決戦 -side K-
将吾,高島と別れた後、オレは頭に響く導かれる声によってただ歩き続けていた
喫茶店を出た時からオレに語りかける耳障りな声
オレを呼ぶ声
その声を聴く度に不快感と憤怒の情が頭の中を渦巻く
それらの感情に身を任したままどれほどの距離を歩いていたのか、気付けば自分の通う高校の門の前に立っていた
(屋上で待ってる。早く来てよ、退屈で仕方ないんだ)
耳障りな声が語りかける
全ての始まりを思い出させる声
変わり無い、くだらない日常が狂い出したあの日が脳裏に甦る
「全部…終わらしてやるよ」
決意をその拳に込め、門を乗り越えた
それから語りかける声を聴くことはなかった
誰もいない夜の校舎を進む
胸に秘めた感情は怒りと復讐心
ただそれだけ
それだけの感情が身体を突き動かす
心は今までにないくらい高揚し、心臓が物凄い勢いで躍動する
だが頭は至って冷静だった
恐怖は微塵も無い
きっと想像もつかないような強力な相手であろう
死ぬかもしれない
だが死への恐怖など存在しないのだ
ただ存在するのは"復讐"の2文字のみ
無人の校舎をひたすら進んでいると、決戦への扉へと辿り着いた
もし仮に自分が死んでも、きっと彼らなら全てを終わらせてくれるだろう
この段階になってそんな事を思った
この時既にオレは何かを感じ取っていたのかもしれない
これから後決して後戻りできない道を歩んでいる事を
そして決意を固め、その扉を開いた
「やっと来たようだね。随分と待ったよ」
「テメェが黒幕だったとはなぁ、森本」
そう、コイツが現れてからオレの周りの世界は歪んでしまったんだ
狂ってしまったんだ
「黒幕?僕は変化を生みだしただけだよ。結果どうだい??哀れな者はその力を私利私欲の為に使い、非行、暴力、略奪を繰り返した。キミだってそうだろ?神倉くん。僕はただ機会を作っただけだよ。それを有効に使えない君たち人間が悪いだけの事なんだ」
オレは森本のすぐそばに詰めかけ、胸倉を掴んで屋上のフェンスに抑え付けた
「望みは何だ!?何が目的でこんな事を…!!」
そこまで言うと森本は不適に顔を歪め、笑い出した
「目的だって!?そんなもの無いよ。単なる退屈しのぎさっ。君も退屈してたんだろ?変わりの無い毎日に。」
「よくもそんな事をのうのうと…」
そこで森本がオレの言葉を遮った
「あ、そうそう!目的なら無いこともない、混沌だよ。キミのような人間が狂い、潰れていくのを見るのが僕は大好きなんだ」
…腐ってやがる
こんなヤツのせいで望は………
オレは構えた右手を森本のこめかみに当てた
「お前の暇つぶしももう終わりだ!全部………全部終わらしてやる!!」
不気味な笑顔を絶やさない森本を睨みつけたまま、引き金をひいた
その刹那、押さえつけていた筈の森本が消え、弾丸は虚空を貫いた
「そんなちんけな能力で僕を殺すと言うのかい?甘い考えだね」
突如背後から聞こえた声に反応し、振り向きざまに2発続けて撃ち込んだ
しかしそれも容易く交わされ、2発の弾丸は扉を貫いた
「キミも解らない人間だな。」
森本が喋っている間も引き金を引き続け、連続で能力を放っているというのにヤツは表情ひとつ変えず避ける動作もせず続ける
「キミと僕とでは絶対的な能力の差があるって事だよ。そもそも創生主に勝とうという考えが間違っている」
そうしている間も弾丸は森本めがけて放たれ続けているのに1発も掠りすらしない
弾の軌道がヤツを中心にでたらめな方向にそれている
「チッ…」
…一発も当たらんやんけ
飛び道具がアカンのやったら…
そう考えるや否や、森本目掛けて走り込んだ
森本は動じず左の人差し指をこちらに向けたかと思うと、それは鋭い槍か何かのようにすっと伸び、駆け出した右の股をくし刺しにした
速度を失った右脚につられ左の膝から地についた
「僕としてはキミを殺そうという気ははなからないんだ。むしろキミの力を必要としている。今素直に協力するというのならこれ以上危害を加え…」
そこで森本の言葉は遮られ、姿が消えた
その拍子に右脚の自由を奪っていた枷が外れた
突然の出来事に全くワケがわからないオレの前にひとりの男が立っていた
無論、森本ではない別の男が
「ほう、"DISASTERの芽"ともなると瞬間移動までも使いこなせるというわけか」
その男は30代後半くらいで落ち着いた顔立ちで、軍隊の人間を思わせる帽子,制服,そして軍刀を腰に携えていた
肩や制服の前の胸の所には称号やらのバッジがたくさん付いていて、背中には大きく"第八部隊"と書かれていた
「このタイミングでSCDの人間が出てくるなんて。もう少し時期を見計らってほしいものだね」
「こちらとしては最高の機会だと思うが。一度に2人の最上級能力者を排除できるとは。実に神の所業としか言いようがない所だ」
SCD…第八部隊…
前に将吾を狙った例の能力者狩り組織の一員か
となると狙いはオレ達2人………
そんな事を考えている時、軍人は腰の刀に手をかけたかと思うと、視認出来ない速さで森本へ踏み込み刀を振り抜いていた
なんと森本はそれを右の前腕で止めていた
「次は肉体強化か。フンッ、そんな程度でこの刃は止めれまいッ!!!」
軍人がより一層気を込めた
一瞬身体中からオーラが漂い、辺りの空気が重くなったかのような錯覚に陥った
すると森本の腕は刀の当たっていた所を境に切り落とされた
「クッ、人間風情が舐めたマネをッ!!!」
それなりの痛手となったのか、森本は瞬時に移動し距離を取った
そしてオレはこのチャンスを狙うべく右手を構えた
次に姿を現した時が狙い目や…
辺りに意識を集中させた
そして著しくして森本が姿を現した
「今やッ!!!」
目標を捕捉し、素早く引き金をひいた
がしかしその弾丸は目の前で弾かれて消えた
まるで見えない壁にぶち当たったかのように
まわりを透明な檻に囲まれたように身動きがとれなくなった
「悪いね、キミの相手をしながら戦うにはどうやらこの男強すぎるよ」
「おいっ!どうゆう事だ、ここから出せ!!!」
そうしている間に森本は刀を作り上げ、刀対刀の戦いになってた
力の押し合いの最中、軍人が横目でこちらを見て声をかけてきた
「DISASTERを排除した次は貴様だ。それまで残りわずかの命を噛みしめておけ」
くそっ、オレは蚊帳の外ってわけか
けどどうしたもんか
撃ってもかわされるし、肉弾戦となるとあの伸びる手が厄介や
先ほどの傷口からはどくどくと血が流れ出ている
それに伴う痛みもカナリのものだ
何か打つ手は………
そう思っていると戦局がガラッと変わった
軍人の激しい斬撃に森本の刀を持つ手が離れ、刀は消滅した
「やっぱ特殊部隊の人間だけあって刀のスキルは相当なものみたいだね」
「貴様のような能力者如きに我は屈せぬ。我とて第八部隊隊長として、人としての誇りがあるッ!!!」
「誇り…か。気に食わない言葉だねッ!!!」
軍人は気合いを込めた斬撃を、森本は左手を前にかざし衝撃波のようなものを放った
互いにほぼ同時に放たれた力がぶつかり合う
結果、力負けしたのは軍人の方だった
軍人は衝撃波に押され扉横の壁に打ちつけられた
そして追い討ちをかけるように森本は切断された手の5本の指で軍人を貫いた
「だいぶ良い顔付きになってきたね。そろそろゲームオーバーでしょ?」
森本は残酷な程無邪気な笑顔を向け軍人に言った
先の一撃をまともに受けた軍人の状態は明らかに良い物では無かった
壁への追突の衝撃に加え、上半身には依然突き刺さったままの5本の指。指は身体を貫き、背後の壁に突き刺さっている。傷口からは血が滲み出している。
「跡形も残らないくらい燃やしてあげるよ」
森本はまだ生きている左の方の手を突き出し、力を左手に集中させだした
すると左手には烈火の如く燃え盛る赤黒いエネルギーの球体が生まれた
それは徐々に大きさを拡大していく
このままだとあの男………
くそっ、もう少し森本の体力を削ってくれると期待したが…これまでか………
「おい、小僧」
その時死を思わせた軍人から声がかかった
「身を低くかがめて準備しておけ」
「は?アンタ何言っ…」
………そうか!
軍人の言葉の意味を理解し、然るべき次の行動に備えた
そう、今はただ次の瞬間を見守って、待つ
それが今オレのすべき行動
そして森本の作った劫火のエネルギー球は直径2メートル程のでかさになった
球体の中に凝縮された炎のエネルギーの凄まじさが表面にまで溢れ出ている
「燃え尽きろッ!」
森本は凄まじい勢いでエネルギー球を放った
その幾瞬間か前に軍人は森本が行動を起こすより早く身体を貫く右手を引き抜いた。そしてこちらに素早く踏み込み、頭上,つまりオレの身動きを塞ぐ檻を切り落とした
「あれだけの傷を負ってまだ意識を保ってるなんて…生身の人間の癖に見上げた精神の持ち主だね」
「フッ、人間には人間の意地というものがある。よく覚えておく事だ」
しかしこの男、相当な強者だな
能力無しの生身の人間でここまでのヤツがいるなんて…
敵に回すとかなり厄介だな
じゃなくて、はやく出ねーと
そうして解放された檻から飛び出た
「ヨッ…と。で、オレを助けてどうゆうつもりや?さっきは次はオマエだの調子良いこと言ってくれてたけど、アンタ血まみれじゃねーか」
「痛い所を突きよる小僧だ。しかしそれは我とて苦渋の決断、我が志に反するあるまじき恥だ。だが死して屍と化しては元より意味の無い事であろう。違うか?小僧」
「つまりアレだな。2人で協力してアイツをぶっ潰そうって事だろ?」
「左様。我は近距離でヤツを追い込み隙を作る、主はその隙を逃さず最大限の力をぶち込め」
1人でキツくてもこれだけの力を持つ男と組めば…勝てる!
こっちも相当な傷を受けてるけど、それは相手にとっても同じ事。後は決定打を打ち込めば決まり。そう、そしてそれが2人ならできる!!!
「よっしゃ!ここはいっちょ派手に共同戦線といこうじゃねーか!!!」