共同戦線
「ここからが正念場だぞ、小僧。目先の戦況に捕らわれず、周囲に気を集中させろ。そして己の為すべき事にだけ専念せよ」
「わかってる………っておい、おっさんッ!足元だ!!!」
軍人が身をこちらに向け命令するうちに、切り離された森本の右腕が軍人目掛けて伸びていた
「ふッ、貴様のような小童に警告されずとも把握しておるわ」
軍人は死角から伸びる手を振り向き様に数回斬った
あまりの速さに抜刀した瞬間を視認できなかった
だが粉々に切り刻まれた右腕の肉片がその斬撃の凄まじさを物語っている
「我は第八部隊隊長、グレイ=シェパード。人は我を侠気のグレイと呼ぶ」
「おっさんって言ったのが気に食わんかったんやろ?悪かったな、侠気のグレイ」
「貴様………我を侮辱するとは…「ジョーダンやっ!!!早くアンタはアンタのやるべき事をやってくれ」」
「これが終われば次は貴様の番だ。覚悟しておれ」
気に食わない顔をしたその男、グレイは刀の柄に力を込め、一気に間合いを詰め抜刀した
森本はそれを身軽に交わし衝撃波の構えを取る
グレイは距離をとり、放たれた衝撃波を縦に一刀両断しそれを交わす
そんなギリギリの攻防が果てもなく繰り返され続ける
オレは右手に全ての力を集中させて只それを見守り続ける
オレの力を全て込めたこの弾丸…
外すわけにはいかない
勝負は一回きりや
連続で繰り出されるグレイの斬撃を森本は強化した左手で弾き続ける。右腕を無くした森本は反撃をする余裕が無く次第に圧されていく
グレイの激しい連続攻撃が徐々に森本を屋上の隅に追い込む
次の瞬間がチャンスだ
力を込める右手にエネルギーの全てを集めた
そして周囲に気を意識させる
その時森本の姿が消えた
周囲に意識を集中して森本の気を探すと同時にグレイが叫ぶ
「今だッ!!!」
…左だっ!!!
森本が次に姿を現すであろう場所に向け、全エネルギーを込めた弾丸を放つ
全精力のこもった弾丸は、波動砲の如き勢いで放たれた
「当たれーッ!!!」
弾丸の軌道場、着弾の寸前で森本が姿を現した
決まったかのように思えたが言葉では説明できないような違和感に身を包まれた
そして波動は全てを吹き飛ばした
「…やったかっ!??」
弾丸は屋上のフェンス,地面を派手に吹き飛ばし、辺りに砂煙が舞った
まるで永遠にも思える一瞬の静寂が心を駆り立てる
「否、まだだッ!小僧、上を見ろ!!!」
グレイの指差す方を見上げると、そこには先の攻撃をものともしないかの様に森本が浮遊していた
「なっ…!??どういう事………」
言葉を続けようとした所で酷い立ち眩みに襲われその場に両の膝から崩れ落ちた
…クソッ
さっきの一発に力全部持ってかれたか………
「………さすがの僕もあれをまともに喰らったらひとたまりもなかったよ。わずかでも時間操作ができて助かった」
「時間操作だと!?そんな能力が…「僕はDISASTERだよ?破壊の使者に不可能な事なんてないよ。完全体でない僕でも多少の時間を操るくらい容易い事さ」」
「嘘やろ…」
そんな…
全ての力を注いだ攻撃が掠りもしないなんて………
全ての力を出し切った反動による疲労と、全精力を注いだ攻撃が徒労に終わった絶望感で完全に戦意を失った
もう打つ手は無くなった…
「小僧ッ!!!絶望に打ちひしがれている間など存在せぬぞ!ヤツは何か行動を起こそうとしておる」
森本が空中で手を広げると、後光が射すかのように光が射し始めた
「グレイ、オレもうあかんみたいやわ。力使い切って身体が動こうとしてくれん」
「何を言うのだッ!貴様、敵前で戦意を捨てて死を受け入れると言うのか!?」
グレイはすぐに森本に向き直り力強く,高く跳躍し、一直線に進んだ。だが森本を包む見えないバリアのような物に弾き飛ばされ屋上の地面に叩きつけられた
そうしてる間にも森本の放つ光は更に輝きを増幅し、次に激しく一閃して視覚を奪った
「くッ………グレイ!おい、グレイッ!!!大丈夫か!?」
くそッ、視界が白くぼやけやがる
「只打ちつけられただけだ、まだ戦える。それより貴様を守りながらヤツ程の敵と戦うのは我とて……………ぬッ!?」
「おいグレイ、どうした!!?」
「………凄まじいエネルギーだ。これほどまでに強力な力、生まれてこの方初めて目にする…」
「何が起こっている!?」
ぼんやりと視力が戻ってきた
森本が手を広げる背後に12本の剣がまさに時計の文字盤の配列の如き位置に現れていた。剣の1本1本が強大なエネルギーの塊であるかのように激しく稲妻を纏っていた
「もう僕も遊び疲れたよ。これでゲームオーバーだ!!!!!」
「来るぞ!構えろ小僧ッ!!!」
「ちくしょーッッ!!!力が入らねぇんだよ!!!!!」
1つ目の剣を左手に寄せ、それを全力で放ってきた。グレイは軍刀で斬りかかり寸での所で食い止めた
「泣き事を言う暇があるなら気合いを込めろッ!!!くッ…何という力だッ………」
放たれた剣は凄まじい力でグレイを押す。力に圧され足元から後ろに滑っていく
「そんな調子じゃ次で終わるよ?と、その前に神倉くん、次はキミの番だ。その様子じゃ抵抗なんてできないみたいだけどね」
森本は次の剣を手にした
「大丈夫、殺しはしないよ。ちょっと眠ってもらうだけ。起きてても暇だろう?僕が楽にしてあげるよ」
森本が微笑みかけてきた
…チクショウッ!
どうにもできねぇ
逃げたくても身体がッ!!!
「クソッタレがッ!!!!!!!」
「小僧ッ!!!!!」
「さようなら、神倉くん」