置いてもどうでもいい。それよりも…オマエのタフさが気にいらない!」
残りの7本の剣の切っ先が正面に向きを変えた
「一斉に来るぞ小僧共、構えろッ!!」
剣のエネルギーを刀身で昇華したグレイが言った
「だから動けねぇって!!!てか力、オマエも逃げろ」
「オレは…逃げ…ねぇッスよ」
「これで皆殺しだっ!!!」
今度こそ今度こそまぢでヤバい…
4本の剣が飛んでくるのが見えた
残りの2本はグレイを、残りの1本は力を狙った
てか動けない相手に4本!?
むちゃくちゃだろ
またも死を覚悟した
次の瞬間全身に鈍い衝撃が走った
重く苦しい圧迫感に目を開けると人が上に覆い被さっていた
「………え?りき???」
力が上に覆い被さり、オレを庇って全身に剣を浴びていた
刺さったままの剣はビリビリと高圧のエネルギーを放っている
「おい、力!?どうして………!!」
力無くオレに全重力をかける力の体が重傷を物語っていた
そして力の体が薄くぼやけて金色の粉塵へと変わりだした
「……………俺、潤さんに…すげぇ憧れ………てたん…だ」
己の無力さと悔しさで視界がぼやけた
どうしてオレなんかを…
どうしてオレなんかの為に…
そうしている内にも力の肉体はどんどん実体が崩れていく
「俺はアンタみてぇになりたかった………!そんでいつか…アンタを超えて……………」
力はそこで力尽きた
動かなくなって横に倒れた
………死んでしまった
剣を全て受けたその体は全身血まみれで、両手は強大なエネルギーでボロボロに引き裂かれていた
肉体が完全に実体を無くして金色の粉塵となってきらきらと輝いた
そしてそれが体内に入り込んできた
力の暖かい力が全身に流れてくるのを感じた
その傍らグレイは一方の剣を脇腹に食らって大量に血を流して倒れこんでいた
「あらら。彼、死んじゃったみたいだね」森本は嬉しそうに満面の笑みで呟いた
「テメェッ!!!………絶対許さねぇ!!!!!」